著者
原 祐郁 鈴木 光隆
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 = The journal of the Japanese Association for Chest Surgery (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.976-980, 2008-11-15
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

DNMは比較的その発生頻度は低いものの,一旦発症すると急速かつ重篤な経過をたどることで有名である.今回,過去10年間に経験したDNM10例を対象に臨床的検討を行いその治療戦略,特に外科的手技について考察した.対象は男性8例と女性2例,平均年齢62.6(41~75)歳.感染の波及範囲はEndoらの分類に従うとType Iが4例,Type II Aが2例,Type II Bが4例であった.全例に頸部からの初発感染巣に対するドレナージと気管切開が施行された.Type II A,II Bではさらに縦隔への操作が加えられ,うち3例は頸部からのアプローチのみで,1例は経胸腔的に,2例は両者からのアプローチで縦隔ドレナージが施された.この10例の経験から経胸腔的アプローチによる縦隔胸膜の切開と掻爬はすべての症例において必須ではないが,頸部操作のみでは不十分と判断した場合には躊躇せず行うべきで,そのタイミングを逸しないことが重要であると考えられる.
著者
生田 安司 木下 義晃
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.301-305, 2020-07-15 (Released:2020-07-15)
参考文献数
12
被引用文献数
1

ドレナージ困難となった急性膿胸に対して胸腔内線維素溶解療法の有用性が報告されているが,その有効性や安全性は十分に確立されていない.当院でウロキナーゼ胸腔内線維素溶解療法を行った急性膿胸7例を対象にレトロスペクティブに検討した.男性6例,女性1例,平均年齢65.0歳であった.統合失調症やアルコール多飲,高血圧などの併存疾患が5例で認められ,Performance status(PS)はPS 1が3例,PS 2-3が4例であった.ウロキナーゼの平均投与回数は2.9回,7例中6例で改善した.改善した6例のドレーン留置期間は平均6.7日間であった.出血やショックなどウロキナーゼ胸腔内投与による重篤な副作用は認められなかった.手術が選択し辛い症例に対してウロキナーゼ胸腔内線維素溶解療法は簡便であり副作用のリスクも少なく,考慮すべき治療法の1つであることが示唆された.
著者
山下 貴司 朝井 克之
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.686-692, 2019-11-15 (Released:2019-11-15)
参考文献数
19

若年者自然気胸は肺胸郭不均衡により発症すると考え,若年気胸患者の肺実質の平均CT値を後ろ向きに調査し,正常肺患者との差違について検討した.若年気胸患者の肺実質の平均CT値を後ろ向きに調査し,正常肺患者との差違について検討した.15歳から25歳の男性,若年気胸患者35例,正常肺患者105例について肺実質平均CT値(HU)と胸腔内容積(mL)について検討したところ,CT値は両側とも有意に気胸群のほうが低かった(右:-846.8/-819.9;p=0.005,左:-843.1/-812.1;p=0.002).胸腔内容積は両群で明らかな有意差を認めなかった.またCT値と胸腔内容積は負の相関を示した.このことから気胸患者における肺胞径は正常肺患者に比べて大きいことが示された.この肺胸郭不均衡が気胸発症の根底にあるため,外科的治療の施行にあたっては肺実質の切除はさらなるリスクになることが懸念され,肺囊胞切除に伴い切除される正常肺実質は最小限に留めるべきであると考えられる.
著者
池 晃弘 大瀬 尚子 新谷 康 奥村 明之進
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.74-79, 2019-01-15 (Released:2019-01-15)
参考文献数
15

排卵期に発症した月経随伴性気胸の症例を報告する.症例は40歳女性.39歳時,月経の3日前に右胸痛と呼吸困難感が出現した.右気胸の診断で胸腔ドレナージを施行されたが,気漏が遷延し,前医で胸腔鏡下右上葉部分切除術を施行された.術中,横隔膜に菲薄化病変を認め,ポリグリコール酸シートを貼付された.その4ヵ月後,月経終了後約10日目の排卵期に右気胸が再発し,胸膜癒着術を施行された.しかし,その2ヵ月後の排卵期に右気胸の再々発を認め,当院で再手術を行った.横隔膜腱中心に網目状の多数の小孔を認め,腹腔と交通し肝臓を視認できた.横隔膜病変を切除後縫縮し,酸化セルロースシートで横隔膜及び全肺胸膜を被覆した.病理組織学的に横隔膜内に子宮内膜様間質組織を認め,異所性子宮内膜症と診断した.排卵期に繰り返し発症した本症例は,月経周期に依存しない異所性子宮内膜症の存在を示唆する1例である.
著者
竹内 茂 長田 博昭 小島 宏司 島田 厚 栗栖 純穂 横手 薫美夫 山手 昇
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.440-444, 1996-05-15 (Released:2009-11-11)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

自然気胸症例における術後再発防止の為, 当科では1978年以降, 開胸手術に際し, 壁側胸膜部分切除を併用してきた。1992年以降は自然気胸症例に対し胸腔鏡下手術を第一選択としているが, 胸腔鏡下でも従来の開胸手術と同様に壁側胸膜部分切除が肝要と考え, 全例にこれを併用している.胸腔鏡導入後38例40側の自然気胸症例に対して同手術をした.壁側胸膜部分切除の所要時間は平均で10分, 出血量は術中全体でも20ml以下であり, 術後合併症として特別なものはなかった.また, 再発は40側中1側2.5%に見られたのみであった.したがって, 自然気胸症例に対する胸腔鏡下壁側胸膜部分切除術は容易かつ有用な方法であると思われた.
著者
花岡 淳 井上 修平 大内 政嗣 五十嵐 知之 手塚 則明 北村 将司
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.606-612, 2009-05-15 (Released:2009-12-14)
参考文献数
8

症例1は85歳男性.20歳時に胸囲結核に対して手術療法を施行された既往があった.症例2は49歳男性.8ヵ月前まで肺結核に対して抗結核化学療法を施行されていた.両症例とも膿瘍内に腐骨を伴っており,抗結核化学療法開始1ヵ月後でも増大傾向を示した.そのため,注入したインジゴカルミン液をガイドに膿瘍郭清術および肋骨切除術を施行した.術後も抗結核化学療法を継続して行い,現在も再発を認めていない.胸囲結核症例に遭遇する機会は減少したが,胸壁腫瘤の鑑別診断にあげられることに留意しておく必要がある.治療には充分な抗結核薬の投与と適切な時期に徹底した膿瘍郭清を行うことが重要である.
著者
林 明男 池田 直樹 東条 尚 山本 良二 多田 弘人
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 = The journal of the Japanese Association for Chest Surgery (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.682-686, 2004-07-15
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

気管用ダブルルーメンチューブ使用により第2-5気管軟骨膜様部に損傷を来たした症例を経験したので報告する.症例は48歳女性.身長156cm, 体重48kg.右肺癌cT4N1M0に対し化学療法4コース施行後に右肺中葉切除及び右胸腔内温熱療法を施行した.挿管チューブは左用35Frダブルルーメンチューブ (ポーテックス社製ブルーライン・気管支内チューブ) を使用.挿管は容易であったが至適位置での固定が困難で, やむを得ずチューブを強く押し込んだ形で固定した.術中は左片肺換気を行い明らかな異常は認めず, 抜管後退室した.術後1日目に前胸部皮下気腫を認め増強傾向であったため術後2日目に胸部CT及び気管支鏡を施行.気管周囲に著明な縦隔気腫像を認め, 第2気管軟骨輪部を中心に膜様部が非薄化し裂傷が疑われた.同日緊急手術でこれを修復し, 初回手術後14日目に退院した.文献的考察を加え報告する.
著者
四方 裕夫 上田 善道 野口 康久 松原 純一
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 = The journal of the Japanese Association for Chest Surgery (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.7, pp.735-739, 2003-11-15
参考文献数
14

大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症に対する大動脈弁置換術後1年6ヵ月の64歳, 男性.退院後の通院中に胸部異常陰影を指摘され, 経過観察中に陰影の増大を認めた.症状はなく, 血液検査に異常なく, 胸部CTで縦隔に7cmの腫瘤と<SUP>67</SUP>Gaシンチで同部に強い集積を認めた.抗凝固剤をワーファリンよりヘパリンに代えてVATSを行った.術中病理で悪性腫瘍を疑い, 胸骨正中切開に変更した.左無名静脈を一時的に切離, 腫瘤を完全切除した後再建した.組織病理・組織免疫学的検討で転移腫瘍は否定され, 原発性胚細胞腫 (精上皮腫) と判明し, 浸潤・転移はなかった.術後経過は順調で退院し, 約1ヵ月後にBEP療法 (Cisplatinum, Etoposide, Bleomycin) を施行した.白血球数400/μ<I>l</I> (好中球20%) の骨髄抑制が生じたが, G-CSF投与により正常化して退院した.現在元気に通院中である.
著者
河本 宏昭 土田 真史 手登根 勇人 具志堅 益一 西島 功 松本 裕文
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.177-182, 2019

<p>症例は35歳男性.突然発症の右前胸部痛を主訴に来院した.放射線検査では胸腺囊胞内の出血と考えられたが,縦隔内の出血はわずかで胸腔内穿破はなくバイタルサインは安定しており,胸痛はすぐに消失したため緊急手術は行わず経過観察とした.しかし数ヵ月で囊胞は増大傾向を認め,また腫瘍合併を否定できないため発症後6ヵ月後に胸骨正中切開にて胸腺全摘術を行った.腫瘤周囲は癒着が高度で右縦隔胸膜は合併切除を要した.病理学的検索では腫瘍性病変は認めず,出血を伴った胸腺囊胞であった.成人における胸腺囊胞は経過観察の対象となることが多いが,本症のように出血やそれに伴う炎症を合併する場合や,腫瘍の合併が鑑別に挙がる症例では積極的な手術が必要と思われる.</p>
著者
倉橋 康典 平井 隆 岡本 卓 山中 晃
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.123-128, 2007-03-15 (Released:2008-11-10)
参考文献数
22

高分解能CT(HRCT)ですりガラス陰影(ground-glass opacity; 以下GGO)を呈する異型腺腫様過形成(atypical adenomatous hyperplasia; 以下AAH)や細気管支肺胞上皮癌(bronchioloalveolar carcinoma; 以下BAC)は肺腺癌の周囲に多発することが知られている.今回我々は多発性のGGOを示した3例を経験したので報告する.多発GGOはその数,性状,部位など症例ごとにばらつきがあるため,統一した治療方針の確立は困難であり,症例に応じた手術・経過観察の方法を個々に検討していく必要がある.術後残存するGGOに対してはHRCTによる注意深い観察が必要で,大きさ・性状・濃度に変化を認めた場合には,再手術や放射線療法,化学療法を含めた治療を考慮する必要がある.
著者
滝沢 恒世 寺島 雅範 小池 輝明
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.7, no.7, pp.764-769, 1993-11-15 (Released:2010-02-22)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

器械縫合の332例と手縫い縫合の500例において気管支に対する器械縫合と手縫い縫合の安全性を比較検討した.気管支瘻発生率は器械縫合332例中8例2.4%, 手縫い縫合500例中6例1.2%であった.一葉切除では器械縫合267例中4例1.5%, Sweet法手縫い縫合253例中1例0.4%, 0verholt法手縫い縫合172例中0例0%の気管支瘻発生率で, 手縫い縫合に比して器械縫合の気管支瘻発生率が高い傾向にあった.一葉切除の器械縫合気管支瘻例では脚高3.5mmのステープルで気管支が強く絞められすぎて損傷している所見が認められた.一葉切除でも気管支壁が厚ければ脚高4.8rnmのステープルを使用した方がよいと考えられた.特に炎症性肥厚のある気管支は器械縫合で損傷がおきやすいので注意を要する.二葉切除では器械縫合40例中3例7.5%, Sweet法手縫い縫合29例中2例6.9%, Overholt法手縫い縫合24例中1例6.4%の気管支瘻発生率であった.肺摘除では器械縫合25例中1例4.1%, Sweet法手縫い縫合12例中2例16.7%, Overholt法手縫い縫合20例中0例0%の気管支瘻発生率であった.Sweet法手縫い縫合は一葉切除, 二葉切除, 肺摘除の順に気管支瘻発生率が高くなった.Sweet法手縫い縫合の気管支瘻例の所見からSweet法縫合は膜様部側に弱点があることが示唆された.肺摘除ではSweet法手縫い縫合より器械縫合の気管支瘻発生率が低かった.今回の対象例では一葉切除, 二葉切除, 肺摘除ともOverholt法手縫い縫合が最も気管支瘻発生率が低かった.
著者
西井 竜彦 村松 高 四万村 三恵 古市 基彦 大森 一光 塩野 元美
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.972-975, 2010-09-15 (Released:2011-02-22)
参考文献数
8

大血管手術以外の周術期に発症した非常に稀な脊髄梗塞の1例を経験したので報告する.症例は70歳男性,左肺癌に対して硬膜外併用全身麻酔下に,左上葉切除およびリンパ節郭清を施行した.術後3時間後より,右下肢,右手関節以下の麻痺が認められた.硬膜外カテーテルの影響が考えられたため,直ちに硬膜外注入を中止した.翌日になりさらに麻痺が進行し,頭部・脊椎MRIが施行されたが,診断がつかなかった.術後第3病日に施行された頚胸髄MRIでC1からTh2までの広範囲の脊髄梗塞が認められた.ステロイド,高浸透圧性利尿剤の投与で麻痺の改善傾向を認めたため,27病日リハビリ病院転院となった.
著者
奥谷 大介 高橋 健司 西井 豪
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.742-746, 2016-09-15 (Released:2016-09-15)
参考文献数
16

尿膜管癌は膀胱癌の中でもその頻度は低く,尿膜管癌の孤立性肺転移は極めて稀である.55歳,男性.51歳時,尿膜管癌p-Stage Iに対して膀胱部分切除術を施行した.尿膜管癌術後2年目の胸部CTにて左肺S1+2に約7 mmの空洞を伴う結節を認めた.以降,結節は空洞の消失と出現を繰り返しながらサイズは増大し,術後4年目には空洞を伴う13 mmの結節であった.診断治療目的に胸腔鏡下左肺部分切除術を施行し,病理学的検討より同病変は尿膜管癌の肺転移と診断された.本症例のような空洞性結節影を呈した尿膜管癌肺転移の症例は報告されていない.空洞を伴う肺腫瘍では悪性の可能性も考慮することが重要である.
著者
大渕 俊朗 濱田 利徳 岩﨑 昭憲
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.127-130, 2013-03-15 (Released:2013-04-01)
参考文献数
11

自然気胸の発生と天候の関係について検討した.2011年4月から2012年5月までに,当院に受診した初発自然気胸患者37名(男性34名,女性3名,平均年齢34.5歳)の自然気胸発生日時を調査した.気象庁が公表している気象データを基に,気胸発生日とその他の日における,日照時間,気温について統計学的に検討した.気胸発生日では日照時間が有意に短く(3.68対5.29時間,p=0.0090),また平均気温(0.84対-0.015℃,p=0.025)と最低気温(1.20対-0.03℃,p=0.038)が2日前と比較して有意に上昇していた.日照時間の短さは「天気が曇りか雨」だったことを反映しており,自然気胸が有意に‘良くない天気’の日に発生したと考えられる.しかし日照時間短縮などで代表される気象現象が我々の健康にどのような影響を与えているのかは不明であり,今後も研究が必要である.
著者
宮原 栄治 川﨑 由香里 木村 厚雄 奥道 恒夫 大成 亮次
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.698-704, 2017-09-15 (Released:2017-09-15)
参考文献数
19

胸腔鏡下ブラ切除術の術後再発率は開胸術と比較し高率で若年者において顕著である.再発予防のため切除断端・肺炎部を吸収性シート(酸化セルロース・ORCまたはポリグリコール酸・PGA)で被覆しその有効性を検討した.1986年から2015年まで施行した30歳未満の自然気胸初回手術397症例を,T群:腋窩開胸下肺縫縮術,V群:胸腔鏡下自動縫合器によるブラ切除術,O群・P群:胸腔鏡下ブラ切除およびORC(O群)・PGA(P群)によるブラ切除断端・肺尖部被覆,の4群に分けて術後再発率を検討した.T群(3.5%)に比較しV群(12.4%)は有意に高率であった.P群は1.2%でV群に比較し有意に低値であった.10歳台の再発率は15.4%であり20歳台に比較し有意に高値であった.10歳台ではP群34例に再発は認められなかった.若年者自然気胸の胸腔鏡下ブラ切除術においてPGAシート被覆は再発予防に有効であった.
著者
福本 紘一 福井 高幸 伊藤 志門 波戸岡 俊三 光冨 徹哉
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.054-057, 2011-01-15 (Released:2011-04-27)
参考文献数
12

患者は57歳男性.12年前に肝細胞癌にて肝右葉切除を施行した.肝切除後3年で両側肺転移(右S8に1ヵ所,左S9に1ヵ所)のため,右肺下葉切除を施行した.さらに1年の経過観察で左肺以外に新病変の出現がなく,左肺下葉部分切除を施行した.その後再発なく経過していたが,肝切除後12年目に右肺上葉に単発の肺転移をきたし,右肺上葉部分切除を施行した.肝細胞癌の肝内再発や他の遠隔転移がなく肺転移のみをきたし,肺切除を施行して長期生存している症例は非常に稀である.
著者
沖田 理貴 中田 昌男 佐伯 英行 澤田 茂樹 栗田 啓
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 = The journal of the Japanese Association for Chest Surgery (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.49-53, 2004-01-15
参考文献数
23

症例は50歳男性.器質化肺炎に対する胸腔鏡下肺生検後の経過観察中に胸部X線検査で右中肺野に異常影を認め, 精査目的で当科入院となった.胸部CT検査で右上葉の腫瘍と縦隔リンパ節腫大を認め, 右肺癌と診断し, 右上葉切除術およびND2aリンパ節郭清を行った.病理検査の結果, 上葉の腫瘍は肺腺癌であったが#3, 4縦隔リンパ節は大細胞癌と診断された.縦隔リンパ節癌の原発巣を検索するも発見できず, 肺腺癌 (pT1N0M0 stage I A) と原発不明縦隔リンパ節癌の同時性重複癌と診断した.術後23ヵ月無再発生存中である.<BR>本邦において肺門あるいは頚部リンパ節癌を伴わない縦隔リンパ節単独の原発不明癌は自験例を含め22例の報告があるが, 組織型の異なる原発肺癌を重複した症例は報告がない.