著者
早矢仕 晃章 岩永 宇央 岩佐 太路 大澤 幸生
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.534-545, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

近年,ビッグデータや人工知能の世界的な潮流から,分野を横断した多様な領域のデータを連携し,既存のビジネスの付加価値向上や新規事業の創出に対する期待が高まっている.しかし,異分野データ連携によるデータ駆動型イノベーションを実現するためには,世の中に存在するデータの構造とそれらの関係を正しく理解する必要がある.つまり,個々のデータの詳細な分析ではなく,データによって構成されるデータの母集団がどのような構造的特徴を有しているのかを調べることが重要である.データジャケット(DJ)は人間のデータ可読性を向上させ,データ理解を促進させることを目的としたデータ概要情報記述手法である.本論文では,メタデータであるDJを分析対象とすることによって,母集団であるデータと変数の特徴及び構造を理解する.データ市場における「材(リソース)」であるデータについて,変数や共有条件の観点から分析した結果を議論する.分析の結果,データのネットワークは局所的に密であり,大局的には疎な構造となることが確認された.さらに,共有可能データと秘匿データの違いが変数の種類に現れ,それぞれネットワークにおいて異なる特徴を有することが分かった.
著者
古川 康一 升田 俊樹 西山 武繁
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.545-552, 2012-02-15 (Released:2012-02-27)
参考文献数
8

チェロのスピッカートは,その習得が非常に困難なことが知られている.本論文では,はじめに,スピッカート奏法の力学モデルとして,強制振動モデルを導入し,その妥当性を検証する.さらに,同モデルの代表的な例であるブランコ漕ぎとまりつきを取り上げ,それらの運動のアナロジーから,二つの重要な力学的条件,すなわち,強制振動におけるエネルギーの補充のタイミング,および,力を加える際のショックを吸収するクッション動作の重要性を指摘する.さらに,練習とメタ認知,および専門家との意見交換を通して,それら二つの力学的条件を満たすための奏法上のコツを明らかにする.最後に,スピッカート奏法の要素技術間の関係を推論図式によって明らかにする.
著者
石井 康夫 大久保 あかね 鈴木 大介
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.745-753, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
19

本論文では,観光マーケティングにおける現地でのアンケート調査結果を用いて,回答項目の全体構造を把握するための新たな分析手法を提案する.すなわち,伊豆半島における観光客の行動を明らかにするため,地域自治体,観光関連産業,観光客の地域連携の可能性を探るためのアンケート調査を実施し,この結果を対象に,ノンパラメトリック検定により統計的に有意な項目を抽出し,対象を絞り込んだうえで,テキストマイニング手法を用いて,観光客の評価構造の可視化を行った.この結果,今回採用したアプローチ手法の有効性の確認と,今後の採用すべき観光施策の考察に対し,有用な情報を提供することができた.
著者
阿部 真大 中島 健太 新妻 実保子
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.651-656, 2021-08-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
20

仮想空間でのスムーズな作業を行うためには,空間を正確に認識し,三次元空間内の物体などの情報を直感的に扱えることが重要である.本研究では,HMDを用いた両眼視差に基づく立体視と.距離画像センサによる身体動作計測を融合したVRゲームを構築した.また,没入感や操作性を高めるために,振動グローブを用いて触覚情報を提示した.実験により,実スケールの身体動作,三次元立体視,触覚提示による物体操作の有用性を検証した.その結果,立体視によってゲームの印象が向上し,実スケール身体動作によりゲームのスコアが向上することが確認された.
著者
宅和 晃志 吉川 大弘 ジメネス フェリックス 古橋 武
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.744-752, 2018-10-15 (Released:2018-10-15)
参考文献数
20

近年,ユーザと自然な雑談を行うことを目指した非タスク指向型対話システムが注目されている.ユーザのシステムへの満足度を高めるためには,自然な対話を行うことに加え,ユーザの興味を惹きつける内容の発話を行うことが有効であると考えられる.そこで本論文では,「共感を得ることで笑いを誘う発話文」として,Twitterより「あるあるネタ」を表すツイートを取得し,発話文として用いる手法を提案する.「あるあるネタ」とは,聴衆の共感を得ることで笑いを誘う演芸における手法の一つである.一往復対話の評価実験(-3〜+3点の評価)の結果,雑談対話APIの平均評価点-0.24に対し,提案手法の平均評価点0.76となり,提案手法の有効性を確認した.
著者
孟 曉順 吉田 直人 万 キン 米澤 朋子
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.742-756, 2021

<p>本論文では,鳥肌,発汗,および震えを用いたロボットの皮膚上のクロスモーダルな生理的表現に関する検証を紹介する.人間や他の生物は生理的現象を介して随意的,不随意的な状態を示し,視覚的かつ触覚的表現が皮膚に現れる.特に,上記の3つの不随意表現を組み合わせることにより,感情の表現性と本能的感情の要素や強度に焦点を当てた.検証の結果,ロボットの恐怖感情は,3つの異なる不随意表現のうち1つのみで伝達できたことから,各モダリティの強い有効性による天井効果が起きた可能性がある.この皮膚上のクロスモーダルな生理的表現はロボットの生物感とその他の印象にも影響する.因子分析の結果,恐怖の要素として4因子が抽出された.各因子の標準因子得点の分散分析から,それぞれの因子の表現において3種の不随意な生理表現が有効であること,および少量の発汗と多量の鳥肌表現量の組み合わせにおいて煩慌性が高くなるなど,複数の不随意表現の量的組み合わせにより異なる効果が示された.</p>
著者
下川原(佐藤) 英理 関野 遥香 李 有てい 黒田 知士 山口 亨
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.527-532, 2022-02-15 (Released:2022-02-15)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本論文ではロボットが人に行動を促したりタスクを依頼する場面において,ジェスチャー表現が行動受諾にどの程度影響を与えるのか,アンケートと生体センサ(心拍センサと脳波センサ)の結果を分析し報告する.ロボットが人と日常生活を共にする上で,ロボットが人に行動を促したり協働でタスクを遂行しなければならない場面は今後ますます増えると考えられる.行動の促しやタスクの依頼を受け入れてもらうためには,発話内容だけでなく非言語情報も含めたマルチモーダルインタラクションが重要である.そこで本論文では非言語情報の1つであるジェスチャーに着目しその影響を調査した.ロボットが人に行動を促す時の表現を,発話内容の感情に合わせたジェスチャーと発話内容の感情と逆のジェスチャー,ジェスチャー無しの三条件で比較したところ,ジェスチャー無しよりもジェスチャー有りの方が行動を受け入れ実際に行動する可能性が高く,また行動を促された時にストレスを感じにくいということが示された.
著者
大宮 望 中邨 良樹
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.935-943, 2020

<p>昨今,邦画における興行収入は,洋画を上回っている.興行収入を多く得るためには,映画によって観客に様々な感情を抱かせることが重要であると言われている.観客に様々な感情を抱かせるには,非日常的な感情の起伏を惹き起こすことが,重要であると言われている.そしてこれを実現する1つに,台詞がある.本研究では,この台詞と興行収入の関係性に着目して進めていく.興行収入と台詞における取り組みは,国外で多く国内では少ない.そこで本研究では,台詞を定量化し興行収入との関係性について評価をおこなう.加えて映画の受賞歴などの映画における基本的な情報が興行収入に与える影響について評価する.これらの2つの評価を分析する枠組みから,考察をおこなう.そしてそれらの結果から,邦画においても台詞及び受賞歴における特徴が興行収入に影響を与えていることを示した.また新たな知見として,1) 興行収入を予測するにあたり台詞や感情の起伏を用いることによって誤差を少なくできること,及び2) 主演には受賞歴の少ない俳優を起用することが有益である可能性があること,の2つを示した.</p>
著者
鷲見 公崇 吉川 大弘 古橋 武
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.869-872, 2020-10-15 (Released:2020-10-15)
参考文献数
4

事象関連電位P300は,脳波特徴量の一つである.このP300を利用した技術に関する研究はこれまで盛んに行われてきたが,脳波を計測するため“脳波計”が高額であるため,これらの技術の普及が難しいという課題がある.この課題の解決策の一つに,価格が低額である簡易脳波計の利用が挙げられるが,簡易脳波計は計測精度が低いことが知られている.そこで本論文では,簡易脳波計を用いて計測されたP300に対する検証と,より精度の高いP300計測のための工夫を行う.
著者
Liu Yuan Tian Yajie Sawaragi Tetsuo
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.837-848, 2006-12-15
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

The container loading problem, a real hard problem, is usually difficult to obtain even a suboptimal solution because of not only multiple complicated restrictions but also of multiple objectives. In this paper, a heuristic algorithm is proposed for solving the container loading problem in the real-world. The algorithm is based on Drum-Buffer-Rope presented in the Theory of Constraints and the multi-agent cooperative negotiation strategy. A particular attention is focused on improving the constrained agent by striving for the trade-off of restrictions and cooperative negotiations, so that the final solution can arrive its biggest profit. Since many real-world problems are restricted by many complicated restriction that are difficult to be satisfied simultaneously, a method used by human experts called restriction relaxation is embedded in the proposed algorithm, which makes the algorithm have a high degree of flexibility. In this paper, the proposed algorithm is also compared with other two classical optimization algorithms based on Local Search and Tabu Search.
著者
伊師 華江
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.211-217, 2011-04-15 (Released:2011-07-08)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

本研究は,表情顔の魅力評価に関わる心理印象要因を明らかにすることを目的として,特定の感情を表出しないニュートラル形態(真顔),幸福の感情を表出するポジティブ形態(幸福表情顔),悲しみの感情を表出するネガティブ形態(悲しみ表情顔)の3種類の表出形態の顔画像を呈示刺激とする評定実験を行った.評定実験1では魅力度評定が行われ,真顔に比べて幸福表情顔の魅力度は高く,逆に悲しみ表情顔の魅力度は低いことが示された.評定実験2では魅力度評定とセマンティック・ディファレンシャル法による印象評定が行われ,表出形態ごとに魅力と印象の関係が分析された.その結果,真顔と悲しみ表情顔の魅力評価には顔の知的美感の印象が重要な要因であるのに対して,幸福表情顔の魅力評価には知的美感印象に加えて柔和印象も重要な要因であることが示された.このことから,表情間で魅力評価に関わる心理印象要因が異なる可能性が示された.幸福表情顔とは異なり,悲しみ表情顔の魅力評価には真顔と共通する心理的な基準が使われていると考えられる.
著者
古川 徹生
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.618-626, 2007-12-15
参考文献数
7
被引用文献数
1

This paper introduces an extension of an SOM called the "SOM of SOMs," or SOM^2, in which objects to be mapped are self-organizing maps. In SOM^2, each nodal unit of a conventional SOM is replaced by a function module of SOM. Since each child SOM module in SOM^2 is trained to represent an individual map, the parent map in SOM^2 generates a self-organizing map representing the continuous change of the child maps. Thus SOM^2 is an extension from "self-organizing map" to "self-organizing homotopy". From another viewpoint, SOM^2 is a learning machine which represents a fiber bundle, whereas the conventional SOM represents a manifold. This paper presents the architecture and the algorithm of SOM^2 as well as some application results.