著者
神渡 巧 瀬戸口 眞治 緒方 新一郎 間世田 春作
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.98, no.10, pp.729-736, 2003-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

We developed a method for the measurement of mono-terpene alcohols, whose characteristicsare strongly related to Kansho Shochu. The targeted compounds are nerol, geraniol, citronellol, linalool, and α-terpineol. Porapack Q was used as an adsorbent. Kansho Shochu was extracted and concentrated by solid phase extraction in order to determine the mono-terpene alcohols. Recovery of each compound by this method was 84-100% and was not influenced by compounds other than alcohol. The correlation coefficient of the calibration curve was 0.993 and above. Reproducibility (n=5) at relative standard deviation was 3.0% and below. The relative error was 2.3% and below when compared with standard addition method. In the present work, we discovered the existence of Vanillin in Kansho Shochu.
著者
金村 敦夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.326-332, 2007-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7

筆者は酒造会社の販売部門で50年も, 飲酒の現場に深くかかわって来て,「酒道」はどうなっているか,「飲酒の品格」はどうか,「これで将来は?」などと深い思いを重ねて来たにちがいない。筆者は飲酒の歴史を調べ, その作法 (酒道) の由って来たるところを調べ論じている。酒道は自然や稲作を通しての祈り, 神祭の中から「盃事」となり, 武家の「武三献」そして「三三九度の盃」として長く伝えられて来た。一方, 世相の変化と共に飲酒に無礼講や一気飲みの酔態など, 乱れが案じられる, と。しかし筆者は日本人の品格ある飲酒の道は日本人の和の心, 繊細な感性と武士道の精神があるから大丈夫だろうと説いています。お酒を提供する側の方々には, 生活様式が変ってしまっている今日ですが, 品格ある飲酒の道を実践して, 楽しい会話や団樂によって愛酒をひろげ, 業界の活性化にも, と願うものです。
著者
山本 晃司
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.76-80, 2015 (Released:2018-04-12)
参考文献数
3

麹菌は,さまざまな穀物に増殖し麹にすることが可能であるが,使用する原料に応じてそれぞれ適した製麹法が必要となる。ここでは,これまでその色合いに着目した用途が主であった小豆を,麹にして醸造に利用するための工夫と,小豆麹が持つ効能について解説していただくが,穀物の新規利用の試みとして非常に興味ある報告である。
著者
北陸酒造技術研究会
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.90, no.9, pp.682-684, 1995-09-15 (Released:2011-09-20)
被引用文献数
1 1

金沢国税局管内で使われていたいわゆる「金沢酵母」は, 他の地域の製造場から是非使用してみたいとの希望が多かったが, 当酵母に関するプライオリティを有する北陸酒造技術研究会の御好意により, 平成7年度から協会14号 (金沢酵母) として全国に配布されることとなった。従来の協会酵母の中にはその来歴が明らかでないものがあったので, 全国配布に先立ち金沢酵母の来歴, 特徴, 仕込み上の留意点, 製成酒の酒質等について解説していただいた。
著者
久留 ひろみ 玉置 尚徳 和田 浩二 伊藤 清
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.741-748, 2010 (Released:2016-02-04)
参考文献数
20

実験室(鹿児島大学)及び奄美大島でミキを調製し,並びに市販のミキを購入した。それらのミキ中の乳酸菌を16SリボゾームDNA解析により同定した。実験室で調製したミキ中の乳酸菌を30種同定したが,全てLactococcus lactis subsp. lactisと同定された。しかし,奄美大島で調製したミキ中の乳酸菌(6種を同定)は実験室由来のものとは異なり,Leuconostoc lactis(3/6), Leuconostoc citreum(2/6)及び Lactococcus lactis subsp. lactis(1/6)であった。また,市販のミキ中の乳酸菌(6種を同定)はLeuconostoc citreum(5/6)及びLeuconostoc mesenteroides(1/6)であった。これらの結果は,ミキ中の乳酸菌は原料サツマイモや環境の違いによって異なることを示しているが,詳細な調査は今後の課題である。Lactococcus lactis subsp. lactisはナイシンの生産菌として知られているが,ミキ中のLactococcus lactis subsp. lactisもナイシンを生産した。ミキ中のバクテリアには乳酸菌の他に好気性菌も存在するが,ミキ培養の後半には好気性菌(CaCO3プレート上でのハロー非形成菌)の存在はなくなり,乳酸菌3(ハロー形成菌)だけでフローラを形成した。乳酸菌のスターターを使用することにより,ミキ初期の好気性菌の存在を大幅に低減した。スターターの使用は,ミキを安定的に製造する上で重要であると判断した。
著者
境 博成
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.8, pp.585-593, 2007-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11

イギリス, フランスに引き続き, 今回はスペイン産のリンゴ酒について紹介していただいた。同じリンゴ酒でありながら日本市場においてはアストリアス地方のシドラもバスク地方のサガルドアも知名度が低い。スペイン産リンゴ酒の歴史的背景, 原料リンゴ果からリンゴ酒の醸造, 醸造場に併設されるレストラン, 飲酒文化についての話まで巾広い話題を提供していただいた。
著者
西谷 尚道
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.240-246, 2002-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
17

日本酒復権のシリーズ第2回目は「味覚」に着目し, 日本酒を発展させるためには既存清酒と多様化清酒の住み分けが必要と唱える。既存清酒では旨口と熟成の味わいにスポットを当て, 燗酒のあり方を含めて述べられている。また, 多様化清酒ではこれまでにはなかったまったく新しい味わいが必要であるとし, それを低アルコール清酒に求め, 具体的な品質設計のモデルが提案されている。
著者
奥田 将生
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.7, pp.510-519, 2007-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
16
被引用文献数
4 4

酒造原料米の最大成分であるデンプンの性質が清酒醸造にどのような影響を与えるのか興味深い課題である。デンプンはアミロースとアミロペクチンにより構成される。近年, 本解説にも紹介されているデンプン変異体米を用いた研究により, 米デンプンの詳細な分子構造とその生成機構が解明されつつある。今回は, 著者の最近の研究成果からデンプン分子構造と蒸し米の酵素消化性, 蒸米のデンプンの老化特性, さらにイネ登熟期気温が米デンプンの分子構造に及ぼす影響と幅広く解説していただいた。品種や気象条件による酒造原料米の性質の違いを理解する上で参考になるものと思う。
著者
堀尾 哲也
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.411-417, 2008-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

麹菌などの糸状菌の先端細胞には核が多数存在し, 活発な代謝を行うとともに先端部からの酵素分泌と先端成長を行っている。また, このように多核体ゆえに糸状菌は酵母に比べて数十倍という速度で伸長しなければならないという。最近明らかになってきた菌糸先端成長のしくみについて, 麹菌の近縁の糸状菌での最新の成果について解説していただいた。
著者
恩田 匠
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.712-727, 2016 (Released:2018-08-06)
参考文献数
13
被引用文献数
1 7

シャンパーニュ委員会技術部門で研修を受けられた筆者には,これまでにブドウ栽培,アサンブラージュ,醸造の前編としての果汁の調製について詳細な解説をしていただいている。今回はベースのワイン(原酒ワイン)の醸造について,通常のスティルワインとの違いや新しい醸造技術を含めて解説していただいた。シャンパーニュの原酒ワインは,シャンパーニュ製造に特化して造られていることがよく理解できる。
著者
小崎 道雄 岡田 早苗 関 達治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.46-61, 2002
被引用文献数
1

酒は農耕文化の産物で, 酒の原料はその民族の主食と一致している。米は日本人の原味覚となっており, 米を原料とした酒は日本人の心の故郷といえる。筆者の提唱される「米の種類を問わず米を原料として醸した酒」を「米酒」とする定義は日本酒, 焼酎の国際化をも考えなければならない現在, 大いに役立つものであろう。<BR>タイ国のいろんなタイプの米酒の詳細な製法が臨場感をもって記述されており, 大変興味深い。筆者の長年の調査研究の成果を, 写真, 図を交えて解説いただいた。「米酒」に関心のある方のご一読をお勧めする。
著者
畑中 唯史
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.7, pp.431-436, 2016 (Released:2018-07-30)
参考文献数
8

睡眠障害は脳血管疾患,鬱病,全死亡に対するリスクの1つとされ,臨床的重要性が非常に高い。そればかりでなく,寝不足による生産性の低下が大きな経済損失をももたらすとの報告もある。海外と比べ,日本人は平均睡眠時間が顕著に短いばかりでなく,睡眠障害を抱える人の多数の存在が明らかになっているが,現在のところ,その対処が遅れている。筆者らは,日本人が古くから主食とし,安全・安心に摂取できる米に着目して,米由来タンパク消化物の機能性解明に取り組んでいる。その一環として,睡眠障害改善と関連があるセロトニン-N-アセチルトランスフェレース活性に着目した解析を行った。この結果,米由来タンパク消化物がこれを活性化することを明らかにし,予想される機構を提示した上,睡眠障害改善につながる可能性を示した。
著者
山下 勝
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.599-604, 1993-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
23

近世, 江戸時代になっても人々の甘味に対する嗜好は, まだあこがれに近いものがあった。蜜淋は, 人々のそんな思いをほろ酔いとともにかなえてくれる至福の飲料であったに違いない。蜜淋の歴史はそのまま現在の清酒製造技術である, アル添の工程に至る, 長い試行錯誤の歴史と重なってくる。甘味酒の系譜に造詣の深い筆者に蜜淋を中心として, それらの製法の確立までの過程を興味深く推論していただいた。
著者
蛸井 潔
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.109, no.12, pp.874-881, 2014 (Released:2015-03-30)
著者
田谷 正仁
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.507-511, 2010 (Released:2016-01-25)
参考文献数
10

二酸化チタンの光励起により発生する活性酸素種は,種々の有機化合物を酸化分解し無機化することから,セルフクーリング機能のある環境浄化材料としての利用が期待されている。このような二酸化チタンの反応機構は,有機物の集合体ともいえる微生物やウイルスの滅菌や殺菌にも有効である。二酸化チタンによる有機物処理は,高い有機物含有環境には不向きで,低濃度で有機物(あるいは細胞)を含む系において効果を発揮する。この場合,標的とする反応物(細胞)を二酸化チタン粒子近くに引き寄せるような工夫が重要となる。ここでは,このような観点からの二酸化チタン複合材料の調製とその利用について,筆者らの取組みの一端を解説いただいた。
著者
宮川 博士 木田 建次
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.491-498, 2012 (Released:2017-12-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本格焼酎製造に一般的に使用されている「差しもと」の安全で安定したユニークな方法の紹介。微生物の乾燥や冷凍耐性のキー物質であるトレハロースが酵母の活性に影響し,一次醪製造工程で撹拌又は通気によって酵母菌体のトレハロース濃度を高めることで活性を高レベルに維持できる。ただし,製造規模が大きくなると細菌汚染の可能性が高くなるので微生物管理には注意を要する。
著者
山田 潤 松田 秀喜
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.11, pp.866-873, 2009 (Released:2016-02-15)
参考文献数
26
被引用文献数
1 3

かつお節は古来より使用されてきた日本の伝統的な調味料である。培乾した荒節にカビ付けした枯節は発酵食品といえる。かつお節のDPPHラジカル消去活性は,100℃,30分間の抽出時に最も強い値を示し,鰹だしの抗酸化活性成分として,クレアチニンとフェノール系の2-methoxy-4-methyl-phenol,4-ethyl-2-methoxy-phenolを同定し,さらに鰹だしにより加熱調理時のイワシの酸化が抑制されることを明らかにしたので解説していただいた。鰹だしは醤油加工品であるめんつゆやだし入り味噌などに使用されており,これらの製品においても抗酸化作用が期待される。
著者
橋田 規子
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.2-8, 2017 (Released:2019-02-15)
参考文献数
4

瓶の生産量が年々減少している。その原因の一つに若者のお酒離れがある。本稿は若者が好み,コンビニエンスストアなどで手に取ってもらうような,酒瓶のデザインの研究である。酒瓶商品としては,瓶以外にもラベルという大きなデザイン要素があるが,著者は,瓶の需要を高めることを目的とし,瓶形状に限定して研究を行われている。是非参考にしていただきたい。
著者
編集部
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.351-380, 1998-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
262
被引用文献数
1

1997年度の味噌・食酢の研究業績をみると, 研究の目的と投じられたエネルギーが味噌, 食酢で明らかに異なることがわかる。味噌については, 一般的な説明研究が多く行われてはきたが低調気味であることを否定できない。一方, 食酢については, 新たな開発ならびに研究が数多く行われている。いずれも醸造食品として機能性などに関心がもたれ検討されていることが注目されるが, このような点で味噌・食酢産業のさらなる発展の糸口が得られることを期待したい。