著者
河原 清志
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
no.19, pp.13-28, 2011-01-31

本稿は英語“as”の多義性について接続詞に限定して統一的な説明を試みるものである。「“as”は潜在的意味として, <現実に生起している(した)出来事>(後景情報)を主節とゆるい等価で結ぶ函数関係を示す」という意味を有し, スーパー・スキーマ(コア)が潜勢態としてあり, 2つのパラメーターの状況的関係の力学(as節と主節がそれぞれ指標する出来事の内容と指標野における位相関係)の中で語義が確定するという理論構成が可能である。具体的には「接続詞」の用法として,(1)〔時〕は「同時性」を基本とし,(a)瞬間的時間の場合は「偶発性」, (b)多少の時間の幅がある場合は「同時進行性」, (c)かなりの時間の幅がある場合は「連動性(比例性)」が前景化し, 動的な出来事どうしが「等価」で結ばれる。(2)〔理由〕は「状態性」が特徴で, 後景的状況・事情を表すas節は静的な出来事として主節と「等価」で結ばれる。その他, (3)〔様態〕, (4)〔逆接〕, (5)〔比較〕, (6)〔局面〕といった語義も「等価」から導かれることが観察され, 多義現象に対して語義の連続性のある説明が可能であることが確認された。
著者
中沢 志保
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.35-55, 2012-01-31

本稿は,20世紀前半期のアメリカにおいて主要な対外政策の立案と決定に関与したヘンリー・スティムソン(Henry L. Stimson)を引き続き考察するものである。本稿では,ファシズムの台頭を背景にアメリカが第二次世界大戦に参戦していく過程と,ローズヴェルト(Franklin D.Roosevelt)政権下の陸軍長官に就任し,戦争計画において中心的な役割を果たしたスティムソンの思想と行動に焦点を合わせる。具体的には,1930年代から明確に示された枢軸国への警告,連合国側への軍事援助を参戦前から可能にした武器貸与法(the Lend-Lease Act)の成立と運用,対独戦における主要な戦略と評価される第二戦線の形成などの内容を振り返り,それぞれにおいてスティムソンが果たした役割を検証する。第二次世界大戦の後半期から重要課題として浮上してくる原爆の開発と投下決定,核の国際管理,戦後処理,対ソ連外交などの問題に関しては次の研究課題としたい。
著者
濱田 勝宏
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
no.8, pp.59-70, 2000-01

現代都市の核家族について, 都市的生活構造の要因との関連で考察している。本稿では, 生活関係構造に重点をおいた。先に, 生活空間構造の側面において, 「近隣」「Iコミュニティ」の問題をとりあげたので, 生活関係について重複をさけることはできないが, 核家族とその成員の生活関係のネットワークが, 日常生活の経験則からみても複雑で多様な様相を示しているのは事実である。そして, とかく都市的生活様式論の立場からみると, 都市生活における生活関係構造を初期シカゴ学派的な見解で抱えがちである。すなわち, 都市生活における人間関係は, 匿名的でインパーソナルなものと断定される傾向が強い。先稿でもふれたように, このようなネガティブな評価に疑問を果してきたところである。そこで, 初期シカゴ学派への批判的修正(全面的に否定するものではないが)を加えつつあるネオシカゴ学派の人々, 特にクロード・S. フィッシャーの研究に依拠して, 新たな方向性を見出すことに努めた。フィッシャーの下位文化理論にもとづく都市生活における「友人」「家族」から, 友人関係ネットワーク, パーソナルネットワークというラインがそのひとつであることを指摘した。
著者
柳澤 唯 安永 明智 青栁 宏 野口 京子
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
no.22, pp.27-34, 2014-01-31

本研究では,青年期から高齢期までの女性を対象に,インターネットによる質問紙調査法を用いて,女性の化粧行動の目的(気持ちの切り替え,リラクセーション,身だしなみ,同性への意識・同調,異性への意識・魅力向上)と公的及び私的自意識の関連について検討することを目的とした。また,化粧行動の目的や自意識と個人の基本的属性(年齢,職業の有無,婚姻状況,1 ヶ月間に自由に使える金額)の関連についても検討を行った。本研究の結果から,以下のことが明らかとなった。①年齢が若いほど,同性や他者を意識して化粧を行う傾向が強く,逆に年齢が上がるにつれリラクセーションを目的に化粧をする傾向にある,②未婚女性は,異性への意識や魅力向上を目的として化粧を行う傾向が強い,③化粧をする目的には,公的自意識が関連する。特に,身だしなみ,同性への意識・同調,異性への意識・魅力向上などの他者から見られる自分を意識することに関連する目的に対して公的自意識は強い関連を示す,④私的自意識は,気持ちの切り替えなど自分の内面に関連する目的と強く関連する。本研究の結果は,化粧を行う目的は,年齢,婚姻状況などの基本的属性や自意識から影響を受けることが示唆された。
著者
柳澤 唯 安永 明智 青栁 宏 野口 京子
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.27-34, 2014-01-31

本研究では,青年期から高齢期までの女性を対象に,インターネットによる質問紙調査法を用いて,女性の化粧行動の目的(気持ちの切り替え,リラクセーション,身だしなみ,同性への意識・同調,異性への意識・魅力向上)と公的及び私的自意識の関連について検討することを目的とした。また,化粧行動の目的や自意識と個人の基本的属性(年齢,職業の有無,婚姻状況,1 ヶ月間に自由に使える金額)の関連についても検討を行った。本研究の結果から,以下のことが明らかとなった。①年齢が若いほど,同性や他者を意識して化粧を行う傾向が強く,逆に年齢が上がるにつれリラクセーションを目的に化粧をする傾向にある,②未婚女性は,異性への意識や魅力向上を目的として化粧を行う傾向が強い,③化粧をする目的には,公的自意識が関連する。特に,身だしなみ,同性への意識・同調,異性への意識・魅力向上などの他者から見られる自分を意識することに関連する目的に対して公的自意識は強い関連を示す,④私的自意識は,気持ちの切り替えなど自分の内面に関連する目的と強く関連する。本研究の結果は,化粧を行う目的は,年齢,婚姻状況などの基本的属性や自意識から影響を受けることが示唆された。
著者
中沢 志保
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.19-37, 2009-01

本稿は,20世紀初頭におけるアメリカの政治・外交とヘンリー・スティムソン(Henry L. Stimson)の立場を考察するものである。スティムソンは,陸軍長官,植民地総監,国務長官などの立場で,20世紀前半期におけるアメリカの主要な対外政策に直接関与した。また,第二次大戦中の原爆の開発と投下決定においては圧倒的な存在感を持った高官として知られる。しかし,半世紀近いスティムソンの公職生活がアメリカの対外政策に与えた影響を検証する作業が,国際関係学やアメリカ史の分野において十分になされてきたとは言い難い。筆者は,国際関係学の視点から,スティムソンの全生涯を考察しつつアメリカの政治・外交の諸特徴を再検討する作業に着手した。したがって,本稿は一連の「スティムソン研究」の一部となる。
著者
糸林 誉史
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.101-114, 2010-01

コミュニティーを社会全般の「断片化」に対抗する手段として重視する「コミュニタリアニズム」は,1990年代以降のアメリカで,自由放任の市場原理にもとづく新保守主義と,福祉や権利を国家によって保障しようとするリベラリズムの双方を批判する思想として脚光を浴びた。一方,「コミュニティ」とその理論は,近代社会が不確実さを増していき,ますます個人主義へと傾斜してゆくにつれて,コミュニティは変容を遂げて,人々に安全性と「帰属(belonging)」を与える源泉となった。そして最近では,政治の基盤である国家の代替物とさえ見られるようになっている。本稿では,グローバリゼーションが進み,個人主義が深刻化した1980年代に始まった「リベラル-コミュニタリアン論争」について概観し,その後の展開をコミュニティ論の変容とともに検討する。さらにコミュニタリアニズムと「公共性」の観点から,アジアにおける伝統的な「コモンズ」概念への批判と課題を見てみる。そして「文化論的転回」以降のコミュニティ研究の方法について,「実践共同体」への状況論的アプローチという観点から考察したい。
著者
近藤 尚子
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.33-46, 2003-01

明治期は社会や文化が大きく動き,新しい言葉が次々に生み出された。本稿では明治18年に出版された『伊呂波字引 和英節用』という小さな和英辞典をとりあげる。一方, 明治を代表する和英(英和)砕典として『和英語林集成』がある。この辞書は明治5年に再版が, 明治19年に三版が出版されている。この『和英語林集成』と比較することによって『伊呂波字引 和英節用』の性格の一端を明らかにし, この時代の日本語の状況の中に位置づけることをめざす。比較の結果,本書には『和英語林集成』にあまり収載されていない外国の国名・地名が多く載せられ,数を含む項目も網羅的で,「~学」については新旧の名称が混在するという状況が明らかになった。本書は全体としては『和英語林集成』の三版側に位置づけることができる。
著者
荒井 健二郎
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.73-83, 1997-01

アメリカ社会の中でマイノリティの1つであるゲイ (同性愛者の総称) たちは,長い間宗教と医学の両方から不健全であるというレッテルを貼られ,1950年代までは見えない存在,見えてはならない対象として葬られてきた。そしてゲイ・プレイも,それに追従することを強要されてきた。しかし,時代は確実に前進する。60年代という激動の時代に突入し,激変を始めた社会に突き動かされるようにしてゲイ解放運動が起こり,69年6月28日の「ストーンウォール暴動」へと発展,大きな弾みがつくことになる。時代を味方につけ,初めてゲイを肯定的に描いた革新的なゲイ・プレイが登場し,ゲイ・プレイの夜明けを予感させるまでになる。この論文では,アメリカ演劇の中で,傍流とみなされていたゲイ・プレイが時代の変化とともに主流に近づき,ついに合流するまでの経緯を照射する。
著者
久保田 文
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.7-15, 2006-01

今日,かつてのノーベル賞作家スタインベックは大半の人々にとって,The Grapes of Wrathによってその名を残す存在である。たしかに,1930年代の大不況下にあったアメリカにおいて,スタインベックは極貧と持たざる者の見果てぬ夢を描くことで社会を揺り動かした。その後の大作East of Edenを経て,1960年代をむかえた彼は,病後の体調を押してアメリカ再発見の旅に出ることを決意する。愛犬チャーリーを伴いキャンピング・カーを駆る旅に出た彼は,季節労働者の家族と一期一会の時を楽しみ彼らの明るい笑顔を喜びながら,自分のような作家たちが理不尽なまでの不平等に苦しむ季節労働者の生活を変えたことを,自負をもって回顧している。しかし,同時にスタインベックは,豊かに見える時代がやって来て,世界が新たなる罠につまずいて重大な問題に直面しつつあることを鋭く予知していた。何不自由なく暮らしながら,敵意と破壊への衝動にかられている若者。物質の氾濫する社会にあって,欲求不満の苛立ちと挫折感に苦しむ人々。他人が殺され取り除かれていくことを,ほとんど黙認する社会… これらに対しスタインベックは,「人の生命が貴重であった頃に作られたモラルは,もはや通用しない。新しい倫理観の確立が必要である」と主張し,人の生き生きとした生命力を奪うものへの嫌悪感を顕わにしている。アメリカ一周旅行の経験と感慨は,Travels with Charleyに収められ,アメリカという国が抱える問題点を更に踏み込んで捉えたエッセイは,最後の作品America and Americansの形をとった。後者の出版の二年後,スタインベックは没した。そのため,彼は我々の取るべき方向性を具体的には述べてくれていないのだが,彼の数々の作品の中から,答えを拾うことは可能である。その前にまず,この二作を中心に分析することから,スタインベックが後に続く我々に聞かせたいと願ってくれた最後の警鐘に,じっくりと耳を傾けたい。
著者
城 由紀子
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.37-49, 2007-01

1993年のカナダ下院総選挙において大敗を喫した進歩保守党と保守第1 党の地位に着いた改革党,後のカナダ同盟が,保守勢力の分裂,混迷を乗り越え「右派連合」の新しい保守党として再生後,2006年総選挙において13年ぶりの保守政権誕生を果した。この新保守政権誕生の要因は,自由党長期政権がケベック州での連邦政府広報費不正流用問題で信頼を失ったなかで,1987年の改革党結成以降分裂状態であった保守2 政党が前回2004年の総選挙前に一体化を成し遂げ新生保守党として地歩を固めたことにある。加えて,前回選挙では保守色故に敬遠された保守党党首ハーパー(Stephen Harper)が,イメージ変革に成功し国民から首相として一応の信任を得たためである。本稿はハーパーの保守党党首への道程を辿り,2006年総選挙を2004年総選挙と比較し,前回総選挙での失敗を乗り越えたハーパー保守党政権誕生を分析する。
著者
勝山 祐子
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.47-61, 2011-01

オデットの室内装飾の趣味は,"スワンの恋"においてはジャポニスムと中国趣味の入り交じった極東趣味であるが, 花咲く乙女たちのかげに』では, そこに十八世紀風な趣味が混じり始める。これらのエピソードは,オデットの趣味の不確かさと浮薄さを表すいっぽうで,第二帝政期の「折衷主義」による室内装飾を思わせる。ゲルマント公爵夫人の場合,"スワンの恋"では嫌っていた「帝政様式」を「ゲルマントのほう』では賞賛し,『見いだされた時』においては, それを再び嫌う。また, ディレクトワール期と第二帝政期に流行した「ポンペイ風」の装飾が,『失われた時を求めて』では, 繰り返し流行するものとして描写される。つまり,「帝政様式」と「ディレクトワール様式」は第一巻と最終巻を『ゲルマントのほう』を仲介に連関づける。そして, これらのモチーフが間欠的に回帰することによって, 小説の『時の次元』が支えられるばかりか, ディレクトワール期からプルーストの時代をまたぐ, 一世紀に及ぶ規模を小説に与える。オデットの『第二帝政期風』な趣味もまた, 物語に先立つ時間を小説に与える。
著者
安永 明智 谷口 幸一 野口 京子
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.63-72, 2011-01

本研究は,全国の70歳以上の高齢者を対象に,郵送法による質問紙調査法を用いて,服装や流行への関心と外出着の着装基準,外出の頻度,ボランティアや町内会活動への参加,QOLとの関係を横断的に検討することを目的とした。2010年1月に全国の70歳以上の高齢者850名に調査票を郵送し,568名(男性274名;平均年齢76.0±44歳,女性294名;平均年齢75.8±4.7歳)から回答が得られた(有効回答率66.8%)。調査は,自分や他人の服装への関心,流行への関心,外出着の着装基準,外出の頻度ボランティアや町内会活動への参加,生きがい,抑うつ,活動能力について質問した。分析の結果から,(1)高齢女性は,高齢男性と比較して,自分及び他人の服装への関心や流行への関心が高く,外出着の着装基準においても,個人的服装嗜好,流行,機能性,社会的服装規範を重視すること,(2)服装や流行への関心が高い高齢者は,低い高齢者と比較して,外出着の着装基準において,個人的服装嗜好や流行,機能性,社会的規範を重視すること,(3)服装や流行への関心が高い高齢者は,低い高齢者と比較して,町内活動やボランティア活動に積極的に参加していること,そして活動能力や生きがい感も高く,メンタルヘルスも良いこと,などが明らかにされた。本研究の結果は,高齢期において,装いに関心を持つことが,生活の質(Quality of Life;QOL)の維持・増進に貢献しうる可能性があることを示唆する。
著者
三島 万里
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.29-44, 2008-01

本論は企業広報誌の企業広報上の機能を考察することを目的とし,サントリー株式会社の『洋酒天国』『サントリー・クオータリー』の二誌の事例研究を行うものである。全体は5章から構成されており,本稿は昨年に続いて第4章,第5章をとりあげる。