著者
戸田 善治 竹内 裕一 姜 雪婷 三浦 輔 宮田 知佳 山本 晴久 和田 敦実
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.133-143, 2013-03

本稿は,2011年度に社会科教育教室が開講した大学院授業「授業研究(社会)」における大学教員と大学院生の共同研究の報告である。日本政府は1990年に「入管法」を改正,すべての外国人を就労可・不可にはっきりと区別し,不法就労外国人に対する取り締まりを開始した。一方で,「定住者」資格を認めたブラジル・ペルー出身の日系人に就労を許可し,さらに「研修・実習」制度を中小企業にも活用しやすいように規制緩和し,事実上の就労を認め,この制度の目的が「途上国への技術移転,人材育成」であると一貫して主張してきた。これに対して,受け入れ企業は「単純労働力確保」,中国人実習生は「カネ稼ぎ」を目的とし,この両者間ではWIN-WINの関係にあり,日本政府のいう制度の目的とその運用実態には大きな乖離がある。そこで,この乖離状態に着目し,「外国人技能実習制度」の是非及びその改革案について考える授業を開発した。
著者
中澤 潤 中道 圭人 大澤 紀代子 針谷 洋美
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.193-202, 2005-02-28
被引用文献数
1

本研究は絵本の絵に注目し,それが幼児の物語理解・想像力に及ぼす影響を検討した。予備実験(N=22)では5歳児の絵の選好を調査し,5歳児が"かわいい"イメージを好むことを示した。続く第1実験(N=21)では,絵の表現形式(かわいいイメージの絵とそうでない絵)が5歳児の物語理解や想像力(イメージ形成)に及ぼす影響を検討した。その結果,かわいいイメージの絵は幼児の想像力を抑制することが示された。第2実験(N=48)では絵の表現形式と幼児の絵の好み(その絵を好きか嫌いか)が5歳児の物語理解や想像力に及ぼす影響を検討した。その結果,絵の表現形式と幼児の好みはいずれも物語理解に影響しないことや,幼児の想像力が幼児の好みに関係なくかわいいイメージの絵によって抑制されることが示された。これらの結果から,絵本の絵が幼児の物語理解ではなく,幼児の想像力に影響することが明らかとなった。
著者
鈴木 宏子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.494-490, 2017-03

[要約] 明治期に短詩型の革新を志した正岡子規は「歌よみに与ふる書」において、『古今和歌集』は「くだらぬ集」であり、紀貫之は「へたな歌よみ」であると痛罵した。この文章は、時代の文脈から切り離されて、現在に至るまで『古今集』のイメージに悪影響を及ぼしている。しかし子規自身の最晩年の歌の中にも、『古今集』的な「こころ」や「ことば」の伝統が色濃く感じられる例がある。このような近代短歌と古典和歌のあいだに存在する連続性を認識することから、文学や言語についてのより豊かな考察が可能になると考える。
著者
首藤 久義
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.49-55, 2004-02-28
被引用文献数
2

日本の入門期読み書き教育は,文字法>単語法>センテンス法>物語法と変遷してきた。1886年,片仮名先習・読み書き同時方式が確立。1932年には児童の生活経験を重視する画期的なセンテンス法が出現。1947年の教科書から平仮名先習・読み先習に転換。敗戦直後は占領下で語形法的色彩が濃厚。その後,語形法的色彩が徐々に減少し,今日では絵物語法が主流。1964年,音声法による非検定教科書が出現。検定教科書に強い影響を与えた。しかし音声法には,入門期に提出可能な読み物が制約されるという問題があった。2001年にはその制約を打破する教科書が出現。同時に,自分の名前を書くことから,平仮名を書く学習を始めるという画期的な方法も出現。これは,全国共通の教科書で個に応じる学習を提示した先駆である。生活経験に根ざした言語運用の学習と,表記に関する知識の学習とが相補・並行的に行われる方向が展望されるが,その方向の芽が既に出ている。
著者
中澤 潤 中道 圭人 朝比奈 美佳 中道 圭人 ナカミチ ケイト Nakamichi Keito 朝比奈 美佳 アサヒナ ミカ Asahina Mika 古賀 彩 コガ アヤ Koga Aya
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.125-130, 2008-03

本研究では,音楽や造形の熟達者と非熟達者の幼少期の環境の違いを検討した。調査1(N =307)では音楽専攻の大学生と,調査2(N =216)では造形専攻の大学生と他の学問を専攻する大学生を比較した。その結果,音楽や造形に熟達している大学生は,そうでない大学生に比べ,幼少期の音楽や造形に関する物理的な環境や人的な環境が整っていたことが示された。さらに,物理的な環境より人的な環境が音楽や造形の熟達には影響している可能性が示された。This study examined differences between environments in young childhood of artistic expert and novice. Ex 1. (N=307) compared expert students in music with novice students, and Ex 2. (N=216) compared expert students in design art with novice students. These results showed that expert students had rich physical and human environments in young childhood more than novice students. In addition, human environments influenced expertise of music and design art more than physical environments.
著者
羽間 京子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.77-83, 2005-02-28

主として現職教員を中心とした社会人を対象とした大学院において,将来,心理援助職に従事することを志望している学生が何を学ぶかを探索して明らかにするために,千葉大学大学院教育学研究科学校教育臨床専攻の修了生10名(質問によっては在校生2名を加える)に自由記述を中心とした質問紙調査を行った。その結果,心理援前職志望者の場合,(1)「現職教員等さまざまな学生とともに学んだからこそ得られた知見」が現在の職務遂行にもたらす効果が高いこと,(2)現職教員とともに学ぶことで教育現場の実態や現職教員の考え方などにリアルに触れる機会を通して,「視野の拡大・深化」がもたらされること,が明らかとなった。同時に,現職教員とともに学ぶことの否定的側面についても検討された。
著者
磯崎 育男
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.227-233, 2006-02-28

本論文は,前回の紀要論文で展開した,より現実主義的な合意形成学習の方向性を,アメリカにおけるNational Issues Forumsのモデルに見出そうとする試みである。わが国の合意形成学習は,これまでディベートを基本として展開してきたといってよいが,それでは,授業展開において対立から和解への相反した指示になってしまうとともに,政策選択肢の柔軟な発想が抑えられてしまう可能性が高い。また,問題をどう捉えるかという視点が政策案を形成する場合,重要であるが,ディベート形式ではそれが深められない難点がある。本論文では,そのような問題を解決するためデリバレーションという概念に基づき,その代替的アプローチをNational Issues Forumsのプログラム,具体的には,人々が熟議し,議論する仕組みを多様なレベルで構成し,知識習得のみならず,態度形成につなげていこうとしているモデルを説明し,その効用等について議論している。
著者
鈴木 宏子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.518-511, 2012-03

紀貫之は、最初の勅撰和歌集である『古今集』の編纂作業の中で多くの歌を収集し、またそれらの歌を理解し分類・配列することを通して、和歌についての知見を深めていった。そして得られた知見を自分の歌において確認し、『古今集』に随時反映させていったことは想像にかたくない。貫之は表現の〈型〉についてきわめて意識的な文学者であったが、そのような資質は歌集編纂作業の中で培われたものと見ることができる。先に稿者は歌集編纂の問題を念頭において『古今集』四季歌の表現分析を行なったが、本稿では恋歌をとりあげて、万葉相聞歌以来の〈型〉を継承する歌、『古今集』よみ人知らず歌の新たな動向を捉えた歌、紀貫之から始まる新しい〈型〉を用いた歌のそれぞれについて具体例を挙げて論じる。
著者
鈴木 宏子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.518-511, 2012-03

紀貫之は、最初の勅撰和歌集である『古今集』の編纂作業の中で多くの歌を収集し、またそれらの歌を理解し分類・配列することを通して、和歌についての知見を深めていった。そして得られた知見を自分の歌において確認し、『古今集』に随時反映させていったことは想像にかたくない。貫之は表現の〈型〉についてきわめて意識的な文学者であったが、そのような資質は歌集編纂作業の中で培われたものと見ることができる。先に稿者は歌集編纂の問題を念頭において『古今集』四季歌の表現分析を行なったが、本稿では恋歌をとりあげて、万葉相聞歌以来の〈型〉を継承する歌、『古今集』よみ人知らず歌の新たな動向を捉えた歌、紀貫之から始まる新しい〈型〉を用いた歌のそれぞれについて具体例を挙げて論じる。
著者
村松 成司 松浦 友功 服部 洋兒 服部 祐兒 村松 常司 BRODOWICZ Gary STAVRIANEAS Stasinos
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.381-387, 2004-02-28

本研究はセルフレジスタンストレーニング(SRT)の主観的強度の違いが生体に与える影響について検討した。今回は最大の強さ100SRTと100SRTの50%強度の50SRTを設定した。実験は40秒のSRT(右腕10回,左腕10回)を間に20秒の休息を挟んで5回行った。心拍数は50SRTと100SRTの間で有意な差が観察された。呼吸商は実験を通じて50SRTと100SRT状態の間に有意な差が見られた。酸素消費量,EMGは実験を通じて50SRTと100SRTの間に有意な差が観察された。血中乳酸濃度は50SRTではほとんど変化しなかったが,100SRTでは試技後に大きく増加した。結論として,SRTは生体に与える負荷強度を意識的にコントロールすることが可能であり,SRTがトレーニングだけでなく,リハビリテーションを目的としても利用することが可能であることが示された。
著者
花澤 寿
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.329-337, 2019-03

[要約] ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)は,進化論と神経生理学に基づき,Porges が提唱した自律神経系の適応反応に関する新しい理論である。この理論によると,哺乳類が獲得した新しい自律神経である腹側迷走神経と,それと連係協働する脳神経群が形成する腹側迷走神経複合体が,より原始的な自律神経(交感神経系,背側迷走神経系)をコントロールすることにより,最も適応的なストレス反応が可能になる。腹側迷走神経複合体が司るのは,人と人とのつながりと,安全・安心の感覚を結びつける社会的関わりシステムである。治療者と患者の関係性が重要な意味を持つ精神療法を,ポリヴェーガル理論を基礎において検討することにより,精神療法一般に共通する理論的基盤と実践的方法論が得られる可能性について考察した。
著者
飯塚 正明
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Chiba University (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
no.69, pp.307-310, 2021-03-01

[要約] 電気技術者の多くは,子供時代にラジオ製作から電気・電子技術に興味をもち,技術者の道に進んでいる者が少なくない。初めて作るラジオ教材は,AM ラジオである。これは,回路が簡単であることだけではなく,簡単な回路であることから,部品一つ一つが特性に影響をおよぼす回路であり,部品の改良と共に特性の改善が得られ,技術の核心に触れることが出来る。しかし,近年,このAM ラジオで受信可能なAM 放送の放送停止が進められている。我が国では,今日でもAM放送が続けられているが,すでに,海外では放送を停止した国もある。テレビ放送がアナログ放送から地上デジタル放送への変更にともない放送電波帯がVHF からUHF へと移動した。その結果,FM ラジオ放送の利用電波帯が広がり,ワイドFM となった。広がった電波帯にAM 放送と同じ放送が行われるようになり,FM ラジオだけで,FM 放送だけでなく,AM放送と同じ内容の受信も可能となった。これは,AM 放送電波帯の停止の可能性が高まったといえる。AM 放送が停止してしまうと,技術者育成のきっかけでもあるAM ラジオ教材が製作できなくなってしまう。本研究では,AM ラジオ教材にかわるFM ラジオ教材の検討を行った。FM ラジオでは,AM ラジオに比較し,復調回路が複雑である。AM ラジオでは,鉱石ラジオと呼ばれる無電源ラジオが作製教材の代表例である。無電源ラジオとして,FM 復調回路だけのラジオの検討を行った。筆者の環境では,電界強度が低く,放送の受信が出来ないため,増幅回路を検討した。回路が複雑なラジオでは,初心者の製作には困難であるため,トランジスタ1石で検討を行った。その結果,超再生方式のFM ラジオ回路であれば,増幅度を高くすることが可能であり,1石での回路が作製できることから,超再生FM ラジオ作製教材の検討を行った。
著者
久住 庄一郎 揚原 祥子 竹内 由紀子 原田 圭
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.363-372, 2018-03

[要約] 中学校や高等学校での音楽活動は,小学校におけるそれより格段に充実してくる。高等学校ともなれば身体的な発達も著しく,運動競技などと同様に,生徒の演奏能力は既に大人顔負けの場合も珍しくはない。ただ,それはほぼ部活動に限定された現象で,それ以外の生徒は小学校時代から音楽的スキルに大きな変化が無いのが実情ではないだろうか。これは個人差こそあれ,他の教科ではあまり考えられないケースであろう。本論文では,その原因を「ソルフェージュ教育の欠落」に見出した4人の教員養成に関わる教員が,様々な観点からその解決策を提言し,音楽的な本質をいかにして学校教育の中に見出していくべきかを論ずる。
著者
畑中 恒夫 小林 史尚 宮崎 隼人
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.349-353, 2008-03
被引用文献数
3

電化生活が進むにつれ,そこから発生する電磁波にさらされる機会が増え,電磁波の影響が心配されている。この電磁波が動物の学習行動に影響を及ぼす例が報告されているが,矛盾する報告もある。そこで,下等な昆虫のミツバチを用い,単純な連合学習である花の匂いと,蜜を吸う吻伸展反射の条件づけを行い,電磁波の影響を調べた。市販のマウス駆除器から出る複合された低周波の電磁波に曝露すると,連合学習の学習率が低下した。超低周波の電磁波は磁場成分が生体に作用すると考えられるので,50Hz,200Hz,300Hzの変動磁場に曝露すると,200Hzの変動磁場で学習率が低下し,超低周波電磁波は学習を阻害することがミツバチでも実証された。一方,定常強磁場下では学習率が増加し,磁場や超低周波電磁場はミツバチの磁気受容器を介して学習行動に影響する可能性が示唆された。
著者
平出 昌嗣
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.203-208, 2006-02-28

日本は湿気の多い国であり,その文化も,まるで霞に包まれたかのように,曖昧で,流動的で,しっとりした情緒を重んじる。一方,湿気が少なく,空気が澄んでいる西洋では,明るい光を当てるかのように,鮮やかなもの,明確なもの,ドライで理性的なものを好む。それは人の話し方や生き方,あるいは絵画や音楽や文芸にも見て取ることができる。例えば西洋の油絵は事物を立体感や重量感を持ってリアルに描き,日本の水墨画は,まるで霧がかったように,平面的であっさりしていて,何も描かない空白部分を多く持つ。言い換えれば,日本は包む文化であり,むき出しのもの,裸のものを隠そうとするが,西洋は広げる文化であり,覆いを取り払ってすべてを光の下に明らかにしようとする。文芸に描かれる理想の空間も,日本では人をやさしく包んでくれる子宮のような閉じられた空間であり,西洋は天から光が降り注ぐ明るく開かれた空間になる。
著者
妹尾 裕彦
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.317-332, 2015-03

「近未来石油枯渇論」は石油および石油開発に関する基本的知識を欠いた誤謬であり,「人類にとって利用可能と見込みうる石油の総量」は非常に多い。また,石油採掘量の増加に貢献しているイノベーションを概観すれば,「人類にとって利用可能と見込みうる石油の総量」がさらに伸びる余地が十二分にあることがわかる。「近未来石油枯渇論」に基づいた文明縮小という選択は,単に不要なだけでなく,未来人に対して不遜であり,しかも倫理的にも大きな問題を孕んでいる。化石燃料に依存した現代文明は今後も長らく存続し続けられるが,そのためにはイノベーションが肝要である。
著者
久保 桂子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.275-282, 2009-03

本研究は,フルタイム共働き夫婦の家事分担に影響を与える物理的・意識的要因を明らかにするとともに,共働きをしながらも家事分担には抵抗を感じる夫の意識とさまざまな性役割意識との関連を明らかにする。分析には,2005年に行った共働きの夫婦調査を用い,そのうち,18歳未満の子どもを持つフルタイムの共働き夫婦を対象とした。主な結果は以下のとおりである。妻の年収が高いほど,夫の通勤・勤務の合計時間が短いほど,夫の家事分担度が高いことが明らかとなった。さらに,夫が家事を行うことに対する抵抗感について,夫が抵抗感を持っている場合も,妻が持っている場合もともに,夫の家事分担度が低い傾向にある。また,夫が家事をすることに抵抗を感じるという性役割意識は,女性への母親役割,妻役割を期待する意識と強く関連していることが明らかとなった。This study examines the factors concerning the division of housework between couples and the husband's gender role attitudes. I studied 895 full-time dual-earner couples with children under eighteen years old from a 2005 survey of dual-earner couples. This study shows that wives' high income is positively related to the husband's role in doing housework. Husbands' long working hours are negatively related to the husband's role in doing housework. In cases involving couples who think husbands must not cook or do the laundry, these cases are also negatively related to the husband's role in doing housework. The husband's gender role attitude that men must not cook or do the laundry is positively related to the husband's positive attitudes toward the mother's role and wife's role.
著者
白川 健 三崎 凌
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.409-413, 2017-12

[要約] 本論文では,サッカーのPK戦を確率論を用いて分析するアルゴリズムを,中学・高校数学の授業作りの基本素材(元ネタ)となり得る数学モデルとして提案する。また提案モデルの「目標プロファイル」を具体的に構成・検証することによって,モデルが有するPK戦の分析アルゴリズムとしての説得力を数学的に考察する。更に得られた考察を基に提案モデルの達成度を評価し,今後の活動継続に向けて必要となる課題等についても検討する。
著者
伊藤 秀樹 堀下 歩美 保坂 亨
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.29-34, 2011-03

本研究では,長期欠席(不登校)の児童・生徒への支援の一環として教育委員会で行われている家庭訪問相談員事業について,A県3市の聞き取り調査の結果から,事業実施上の工夫と事業が抱える課題の背景・解決策を検討した。事業実施上の工夫については,活動の安全面の確保に焦点を当てて検討し,(1)学校・保護者・指導主事・相談員の4者による事前打ち合わせ,(2)支援事業の使い分け,(3)相談員の2人ペアでの家庭訪問,(4)保護者在宅時の訪問,という4つの工夫を見出した。事業が抱える課題については,(1)保護者の非協力・拒否,(2)義務教育終了後の対応,(3)支援の非継続性という3つの課題に着目し,その背景と解決策について検討を加えた。