著者
清水 優 高橋 友一
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.688-697, 2014

レスキューロボットは,2001年9月11日に発生したWorld Trade Center (WTC) のビル倒壊現場で使用され,また2011年3月11日に東日本大震災と津波によってダメージを受けた東京電力福島第一原子力発電所 (Fukushima Daiichi Nuclear Plant: FDNP) の建屋内調査等の活動を続けている.レスキューロボットはこれからの数十年に渡って,WTCやFDNPの現場のように不安定で動的に変化する環境でもより高い性能を発揮できるように改良され続ける.レスキューロボットの重要なミッションの1つは,被災現場の変化してしまった地形や要救助者の座標などの情報を収集し人間に分かりやすい地図を生成することである.この自動地図作成機能の改善は,レスキューロボットの改良点の中で特に活発に研究開発が行われる1つであり,その改善の度合いを評価することも重要である.<BR> 著者らは,今後開発される不整地における地図作成手法の性能を評価する手法が必要となると考え,本報で不整地をモデル化した評価フィールドを用いた動作理論のグレード付けを提案し,地図作成手法の1つであるSimultaneous Localization and Mapping (SLAM) を用いた評価例を示す.
著者
榎本 美香 中野 有紀子
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.540-556, 2008-08-15
被引用文献数
1

本研究では,エージェントを相手にした時のインタラクション方略に人相手のときとの異同があることを示し,人間の行動モデルをベースにヒューマンエージェントを実装するとき,考慮すべき人間のインタラクション方略のあることを提案する.ここでは,パソコン操作課題における人と人,人とエージェントの対話を素材として,どのように言語・非言語行為がインタラクションの中で配置されるのかを分析することで,エージェントに対したときに選択される方略を明らかにする.まず,人対人と人対エージェント対話の基礎的特徴を観察し,人対エージェントの対話では人の発話量が少なく,相づちや応答が稀にしか差し挟まれないことを示す.次に,非言語行為を含めた人対人の行為の配置規則を定式化し,人対エージェントのインタラクションにおいてこの規則がどのように破られるかを示す.そして,この違反が,相づちや応答の変わりに,相手発話への理解を示すためになされた補償的行為であることを明らかにする.
著者
池水 孝幸 小野 智司 森重 綾太 中山 茂 飯村 伊智郎
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.804-817, 2010

アントコロニー最適化法(ACO)は,蟻の群による採餌行動を模擬したメタヒューリスティクスであり,巡回セールスマン問題,スケジューリング問題など多くの組合せ最適化問題でその有効性が確認されている.近年,0-1整数計画問題(0-1IP)にACOを適用するBinary Ant Colony Optimization(BACO)と呼ばれる方式が提案されている.BACOではACOと同様,探索領域の集中化,多様化を調整する方式を採り入れることで探索性能の改善が期待できるものの,これまでの研究では,集中化,多様化を積極的に調整するBACOが提案されていない.本研究では,女王蟻戦略AS<SUB>queen</SUB>をBACOに組み入れたBAS<SUB>queen</SUB>を提案する.BAS<SUB>queen</SUB>は,グループ化された働き蟻の集団により多様な探索を行い,女王蟻が働き蟻に指令を送ることで探索領域の多様化,集中化を調整するため品質の高い解の発見が期待できる.0-1ナップザック問題を対象として実験を行い,提案するBAS<SUB>queen</SUB>が,他のBACOアルゴリズム,焼き鈍し法,粒子群最適化法などよりも高い探索性能を示すことを確認した.
著者
濱岡 秀平 砂山 渡
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.707-716, 2012-06-15 (Released:2012-06-26)
参考文献数
17

近年,メールや電子掲示板,SNS などを用いたオンラインコミュニケーションが盛んに行われている.特に電子掲示板は,お互いがコミュニケーションを図る際の手段として用いられるだけではなく,コミュニケーションの結果として得られた結論部分を,再利用可能な知識として活用することもある.そのため,電子掲示板を用いた意見交換や,電子掲示板上の情報の閲覧を支援することが望まれ,その際には,気持ちよくコミュニケーションに参加したり,コメントを閲覧できることが望ましい.しかし特に匿名での書き込みが可能な掲示板においては,多くの人がお互いの感情を考えずに書き込みを行う場面も見受けられるため,お互いの揶揄や誹謗中傷により,雰囲気が悪い状態となっていることもある.そこで本研究では,電子掲示板内における,各トピックに関する一連のコメントの雰囲気を評価して利用者に提示することで,電子掲示板を閲覧する際の指針を提供することを目指す.
著者
砂山 渡 錦戸 拓也 西原 陽子
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.304-315, 2009-06-15 (Released:2009-10-08)
参考文献数
11

本稿では,地図型アニメーションインタフェースにおいて,観点の変化に伴って価値が変わるキーワードの検出と解釈を支援する手法を提案する.Web における検索ヒット数を用いて,キーワード間の関係を抽出する研究が盛んに行われている.キーワード間の関係は観点の数だけ存在し,観点による関係の違いの理解も必要となる.特に他のキーワードとの関係が大きく変化するキーワードを見つけることが重要となる.そこで,提案手法は観点の変化による関係の変化をアニメーションで表現する際に,価値(他のキーワードとの関係の強さ)が大きく変化するキーワードに印付けして着目を促す.提案する印付け手法は,印の有無と位置による効果を確認する実験から,関係の違いを理解することの支援に有効と確認した.
著者
北村 祐太郎 澤勢 一史 延原 肇
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.624-635, 2013

動画共有サイト YouTube の動画推薦手法における,推薦の偏り,視聴動画と推薦動画間の関連性が不明瞭,および推薦画面内の情報提示量の少なさ,を解決する手法を提案する.具体的には,YouTube の動画に付与されたタグの概念が持つ広狭に着目し,これらに対して形式概念分析を適用することで,さまざまな概念階層から動画を推薦することで,推薦の偏りを解消する.また,形式概念分析によって得られる束構造を利用することで動画の推薦理由を構成し,視聴動画と推薦動画間の関係性を明示する.さらに適切な動画情報量を持つ YouTube の動画推薦アプリケーションを構築し,ユーザの選択における負担を軽減する.提案システムの有用性を確認するため,20 代の男女 10 人のユーザに対して,YouTube と提案手法のシステムにおける平均動画選択数や適合率,推薦理由の有用性を調査する.さらにアンケート調査により,推薦動画を提示する際の適切な情報量について考察する.
著者
岡田 悟 荒川 達也
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.608-615, 2015
被引用文献数
1

電子テキストの小説読書において,質問応答形式で小説の内容を確認できる読書支援システムを提案する.本システムはユーザの小説読書支援のため,入力質問に対して小説本文より回答を検索し,評価値順に並べ替えて出力する基本動作およびネタバレ防止の機能や登場人物の情報を確認するための機能,ユーザの既読部のあらすじを提示する機能等の補助機能から構成される.本稿ではシステムの構成・実装および実行例を示す.10名のモニタによるシステムの評価実験により,提案手法が利用者に受け入れられるものであることが確認できた.
著者
田島 敬士 吉岡 元貴 小澤 順
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.379-387, 2008-06-15
被引用文献数
1 1

カーナビゲーションシステムにおける到着地推定は推定対象走行の走行日時や走行経路といった走行属性が一致する車両走行履歴を用いて行われる.用いる走行属性によって到着地推定への有効性は異なる.そこで本稿では,到着地推定に用いる走行属性の違いによる到着地推定への有効性の違いについて評価した.走行属性の到着地推定への有効性は,走行属性と到着他の間の相互情報量を用いて評価した.履暦数が減少すると相互情報量は増加するため,履歴数の少ない走行属性を選ぶと相互情報量が余分に増加してしまう.この履歴数による情報量の変動を除いて,正規化した相互情報量によって評価した.ユーザ20人から車両走行履歴を平均3ヶ月の期間収集し,評価した結果,ユーザの出発直後は,走行時刻属性の到着地推定に対する有効性が高く,走行途中は,出発地と初めに通過した2つの主要交差点という走行経路属性の到着地推定に対する有効性が高いことが判明した.よって,出発直後は走行時刻属性が推定対象走行と一致する走行履歴,走行途中は走行経路属性が推定対象走行と一致する走行履歴を用いて到着地を推定する手法が有効である.
著者
村田 信治 野里 博和 古谷 立美 村川 正宏
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.272-281, 2008-04-15
参考文献数
9

本論文では,過去の探索履歴から探索点までの距離に基づく加重平均を導入した確率的二分探索法を提案し,レーザシステムの光軸の位置と角度の多目的調整に適用して調整時間の大幅な短縮と調整精度の向上を図り,この効果を定量的に評価する.本研究において,確率的二分探索法を用いることで調整時間の大幅な短縮が可能になり,加重平均値を調整手法の評価値に用いることによりノイズの影響を軽減した調整が可能になる.提案手法を用いた調整実験の結果,調整時間を従来の3 時間から 12 分へと大幅に削減した上で,ノイズの影響を軽減した精度の高い光軸の位置と角度の同時多目的自動調整を実現した.
著者
谷口 忠大 高木 圭太 榊原 一紀 西川 郁子
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.1078-1091, 2009-12-15
被引用文献数
2 9

近年,CO<SUB>2</SUB>排出量の抑制や,化石燃料の将来的な枯渇を背景に再生可能エネルギーの利用が注目されている.しかし,既存の中央集権的な電力ネットワークは系統末端での非定常発電を前提とする再生可能エネルギーとは必ずしも相性がよくないと言われる.このため,マイクログリッドを始め分散型の電力ネットワークが研究されている.本研究ではその一つである自律分散型の電力ネットワークであるECOネットを取り上げ,ECOネット内の発電消費の末端ノードであるミニマル・クラスター間での電力売買を通じた電力融通の自動化の為の機構について検討する.電力売買の自動化の為には,各ミニマル・クラスターにおける電力ロスの発電・消費における諸条件に基づき電力売買の方策を最適化する事が望まれる.本稿では,電力売買を行うエージェントの学習に強化学習を用いる事で電力ロスを低減し,収益を最大化させるような適応的取引エージェントの構築を目指す.ただし,そのような系ではマルチエージェント強化学習の系となるために,不完全知覚問題や同時学習問題が発生することが指摘されている.本稿ではそれらの問題に強いとされる方策勾配法,特にその一種である Natural Actor-Critic を用いて適応的取引エージェントを構築する.また,提案手法の有効性を示すために,6個のミニマル・クラスターにより構成されるローカルクラスターを対象にシミュレーション実験を行った.シミュレーション実験では,Natural Actor-Criticによりエージェントが適切な取引を学習する事が出来る事が示されたのと同時に,マルチエージェント強化学習環境下においても少なくとも一体固定的な取引を行うエージェントの居る条件下では良好な学習結果を生むことが示された.
著者
石井 雅樹 佐々木 裕也
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.757-770, 2015-10-15 (Released:2015-11-13)
参考文献数
21
被引用文献数
1

ロボットが人間の生活環境で自律的に行動するためには環境地図が必要となる.従来提案されている環境地図構築手法は,形状情報のみから環境地図を構築している場合が多い.しかし,形状情報のみを使用した場合は,長い廊下環境のような幾何学的特徴の少ない均一な環境において自己位置の候補が複数発生し,推定が困難であるという問題がある.そこで本論文では,自己位置の推定に有用な情報として視覚情報に着目し,画像情報のみを用いた自己位置推定手法について検討した.提案手法では,事前に環境中で取得した全方位画像データを教師無し学習アルゴリズムである自己組織化マップを用いて学習し,位置推定識別器を構築する.ロボットは,自身の移動中に観測した画像が環境中のどのエリアで取得可能であるかを位置推定識別器により判断する.本稿では,幾何学的特徴およびパターンやテクスチャ等の視覚情報の多い室内環境と,幾何学的特徴が少なく視覚情報も乏しい廊下環境を対象として,位置推定識別器の有用性について検証した.
著者
ジメネス フェリックス 吉川 大弘 古橋 武 加納 政芳
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.835-844, 2015-12-15 (Released:2015-12-29)
参考文献数
23
被引用文献数
1

ロボット関連の技術進展により,学習を支援する場面で活躍する教育支援ロボットが注目されている.このようなロボットの問題点として,学習者がロボットの行動を画一的と感じてしまい,ロボットとの相互作用に飽きてしまう点が挙げられる.一方で,この問題点を防ぐために,Human-Agent-Interaction の分野では,エージェントが感情を持つかのように表情を表出する感情表出モデルが用いられている.実際,ランダムに感情表出するエージェントに比べて,感情表出モデルを持つエージェントは人との相互作用が続くという報告がある.そこで本稿では,感情表出モデルを基に表情の表出を行うロボットが,学習者と共に学習することによって及ぼす心理効果について検討する.
著者
野中 俊昭 遠藤 靖典 吉川 広
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.484-495, 2006-06-15
被引用文献数
3

安全性や騒音防止の観点から, 鉄道車両の滑走防止制御 (ABS) に対する研究は非常に重要である. しかし, ブレーキというシステムにおいて, 滑走という非常に不確実性の高い現象を防止することは容易ではなく, 一般的な制御方法というものは存在しないのが実状である. ところで, ファジィ推論は, 不確実性の高い制御対象に対して高い有効性を発揮することが知られており, 滑走に対しても, 同様の効果が期待できる. そこで, 本論文では, ファジィ推論を用いたABSと, 最近になって実用が進んだ編成でブレーキを制御するシステムを統合することで, 滑走防止に対して有効な新たなブレーキシステムを提案する. また, このブレーキシステムによって, ファジィ推論を用いたABS単独で制御するよりも, ブレーキ距離の短縮と車輪踏面の損傷低減が実現できることを, 数値シミュレーションおよび実車試験によって示す.
著者
大久保 和訓 土方 嘉徳 西田 正吾
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.511-523, 2013

推薦システムは,嗜好データを機械学習することでユーザプロファイルを作成し,それに基づいて推薦を行う.従来の推薦システムの研究では,いかにユーザの嗜好に合ったアイテムを推薦することができるかという精度に注目したものが多い.しかし,近年,推薦システムの精度向上のみを目指すのではなく,推薦過程を含めたサービス全体の価値の向上を目指す研究が行われつつある.我々は,そのような研究の一環として推薦システムを利用したユーザの気づきに着目した.推薦システムが獲得するユーザプロファイルを可視化することで,ユーザは自身の嗜好について何らかの気づきが得られるのではないかと考えた.本研究では,ユーザプロファイルの可視化・提示と気づきの関係についての調査を行う.
著者
吉本 新吾 佐藤 寛幸 湯浅 哲也 赤塚 孝雄
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.189-194, 2007-04-15 (Released:2007-08-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1

3次元コンピュータグラフィックス(3D CG)の質感向上のために低コストで実現できる有効な手法としてテクスチャマッピングが使われる.しかし,マッピングする面の面積が用意できるテクスチャ画像の面積に比べて大きく,テクスチャ画像を繰り返してマッピングする場合,テクスチャ画像とテクスチャ画像の間の境界部分での不連続性が問題となって幾つかの工夫がなされてきた.本論文では,境界部分での横方向の広がりを考慮するイメージキルティング法の改善を考案することで,用意した画像をより滑らかに接合しながら,任意の大きさのテクスチャを合成できることを述べる.実験結果より,従来の手法に比べて滑らかな境界を持つ高品質なテクスチャが合成できることを示す.
著者
石田 啓継 木村 昌臣
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.1177-1182, 2012-12-15 (Released:2013-01-07)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

医薬品の安全な使用のための有効な分類の一つにその効能(薬効)による分類がある.例えばオーダリングシステムを用いて医薬品を処方するときに,医薬品の薬効分類番号と患者の疾患情報を照合することで誤投与が防止できると期待される.しかしながら,現在一般に用いられている「薬効分類番号」は「日本標準商品分類」の一部として与えられており,商品を分類するためのものであるために有効成分など別の観点が混在した分類であり,薬効のみを元とした分類ではない.また,この商品分類は 1990 年改訂のものであり分類基準が古いため,どの薬効分類にも当てはまらず,「その他」の薬効に分類される医薬品が多く存在する.そこで,本研究では医薬品添付文書に記載されているおける効能・効果のみに基づいた分類方法を提案する.
著者
唐山 英明
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.606-616, 2014-04-15 (Released:2014-05-29)
参考文献数
22

脳波インタフェースは,ユーザの脳波を解読し,その意図を抽出することにより車椅子などを制御可能であり,医工学分野や福祉工学分野などで精力的に研究が行われている.特に近年,ウェアラブル型の脳波計が市販されるようになってきた.本論文では,近年のこのウェアラブル型脳波計の一般普及を想定し,その際に要請される脳波個人認証の利用環境の拡張に向けて,聴覚刺激を採用し,屋外環境における脳波を利用した個人認証精度について検証した.7名の被験者に対して,特に屋内安静着座条件,屋外安静直立条件,屋外歩行条件の3条件で,オドボール課題により,低頻度聴覚刺激と高頻度聴覚刺激を提示した結果,低頻度聴覚刺激時に事象関連電位を検出した.機械学習手法を用いて個人認証精度を導出し,ウェアラブル型脳波計を用いた屋外での脳波個人認証の実現可能性について述べる.
著者
梶原 悠介 前田 陽一郎
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.792-803, 2009-10-15

本研究では,コンピュータによる作曲の手法として現代音楽の作曲技法である12音技法を用いた作曲システムを提案する.12音技法は,段階的に作曲する手法のためコンピュータでの作曲に適しているという利点がある.12音技法での作曲の第1プロセスである12音音列の生成は,曲の主題や雰囲気を決定付ける重要なプロセスである.ここでは,一般的な音楽理論である協音程・不協音程の関係を基にした適応度関数を設計し,GAによる響きのよい音列の探索により12音音列の自動生成を行う.12音音列を生成するシミュレータを作成し,シミュレータが生成した12音音列と人が作成した12音音列の比較アンケートを行うことで本システムの有効性検証を行った.
著者
内田 ゆず 荒木 健治 米山 淳
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.811-820, 2012-06-15 (Released:2012-06-26)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

日本語の語彙には,オノマトペが豊富に存在している.これらの語は生き生きとした表現力をもち,日本語でのコミュニケーションには欠かせないものとなっている.日本語を母語とする人は,ごく自然にオノマトペの用法を身につけ,「感覚的に」使用する.そのため,オノマトペをほかの言葉に置き換えたり,その意味を明確に説明することは困難である.日本語学習者がオノマトペの意味や用法を習得することは難しいとされている.オノマトペを学ぶ方法のひとつとして,オノマトペを用いた様々な表現に触れることが挙げられる.そこで,本論文では,ブログ記事を対象としたオノマトペ用例文の自動抽出手法を提案する.提案手法は,オノマトペの後続要素と係り先を分析した結果に基づくものである.評価実験の結果,41,315件のブログ記事から15,437文の用例文を抽出し,適合率96.2%(481/500)が得られた.