著者
市川 裕介 小林 透
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1195-1203, 2011-03-15
被引用文献数
1

我々は,レコメンデーションなどでの利用を目的としたサイコグラフィック属性として,ユーザの多様性受容度をユーザ個々のWebアクセス履歴のべき乗則を利用して推定する手法の提案を行った.実履歴を用いた検証の結果,ユーザ個々のサイトアクセス傾向がべき乗分布を示すこと,べき指数が観測期間によらずユーザ固有の特性値であること,べき指数がユーザの多様性受容度に相関があることから,提案手法が有効であることを示した.This research aims for the establishment of the calculation method of user's psychological situation by a simple statistical work of the web access log. Each user's access tendency showed power law distribution as a result of analyzing the access log. There was a correlation between the user's behavior and the scaling exponent.
著者
田仲 理恵 新熊 亮一 板谷 聡子 小西 琢 吉永 直生 土井 伸一 山田 敬嗣 高橋 達郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.1549-1558, 2015-07-15

商業活動や社会活動においては,人々に情報を伝達して行動を促進する試みがしばしば行われる.社会活動では商業活動に比べて,情報受信者の情報や行動そのものへの興味が薄いことがあり,同じ情報伝達の枠組みでも行動に結び付きにくいという問題がある.そこで本論文では,商業活動において行動促進効果があるといわれているクチコミを用いた情報伝達に着目し,ソーシャルネットワーク上のクチコミによって社会行動を促進する手法について検討を行う.具体的には,ソーシャルネットワーク上での情報送信に対してインセンティブ報酬を与えるモデルを想定して,情報送信そのものに報酬を付与する送信基準方式と,情報送信後に相手が行動を起こした場合に情報送信者に報酬を付与する行動基準方式の2通りを比較した.114名の参加した社会実験結果から,行動基準方式の方が素早い行動が起きること,情報送信時に依頼的なクチコミを付加する方が素早い行動が起きること,行動基準方式は送信基準方式に比べて依頼的なクチコミを付加する割合が高いことが明らかになった.これより,行動基準方式を用いることで情報送信者は依頼的な内容のクチコミを作成する傾向が強まり,それにより行動促進効果があることが確かめられた.
著者
西村 章宏 土方 嘉徳 三輪 祥太郎 西田 正吾
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.972-982, 2015-03-15

マイクロブログサービスの1つであるTwitterでは,その時々で話題になる政治家や芸能人など有名人に関する一般ユーザの発言を豊富に得ることができる.さらに近年では,SNSから得られる評判情報をマーケティングやその他のサービスに応用しようという試みが活発に行われている.そこで本研究では,Twitterから得られる評判情報のうち,一般ユーザの有名人に関する発言とその発言を行ったユーザのプロフィールなどに着目する.これらの各情報源から得られるデータに対し,抽出の妨げとなるノイズへの前処理を経て,一般ユーザの観点が反映された特徴量であるトピックの抽出を行う.そして得られたトピックの比率をもとに人物の類似関係を獲得し,それをもとに各人物を平面上に配置することで,人物関係の可視化を行う.この可視化結果に対して,使用した情報源ごと,および可視化手法ごとに,妥当性と発見性に着目した特徴の分析を行う.Recently, it is popular to exploit users' comments or reviews in SNS for marketing research. Twitter, which is one of micro blog services, is one of the popular information sources used for the above purpose. We especially try to extract the information according to celebrities like politicians, actors, comedians, singers and so on. This will be useful for understanding the celebrities. In our study, we use ordinary people's tweet according to a celebrity and the user profile of the tweet's author. We develop a system that visualizes the relationship of celebrities from the viewpoint of ordinary people. For this purpose, we delete some noise text from the tweets, extract latent topics that present the celebrities' characteristics and allocate them on two dimensional plane based on the similarities of topics. We examine the visualization results from the viewpoint of validity and discovery.
著者
柿元健 門田暁人 亀井 靖高 〓本真佑 松本 健一 楠本 真二
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.1716-1724, 2009-07-15
被引用文献数
2

ソフトウェアの信頼性確保を目的として,faultの有無を推定するモデル(faultproneモジュール判別モデル)が数多く提案されている.しかし,どのようにテスト工数を割り当てるのかといったfault-proneモジュール判別モデルの判別結果の利用方法についての議論はほとんどされておらず,信頼性確保の効果は不明確であった.そこで,本論文では,faultの有無の判別,テスト工数の割当て,ソフトウェア信頼性の関係のモデル化を行い,TEAR(Test Effort Allocation and software Reliability)モデルを提案する.TEARモデルにより,与えられた総テスト工数の枠内で,ソフトウェア信頼性が最大となるような(モジュールごとの)テスト工数割当ての計画立案が可能となる.TEARモデルを用いてシミュレーションを行った結果,推定される判別精度が高い,もしくは,fault含有モジュールが少ない場合には,fault-proneモジュールに多くのテスト工数を割り当てた方がよく,推定される判別精度が低い,もしくは,fault含有モジュールを多く含む場合には,判別結果に基づいてテスト工数を割り当てるべきではないことが分かった.Various fault-prone detection models have been proposed to improve software reliability. However, while improvement of prediction accuracy was discussed, there was few discussion about how the models shuld be used in the field, i.e. how test effort should be allocated. Thus, improvement of software reliability by fault-prone module detection was not clear. In this paper, we proposed TEAR (Test Effort Allocation and software Reliability) model that represents the relationship among fault-prone detection, test effort allocation and software reliability. The result of simulations based on TEAR model showed that greater test effort should be allocated for fault-prone modules when prediction accuracy was high and/or when the number of faulty modules were small. On the other hand, fault-prone module detection should not be use when prediction accuracy was small or the number of faulty modules were large.
著者
莊司慶行 田中 克己
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.3515-3526, 2011-12-15

本研究では,ウェブコミュニケーションデータを用いることで,「面白い」や「泣ける」などの印象語に基づいたウェブ情報検索を実現する.「"C言語"に関する"分かりやすい"文書」を探す際,既存の検索エンジンでは,文書の本文中に「分かりやすい」という語が登場するかに基づき検索するため,望んだ文書を発見できない.ウェブ2.0サービスのログに含まれる,ウェブページに対するユーザのリアクションを利用し,クエリとして入力可能にすることで,このような読み手の受ける印象による検索を可能にする.This paper proposes the "Impression-based web search" as a new web search model by using Web2.0 contents. Users can input impression queries into the system, such as "interesting," "tear-jerker" and so on. Traditional web search engines could not find "easy-to-understand document about C-language" by the query "easy-to-understand, C-language" because they only focused on terms in main text of the document. The proposed system achieve above search with impression term queries by using readers' reactions in online communication sites like Twitter.
著者
高先 修平 井垣 宏 肥後 芳樹 楠本 真二
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.199-209, 2014-01-15

高度なソフトウェア技術者や高度ICT(Information and Communication Technology)人材の育成を目的として,ソフトウェア開発をテーマとしたPBL(Project Based Learning)と呼ばれる教育・学習手法が様々な形態で行われている.PBLでは,振り返りと呼ばれるプロジェクト中にあった問題の発見,原因の分析,対策の考案といった,プロジェクトを継続的に改善することを目的とした活動が重要視されている.ここで,問題の発見や原因の定量的で客観的な分析を行うためには,プロジェクト中に誰がどのようなタスクをいつ実施したかといった正確なタスク記録が必要不可欠である.しかしながらPBLでは,タスク記録時に記述漏れや入力誤りが発生することがある.実際に過去に行われた研究では,記録された全タスクのうち約40%ものチケットに何らかの誤りが存在していた.この問題の原因としては,タスク記録時の入力コストや,作業時間の計測コストの大きさがあげられる.そこで本研究では,タスク記録時の入力コストの削減と作業時間の自動計測を目的として,タスクボードとオンラインストレージを用いたタスク記録支援システム「TixRec」を提案する.タスクボードによってより直感的なタスクの変更や記録を実現し,オンラインストレージに保存された編集履歴を用いることで,チケットに記録されたタスクに対応するファイル情報を用いて,作業時間の自動計測を実現する.TixRecを用いた4人の被験者を対象とした評価実験により,タスク記録に要する時間が76%~93%削減され,ユーザビリティ評価においても,既存のチケットシステムより優位であることが確認された.作業時間の計測においても,誤差が平均26秒,最大でも146秒に収まっていた.In order to cultivate ICT (Information and Communication Technology) human resources, teaching activities called SDPBL (Software Development Project Based Learning) are widely performed. SDPBL is the educational technique which lets students acquire knowledge and skill spontaneously through practical software development. In SDPBL, a retrospective is regarded as important. It is intended to improve the project continuously through problem finding and root cause analysis. Moreover, this kind of analysis needs an accurate history of the project. However, such kinds of development history often include input errors and omissions. In a study made in the past, fourty percent of all recorded tickets included some errors like input omissions of start time or end time and measurement errors of working time. Therefore, we propose a system "TixRec" for the purpose of recording tasks and working time at a low cost, using online storage and task board UI. TixRec enables users to record tasks more intuitively. In addition, the online storage automatically preserves change logs of files on the user's PC. By using the change logs, TixRec calculates working time automatically. We implemented TixRec as a web application and conducted experiments on four subjects. As a result, we confirmed that time to record tasks is reduced about 84% and working time could be calculated with an error of less than 146 seconds per one ticket.
著者
金谷健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.201-209, 1994-02-15
参考文献数
38
被引用文献数
42

画像データを解析して3次元情報を抽出する場合に、通常は多数のデータに最小二乗法を適用して、ノイズに対するロバスト性を増している。本諭文ではまずコンピュータビジョンに典型的に現れる最小二乗法では、その重みを最適に選んでも解に統計的な偏差があることを指摘する。そして、統計解析によって偏差を除去する「くりこみ法」と呼ぷ手法を定式化する。これを消失点や出現点の推定、コニックの当てはめ、3次元運動解析に適用した例を示し、画像の誤差についての情報がなくても精度が向上することを確認する。
著者
田畑 孝一 杉本 重雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.286-293, 1989-03-15
被引用文献数
2

知識ベースシステムとのコミュニケーションをことばや数値を越えて情感の水準に近付けるためには コミュニケーションに視聴覚情報の積極的な導入を行う必要がある.本論文において 我々はそのようなシステムの方式として「視聴覚情報援用型知識ベースシステム(A Knowledge-based system with audio-visual aids:KS/AV)」 またKS/AVにおける知識表現方法として「オブジェクトベース述語論理(Predicate logic based on objects)」を提案した.オブジェクトベース述語論理においては 定義域上のすべての個体をSmalltalk-80のクラスの概念に基づいて定義し オプジェクトヘのメッセージ送受信のために 述語論理における関数の一つとしてmessage関数を導入した.本論文においてはビデオディスク タッチパネル付ディスプレイ等の視聴覚情報機器を接続したパーソナルコンピュータ上にKS/AVのプロトタイプを製作した.このプロトタイプでは視覚イメージに関して ピデオイメージやグラフィクスイメージのみならずそれらの合成イメージをオブジェクトとして定義した.イメージ表示やその応答入力はオブジェクトのメソッドとして記述した.このプロトタイプ上で幼児を利用者とする視聴覚情報援用型幼児向き読香相談システムを構築し 有効性を確かめた.
著者
福島 俊一 下村 秀樹 森 義和
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.500-510, 1996-04-15
被引用文献数
19

本論文では フリーピッチ手書き文字列の読み取りのために 新しい知識処理アルゴリズムである「文字タグ法」を提案する. 字形が多様で 文字サイズ・文字ピッチにばらつきがあり 文字の接触・入り組みなどもよく起きる手書き文字列の読み取りでは 誤切り出しや誤認識によって欠落した正解文字を補完する知識処理が不可欠である. 従来の知識処理方式は 単語辞書と候補文字列とを照合して単語候補を抽出したうえで その並びの妥当性を判定する2段構成である. このような従来法では 単語境界が不確定なケースをうまく扱えないことや 候補文字列と単語辞書との虫食い照合における組合せ爆発を避けると 強引に候補を切り捨てることになって最良解を保証できないことなどが大きな問題になっている. これに対して 本論文で提案する文字タグ法は 文字を基本単位としてタグを付与し その位置関係をチェックしながら連結していく戦略をとる. 単語内の文字の連結と単語間の文字の連結とを同等に扱って動的計画法を適用することで 最良解を保証し かつ 入力文字列の長さLと候補多重度Mに対してO(L^2・M^2)またはO(L・M^2)の時間計算量を達成している. さらに 手書き宛名住所の地名領域の読み取りに文字タグ法を応用し 文字切り出しや個別文字認識のあらゆる組合せと正解文字欠落の可能性の中から最良解を高速に探索する文字タグ法の能力を確認した.This paper proposes a new algorithm for post-processing in a hand-written character reader. Hand-written characters have such characteristics as various styles, irregularity in size and pitch, frequency of character overlapping, and so on. These characteristics bring difficulty into hand-written character reading systems. Post-processing to correct mis-segmentation and mis-recognition by linguistic information is an important approach to accurate reading. Conventional post-processing methods consist of two steps. In the first step, word candidates are extracted by word dictionary looking-up. In the second step, combinations of words are evaluated. These conventional methods have the following problems. The first problem is that they don't work well when word boundary segmentation is missed. The second one is combinational time complexity, required for examinations of all combinations of character segmentation candidates and character recognition candidates by approximate matching. In the algorithm proposed in this paper, character candidates are tagged with position-in-word information, and the position-in-word tags are connected by a dynamic programming method. This algorithm has the advantage of time complexity O(L^2・M^2) or O(L・M^2) for optimum path search, where L is input length, and M is average number of segmentation and recognition candidates per character. This paper also describes its implementation and evaluation results in hand-written Japanese address reading.
著者
山本 陽平 金森 由博 三谷 純
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.1507-1516, 2015-06-15

本論文では,両面に色の付いた単位正方形をピースとする組合せパズルについて議論する.ピースは両面に色を付けることができ,すべてのピースを過不足なく使用してあらかじめ指定された色模様(「正答」と呼ぶ)を復元することを目的とする.正答が2つ以下であれば,ピースの各面に適切に色を割り当てることで,必ずすべての正答を再構成できる.正答が3つ以上ある場合には,正答間で共通する色をうまく再利用する必要があり,場合によってはすべての正答を実現するピースの集合が存在しないこともあるため,パズルの問題を作成するときには注意が必要となる.そこで,複数の正答が入力として与えられたときに,その正答を実現できるピースの集合が存在するか否かを判定するための条件式と,存在する場合にはピースの生成を行う手法を提案する.そうでない場合には,正答の色合いを調整して,ピースを生成可能にする手法の提案も行う.いくつかの例題で提案手法の実験を行い,実際にパズルを試作したので報告する.
著者
田村 拓己 久保田 真一郎 油田 健太郎 片山 徹郎 朴 美娘 岡崎 直宣
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.808-818, 2015-03-15

ボットによるWebサービスの不正利用対策として,CAPTCHAと呼ばれる反転チューリングテストが利用されている.Webサイトへの導入のしやすさや回答方式の理解のしやすさから,文字列の画像を用いたCAPTCHA方式が広く普及している.しかし,ボットによる文字認識技術の発展が著しく,高い確率でテストが突破されるなど,その脆弱性が指摘されている.高度化するボットの文字認識技術に対抗し,解読難度を高くしたCAPTCHAや画像識別などの人間の高度な能力を利用するCAPTCHAが提案されているが,利便性が低いことや特定の攻撃に弱い点が問題となっている.本稿では,人間特有の画像認識能力を利用することで,利便性を保ち十分な堅牢性を持つ新たなCAPTCHA方式を提案する.提案手法は,判定に利用する提示画像に正答の文字列を含まないようにすることで文字認識攻撃に耐性を持たせた.また,提示画像には,人間が画像を補完して認識できる程度の妨害図形を付加し,堅牢性を向上させた.提案手法の有効性を確認するため,画像CAPTCHA方式において考えられる攻撃への耐性を考察し,利便性の評価としてアンケートによるユーザビリティ評価を行った.その結果,システム実装に必要な妨害図形の量に関する閾値を明らかにし,提案手法が攻撃に対して十分な耐性を持ち,ユーザビリティが優れていることを示した.A reversal turing test called CAPTCHA is used in many webservice sites to prevent the automatic program called bots from making unauthorized accounts. The CAPTCHA with images of correct answer string, called as the text-based CAPTCHA, is widely prevalent because of an ease implementing in the website. The optical character recognition technologies enable bots solve the text-based CAPTCHA automatically. Any researchers have pointed out the vulnerability of the text-based CAPTCHA. Absorbing the vulnerability of the text-based CAPTCHA, the image-based CAPTCHA is proposed, which use the human abilities to discern objects in images. However, the existing image-based CAPTCHAs also have problems about usability and robustness. In this paper, we propose a new image-based CAPTCHA using images without a correct answer string and with obstruction figures, to achieve high usability and robustness. In order to confirm a effectiveness of the proposed method, we argue to absorb some considerable attacks in the image-based CAPTCHA, and conduct assessment of usability through our questionnaire. The results show that the proposed system absorb the attacks adequately and has usability.
著者
西村 則久 明関賢太郎 安村 通晃
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.4388-4395, 1999-12-15
被引用文献数
8

外国語作文の自動添削では,通常のCAIソフトウェアは数例の正解のみを内部に持っている場合が多いが,この場合,非常に簡単な問題を除いては多様な解答例に対応することができない.本論文で提案する英作文の自動添削手法では,正解の一括表現を用いて多様な解答例に対応することが可能である.システムをネットワーク上で実現すれば,一元管理の行き届いた英作文CAIを実践できる.本研究ではシステムを試作し,評価を行った.本論文ではシステムの仕組み,評価結果について述べると同時に正解一括表現法としてBUD(Basic Universal Description)を提案する.Concerning the automatic correction of foreign language composition exercises, conventional software on the market contains only a few correct answers. This approach, however, cannot handle a lot of various correct answers, except when the question is simple. We propose a method of automatic correction of English composition exercises which deals with an enormous number of correct answers, making use of multiple-unit representation which expresses multiple sentences all together. Network-based implementation of the system will enable practice of CAI for English composition and its unified management. We built a prototype system and made some evaluations. Here we describe the mechanism of the system and the result of the evaluations. We propose BUD (Basic Universal Description) as a multiple-unit notation.
著者
桃井 貞美
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.461-467, 1994-03-15

コンピュータグラフィックスによる木目の表現手法としては、実写画像をマッピングする方法と手続きにより三次元テクスチャを発生させマッピングする方法がある。後者は前者に比較してメモリ領域の節約、三次元連続性などの点で優れているが、リアリティーの向上が課題となっている。本論文では、従来よりもリアルなテクスチャを合成可能な、算術的手続きによる木目の表現方法について述ぺる。まず、木の成長過程における枝分かれを考慮に入れた骨格形状のモデルを提案し、このモデルを用いて年輪状のテクスチャを三次元的に生成する手法を示す。次に、この手法を拡張し、自然の木材で観察される、方角による年輪密度の違い、樹齢による成長速度の変化および年輪の揺らぎなどの現象を簡単なパラメータと計算式により表現可能であることを示す。本手法は、目的とする樹種の骨格的特徴や形態的特徴を表現でき、さまざまな切断面こおいて、それに対応した多様なテクスチャを合成可能である。部品数が多く実写画像を用意するのが困難な場合には、本手法は特に有用である。また、従来の手続き型手法と比較して、節の護現が簡単にできるので、唐松の小径材など節を特徴とする素材を用いた製品のシミュレーションにおいて、画像のリアリティーを向上させることができる。
著者
河合 直樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.586-593, 2000-03-15
被引用文献数
3

木目模様は最も代表的なテクスチャの1つであり,コンピュータグラフィクスによるソリッドテクスチャ生成技法も種々報告されている.従来の技法では木目の年輪模様の再現に注力されてきたが,年輪以外の微細組織の表現や繊維の流れに関する研究は少なく,得られる質感は十分ではなかった.本論文では樹木の内部構造に着目し,木理と呼ばれる樹木内部の繊維配向性をモデル化する.代表的な木理のパターンと一般的な木理の記述手法を示した後,レンダリング時に必要な局所的な座標変換に基づいたモデルを示す.次に微細組織の例として道管と呼ばれる鉛直な組織について,代表的なパターンのモデリング技法を示し,呈示した座標変換を作用させて表示することで,木理のモデルの妥当性を検証する.続いて微細組織の簡易的な表現として提案されている明度シフト法を,年輪構造と微細繊維組織を一元的に記述する手法として一般化し,木理による座標変換を作用させることにより,樹木構造の合理的な記述手法を提案する.最後に繊維の勾配に依存する鏡面反射モデルを導入し,木理の影響で材面に現れる光源と視点に依存する反射現象をシミュレーションする.これらの手法を導入することで,従来法よりもリアルな質感表現が可能になり,CG映像や産業デザインにおいて有用な品質高いソリッドテクスチャを生成することが可能な技法を示すことができた.Wooden grain is one of the most representative of textures. However the solid textures of wooden grain are not enough to represent the reality of a material because of their lack of microstructures and fiber stream, with the exception of annual rings. In this paper, a geometric model is proposed for wooden grain and fiber stream by concentrating on the internal structures of wood. Representative features of wooden grain are described and geometric transformations for rendering are introduced. Geometric models of vessels are given as examples of typical microstructures. Then the effect of modeled grain is verified by calculating the image of the vessels on lumber. The shifting brightness technique is also extended as an easy way to express microscopic fibers. It is integrated technique for expressing all the vertical structures including the annual rings. Finally a specular reflection model which depends on the gradient of fibers is introduced. Then cross grain, which is an anisotropic reflection caused by varied fiber gradients, is simulated. This new procedure can generate more realistic wooden textures than before. This procedure makes it possible to provide high-quality solid textures which are useful for CG production and industrial designs.
著者
天目 隆平 柴田 史久 田村 秀行
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.2894-2899, 2009-12-15

映画制作を支援する複合現実型可視化技術MR-PreVizにおいて,一連の複雑なアクションを,あらかじめ動作ごとに分解し収録しておいた基本要素から合成できればきわめて有用である.本論文では,プロの殺陣師である中村健人氏の協力のもと,我々が定義した時代劇剣戟アクションの基本要素データについて,および基本要素から複雑な剣劇アクションを生成する手法について述べる.In MR-PreViz, which supports filmmaking using mixed reality techniques, it is useful to realize synthesis of complicated action scenes from action building blocks which are archived in advance. This paper describes building blocks of sword fight actions which were defined by us in conjunction with a professional action coordinator, Taketo Nakamura and our synthesizing method of complicated sword fight action scenes from action building blocks.
著者
田中 真 内田 純平 宮岡 祐一郎 戸川 望 柳澤 政生 大附 辰夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.1383-1394, 2005-06-15
被引用文献数
11

演算器ごとに専用のローカルレジスタを持たせるレジスタ分散型アーキテクチャを用いると,レジスタ間データ転送を利用することによって配線遅延が回路の性能に与える影響を削減することが可能である.しかし,高位合成のスケジューリングの段階からフロアプラン情報を考慮する必要がある.本論文では,レジスタ分散型をターゲットアーキテクチャとし,(1) スケジューリング,(2) レジスタバインディング,(3) モジュール配置,の工程を繰り返し,(3) から得られたフロアプラン情報を(1),(3) の工程にフィードバックすることによって,解(合成結果)を収束させる高位合成手法を提案する.フロアプラン情報をスケジューリングに反映させるために,フィードバックされた配置情報とタイミング制約に基づいて,レジスタ間データ転送を利用することができるスケジューリング手法を提案する.また,レジスタ分散型に対応したレジスタバインディング手法を提案する.提案バインディング手法では,ローカルレジスタを入力側と出力側で区別し,出力側レジスタで可能な限りデータを保持することにより,総レジスタ数を削減する.提案手法により,フロアプランを考慮したレジスタ間データ転送を用いた回路を解として得ることが可能となる.計算機実験によって,提案手法の有効性を示す.By using a distributed-register architecture, we can synthesize the circuits with register-toregister data transfer, and can reduce influence of interconnect delay. In this paper, we propose a high-level synthesis method targeting a distributed-register architecture. Our method repeats (1) scheduling, (2) register binding, (3) module placement processes, and feeds back floorplan information from (3) to (1) in order to decide which functional units use registertoregister data transfers. Our scheduling algorithm can use register-to-register data transfer based on floorplan and timing constraint. We also propose a register binding algorithm on a distributed-register architecture. We show effectiveness of the proposed methods through experimental results.
著者
寒川 光
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.10, pp.1183-1192, 1992-10-15
被引用文献数
6

スーパスカラ計算機では算術演算 性能が従来のスカラ計算機に比して飛躍的に強化された.その結果データ移動(ロード/ストア命令)の計算時間に占める比率が増大した.計算速度を考慮するプログラムは計算順序を変更しデータ移動を削減する方法で 大きなチューニング効果をあげられる場合がある.この方法はFortranプログラムからは透過なレジスタへのロード命令の実行やキャッシュヘのデータのステージングの回数を 媒介的な方法(計算密度 キャッシュ利用密度)で把え 計算機の個性に合わせた最適化を狙うものである.行列行列積和の例題では約3倍という大幅なチューニング効果を達成した.この方法をプログラミング技法の問題としてでは江く 線形代数計算の問題として ブロック化された定式化で記述すると ベクトル計算機や階層型記憶装置をもつ計算機にも応用することができ 見通しが良くなる.
著者
森 信介 長尾 眞
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.2093-2100, 1998-07-15

自然言語処理において,辞書は単語の文法的機能や意味の情報源として必要不可欠であり,辞書に登録されていない単語を減少させるため,辞書の語彙を増強する努力がなされている.新語や専門用語は絶えず増え続けているため,辞書作成の作業は多大な労力を要するのみならず,各解析段階での未知語との遭遇は避けらず,大きな問題の1つとなっている.この問題を解決するため,本論文では,nグラム統計を用いて,コーパスからの単語の抽出とその単語が属する品詞の推定を同時に行う方法を提案する.この方法は,同一品詞に属する単語の前後に位置する文字列の分布は類似するという仮定に基づく.実験の結果,本手法が未知語の品詞推定や辞書構築に有効であることが確認された.
著者
Doudou Fall Takeshi Okuda Youki Kadobayashi Suguru Yamaguchi
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, 2015-06-15

Cloud computing has revolutionized information technology, in that It allows enterprises and users to lower computing expenses by outsourcing their needs to a cloud service provider. However, despite all the benefits it brings, cloud computing raises several security concerns that have not yet been fully addressed to a satisfactory note. Indeed, by outsourcing its operations, a client surrenders control to the service provider and needs assurance that data is dealt with in an appropriate manner. Furthermore, the most inherent security issue of cloud computing is multi-tenancy. Cloud computing is a shared platform where users' data are hosted in the same physical infrastructure. A malicious user can exploit this fact to steal the data of the users whom he or she is sharing the platform with. To address the aforementioned security issues, we propose a security risk quantification method that will allow users and cloud computing administrators to measure the security level of a given cloud ecosystem. Our risk quantification method is an adaptation of the fault tree analysis, which is a modeling tool that has proven to be highly effective in mission-critical systems. We replaced the faults by the probable vulnerabilities in a cloud system, and with the help of the common vulnerability scoring system, we were able to generate the risk formula. In addition to addressing the previously mentioned issues, we were also able to quantify the security risks of a popular cloud management stack, and propose an architecture where users can evaluate and rank different cloud service providers.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.23(2015) No.4 (online)------------------------------
著者
沖 真帆 塚田 浩二 栗原 一貴 椎尾 一郎
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.1586-1598, 2011-04-15

本研究では,家庭内の様子をオルゴールのメタファを用いて音で提示するインタフェース「イルゴール」を提案する.イルゴールの背面に設置したぜんまいを巻いてふたを開くと,オルゴールのBGMに乗せて,過去の家庭の音が聞こえてくる.このように,オルゴールで過去の思い出を振り返るような感覚で家庭の様子を知ることができる.本論文では,実験住宅に複数のセンサを設置してユーザの行動を取得し,イルゴールを用いて生活状況が確認できるかを検証した.We propose a music-box-type interface, "HomeOrgel", that can express various activities in the home with sound. Users can also control the volume and contents using the usual methods for controlling a music box: opening the cover and winding a spring. Users can hear the sounds of past home activities, such as conversations and opening/closing doors, with the background music (BGM) mechanism of the music box. This paper describes the concepts, implementation and evaluation of the HomeOrgel system.