著者
寺口 敏生 田中 成典 西江 将男
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.411-427, 2011-08-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
31

近年,情報関連技術の普及と発展に伴い,カーナビゲーションを代表とする地理空間情報サービスが普及している.しかし,地理空間情報サービスの基盤となる地図情報の整備は人手による現地踏査に依存しているため,新店舗の開店などの実空間の情報変化に地図情報が追従できていない問題がある.そこで,著者らは,Web上の新店舗の開店情報を対象として,自然言語から店舗名,住所や業種などの店舗情報を自動収集するテキストマイニングの研究を行ってきた.しかし,新規開店に関連するキーワードだけを用いてマイニングを行った場合,業種別の単語出現傾向の違いや,単語の連接関係によって生じるノイズなどの自然言語の曖昧性に起因する課題に加え,情報自体の正誤を評価できないという課題に直面した.そこで,本研究では,キーワードによるマイニングに加え,マーケティング分析の指標に基づいて,店舗の業種と出店位置の地理的特性との関係を活用することで,これらの課題を克服することを目指す.実験から,地理的特性を考慮した情報を評価することによって,新店舗に関する開店情報を高精度に取得できることを実証した.
著者
岡部 貴博 吉川 大弘 古橋 武
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.689-700, 2006-10-15
被引用文献数
3 5

現在,多くの病院では,医療従事者が勤務中に遭遇したヒヤリとしたこと,ハッとしたことをレポート形式で報告する制度が採用されている.このレポートはインシデントレポートと呼ばれており,事故の種類や発生場所などのメタデータと,大部分は自由記述の文章で記されている.インシデントレポートには,ヒューマンエラーを起こしやすい状況や,病院のシステムの改善点,事故の要因などの様々な重要な情報を含んでいることが多いため,インシデントレポートを解析することは医療事故を防止するための対策を発見するのに有用である.しかしこれまでは,定量化しやすいメタデータ部分を用いて,事故の発生件数の推移や,業務別の報告件数の割合を分析したり,病棟や部署での報告件数を比較するだけにとどまっている.そのため,事例の大まかな傾向をつかむことはできても,各事例の中に含まれている重要な情報の解析はできていない.一方で近年,自由記述の文章から有益な情報を抽出する,テキストマイニングに関する研究が盛んに行われている.本論文では,メタデータと語句の共起情報を利用したテキストマイニング手法を提案し,インシデントレポート解析への適用を行う.提案手法は,メタデータを最上位とする階層構造で表現されたキーワードグラフを作成する.また,解析者が能動的に解析したい項目を掘り下げていけるという特徴を持つ.実際のインシデントレポートを対象とした評価実験により,提案手法の有用性を検証する.
著者
鳥塚 裕喜 萩原 将文
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.956-963, 2020-12-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本論文では,効果素材を付加した対話型漫画生成支援システムを提案する.提案システムでは,ストーリー性のある短いテキストとその話題に関連する画像を入力として,対話形式で漫画を生成する.一度漫画を生成した後に,ユーザーは満足のいかないコマを選択し,そのコマだけを再生成することができる対話型のシステムとなっている.また,選択したコマの中でも特に背景だけ,キャラクターだけ,吹き出しだけ,描き文字・漫符だけなどのように,より細かい単位での再生成も可能となっている.これにより,ユーザーの満足度が高い漫画を,素早く生成することができる.さらに,描き文字・漫符と効果線などの効果素材の利用も導入されている.このようにして,より漫画らしい表現が可能となり,文書に比べてより効果的な情報伝達手段となっている.評価実験により,対話型の再生成による効果,および描き文字・漫符,効果線の導入の有用性が確認されている.
著者
田村 謙次 鳥居 隆司 武藤 敦子 中村 剛士 加藤 昇平 伊藤 英則
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.791-799, 2008-10-15 (Released:2009-01-05)
参考文献数
18

遺伝的アルゴリズムには早い世代で多様性が損なわれてしまう初期収束や個体間に有効な遺伝子列であるスキーマを効率的に広めるために適用する問題の特性に合わせた交叉や突然変異と呼ばれる遺伝的操作が行われる必要があるという問題点がある.また,進化論の一つにウイルス進化論がある.ウイルス進化型遺伝的アルゴリズム(Virus Evolutionary Genetic Algorithm : VE-GA)は適用問題の解候補となる宿主と,部分解となるウイルスを遺伝子列として持つ二つの個体群から成り,それらの相互作用による共進化により,大域的探索と局所的探索行い,スキーマを個体間に高速に広めることができる.宿主はより高い適応度を得るための解探索を行い,ウイルスは宿主の適応度を上げるための部分解の探索を行う.また,一般的なGAにおいて,交叉は重要な役割を持ち,さまざまな手法が提案されている.各手法における解探索能力はそれぞれ異なり,適用する問題の性質や遺伝子のコーディング,個体数,進化の状況にあわせた適切な手法を選択することが重要であり,GAの施行中に適切な交叉方法を選択する手法が報告されている.したがって,個体の遺伝子列を部分的に変化させるという点において交叉と類似している感染は,交叉同様に重要であると考えられ,宿主に感染する際に,世代途中で適切な感染手法を選択することにより,効率的な探索を行うことが期待できる.本論文では,感染手法による個体進化の相違を比較,進化の状況により適応的に感染手法を切り替える一手法である適応的感染手法を提案し,数値シミュレーションによる従来手法との比較を行ったことを報告する.
著者
乙武 北斗 高丸 圭一 内田 ゆず 木村 泰知
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.700-705, 2023-08-15 (Released:2023-08-16)
参考文献数
10

議会会議録には議会におけるすべての発言が記録されている.議会会議録の発言内容に基づき,議会における議員の取り組みや政治的態度を明らかにする研究が進められている.従来の研究ではTF-IDFなどの単語ベースの方法が用いられており,複数単語のフレーズや文脈を考慮する表現力に欠けていた.本論文では,会議録中の各発言の発言者を推定するBERTベースの分類器とSHAPを用いて算出されるトークン単位の分類貢献度を利用し,発言文から文節単位で政治的関心を含む特徴的な表現を抽出する手法,およびその結果の分析について述べる.文節単位で係り受け関係も考慮することで,抽出された表現の文脈を提示できる.分析の結果,本手法はTF-IDFと比較して発言者の政治的関心が見受けられる特徴的な表現を多く抽出できることを確認した.また,TF-IDFでは抽出が困難な,発言者の独特の言葉遣いを抽出できることを確認した.
著者
鈴木 公啓 野村 竜也
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.706-711, 2023-08-15 (Released:2023-08-16)
参考文献数
23

本研究は,職種毎の対人コミュニケーション場面におけるジェンダーロボット選好について明らかにすることを目的としておこなった.また,ジェンダー選好において,性役割平等志向性が関連しているかについても検討をおこなった.成人男女1000名を対象に検討をおこなった.その結果,人間,アンドロイド型ロボット,そして機械型ロボットのいずれにおいても,そしてどの職種であっても,コミュニケーション相手として性別がどちらでもかまわないとする者が多いことが示された.ロボットを日常生活に導入する際には必ずしも性別を付与しないで良いことが示唆される.また,ロボットの側を特定のジェンダーに設定してもそれはステレオタイプの再生産とならない可能性が考えられた.
著者
目良 和也 青山 正人 大道 博文 黒澤 義明 竹澤 寿幸
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.944-955, 2020-12-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
17

CGアバターによる遠隔コミュニケーションにおいてユーザの気持ちを的確に伝えるには,言語情報だけでなく,口調,表情,動作などのノンバーバル情報も重要である.CGアバターに基本感情を付与する研究はこれまでも行われているが,皮肉や照れ隠しのような本心を隠そうとしている表情を表現するための手法は確立されていない.そこで本論文では,顔部位の変化の随意不随意性に注目し,本心感情を不随意な顔部位の変化,演技感情を随意に動かせる顔部位の変化によって表現することで,外面と内面の感情を選択的に表現する手法を提案する.本論文ではツンデレ表情を想定し,本心感情を喜び,演技感情を平静あるいは怒りとした事例を用いて説明する.提案手法に基づいて作成した表情アニメーションについて印象評定を行った結果,不随意的な喜び顔部位である“頬の紅潮”が表出していることが「喜びを隠蔽しようとしている」という印象を強くしていた.一方,頬の紅潮の代わりに目や口など随意的な喜び顔部位を用いたところ,逆に「喜んでいるふりをしている」という印象を強くしていた.このことより,本心感情を不随意な顔部位の変化によって表出することで,内面の感情を選択的に表現できることが確認できた.
著者
新福 一貴 笹嶋 宗彦
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.655-667, 2023-05-15 (Released:2023-05-15)
参考文献数
20

顧客満足度とは企業が提供するサービスや商品に対する顧客の満足度を表す指標であり,顧客満足度を向上させることは企業にとって最も重要な課題の1つである.しかし,最も投資対効果の高い顧客満足度向上方法を発見することは容易ではない.なぜなら,サービスや商品は,それ自体の品質や価格だけではなく,提供のされ方や提供される店の雰囲気,利用した時に得られる満足感など,多くの軸から評価されるものであり,どの評価軸における課題を解決することが顧客満足度向上につながるのかを見極めることは,一般に困難である.評価軸には,「この企業に対する満足度」のような企業に対する総合的な満足度を問う質問項目に対する回答である総合満足度と,総合満足度を判断する根拠となる,個々の質問項目への回答である個別項目満足度が含まれる.これらから課題の選択を支援するための可視化手法については従来から研究が行われており,総合満足度とそれに対する個別項目の重要度を相関関係より算出し,可視化するCS(Customer Satisfaction)ポートフォリオ分析やIPA(Importance-Performance Analysis)と呼ばれる方法がある.しかし,既存研究は,判断の際に重要である,競合企業との関係性についての可視化が不十分である.そこで本論文では,カフェ,ドラッグストア,保険販売業,など自社企業が所属する業種に含まれる,複数企業を対象に行った個別項目と総合満足度のアンケートを入力として,自社企業に対する顧客満足度が,業種の中でどのような位置にあるかを可視化するツールCSIMGを提案する.CSIMGは,従来研究が可視化してきた,自社サービスや商品の総合満足度と個別項目の関係だけではなく,各個別項目の評価値が,同業種の他社と合わせてどの程度ばらついているか,言い換えれば,改善の余地があるか否かを可視化することで,経営者が,どの項目に優先して投資すべきか判断することを支援する.4つの業界アンケートを対象に,CSIMGの出力と,人間の経営アドバイスの専門家である中小企業診断士の判断とを比較した結果,アンケート回答者である一般消費者が,サービスや商品を自分で複数社利用し比較できるような業種については,CSIMGが,人間の専門家と近い評価結果を出力できる可能性があることを示すことができた.
著者
松村 真宏 加藤 優 大澤 幸生 石塚 満
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.554-564, 2003-10-15 (Released:2017-05-29)
参考文献数
23
被引用文献数
7 12

議論の論点をすばやく発見し理解するためには、議論構造を可視化してユーザに提示することが有効である。そこで本稿では、議事録から話題の単位(セグメント)を同定し、さらに同定したセグメント間の関連を調べることにより、議論構造を構造化マップとして可視化するシステムを提案する。また、構造化された議論に影響の普及モデルIDMを適用することにより、議論の発展のトリガとなる話題を発見することを試みる。アンケートによる調査の結果、適度に議論が分割・構造化された構造化マップは、ユーザが議論の論点を直感的に捕らえるための手がかりを提供していることを示す。また、IDMにより同定された話題は、構造化マップにおける入次数、出次数に着目した結果よりもPrecisionが高いことを示す。
著者
大村 英史 柴山 拓郎 高橋 達二 澁谷 智志 岡ノ谷 一夫 古川 聖
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.954-966, 2012-10-15 (Released:2012-11-05)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

本稿では,人間の認知バイアスのモデルを用いた音楽生成システムを提案する.音楽は期待の満足や裏切りによって情動豊かな作品として構成されている.このような音楽における期待の形成とその期待に対する満足や裏切りのダイナミクスを実現するために,緩い対称性(LS)モデルを使用した.このモデルは人間の思考や推論に特徴的な非論理的な対称性バイアスと相互排他性バイアスに基づいた確率モデルである.本システムは,(1)音から音への遷移を音楽におけるメロディの最も単純なイベントとみなし,既存の楽曲から音の遷移の特徴量を抽出し,(2)LS モデルにより「人間的な」改変,汎化を行い,(3)新たなメロディを生成する.メロディ生成に用いられる汎化後の確率分布の平均情報量を調べた結果,LS モデルがほどよい複雑性を作り出していることが確認された.さらに,生成されたメロディの評価のために心理実験を行い,LS モデルが期待に関する満足(音楽的まとまり)と裏切り(意外性)をバランスよく含んだメロディを生成していることを確認した.この結果は,音楽生成における期待感生成に関する認知バイアスの適用の有効性を示唆する.

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著者
柏木 雅英
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.147-154, 2003-04-15 (Released:2017-05-29)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1
著者
柴尾 一成 本田 あおい 大木 真
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.734-743, 2016-08-15 (Released:2016-09-28)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

本論文では,クイックソートの概念を利用して効率的に順序関係を調べる新しい相対評価法を提案する.人の主観的な疼痛を客観的な数値として表すことができれば,人の感じている痛みについて他者と共有することができ,医師(医療従事者)と患者との問診を支援することが可能になる.主観的な疼痛を客観的な数値で評価するためには,多くの年代や地域の方,さらには非健常者や妊婦,高齢者の方まで幅広くアンケート評価を行う必要がある.しかし,現状の評価法では,1人当たりにかかる検査時間(1~3時間)が長すぎるため,多くのデータを得ることが難しい.さらに,非健常者や妊婦,高齢者の方に対しては,身体的・精神的な理由から負担の大きい調査の実施が困難である.本論文で提案する整列比較法は,一対比較法の判断の容易さを残したまま,問題点である比較回数と検査時間を大幅に改善できる.また,比較を行う実験刺激の個数に関係なく各実験刺激を定量化する数値化手法についても記述する.これにより,比較を行う実験刺激の個数を調整することが可能となり,より被験者の負担を減らすことができる.
著者
岡本 雅史 大庭 真人 榎本 美香 飯田 仁
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.526-539, 2008-08-15 (Released:2008-11-10)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

本研究は,漫才対話が二者間での対話形式を取りながら第三者である観客への情報伝達を可能とする〈オープンコミュニケーション〉構造を持つことに着目し,発話・視線・姿勢などのマルチモーダルな要素間の相互作用の分析を行うことにより,二体の擬人化エージェントの対話を通じてユーザに効果的にインストラクションを行う対話型教示エージェントモデルを構築する上で有用な知見を得ることを目的とする.特にオープンコミュニケーションの大きな特徴の一つであるコミュニケーションの「外部指向性」に焦点を当て,非明示的な観客への情報伝達である「外部指向性」と直接的に観客への働きかけを行う「内部指向性」の両者が,どのように演者内のマルチモーダルな振る舞いと演者間のインタラクションによって実現されているかをプロの漫才師の対話映像の分析から探った.結果として,オープンコミュニケーションにおける指向性の顕在化は,今回分析対象とした二組の漫才コンビ間で異なる形式を持つことが明らかとなり,オープンコミュニケーションの指向性を捉える上でマルチモーダルなチャネル間の相互関係が重要な役割を果たしていることがわかった.
著者
山ノ井 髙洋 豊島 恒 山﨑 敏正 大西 真一 菅野 道夫
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.639-646, 2016-06-15 (Released:2016-07-12)
参考文献数
12

著者らは,クラブのトランプAからKまでの13枚の画像をCRT上で被験者に提示し,認知時またそれを想起した際のEEG計測を行なった.著者らが従来から試みている正準判別分析法をこれらのシングルトライアルEEGに適用した.従来から判別に用いている右中前頭回に対応する国際10-20法に対応するEEG計測位置であるFp2とF4,C4,F8の4チャネルからのEEG出力を判別に用いた.サンプリング区間は潜時400msから900msを25ms間隔でサンプリングし,84次元のベクトルデータを構成した.さらに,データを3倍とするサンプリング方法も検討した.ジャックナイフ統計を用いた正準判別分析の結果9人の被験者の判別率は90パーセントを越えた.これにより.トランプカードの推定マジックがトリックなしで90%以上の確率で行えた.
著者
濱田 真樹 鬼沢 武久
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.696-708, 2008-10-15 (Released:2009-01-05)
参考文献数
16
被引用文献数
3 2

本論文では,同音異義語の使用頻度に加えて,因果関係の成立しやすさを構造に含むなぞなぞを対象とし,そのなぞなぞ生成システムの構築を目指す.提案システムは生成部と2つのデータベースから成っている.1つ目の動詞データベースは,動詞とその使用頻度,格関係の情報をもつ.2つ目の因果関係データベースは,動詞が表す事象間の因果関係とその成立しやすさの情報をもつ.生成部は,動詞および因果関係データベースから言葉を参照することで,人が作るようなおもしろいなぞなぞを生成し,なぞなぞとその答え,解説文を提示する.本論文ではまた,提案システムからおもしろいなぞなぞが生成されるかどうかを検証するための被験者実験についても述べる.
著者
井岡 惠理
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.113, 2014-06-15 (Released:2017-11-18)
被引用文献数
1

ニューロン(神経細胞)は連続的な刺激の印加によって短い時間幅のスパイクを発生させる.この現象は発火と呼ばれ,脳内の情報処理において重要な役割を担うことは近年の脳科学における基本的な認識となっている.この発火による情報のコーディング方法としては,ニューロンの発火頻度,集団(グループ)の発火活動によるコーディング,短い時間間隔での発火パターンによる符号化などが考えられている.一方で複数のニューロンが同時(あるいはある一定の間隔を保って)に発火するなどニューロン同士が見せる発火のタイミングの関係性が重要であるとも考えられている.このような発火現象は同期発火(Synchronous firing)と呼ばれている.同期発火はとくに結びつけ問題(Binding problem)と非常に深い関わりがあると考えられている.結びつけ問題とは脳科学における未解決問題の一つである.通常,視覚や聴覚などの感覚器が受ける情報は脳に伝わると形や色,運動方向やその速度などの細かな情報に分割されそれぞれについて処理される.そしてこれらを再統合するのだが,細分化された情報をどのようにして統合しているのかというメカニズムの詳細は解明されていない.もしもニューロンの発火にのみ情報がコードされていると考えると複数の入力情報を再統合する際に,元の入力情報とは異なる情報が再現され結果として脳はあるはずがないまぼろしを見ることとなる.同期発火によるニューロン同士の関連性を持った発火現象は分割された情報と情報との関連を持たせる役割があると考えられている.実際に生理学実験においてもこの同期発火現象は視覚野や嗅覚野で観測されている.さらに,同期発火はパーキンソン病などの神経性の病症との関連も示唆されている.したがって同期発火現象のメカニズムに関する関心は今後も高まると考えられる.