著者
渡邉 裕樹 岡阪 敏樹 平松 義規
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.200-205, 2019-03-15 (Released:2019-03-15)
参考文献数
23

症例は45歳の男性.突然の左背部痛を主訴に救急搬送された.既往に神経線維腫症1型(NF1)があった.造影CTで左大量胸水を認め胸腔ドレナージを施行,血性胸水を認め特発性左血胸と診断した.CTで左第11肋間動脈の蛇行・拡張を認めたが出血部位を特定できる明らかな所見は認めず,出血源検索および血腫除去を目的に審査胸腔鏡手術を施行した.左第11肋横関節近傍の壁側胸膜下に少量の出血を伴う拍動性の膨隆を認め,シート状組織接着剤を貼付,さらにフィブリン糊を噴霧したところ止血が得られた.術後8日目に肋間動脈造影を施行,第11肋間動脈瘤を認めたため本例は同動脈瘤の破裂による血胸であったと診断,塞栓術を行った.NF1では肋間動脈瘤破裂による血胸例の報告も散見されるため診断に際しては念頭に置く必要がある.本例のごとく胸腔鏡下に圧迫等の止血術を行い,二期的に塞栓術を行うことも治療法の選択肢となり得ると考えられた.
著者
坪井 光弘 吉澤 潔 環 正文 三浦 一真
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.079-084, 2012-01-15 (Released:2012-02-29)
参考文献数
15

症例は25歳,女性.咳嗽を主訴に近医を受診したところ,胸部X線にて右肺に多発腫瘤影を指摘された.CTで右上葉に多発する石灰化を伴った粗大な結節が認められると同時に,胃体部大弯に粘膜下腫瘍を指摘された.右肺上中葉切除,胃部分切除を施行したところ,肺腫瘍は軟骨腫,胃粘膜腫瘍は消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor; GIST)と診断された.1977年,Carneyらは胃平滑筋肉腫(現在ではGISTとして扱われている),肺軟骨腫,副腎外傍神経節腫の3つの稀な軟部腫瘍を合併する症例をひとつの症候群(Carney's triad)として提唱した.しかし3病変をすべて合併する完全型は稀であり,診断は上記3病変のうち2病変以上の合併をもってなされる.本症例は胃,肺の2病変のみを有する不完全型Carney's triadと考えられた.Carney's triadは極めて稀な疾患であり,自験例を含めた本邦での報告11例の文献的考察を加えて報告する.
著者
仲澤 順二 新関 浩人 京極 典憲 楢﨑 肇 上村 志臣 八木 優樹
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.575-579, 2022-07-15 (Released:2022-07-15)
参考文献数
8

胸水ドレナージ後の稀な合併症の一つにEx Vacuo Pneumothoraxというものがある.これは慢性胸膜炎により脆弱化かつ硬化した臓側胸膜が,胸水を抜かれた空間に生じる陰圧によって,損傷し発症する気胸である.当院では,過去10年でこのEx Vacuo Pneumothoraxを2例経験した.両症例とも悪性胸水ドレナージ後,肺が全拡張できずに気胸を発症した.悪性胸水に生じたEx Vacuo Pneumothoraxの治療方法は議論のあるところであるが,自験例は耐術能があり,エアリークも多かったため外科治療を行った.両症例とも胸腔鏡で胸腔内を確認すると肺にブラはなく,気瘻が複数認められた.癌性胸膜炎に伴う臓側胸膜の脆弱化を考慮して,気瘻部位の切除は行わずに,タコシールやネオベールシートなどで補強して手術を終了し,エアリークをコントロールすることができた.
著者
藤原 俊哉 片岡 和彦 松浦 求樹 妹尾 紀具
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.753-759, 2008-07-15 (Released:2009-02-02)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

肺癌診療においてFDG-PET検査の有用性は知られているが,偽陽性,偽陰性症例も少なからず認められる.我々は,2005年7月~2007年6月までの2年間で良悪性診断または病期診断の目的でPET検査を行い,最終的に当施設で手術を施行した283症例を対象として,その有用性と問題点について検討した.内訳は男:女=156:127,平均年齢は66.3歳であった.良悪性診断の感度72.7%,特異度60.5%で,腫瘍径20mm以下のものでは偽陰性が多かった.組織型では肺胞上皮癌の成分を多く含む高分化腺癌や粘液の多い病変は多くの場合PET陰性であった.その一方で細胞密度の高い扁平上皮癌などは高感度に検出された.リンパ節転移診断は感度68.0%,特異度93.2%で特異度は高いものの偽陰性が多く,過小評価をする可能性があった.PET検査の有する長所,短所を十分理解し,臨床的に活用していく必要がある.特に腺癌では原発病巣が偽陰性を呈することが多く,CT診断と併せて手術適応を決定すべきである.
著者
常塚 啓彰 加藤 大志朗 下村 雅律 寺内 邦彦 島田 順一
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.748-753, 2014-09-15 (Released:2014-10-03)
参考文献数
11

Carney's triadは胃平滑筋肉腫,肺軟骨腫,副腎外傍神経節腫の3病変を伴う稀な疾患で,この内の2病変を発症したものを不完全型とされている.我々は初回手術後19年目に肺・胃の再切除を行った不完全型Carney's triadの1例を経験した.症例は30歳女性で11歳時に胃平滑筋肉腫の核出術を受け,21歳時に肺軟骨腫に対する肺部分切除術を施行され不完全型Carney's triadと診断された.今回PET-CTで左肺S1+2bの結節とFDGの異常集積を伴う胃腫瘤性病変を指摘された.胃病変はgastrointestinal stromal tumorと診断され幽門側胃切除術を施行された.肺病変に対し胸腔鏡下に左肺部分切除術を行い,病理学的に軟骨腫と診断した.再切除後5年経過しているが更なる新病変の出現は認めていない.Carney's triadでは異時性に腫瘍発生するため長期的に経過を観察する必要がある.
著者
後藤 正司 岡本 卓 亀山 耕太郎 林 栄一 山本 恭通 黄 政龍 横見瀬 裕保
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.146-150, 2003-03-15
被引用文献数
6 2

18年の長期経過をたどった気管支内異物による反応性肉芽腫の一例を経験した.症例は25歳男性.健康診断の胸部X線写真で,右下肺野の帯状影を指摘された.気管支鏡検査で右B^<9+10>を閉塞する腫瘤を認めた.生検で肉芽腫と診断.腫瘤の末梢側の観察が不可能で悪性疾患の合併も否定出来ず,開胸術で腫瘤を摘出した.腫瘤は有茎性ポリープ様で炎症性肉芽腫と診断した.術後8日目の胸部X線写真で術前と同様の無気肺が出現,気管支鏡検査でも術前と同様に腫瘤を認めた.生検鉗子で肉芽腫を可及的に摘出すると,開存したB^<10b>に3.0×2.0cm大のビニール片を認めこれを摘出した.以後,肉芽腫の再発は認めていない.仔細に問診すると,7歳時のパン食い競争後に強い咳嗽,胸痛を自覚していた.今回の気管支内異物は,この際誤嚥したビニール片と考えられこの異物による物理的刺激が反応性肉芽腫の成因と推察された.
著者
神山 順 西山 勝彦 Shin'ichi Sato 島田 順一 大賀 興一 岡 隆宏
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.99-102, 1994-01-15 (Released:2009-11-10)
参考文献数
5

欧米では銃器による胸部穿通性外傷の報告が多くみられるが, 日本では, その発生頻度は極めて低い.今回我々は22口径の拳銃による肺損傷の患者を, 緊急開胸術による直接肺縫合で救命し得た.銃器による穿通性胸部外傷の特徴は, ナイフなどによる他の穿通創とは異なり, 弾丸が通過した部分のみの損傷にとどまらない.今回の症例は, 大きな気道の損傷および大血管の損傷はなく縫合閉鎖によって止血できた.しかし, 症例によっては, 肺損傷が著しく肺葉切除や大血管損傷に対する修復が必要な場合もあり, 術前から補助手段なども考慮しておくことが必要である。
著者
橘 啓盛 池谷 朋彦 高橋 伸政 村井 克己 青山 克彦 星 永進
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.790-794, 2006-07-15 (Released:2008-03-11)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は38歳女性.月経に一致した左気胸を発症し当センターを紹介された.月経22日後に行った胸腔鏡下手術にて,肺瘻の部位や気腫性嚢胞は確認できなかったが,左胸腔内の臓側,壁側胸膜にびまん性に多発する褐色の結節を認めた.病理学的に臓側,壁側胸膜ともに子宮内膜組織を認め,月経随伴性気胸と診断した.術後第3病日に月経が開始し右気胸を併発したが胸腔ドレナージにより改善した.後にホルモン療法を施行し,術後1年の経過では気胸の再発を認めていない.本症例は月経直前に手術を施行したため脱落する前の病変が観察されたと考えられた.発症機序は腹腔からの子宮内膜組織の侵入と臓側胸膜病変の脱落による気胸発症と推測された.壁側胸膜に子宮内膜組織を認めることはまれであり,月経随伴性気胸の発症機序を考えるうえで,本症例は興味深く貴重な症例と思われた.
著者
川野 勧 尾高 真 塩谷 尚志 武山 浩 秋葉 直志 落合 和徳 鷹橋 浩幸 山崎 洋次
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.535-538, 1998-05-15 (Released:2009-11-11)
参考文献数
9

横隔膜子宮内膜症を病理学的に確認できた月経随伴性気胸を経験したので報告する.症例は44歳の女性で, 月経に伴い繰り返し気胸を発症するため, 精査に加療を目的として入院した, 入院時の胸部X線写真で右肺に脱気率20%の気胸を認めた.1996年6月に手術を施行した.胸腔鏡下に胸腔内を観察したところ, 右肺には異常所見を認めなかったが, 横隔膜の腱様部に多数の小孔を認めたため, 第6肋間に小開胸を追加し同部位を切除した.切除部の病理組織学的所見として, 子宮内膜に類似する管腔構造とその周囲の子宮内膜間質細胞が明確に確認され, 横隔膜に発症した子宮内膜症が気胸の原因と考えられた.横隔膜子宮内膜症において, 本症例のように子宮内膜組織が腺構造まで明確に観察できた症例はまれである.本症例は横隔膜子宮内膜症の原因が空気腹腔経由説であることを支持するものである.
著者
生田 安司
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.370-374, 2020-07-15 (Released:2020-07-15)
参考文献数
9

気管支切開により摘出した気管支異物の2例を報告する.症例1は84歳男性で,歯科治療中に義歯を誤嚥し,摘出目的で当院へ紹介となった.手術は左底区気管支を横軸方向に切開し義歯を摘出した.症例2は精神発達遅滞のある60歳男性で,胸部レントゲン検査で気管支内異物を指摘され,摘出目的で当院へ紹介となった.手術は左主気管支を長軸方向に切開し異物を摘出した.手術による気管支異物摘出を行う場合,異物の材質や形状,異物の存在部位や介在期間,周囲の気管支肺の状態を考慮し,術式や気管支切開における切開方向を選択すべきである.
著者
鈴木 仁之 田中 啓三 金光 真治 徳井 俊也
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.764-767, 2006-07-15 (Released:2008-03-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1 2

Basedow病に胸腺過形成が合併する原因については,いまだ明らかにはされていないが,甲状腺機能亢進症により二次的に胸腺過形成が生じるという説や,ある種の免疫機構の関与を示唆する説がある.今回我々は,Basedow病に合併した胸腺過形成の2例を経験したので報告する.1例は甲状腺機能亢進症の遷延と,胸腺については腫瘍性病変の存在が否定できなかったために,甲状腺亜全摘と胸腺摘出術が施行された.もう1例では甲状腺機能は徐々に正常化したが,腫瘍の縮小を認めないため,生検が施行された.2例とも腫瘍性病変は認めず,胸腺過形成と診断された.しかし組織学的にはリンパ様過形成と真性過形成との違いが確認され,両者における胸腺過形成の背景因子ないし発生メカニズムの違いが示唆された.
著者
勝海 東一郎 河手 典彦 平野 隆 高橋 秀暢 木下 孔明 平栗 俊介 田口 雅彦 梶原 直央 安富 文典 小中 千守 加藤 治文
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.638-642, 1994
被引用文献数
1

46年間無症状で経過したのち血痰, 喀血にて発見された肺内異物 (焼夷弾破片) の一症例を経験したので報告する.肺内異物のうち, 特に本症例の如き鉱物性肺内異物では肺内における異物の移動とそれに伴う臨床症状の発現あるいは異物近傍からの発癌の報告例もあり, たとえ無症状で経過している場合でもその発見機会や症状発現時には可及的に外科的摘出を考慮すべきと思われた.
著者
佐藤 光春 加瀬 勝一
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.583-587, 1997-05-15 (Released:2009-11-10)
参考文献数
9

症例は38歳女性.5回目の右気胸で当院に入院した.いずれの気胸も月経の前後3日以内に発症しているため月経随伴性気胸を強く疑い, 根治目的に胸腔鏡下手術を施行した.横隔膜ドーム中央に, 周囲に点状の褐色色素沈着を伴った欠損孔を認め横隔膜欠損による気胸と診断, 同部位を胸腔鏡用自動縫合器で切除した.組織学的にも子宮内膜症と診断した.術後, ホルモン療法に関しては患者希望もあり行わず経過観察としたが2ヵ月後に気胸の再発が認められ, BUZERELIN 900μg/dayの投与を開始し2ヵ月後の現在再発なく外来通院中である.本症の組織像から月経随伴性気胸の発生機序を推察した.また, 治療として外来療法だけでなくホルモン剤による全身療法が必要と考えられた.
著者
岡崎 敏昌 塩野 知志 安孫子 正美 佐藤 徹
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.589-593, 2013-07-15 (Released:2013-07-29)
参考文献数
22

症例は78歳男性.2004年8月前立腺癌経過観察中のCTで前縦隔腫瘍を指摘された.胸部X線で右肺門部に突出する腫瘤影,CTで前縦隔に60×28 mmの石灰化を伴う腫瘤を認め,超音波ガイド下針生検を施行した.胸腺腫との診断が得られ,胸腺摘出術を施行した.術後病理は胸腺腫WHO type ABで正岡II期であった.2008年7月から右前胸部に3 cmの硬い無痛性腫瘤が出現した.CTでは前胸壁に45×15 mmの腫瘤であった.胸腺腫の胸壁再発を疑い腫瘍摘出術を施行し,術中迅速で胸腺腫再発と診断した.術後断端陽性であったため放射線治療60 Gyを追加した.現在明らかな再発を認めていない.針生検による穿刺経路播種をきたした胸腺腫の1例を経験したので報告する.
著者
島田 和佳 半田 政志 近藤 丘 佐藤 伸之 吉田 浩幸 岡田 克典 松村 輔二 高橋 里美 薄田 勝男 羽隅 透 谷田 達男 藤村 重文
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.39-43, 2000-01-15
被引用文献数
4

胸骨切除・再建を要した前縦隔脂肪肉腫の一手術例を経験したので報告する.症例は79歳男性で, 集団検診において, 右肺門部の異常陰影を指摘され精査加療目的で紹介入院した.良性縦隔腫瘍を疑い手術を行ったが, 術中所見にて前胸壁に浸潤を認めたため, 縦隔腫瘍摘除術並びに胸骨・肋骨合併切除を行った.胸壁再建にはMarlex meshでサソドイッチしたレジン板(methyl methacrylate resin)を用いた.術後経過は良好であったが, 術11カ月後に多発転移, 局所再発のため死亡した.脂肪肉腫は, 縦隔に発生することは稀であるため, 文献的考察を加えて報告する.
著者
小阪 真二 宮本 信昭
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.745-748, 1997-09-15
参考文献数
14
被引用文献数
1

縦隔リンパ管腫は,縦隔腫瘍の中でもまれな疾患である.左大動脈弓下に発生した縦隔リンパ管腫の1例を経験した.症例は57歳男性,咳嗽を主訴に当科受診,胸部CT撮影にて,左中縦隔に鉄アレイ状の腫瘤影を認め,良性もしくは悪性縦隔腫瘍の疑いにて手術を施行した.腫瘍は,前方に充実性の部分,後方に嚢胞性の部分をもつ嚢状リンパ管腫であり,容易に切除可能であった.縦隔リンパ管腫の報告例はほとんどが単房性もしくは多房性の嚢状リンパ管腫であり,自験例のように海綿状リンパ管腫の成分を含むものは,本邦において自験例を含め8例にすぎない.治療法は,外科的切除が一般的である.部分切除例には再発の報告があり,可能な限り全摘除を心がけるべきと考えられる.
著者
石山 貴章 大和 靖 土田 正則 渡辺 健寛 橋本 毅久 林 純一 梅津 哉
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.140-145, 2001-03-15
被引用文献数
1 1

症例は19歳男性.自覚症状は無く検診で左中肺野に異常影を指摘された.胸部CTで空洞内に可動性の球状物を認め, 血清沈降抗体反応陽性より肺アスペルギローマと診断した.抗菌剤治療で画像上の改善を認めないため, 左S^6区域切除およびS^<1+2>_C部分切除を施行した.病理学的に拡張した気管支からなる空洞とアスペルギルス菌によりなる菌塊を認めた.従来肺アスペルギローマは, アスペルギルス菌体が既存の肺内空洞病変に腐生的に定着, 増殖したものと言われてきた.しかし近年, 既存の肺病変を持たない'原発性肺アスペルギローマ'とも言うべき病態が報告されている.本症例は, 病理所見よりアスペルギルス感染が先行し, 二次的に気管支拡張による空洞を形成した原発性肺アスペルギローマであった可能性が示唆されたので報告する.
著者
松倉 規 小阪 真二 國澤 進 澁谷 祐一 岡林 孝弘
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.933-937, 2006-11-15 (Released:2008-11-04)
参考文献数
12

著明な好中球減少を伴う急性骨髄性白血病の治療前精査で胸部異常影を認め,手術にて肺非定型抗酸菌症と診断された症例を報告する.症例は55歳,男性.急性骨髄性白血病で血液内科入院中に左上肺野の腫瘤影を指摘された.気管支鏡検査では確定診断は得られなかった.画像上は肺癌や肺結核,肺真菌症などの感染症が疑われた.術前血液検査で白血球数1460/μl,好中球数226/μlと好中球減少が著明であった.白血病治療を早期に開始する必要があり手術を行った.術中針吸引にて肺非定型抗酸菌症と診断され左上区切除術を行った.術後G-CSFは使用せず,抗生物質はパニペネムと硫酸アミカシンの2剤を投与した.術後肺炎や創部感染などの合併症なく良好に経過した.
著者
近藤 健 徳永 義昌 齊藤 正男 中川 達雄
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.729-733, 2012-11-15 (Released:2012-12-13)
参考文献数
13
被引用文献数
2 5

CTの進歩により小さな肺結節が多数発見されるようになった.それらの病変を術中に同定することは困難な場合があり,しばしばニードルマーカーが使用される.しかし,この手技に伴う空気塞栓の合併が稀に報告されている.当院ではこれまで139例のCTガイド下針マーキングを施行し,2例の空気塞栓を経験したので,考察を加えて報告する.1例目は71歳女性,網状影に加えて両肺多発粒状影を指摘された.結節の一つに対してマーキングを施行したところ,直後に意識消失を来たした.CTにて脳空気塞栓症と診断した.2例目は72歳男性,右下葉肺腫瘤と,右中葉に小結節を指摘された.この小結節にマーキングを施行したところ,直後に胸痛が出現した.CTにて冠動脈空気塞栓症と診断した.2例とも安静等により空気栓が減少し,症状も改善した.空気塞栓症は重篤な経過をたどる可能性もあり,マーキングの適応については熟慮を要する.