著者
谷本 昌太 松本 英之 藤井 一嘉 大土井 律之 山根 雄一 若林 三郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.312-319, 2009 (Released:2016-01-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

1. カプロン酸高生成酵母と発酵力の高い酵母の混合醸造を行い,もろみにおける両酵母菌数および諸成分の経日変化を比較した。2. 広島吟醸酵母は,KA-4と比べてもろみ中での酵母菌数が少なかった。全酵母菌数に対する広島吟醸酵母の菌数の比率は,もろみ初期から減少し,もろみ中期に約10-60%に減少した。3. 広島吟醸酵母の添加比率が増すにつれてもろみ中のアルコール濃度および酸度が低くなり,ボーメの切れは緩慢となった。4. もろみ中の香気成分については,広島吟醸酵母の添加比率が増すことにより,もろみ期間を通じてカプロン酸エチルおよびカプロン酸は高く,酢酸エチル,酢酸イソアミルは低くなった。一方,有機酸については,リンゴ酸およびコハク酸が低下した。5. 広島吟醸酵母とKA-4を混合醸造することで,もろみの発酵力を改善するとともに,酒質を変化させることが可能であった。また,もろみ中のカプロン酸エチル濃度の違いは,広島吟醸酵母の酵母菌数に応じて生成されたカプロン酸が広島吟醸酵母およびKA-4によりエステル化を受けているためと推察された。尚,本研究の一部は,平成16年度日本醸造学会大会において発表した。
著者
峰時 俊貴
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.11-20, 2014 (Released:2018-02-16)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

清酒醸造の副産物である酒粕には,血圧降下作用が確認されているアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチドやアルコール性肝機能障害,うつ病などの疾病への効果が認められているS-アデノシルメチオニン(SAM)など多くの機能性成分が含まれており,様々な生理機能を有することが報告されている。また,酒粕は栄養価が高く,食物繊維やビタミン類,アミノ酸を多く含む天然の食品素材,調味料としての特長を有しているが,品質保持が難しい食品素材である。今回,レジスタルプロテインをはじめとする酒粕の機能性について,さらに酒粕の利点を強化し,ハンドリングの良い品質重視の新しい酒粕調味料の開発について解説していただいた。
著者
野村 佳司 内藤 貴文 小野 晃 三上 重明 高橋 利郎 木曽 邦明
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.289-294, 2004-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
4

Recently, sake has come to be frequently sold in transparent refrigerators fluorescently lighted. In such cases, the sake is sometimes colored highly. This seems due to the effect of fluorescent light. We researched the effects of fluorescent light sake coloring. As for the relations between sake coloring and the six types of fluorescent lights, a three band fluorescent light (natural white) colored sake most highly, second was a fluorescent light (natural white), and a high color rendering fluorescent light coated with UV absorption film (natural white) colored sake least. We researched the effects of four color-films on sake coloring. A red film was most effective for preventing sake coloring. A blue film was least effective in preventing sake coloring. As a result of a multivariate analysis, light with a wavelength under 450 nm produced an effect on sake coloring.
著者
早川 雅巳
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.640-646, 2009 (Released:2011-03-05)
著者
小林 徹
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.10, pp.740-744, 2000-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
23

酒を飲んだとき人体には様々な影響が出てくるが, これはアルコールの効果による。アルコールによる神経伝達系への関与はその作用の標的となる膜タンパク質が調べられているが, 最近筆者らによって脳内に広く分布するGIRKチャネルがエタノ-ルの新たな作用部位であることが見いだされた。本稿においてそのメカニズムと意義について解説していただいた。
著者
辻 謙次
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.481-486, 1991-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
17

洋酒の代表であるウィスキーは蒸留酒であるが, あのすばらしい香味の発現は熟成過程を経過することにより得られる。特に樫樽との関係は切っても切れない関係にあり, 品質を左右する大きな鍵を握っていると言っても過言ではない。そこで, ウィスキーの熟成等の研究を通じて, 最高級のウィスキー造りに情熱を燃やしておられる筆者に, 樫樽貯蔵中における熟成のメカニズムについて解説していただいた。
著者
宇都宮 仁
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.10, pp.730-739, 2006-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14
被引用文献数
9 13

清酒の香味に関する評価用語はこれまでにも幾度か見直し・整理されてきたが, 今回, 筆者らを中心とするグループの並々ならぬ尽力により, 本格的な評価用語の体系化と訓練のための標準見本が完成した。ビール, ワインやウイスキー等では, 早くから香味特性の見本が完成しており, 清酒でもそれが待望されていたが, ようやく出来上がったことで, 今後の若手清酒技術者の育成や清酒の評価等がより効率的, かつ効果的に行われるものと期待される。
著者
稲橋 正明 吉田 清
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.12, pp.858-863, 1992-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
17

最近, 各地の研究機関やメーカーで優良酵母の開発が盛んに行われているが, 新規な酵母であることを主張するためにはメルクマールが必要である。本稿はオリゴ糖の発酸性の違いから各種の協会酵母をそれぞれある程度特定できることを解説していただいたものである。オリゴ糖の多い清酒を醸造する上で参考になることが多い。
著者
国税庁
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.12, pp.790-800, 2016 (Released:2018-08-15)
被引用文献数
1

近年国内の日本酒需要は少子高齢化の影響等もあり,減少傾向にあります。一方,2015年の日本酒の輸出金額は約140億円(対前年比121.8%)と,4年連続で過去最高を記録しました。 このような背景の下,国税庁では,日本酒業界がより活性化するためのヒントを蔵元の皆様からお伺いするために日本酒座談会を第52回(独)酒類総合研究所講演会に併せて開催しました。
著者
殿内 暁夫 森山 裕理子 青山 嘉宏 土岐 春歌
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.7, pp.437-444, 2016 (Released:2018-07-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1

著者らは,白神山地由来の微生物資源の産業利用を通じた地域貢献を目的として,酵母Saccharomyces cerevisiaeの分離を進めている。十分に検討された分離・同定スキームにより,これまでに多数の菌株を得ている。加えて,本稿には自然環境から酵母を分離する際に有用な示唆に富んだ内容も含んでいる。また,産学官の研究会を組織し,広報・普及活動を行っており,一部については商品開発もなされている。解決すべき課題もあるというが今後の展開が期待される。
著者
秋山 裕一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.10, pp.731-735, 1990-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
28

日本の酒造りは中国大陸から伝来したとされている。両者とも, デンプンの糖化にカビを利用するという共通点はある。しかし, 日本では蒸した粒のままの米に黄麹菌を, 中国では生のままの粉にした麦にリゾープス菌を生やして麹を造るという点で大きき異なる。歴史的にみても, 古代日本で中国式麹が造られたという報告はないという。永年, 酒造りの研究に携わってこられた著者が,「生米麹と石臼」からこの謎がとけるのではないかと指摘されている。二千年のロマンに思いを寄せて-読されたい。
著者
矢嶋 端夫 乙黒 親男 松土 俊秀 奥田 徹 高柳 勉 横塚 弘毅
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.671-676, 1998-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

ワインから分離した産膜酵母(S. cerevisiae 6菌株およびCandida sp. 1菌株)および産膜酵母標準3菌株に対するパプリカ種子抽出物, 亜硫酸, ソルビン酸およびいくつかのフェノール化合物の抗菌性を検討した。分離7菌株およびCandida krusei(RIFY YTd3)を除いた標準2菌株(S. Serevisiae(RIFY3012)とCandida vini(RIFY2024))のいずれに対してもパプリカ種子抽出物は高い抗菌性を示し, そのMICは50~100μg/mlであった。また, 標準株C. kmsei(RIFY YTd3)はパプリカ種子抽出物に対して耐性を示したが, 亜硫酸には感受性を示し, そのMICは25μg/mlであった。パプリカ種子抽出物に対して耐性が弱い標準株Candida vini(RIFY2024)は, ソルビン酸および亜硫酸に対するMICが300μg/mlと高く, 菌株により特徴ある生育抑制傾向が認められた。分離したS. cerevisiae 2菌株とCandida sp., 標準株C. krusei(RIFY YTd3)およびC. vini(RIFY 2024), 計5菌株に対するパプリカ種子抽出物とソルビン酸, 亜硫酸あるいは種々のフェノール化合物とを併用したが, 顕著な相加あるいは相乗効果は認められなかった。ソルビン酸および亜硫酸は, pHが低いほど, またエタノール濃度が高いほど, 供試5菌株に対するMICは低下したが, パプリカ種子抽出物の抗菌性に対するpHの影響は小さかった。以上の結果, パプリカ種子抽出物はワインの産膜酵母に対して強い抗菌効果が認められ, さらに亜硫酸あるいはソルビン酸との併用により抗菌スペクトルが広がり, ワインの産膜酵母による汚染を防止できる可能性が示された。
著者
中森 俊宏 北川 さゆり
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.25-36, 2009 (Released:2016-01-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1

大豆は,日本人にとってなくてはならない食材であり,タンパク質,レシチン,オリゴ糖,イソフラボンなどに富む優れた機能性は,今や世界の人々の健康や食生活に大きく寄与しようとしている。調整大豆ペプチドは大豆タンパク質の優れたアミノ酸バランスを有し吸収性に優れた素材である。この特徴を生かした栄養ドリンクなどが開発されており,少し前には健康情報テレビ番組によりブームとなった。一方,最近市場が拡大している新ジャンルと呼ばれる酒類の原材料表示をみると大豆ペプチドと表示されたものがあり,アルコール発酵を円滑に行うための素材としても注目されている。本稿では,大豆ペプチドの製法から,その物理学的特性,栄養学的特性,発酵食品への利用について解説していただいた。
著者
篠田 次郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.127-140, 2016 (Released:2018-05-30)
参考文献数
4

この論文は著者が言うように,日本酒造組合中央会の技術幹部養成上級研修通信講座テキスト「清酒工場設計の考え方」の続編として製造設備とその付帯設備に求められるスペックを熱エネルギーの視点から,著者の豊富な経験をまじえながら,わかりやすく論じたものである。さらに,酒造の各工程に関わる熱エネルギーの問題が具体的な例示によって述べられているので,酒造工場のエネルギー管理や省エネの観点からも参考になることが多々あり,一読をお奨めする次第である。
著者
土谷 紀美 西村 賢了 岩原 正宜
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.12, pp.878-882, 2002-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11

本報告では, 液体培養で得られる麹菌体を利用したリアクターにより, 菌体結合型グルタミン酸脱炭酸酵素 (GAD) の作用でGABAを生産させることを試みた。さらに, 通電透析により基質であるグルタミン酸との分離も試みた。また, 生産効率を高めるため, 高いGAD活性を有する菌体を得る条件を検討した。その結果, 液体培地のpHが5.0であること, 培地中への50μMのPLPの添加が効果的であることが明らかとなった。液体培養によって得られたペレット状の麹菌体 (乾燥重量6g) のGAD活性を低温処理によって高め, 反応液pHを5.3-5.5にコント'ロールした撹拝槽型リアクターに麹菌体を担体として用い, 菌体上のGADに500mMグルタミン酸と0.5mMピリドキサール5-リン酸を反応させた。今回, 菌体の破砕処理や固定化は行わず, ペレット状の菌体をそのまま用いた。その結果, 100分反応後のGABA濃度は340mM, 200分後には400mMに達し, 基質からの変換率は約80%と高かった。生産効率は8.5mmol-GABA/g麹菌体/hr (0.9g/g/hr) と, 極めて高く, 短時間で高濃度のGABA溶液を得ることができた。その際, リアクターの反応温度は, GADの熱安定性から37℃ が望ましかった。また, グルタミン酸とGABAの分離には, イオン交換膜を利用した通電透析が効率的であることがわかった。
著者
奥田 将生 橋爪 克己 上用 みどり 沼田 美子代 後藤 奈美 三上 重明
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.97-105, 2010 (Released:2012-02-13)
参考文献数
19
被引用文献数
3 11

登熟期の気温と原料米の溶解性に密接に関係するデンプン特性の年次·産地間変動との関係について解析し,以下の結果が得られた。1 同一品種でも産地間でデンプン特性や蒸米消化性が異なるのは,産地の登熟期気温が影響したことが主な原因であると示唆された。2 25品種27産地の生産年度の異なる試料について,出穂後気温とデンプン糊化温度の関係について解析したところ,登熟期気温と糊化温度は高い相関性を示し,登熟期気温が低い年は糊化温度が低く,一方気温が高いと糊化温度も高くなることを確認した。以上,デンプン糊化温度は蒸米消化性と高い相関性を示すので,これまでと今回の研究結果から,原料米ごとの出穂後の気温に注目すれば,かなりの精度で原料米の溶解性に関する酒造適性を予測できると考えられた。
著者
小林 信也
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.818-822, 1989-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7
被引用文献数
3

製造技術の向上により, 全国的に高品質の清酒が醸出される現在において, 減点法による品質評価法は, 酒質の均一化, 平凡化を助長するという欠陥がみられるようになった。また, 専門家間の酒質の表現法から, 一般消費者も理解できる表現法への脱皮も要請されるようになった。このような背景から, 加点法という新しい清酒の評価法の作成に携わられた筆者にその内容について解説していただいた。
著者
恩田 匠
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.286-301, 2016 (Released:2018-07-12)
参考文献数
9

シャンパーニュ製造について研修をされた筆者には,これまでに本誌でブドウ栽培やアサンブラージュについて解説をしていただいたが,今回はシャンパーニュ製造のための果汁の調製について貴重な情報を紹介していただいた。日本でも瓶内二次発酵のスパークリングワインの生産が増えているが,通常の白ワインの果汁調整とは考え方が異なることが分かり,大変興味深い。