著者
戸田 善治 竹内 裕一 大久保 紗容 中村 友亮 松永 智貴 高橋 和雄 天野 孝太郎
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.203-213, 2012-03

本稿は,2010年度に社会科教育教室が開講した大学院授業「授業研究」における,大学教員と大学院生の共同研究の報告である。そこでは,中学生を対象とする授業《ベトナムと日本のODA》を開発した。日本政府は,政府開発援助の方針を決めてきたODA大綱を新たに発表した。この旧から新へのODA大綱の変化とその背景となった要因を捉えるため,ベトナム高速鉄道計画という一つの例について考えつつ,日本の政策決定の一過程について検討させる授業の開発を行った。
著者
戸田 善治 竹内 裕一 大久保 紗容 中村 友亮 松永 智貴 高橋 和雄 天野 孝太郎
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.203-213, 2012-03

本稿は,2010年度に社会科教育教室が開講した大学院授業「授業研究」における,大学教員と大学院生の共同研究の報告である。そこでは,中学生を対象とする授業《ベトナムと日本のODA》を開発した。日本政府は,政府開発援助の方針を決めてきたODA大綱を新たに発表した。この旧から新へのODA大綱の変化とその背景となった要因を捉えるため,ベトナム高速鉄道計画という一つの例について考えつつ,日本の政策決定の一過程について検討させる授業の開発を行った。
著者
平出 昌嗣 ヒラデ ショウジ Hirade Shoji
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.187-194, 2009-03

家父長制あるいは男性原理の強い現代社会は,母不在の精神風土を持つ。父の元で育ち,父を失って孤児となったジュードは,深い孤独の中で,「光の都」で学者になるという夢を追う。それは心理的には,もう一度父に属したいという願望を反映する。しかしスーと出会ったとき,彼はその社会的夢を捨て,スーとの愛に生きる決心をする。それは,ジュードの中に欠如していた母を求める願望と言っていい。一方,スーも父の元で育った女性であり,愛に生きようとする女性原理が強く抑圧されている。だからジュードに愛を感じても,同時に彼を退けようともする。それでも,二人一緒に暮らし,愛を育もうとするが,内にある父の支配力は強く,最終的に,それぞれが父の元へ戻ろうとする。即ち,ジュードは「光の都」に戻り,スーは父親像を体現する最初の夫フィロットソンの元へ戻って,愛は崩壊する。このように,ジュードもスーも,母不在の社会の犠牲者になっている。The modern society governed by patriarchy or the male principle is characterized by the absence of mother. Jude was brought up by his father, but when he lost him and became an orphan, he pursued the dream of becoming a scholar in "the city of light" in his loneliness. Psychologically the dream reflects his wish to belong to the father again. But when he sees Sue, he decides to live for love with her, abandoning his dream. The decision reflects his unconscious wish to see his unseen mother. Sue, however, was also brought up by her father and her female principle is strongly suppressed. She loves Jude, but refuses him at the same time. It is true that they live in love with each other, but the father's rule within is so strong that they return to their fathers: Jude goes back to "the city of light," while Sue returns to her father-like first husband. In this way, they become the victims of the modern mother-lacking society.
著者
加藤 徹也 本田 敦也 Kato Tetsuya 本田 敦也 ホンダ アツヤ Honda Atsuya
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.387-395, 2010-03
被引用文献数
1

ハイスピード・ビデオカメラの市販により,運動する物体を撮影して力学法則を確かめるような物理教育の機会が増えている。一般に動画は容量の大きなデータで,その保存・転送・表示における技術上の問題があり,解像度が低い。このため,精度よく物体位置を取得するには限界がある。またハイスピード撮影のデータはフレーム数が多く,効率よい画像処理プログラミングが必要である。われわれは,力学的エネルギー保存の法則の成立を演示することを目的として,512×384pixels の解像度で1秒間300フレームの動画撮影を行い,振り子運動する物体の位置をOpenCVによるプログラミングを通して取得した。画像上で直径81pixel の物体位置を±0.03pixelの精度で得て,水平方向±58pixel,鉛直方向1.1pixelの弧を描く運動から,運動エネルギー・位置エネルギーを十分な精度で決定できた。Recently, the chance to use commercially supplied high-speed video cameras has been increased in physics education to confirm kinetic laws of the motion of bodies. The data files of movies are generally so large in capacity that there are the technical issues to store, transfer, and display the data. In consequence, the resolution of the movie is not enough to determine the position of moving bodies precisely. In addition, the high-speed movies consist of a large number of frames, so that we need to be computer-assisted and to use high-efficient Computer-Vision (shortly, CV) software of the image processing. Thus in order to assert the mechanical-energy conservation law in demonstrational experiments, we recorded motion of some pendulums in the videos with 512x384 pixels in resolution and 300 frames per second in frame rate, and obtained the position of the bodies with a handmade software using OpenCV libraries. In a case of a pendulum, of which the body has the size of 81 pixel in diameter on the image and sweeps in an arc with the horizontal amplitude of ±58 pixels and with the quite small vertical range of 1.1 pixel, the time-dependence of kinetic and potential energies showed the expected compensating behaviors with acceptable errors from the results with the reading positional accuracy of about 0.03 pixel.
著者
土田 雄一 川添 幹貴 尾高 正浩 川添 幹貴 カワゾエ ミキタカ KAWAZOE Mikitaka 尾高 正浩 オダカ マサヒロ ODAKA Masahiro
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.213-224, 2015-03

市原市が実施している「中1ギャップ」の軽減と夢や希望をつなぐことを目指した小中連続道徳授業の成果と課題について,A中学校区(2小1中)の2年間にわたる実践を調査・省察した。6年時に書いた「中1の自分への手紙」を基にした小中連続型道徳授業は,先進性があり,児童生徒も教師も概ね評価が高い。改善した2年目の実践はより充実。汎用性もある。課題は小学校教員の負担増,連絡調整の時間確保,転入生への対応等である。
著者
蘭 千壽 高橋 知己
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.135-139, 2006-02-28

本研究は,<合唱コンクール>を通して劇的に変わった高校の学級事例を,学級集団の自己組織化の観点から検討することで,ある高校生の突飛な行動(ミクロな変動)が学級内の多岐にわたるネットワークシステムでのコミュニケーションを活性化させ,そのことが新たな学級システムおよび生徒たちの新たな個人システムを創出すると考察された。
著者
田中 愛 西野 明 Tanaka Ai 西野 明 ニシノ アキラ Nishino Akira
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.121-124, 2007-02

本研究の目的は,バレーボールの試合におけるサーブの重要性を明らかにすることである。バレーボールは1999年にルール変更が行われ,「ラリーポイント制」が採用された。このルール変更によって,これまでの「サイドアウト制」とは異なる試合の流れが生じていると考えられる。特にこの変化の影響を大きく受けていると考えられるのが,サーブである。そこで本研究では,実際にスコアリングを行い,1.「試合の流れ」としての連続失点の状況,2.サーブミスが試合の流れに及ぼす影響,3.「攻撃的サーブ」が試合の流れに及ぼす影響についてそれぞれ考察し,ラリーポイント制に適したゲーム分析を試みた。その結果,サーブミスが連続失点のきっかけとなりやすく,また「攻撃的サーブ」が必ずしもラリー取得にはつながらないことから,「ミスを避けるサーブ」が必要であることが示唆された。
著者
久保 桂子 クボ ケイコ Kubo Keiko
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.271-276, 2014-03-01

本研究は,共働き世帯における夫を対象に,仕事が家庭生活への関与を妨げると感じる意識に,仕事の時間や自由裁量度,さらに上司や同僚の理解などが,どのように影響しているのかを明らかにする。加えて,仕事が家庭生活への関与を妨げると感じる意識と,夫の性役割意識,育児参加との関係を明らかにする。分析には,2009年に東京都と千葉県で行った,子どもを保育所に預けている共働き夫婦への調査票のうち,531組のカップルのデータを用いた。主な結果は以下のとおりである。定時で仕事が終わる場合や仕事の自由裁量度が高い場合に,仕事が家庭生活の妨げと感じる意識が低い。そして,子育てへの理解がない職場の場合や,週の労働時間が長い場合に,仕事が妨げと感じる意識が強いことが明らかになった。さらに,性役割に否定的であるにもかかわらず,育児参加ができない夫は,仕事が家庭生活の妨げになっているとより強く感じていることが認められた。This study examines how the workplace environment influences consciousness of the feeling that work hindersparticipation in family life for husbands in dual-career couples. In addition, I examined the relationships among consciousness of the feeling that work hinders participation in family life, the role of gender awareness of the husband, and the husbands'degree of participation in child care. I studied 531 couples with children in day care from my questionnaire survey in 2009 in the Tokyo and Chiba prefectures. The main results are as follows: when work is over at the appointed hour and the husband has flexible working conditions, husbands have a low consciousness of work interfering with family life. In the case of a work place where there is no understanding of child care and where there are long working hours, husbands feel that work interferes with family life. In addition, in the case of the husbands who cannot participate in child care, but who have a negative attitude to their gender role, they tend to feel more strongly that work hinders their family life.
著者
石井 克枝 金子 崇恵 Ishii Katsue 金子 崇恵 カネコ タカエ Kaneko Takae
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.299-304, 2013-03

シフォンケーキはスポンジケーキの中で最も軟らかいものである。その材料の特徴として卵白を多く用い,卵白泡を支える小麦粉の量を少なくし,他のスポンジケーキに比べて多量のサラダ油を用いている。本研究ではシフォンケーキに油脂としてサラダ油が使用され,バターが使用されない理由を明らかにすることを目的とした。その結果サラダ油は,シフォンケーキ特有の軟らかさをつくるために大変重要な役割をしていることが分かった。シフォンケーキでサラダ油が使用されていることは調理操作の上でも,室温における操作で生地の比重を上昇させず,膨化を助けていることが分かった。またサラダ油の量は使用する卵白の40%まで可能であった。サラダ油に代わってバターのような融点の高い固形の油脂を使用する場合は,生地温度を融点以上に,すなわち30℃に管理する必要があり,室温での操作では膨化が不十分になることが分かった。A chiffon cake is the softest in a sponge cake. The features of the material of a chiffon cake were that there were many egg white bubbles, that there was little flour, and that there was much oil. In this research, the reason for using not butter but oil for a chiffon cake is clarified. The chiffon cake which added oil was soft and which added butter was hard. The chiffon cake which added many oil was softer. The specific gravity of the batter of a chiffon cake which added butter was larger than what added oil. It turned out that the chiffon cake which added butter did not swell because butter becomes hard in batter and specific gravity becomes large. Since butter did not become hard when batter was warmed at 30degrees, the chiffon cake swelled greatly. The quantity of oil was possible to 40% of the egg whites.
著者
岡田 大助 オカダ ダイスケ Okada Daisuke
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.373-380, 2013-03

ICTが我々の生活の隅々にまで深く影響を与えているにもかかわらず,政治過程とくに選挙過程においてはあまり活発ではない。デメリットが大きいと考えているからであろう。そこで,本稿ではその限界と可能性について,憲法学の観点から考察を行う。憲法上の選挙原則を考え,そのうえで,選挙過程におけるICTの類型としての,ネット選挙,電子投票,そしてインターネット投票を考察し,問題点を明らかにする。
著者
畑中 恒夫 渡部 逸平 渡邊 亮太 渡部 逸平 ワタナベ イッペイ Watanabe Ippei 渡邊 亮太 ワタナベ リョウタ Watanabe Ryota
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.371-376, 2014-03

人々の電化生活が発達するにつれて,人を含め動物たちは様々人工的な電磁波にさらされるようになり,それらの電磁波の生体に及ぼす影響についての研究が盛んに行われている。我々は以前,ネズミ駆除器からの超低周波電磁場曝露により,雄マウスの精子数が減少することを報告している。これらの効果が現れるには,毎日8時間,1月の曝露時間が必要であり,おそらく長期にわたる感覚ストレスが影響するものと思われる。一方,ラット精巣への短時間の超音波照射により加熱作用が生じ,精子数が減少することが報告されている。そこで今回,感覚ストレス説の確認のため,コイルを用いてマウス精巣に直接変動磁場を与え,周波数及び曝露時間を変え,影響を調べた。コイルでの磁場曝露の際,不動化のために麻酔を用いた。50Hzの超低周波正弦波磁場の長時間曝露で,麻酔の副作用による影響に加えて,精子数の減少が見られた。麻酔下でも変動磁場の影響が見られたことから,感覚ストレス以外の作用機序の関与も考えられた。ラジオ波領域の変動磁場への短時間の曝露では500KHz,1MHzでは影響がなかったが,誘導電流が大きい3MHzの磁場で精子の減少が見られ,誘導電流による加熱効果の影響が示唆された。電磁場,変動磁場による精子減少の作用機序解明には,精子形成過程のどの段階で影響を及ぼすのか,時間経過を考慮したさらなる研究が必要である。The effects on an extremely low frequency(ELF)and radio frequency magnetic field on the genital organs ofadult male mice were investigated. The scrota of male were placed on a coil with the diameter of 2 cm and exposed to alternating magnetic fields under a general anesthesia. Long term exposure to an ELF magnetic field(50 Hz sinusoidal field)at 1.5 mT for 5 consecutive weeks reduced sperm count significantly. Sperm reduction from magnetic exposure was not inhibited by general anesthesia. This suggests that magnetic exposure directory exert an effect on genital organs, not via a psychological pathway from magnetoreception. In order to evaluate acute effects of radio frequency magnetic fields, the specimen was exposed to 500 KHz, 1 MHz or 3 MHz magnetic fields at 1.7 mT for 15min in consecutive two days. Only 3 MHz magnetic field effectively reduced sperm count. A high-frequency magnetic field induces large electrical current and generates large heat, so the reduction of sperm count could be responsible to heat effect of induced current. Further studies of heat shock effects on spermatogenesis are required.
著者
花澤 寿 ハナザワ ヒサシ Hanazawa Hisashi
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.223-225, 2007-02

Anorexia nervosa の中心的心性とされてきた「成熟拒否」の心理の時代変遷を検討するために,古典的症例(Janetの症例Nadiaおよび下坂の症例)と,自験例を比較し考察した。その結果,古典例の成熟拒否が,性的存在としての大人の女性像への恐怖という心性を色濃く有していたのに対し,現代の症例は,成熟した女性という明確な未来像を恐怖するのではなく,今その時点での自分が変化しつつあること自体に恐怖を抱くという特徴が認められた。
著者
佐藤 宗子 サトウ モトコ Sato Motoko
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.438-431, 2008-03

これまで戦後の「少女」向け翻訳・再話叢書を検討してきた中からは、行動的な少女造型が浮かび上がってきていた。今回は、その先にどのような結末が予定されているのかをあわせて念頭に置き、戦前の『少女倶楽部』に連載された、佐藤紅緑の「緑の天使」を中心に検討することとした。ディケンズ『オリヴァー・トゥイスト』を原作とするこの翻案に登場する三人の少女、雛子の創造およびお玉(玉子)と雪子の改変された造型を分析することを通して、少女の行動力がハッピー・エンドへの改変をも導いたこと、同時に大団円ではいずれも結婚が報告されていることの意味を考察した。行動する少女の行く末として結婚が予定されることに関しては、戦後の「講談社マスコット文庫」などにも言及し、時代性の中での翻訳者・再話者の意識のあり方について、その可能性と限界とを指摘した。
著者
松井 美穂 笠井 孝久 Matsui Miho 笠井 孝久 カサイ タカヒサ Kasai Takahisa
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.77-86, 2013-03

本論文では,小・中学生の時期に不登校を経験した青年たちへのインタビューをもとに,不登校経験がその後の生活にどのような影響を及ぼしているのか,すなわち不登校経験と現状のありようとの関連やその意味づけを明らかにすることを試みた。インタビュー内容を分析した結果,家庭や周囲のかかわりのあり方が,彼らの自分自身の問題との向き合い方に大きな影響を及ぼしていること,自分で認めている問題と,実際に問題の本質と考えられるものとの間にズレがあり,不登校が解消した後も扱えずに問題が継続されている可能性が示唆された。これらのことから,義務教育終了後の支援においては,日常の中で彼らの本質的な問題を見据え,働きかける支援者の存在が不可欠であること。彼らの育ちを支えるという視点に立ち,これまでの経過を踏まえその時々の彼らの状態に合わせてサポートをしながら,一緒に問題を考えていける場の必要性が示された。
著者
佐藤 宗子 サトウ モトコ Sato Motoko
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.510-503, 2013-03

一九六四年から刊行が開始された小学館「少年少女世界の名作文学」は、先行して一九五〇年代に刊行された創元社と講談社の二つの「地域割り」叢書の形式を受け継ぐ形式をとるものであった。しかし、先行二叢書とは内容と外観の双方で、かなり異なる様相となっている。そこで「地域割り」の巻数の割り当て方、収録作品の傾向、訳出の方法等の特徴を検証し、その後、とくに本体にはめ込まれた表紙絵に焦点化しながら、視覚的情報の盛り込まれ方にも目を向けた。その中で、一般文学からの作品収録が多い半面、いわゆる「和文和訳」の方式が多用されることがもたらす弊害が生じていること、表紙を飾るカラーの泰西画群が形成する別種の「教養」が想定されていることなどを明らかにした。また、こうした形態の叢書の出現が、経済成長を背景にして、児童文学が産業として発展していく中で見られる点にも着目した。
著者
畑中 恒夫 小林 史尚 宮崎 隼人 小林 史尚 コバヤシ フミナオ Kobayashi Fuminao 宮崎 隼人 ミヤザキ ハヤト Miyazaki Hayato
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.349-353, 2008-03
被引用文献数
3

電化生活が進むにつれ,そこから発生する電磁波にさらされる機会が増え,電磁波の影響が心配されている。この電磁波が動物の学習行動に影響を及ぼす例が報告されているが,矛盾する報告もある。そこで,下等な昆虫のミツバチを用い,単純な連合学習である花の匂いと,蜜を吸う吻伸展反射の条件づけを行い,電磁波の影響を調べた。市販のマウス駆除器から出る複合された低周波の電磁波に曝露すると,連合学習の学習率が低下した。超低周波の電磁波は磁場成分が生体に作用すると考えられるので,50Hz,200Hz,300Hzの変動磁場に曝露すると,200Hzの変動磁場で学習率が低下し,超低周波電磁波は学習を阻害することがミツバチでも実証された。一方,定常強磁場下では学習率が増加し,磁場や超低周波電磁場はミツバチの磁気受容器を介して学習行動に影響する可能性が示唆された。Several studies performed in rodents have suggested that spatial learning can be impaired by electromagnetic field exposure, but some inconsistent results have been reported. So, we used lower order insect, honeybees, and studied the effects of electromagnetic fields on a simple and typical association learning of flower odor with proboscis extension reflex to nectar. Learning performance was impaired by low frequency complex electromagnetic fields radiated from a rodent control device. Then we exposed honeybees to 50Hz, 200Hz or 300Hz AC magnetic fields during their trainings. 200Hz magnetic field decreased learning proficiency. On the other hand, a strong and constant magnetic field enhanced the learning performance. These results indicate that extremely low frequency electromagnetic field can effect on the emotion of honeybees via magneto receptors.
著者
西垣 知佳子 中條 清美 樫村 雅子 中條 清美 チュウジョウ キヨミ Chujo Kiyomi 樫村 雅子 カシムラ マサコ Kashimura Masako
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.255-270, 2007-02
被引用文献数
2 4

日本人英語学習の弱点として,日常生活語彙の不足が指摘される。その対応として,小学校英語活動における日常生活語彙の指導に期待が寄せられている。本研究では,基礎研究として,小学生に学ばせたい日常生活語彙500語を客観的に選定し,それらに基づいて,英語カルタ教材を開発するものである。本教材は伝統的なカルタ教材の利点に加え,次のような特性を持つ。言語習得のプロセスにしたがってリスニングを重視し,無意識のうちに英語をたくさん「聞く」状況を作り出す,子どもたちの発達段階に合わせて学年を問わず繰り返し使える,他教科と連携させて使える,英語指導の経験のない学級担任が使える等の点である。本稿では,日常生活語彙の選定手順,カルタを利用した語彙指導の方法,具体的なカルタ教材作成の手法について述べる。English textbooks used in Japanese junior and senior high schools lack sufficient daily life vocabulary words such as microwave, vacuum cleaner, and faucet, etc. English teaching at Japanese elementary schools, which began in 2002, provides an opportunity to teach additional everyday vocabulary. In this study we adapted 'karuta', a traditional Japanese card game, to teach daily life vocabulary to Japanese elementary school students. Children can benefit from an enjoyable activity that provides an opportunity for exposure to English while lowering their affective filter. The target words for our daily life vocabulary karuta cards were systematically selected based on corpus linguistics techniques. The karuta cards created in this study are unique. The 'reading cards' (yomi-fuda) include information or hints about the target word such as its shape, color, size, usage, environment, habitat, etc. Students listen to these hints spoken one after another by an instructor and quickly choose the corresponding 'picture card' (e-fuda) from an array of cards in front of them. Due to the large number and extensive variety of hints listed on the reading cards, the card game can be used with students of different English levels and different cognitive abilities.