著者
山根 善治 武宮 重人 井原 信二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.112, no.8, pp.578-585, 2017 (Released:2023-04-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

札幌国税局が主催する果実酒研究会において,北海道で製造されたワイン33点について,30項目の成分分析と11名の専門家による官能評価を行った。成分と官能評価の相関分析から,総合評価に対し10成分及び4評価項目について相関関係が認められた。特に白ワインにおいて,亜硫酸や酸度が危険率1%で正の相関,酢酸や酢酸エチルと危険率1%で負の相関が認められた。総合評価と相関関係が認められた評価項目と分析項目の相関分析から,赤ワインの熟成度とイソアミルアルコールに関連性が認められた。
著者
古川 幸子 鈴木 啓太郎 増村 威宏 田中 國介 若井 芳則
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.9, pp.653-665, 2015 (Released:2018-05-18)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

(1)2007年産の酒造好適米と良食味米を含む11品種11点について,試験米の食味評価とこれらの試験米を掛米とする製成酒の味覚センサーによる呈味評価の関係を検討した。(2)味覚センサーを用いて製成酒の呈味特性を評価した結果,酒造好適米品種を掛米に用いた場合には,製成酒は有機酸による濃厚感を持つ呈味となり,一方で良食味米品種を掛米に用いた場合には,製成酒は爽快感のある呈味となることが示唆された。(3)用いる掛米品種により製成酒の呈味に差異が見られる理由について詳細な検討を加えるため,製成酒の遊離アミノ酸含量を測定したところ,良食味米品種で酒造好適米品種よりもAsp,Thr,Ser,Leu,Tyr,Phe,Met,Lys含量が有意に高い値となった。(4)遊離糖含量は,良食味米で酒造好適米品種よりもフルクトース含量が有意に高く,グルコース含量が有意に低い値となった。従って,用いる掛米品種によって製成酒の呈味に違いが生じる原因として,アミノ酸含量や遊離糖含量の影響が示唆された。(5)味覚センサーを用いた製成酒の呈味評価により,掛米品種による酒質の差異を明示できる可能性が示唆された。これを商品開発に応用することで,新規市場の開拓や需要拡大への貢献に期待できるものと思われた。
著者
杉山 信太郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.12, pp.890-899, 1992-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
47
被引用文献数
2 4
著者
曲山 幸生
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.11, pp.785-790, 2014 (Released:2018-04-09)
参考文献数
18

豆腐ようは豆腐を原料とする沖縄の伝統的発酵食品で,この起源と考えられる腐乳も豆腐を原料とする中国の伝統的発酵食品であり,筆者にこの2つの製造の差,さらに,豆腐ようは腐乳の一つと考えられることを解説いただいた。中国における腐乳の食べ方には学ぶべき点が多く,日本における豆腐ようの消費拡大の参考になると考えられ,さらに,伝統的発酵食品は新商品開発のアイデアにつながるので,ご一読いただきたい。
著者
四方 秀子
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.5, pp.315-323, 2006-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
3

ウイスキー原酒のキャラクターは, 蒸留直後のニューポットで骨格がほぼ決まる。そのニューポットの清酒特性は, 発酵に使用される酵母が, ラガ-酵母であるのか, エ-ル酵母であるのか, あるいは, フレッシュ酵母であるのか, 成熟酵母であるのかといった酵母の特性に大きく影響される。本稿は, ウイスキー発酵における酵母の役割とその状態の影響について紹介していただいた。
著者
橋爪 克己
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.8, pp.574-580, 2008-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
26
被引用文献数
1

清酒中にどんなペプチドが存在し, 味にどのように関与しているかは, 古くから興味が持たれてきたが, 分離精製や定量が難しく十分に解明されていない。本解説は著者らが2次元電気泳導, ゲル内トリプシン消化, MALD-TOF-MASといった最先端の分析技術を駆使して, 清酒中のペプチドを解明した成果をまとめていただいたものである。ペプチドの生成制御に関わる技術は, 清酒の品質と製造コストの両面において重要であり一読をお願いする。
著者
吉﨑 由美子 金 顯民 奥津 果優 池永 誠 玉置 尚徳 髙峯 和則
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.3, pp.170-178, 2015 (Released:2018-04-16)
参考文献数
16
被引用文献数
3 3

本研究では韓国麹「ヌルク」を用いた焼酎商品化の可能性について検討した。10種類のヌルクの発酵能力を確認したところ,米麹と比べ全てのヌルクで発酵能が弱かった。しかし,その中でも2種のヌルクは比較的高い発酵能力を示した。ヌルクに含まれるα-アミラーゼとグルコアミラーゼは米麹とほぼ同等であり,生デンプン分解活性に関してはヌルクの方が高かった。ヌルクに含まれるデンプン質の糊化度は米麹と比較して低く,糊化度の低さがヌルクの緩やかな発酵に影響していることが強く示唆され,糊化度をもとに発酵能力の高いヌルクを選抜できる可能性が示された。ヌルクを用いて製造した米焼酎の官能評価は,米麹を利用した焼酎より酸臭と酸味がある一方で,華やかであった。さらに,一次仕込み時に焼酎酵母を添加することでヌルクを使用した米焼酎の酸臭および酸味を抑制できる可能性が示唆された。また,ヌルクに含まれる酵母の1つとしてSaccharomyces cerevisiaeを同定し焼酎製造に適した微生物をもつことが確認された。 本研究は韓国RDAとの共同研究(Project No. PJ008600)で実施された。
著者
斎藤 久一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.11, pp.769-772, 1992-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本年4月に清酒の級別制度が完全に廃止され, 産地間競争, 銘柄間競争が激しくなってきている。秋田県酒造組合では秋田県産酒の差別化と品質の向上を図り, 産地イメージの高揚を推進するため「秋田県産地呼称清酒認証制度」を作り, それに基づいて統一銘柄秋田旬吟醸を開発した。本稿ではその経緯を述べていただいた。
著者
阿部 敬悦 上原 健二 高橋 徹 大滝 真作 前田 浩 山形 洋平 五味 勝也 長谷川 史彦
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.10-18, 2009 (Released:2016-01-18)
参考文献数
21

生分解性プラスチックは,発酵により生産が可能である有機酸とアルコールを原料とするものであり,現状の石油系プラスチックに代わるものとして期待され,生産量が拡大している。本稿は,著者らが行っている,麹菌が生分解性プラスチックを効率的に分解するメカニズムの学術的な検討と,伝統的な麹利用技術を本プラスチックの分解に生かす新たな処理システムの構築につき,詳細な解読をしていただいた。
著者
植村 浩
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.11, pp.855-861, 1994-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
27

生命現象を分子レベルで理解しようとする生化学はアルコール発酵すなわち解糖系の研究から始まった。その制御機構に関してもパスツールの時代から議論されてきた。しかし, 解糖系が生物の基本的代謝のため変異を利用した研究が困難である等のこともあり, 150年以上経た現在でも分子生物学レベルでの遺伝子発現制御系の全容は解明されていない。酵母の解糖系は高等動物と基本的には同じであり解糖系の制御機構解明の研究対象としては格好の微生物である。最近になり酵母での解糖系を統一的にかつ特異的に制御している因子群が見い出され, その遺伝子や変異株を用いた研究が進められている。これらの因子群の相互の役割についても明らかにされつつあり, 解糖系の制御機構の解明も間近なことを予感させる。
著者
上東 治彦 中村 幸生 森山 洋憲 溝渕 正晃 菅野 信男 永田 信治 味園 春雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.10, pp.840-848, 1999-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

高知県で育成された酒造好適米品種「吟の夢」について, 高知県産「山田錦」を対照として酒造適性試験, および醸造試験を行った結果, 以下のような知見を得た。(1) 吟の夢は, 山田錦に比べ稈長が17cm程度短く, 耐倒伏性やイモチ耐病性には中程度の強さを示す。山田錦対比119%の多収であり, 心白発現率は75.3%と高い。(2) 70%精白米の酒造適性試験では, 吟の夢の玄米千粒重は25.0gと山川錦より1.6g程度小さいが, 20分および120分吸水性ともに山田錦より高く, 消化性のBrix, フォルモール窒素は山田錦とほぼ同程度, 粗タンパク含量は吟の夢が4.32%と山田錦よりやや低かった。(3) 吟の夢と山田錦の老化の起こり易さを比較した結果, 吟の夢が老化しやすかった。(4) 40%精白米の小仕込試験においては, 吟の夢の精米時間は短い傾向を示したが, 無効精米歩合や白米の粒度分布の変動率は山田錦とほぼ同じであった。40%精白米の粗タンパク含量およびPB-II/PB-I比は吟の夢が山田錦より低かった。製成酒では吟の夢は山田錦より日本酒度の切れ, アルコール生成が良好であり, 酸度, アミノ酸度, 紫外部吸収は低くて, 官能評価も良好であった。(5) H 10 BYの吟の夢の実地醸造では, 吟の夢の白米千粒重は対照品種より小さかったが, 粗タンパク含量は対照品種より低いものが多く, 兵庫県産山田錦とほぼ同等であった。製成酒のアミノ酸度は, 対照品種と同等であった。
著者
大久 長範
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.7, pp.472-477, 2013 (Released:2018-01-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1

稲庭うどんには肉眼でも判別できる位の空隙(気泡)が存在し,この空隙が歯ごたえの原因となつており,その他の乾通やスパゲテイーに認められている水分勾配による歯ごたえではなく,この気泡は小麦粉に食塩水を添加し,手延べ製麺を繰り返すことにより,集積された耐塩性酵母Hyphopichia burtoniiがアミラーゼを保有し,可溶性デンプンを発酵し炭酸ガスを発生することにより生成し,稲庭うどんは伝統的な発酵食品であることを明らかにしたので,解説いただいた。
著者
古川 壮一 平山 悟 森永 康
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.4, pp.228-238, 2014 (Released:2018-03-12)
参考文献数
157
被引用文献数
1 2

日本の伝統的発酵食品に関与する微生物は,麹菌,乳酸菌,酵母,酢酸菌などであり,これらの微生物は古くから生育環境が類似しているため共に協力しながら,共存・共生する環境で利用されてきました。こうした微生物内の相互作用が,発酵プロセスの安定化に重要な役割を果たしてきたと思われます。ここでは伝統的発酵食品として,清酒・ワイン・ビール・蒸留酒・酢・醤油・味噌・乳製品などに関わる微生物の共存と共生の意義について解説して頂きました。
著者
岩田 博 三木 淳史 磯谷 敦子 宇都宮 仁
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.90-97, 2007-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
16
被引用文献数
3 2

清酒鑑評会の公開きき酒でカビ臭を経験した方が多くおられることと思う。筆者らは最先端の分析機器を駆使して, そのカビ臭の原因物質がTCAであること, 1.7ng/l (1.7×10-9g/l) という大変微量な含有量でカビ臭が感知されることを解明し, 醸造工程におけるTCAの生成機構やその生成防止方法について研究された。本総説はその研究成果を解説していただいたもので, 醸造現場において大変有益な内容でありぜひ一読をお願いしたい。
著者
福田 央 韓 錦順 水谷 治 金井 宗良 山田 修
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.112, no.4, pp.273-314, 2017 (Released:2022-12-05)
参考文献数
12

焼酎の84種類の揮発性成分をSPME法とヘッドスペース法を用いて分析した。泡盛及び甘藷焼酎の揮発性成分間の相関解析を行った。その結果,中鎖脂肪酸エステル類間及び高級脂肪酸エチルエステル類間で相関性は全体的に高く,生合成系や化学構造の類似性が寄与していると推定された。モノテルペンアルコール類間及び低沸点エステル類間では高い相関性を示す成分について生成経路を推定した。フルフラールは意外にもアルデヒド類と相関性を示した。この他,泡盛及び甘藷焼酎において,個別に高い相関性を示す成分について考察を加えた。
著者
宇都宮 仁
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.327-334, 2014 (Released:2018-03-12)
参考文献数
17

酒類製造においては,課税,表示,品質管理上様々な分析が必要であり,特に近年,政府の推進する日本産酒類の輸出環境として輸出時の分析書や表示の信頼性が求められ始めている。そのような中,今後,酒類分析の技能試験法の確立に向け,所管官庁,公共及び民間研究機関等が中心となって議論を始めるため,技能試験法に関する国内の食品分析における実施状況と海外の酒類分析の実施例が纏められている本稿はよい指針になる。広くご一読をいただきたい。
著者
木村 宜克
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.12, pp.827-839, 2015 (Released:2018-05-23)

近年日本酒の輸出が伸びているのは明るいニュースである一方,国内市場の縮小は続くと考えられる。特に地方において人口減少,首都圏への人材流出が進む中,地域経済・社会・自然環境の持続可能性を確保するためには,蔵元だけではなく,農家,卸小売りなどの流通,料飲店,地域の農水産品による食品加工業に加え陶磁器・漆器などの伝統工芸や観光と幅広い産業のネットワークによる地域ブランド化を総合的に考え,付加価値を向上させていく必要がある。当調査では,消費者アンケート分析,蔵元向けアンケート分析,ヒアリング調査の結果を踏まえて中国地方における日本酒ブランド確立と消費拡大につなげる方策について提言を行っている。
著者
高下 秀春
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.381-388, 2012 (Released:2017-12-12)
参考文献数
13
被引用文献数
4 1

麦焼酎は淡麗ですっきりした酒質が特徴であり,他原料と比べて原料の個性が少ない。そのため,製造技術による酒質の多様化が期待できる焼酎といえる。本解説では,麦焼酎の風味の形成に及ぼす製麹条件の検討やフルフラールの酒質への影響とその生成に及ぼす要因の解明,麦焼酎の特徴的香味成分の同定といったこれまでの研究成果を詳細に解説していただいた。
著者
大久 長範
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.112, no.4, pp.208-213, 2017 (Released:2022-12-05)
参考文献数
12

その歯ごたえで人気のある稲庭うどんは,400年近くの歴史があり,今も伝統的な製法で生産されているが,その歯ごたえのわりに茹で時間が短い理由の一つが,実は耐塩性酵母による空隙が関与している可能性を示唆する極めて興味深い内容の話を,専門的な立場から丁寧に解説いただいた。麺類には色々な種類があるが,麺類に興味のある方のみならず,微生物に興味のある皆様にも是非とも御一読をお勧めする。