著者
清 雄一 竹之内 隆夫 大須賀 昭彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.1977-1987, 2015-10-15

データを外部のストレージ事業者に預けることが多くなっているが,プライバシや機密情報管理の観点から問題が生じる場合がある.データおよびその索引を暗号化する手法が有効であるが,検索等,データ処理の効率性を低下させることは避けたい.このような課題に対し,Bloom Filterというデータ構造を用いる情報管理エージェントが提案されている.しかし,安全性を担保するためには,検索速度が悪化するという問題がある.これは検索時にクラウド上のデータ数に比例した回数だけハッシュ値を計算する必要が生じるためである.提案手法では,Bloom Filterを利用し,ハッシュ値の計算のみではなく,素数によるMOD演算を併用することで,これまでと同レベルの安全性を保持したうえで検索速度を向上させる.793万ドキュメントを利用したシミュレーション評価により,従来約30.2秒必要だった検索が0.7秒程度でできることを示す.
著者
中山 浩太郎 原 隆浩 西尾 章治郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.2917-2928, 2006-10-15

シソーラス辞書は,情報検索や自然言語処理,対話エージェントなどの研究領域において幅広くその有用性が実証されてきた.しかし,自然言語処理などによる従来のシソーラス辞書自動構築では,形態素解析や同義語・多義語の処理など,語の関連性を解析する前段階の処理において精度低下を招く要因がいくつかある.また,辞書作成時と利用時のタイムラグにより最新の語や概念への対応が困難であるという問題もある.そこで本論文では,これら2 つの問題を解決するために,ここ数年で急速にコンテンツ量を増加させたWiki ベースの百科辞典である「Wikipedia」に対し,Web マイニングの手法を適用することでシソーラス辞書を自動構築する方法を提案する.
著者
大越 匡 野崎 大幹 フリアン ラモス 中澤 仁 アニンド Kデイ 徳田 英幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.1944-1958, 2015-10-15

来たるべきスマート社会においては,多種多様なアプリケーションやサービスが生まれ,ユーザはモバイル/ウェアラブル端末を含む多様なデバイスを複数併用してそれらを利用し,ユーザに対する情報は増える一方,ユーザの「注意」(アテンション)は貴重な資源となり,コンピューティングにおけるボトルネックとなる.本研究では,コンピュータシステムから多種多様な情報通知が行われる状況において,ユーザの認知負荷上昇を抑制できる情報通知のタイミングを検知する基盤技術「Attelia」を提案する.Atteliaはユーザの様々なモバイル/ウェアラブルデバイス上で,生体センサを必要とせず,多様なサービス・アプリケーション側への改変を必要とせず動作し,実時間で情報通知タイミングを検知する.本稿ではスマートフォン上でのAtteliaプロトタイプ実装に基づき,その有効性を示すため被験者30人による16日間の研究室外ユーザ評価実験を行った.その結果Atteliaが検知したタイミングでの情報通知は,ユーザの認知負荷を33.3%減少させる効果を確認できた.
著者
井上 良太 白松 俊 大囿 忠親 新谷 虎松
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.2011-2021, 2015-10-15

発表中における発表者と聴衆とのインタラクションを想定したプレゼンテーションに対する支援が求められている.発表中のフィードバックは,聴衆の理解を支援する反面,発表の妨げになる可能性がある.本研究では,発表中のプレゼンテーション資料上において,発表者および聴衆間のリアルタイムなインタラクションを可能にするための新たなプレゼンテーション支援システムを試作した.本システムにおいて,(1)発表中のプレゼンテーション資料上でのリアルタイムなフィードバック共有,(2)プレゼンテーション資料へのフィードバックの保存,および(3)既存プレゼンテーションシステムへのWebブラウザによるフィードバックが可能の3点を実現した.本論文では,本システムにおけるインタラクティブなプレゼンテーションのための要件および実装を示す.さらに,評価実験により本システムの有効性を示す.
著者
行野 顕正 田中 省作 冨浦洋一 柴田 雅博
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.365-374, 2007-01-15
被引用文献数
1 2

スラッシュ・リーディングとは,意味のかたまりごとにスラッシュで区切られた英文を読むことにより,読解力の向上を目指す学習法である.多くのスラッシュ付き英文を読むことで,学習効果が上がると考えられるが,現在のところ十分な文書数のある学習教材が存在しないという問題がある.本稿では,統計的アプローチを用いて任意の英文にスラッシュを自動的に挿入する手法を提案する.英文中のスラッシュの位置を定める主な要因は,英文の部分的な構文構造・セグメント長のバランス・一部の単語であるという仮定に基づき,パラメトリックな確率モデルおよびSVM を構築する.既存の教材を学習データとしてモデルを学習することで,その教材のスラッシュ挿入規則を模倣したスラッシュ付き英文を作ることができる.3 つの既存教材を対象とした実験では,提案手法が,様々な教材におけるスラッシュ挿入規則を,従来手法よりも高い適合率・再現率で模倣できるという結果が示されている.In Slash Reading, learners read English sentences separated into segments (sense groups) with slashes to improve their reading skills. The more texts for Slash Reading a learner read, the more effect of learning could be expected. However, there are not enough materials for Slash Reading. This paper proposes methods for transforming automatically a plain sentence into a slashed sentence based on statistical approaches. A parametric model and a SVM model are built on the assumption that the factors to decide where to insert slashes into a sentence are a portion of the syntactic structure of the sentence, the lengths of the segments and words around the slashes. The models are learned from an existing material for Slash Reading. The systems based on these models, therefore, can transform automatically a plain sentence into a slashed sentence by imitating positions of slashes in the material. The results of the experiments using existing materials for Slash Reading indicate that the proposed methods imitate positions of slashes of the materials with the higher precision and recall than the previous methods.
著者
松本 亮介 岡部 寿男
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.2451-2460, 2014-11-15

Webサービスの大規模・複雑化にともない,Webアプリケーションの開発だけでなく,Webサーバソフトウェアの機能拡張も必要になる場合が多い.Webサーバの機能拡張において,高速かつ軽量に動作することを重視した場合,C言語による実装が主流であったが,生産性や保守性を考慮した場合はスクリプト言語で機能拡張を行う手法も提供されている.しかし,従来手法は,Webアプリケーションの実装だけでなく,Webサーバの内部処理を拡張することを主目的とした場合,高速性・省メモリ・安全性の面で課題が残る.そこで,スクリプト言語で安全に機能拡張でき,かつ,高速・省メモリに動作するWebサーバの機能拡張支援機構を提案する.Webサーバプロセスから内部処理としてスクリプトが呼び出された際,高速に処理するために,インタプリタの状態を保存する状態遷移保存領域の生成を,サーバプロセス起動時に生成しておいて,それを複数のスクリプトで共有して実行するアーキテクチャをとった.また,メモリ増加量を低減し,かつ,状態遷移保存領域を共有することにより生じるスクリプト間の干渉を防止して安全に機能拡張するために,スクリプト実行後に状態遷移保存領域からメモリ増加の原因となるバイトコード,および,任意のグローバル変数・例外フラグを解放するようにした.このアーキテクチャの実装には,組み込みスクリプト言語mrubyとApacheを利用し,Rubyスクリプトによって容易にApache内部の機能拡張を行えるようにした.このApacheの機能拡張支援機構をmod_mrubyと呼ぶことにする.As the increase of large-scale and complex Web services, not only a development of Web applications but also an implementation of Web server extensions is required in many cases. The Web server extensions were mainly implemented in C language because of fast and memory-efficient behavior, and extension methods using scripting language also are provided with consideration of maintainability and productivity. However, if the existing methods primarily intended to enhance not the implementation of Web applications but the implementation of internal processing of the Web server, the problem remains in terms of fast, memory-efficiency and safety. Therefore, we propose a fast and memory-efficient Web server extension mechanism using scripting language. We design the architecture that a server process create the region to save the state of the interpreter at the server process startup, and multiple scripts share the region in order to process fast when the script is called as internal processing from a Web server process. The server process free any global variables, the exception flag and the byte-code which cause the increase of memory usage mainly, in order to reduce the memory usage and extend safely by preventing interference between each scripts because of sharing the region. We implement the mechanism that can extend the internal processing of Apache easily by Ruby scripts using Apache and embeddable scripting language mruby. It's called "mod_mruby".
著者
小嶋 秀樹 伊藤 昭
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.482-489, 1997-03-15

本論文では,単語間の意味距離を文脈依存的に計算する手法を提案する.各単語は,英語辞書から抽出された多次元ベクトルとして,意味空間と呼ばれるベクトル空間における点に写像される.文脈から独立した意味距離は,このベクトル間の距離として計算すればよい.文脈に依存した意味距離は「意味空間のスケール変換」によって計算する.文脈の手がかりとして単語(キーワードなど)の集合が与えられると,この単語集合が均整のとれた分布を持つように,意味空間の各次元のスケールを拡大・縮小する.このスケール変換によって,意味空間における任意の2単語間の距離は与えられた単語集合の意味的な分布に依存した値となる.先行テキストに基づく後続単語の予測によって本手法を評価した結果,本手法が先行テキストの文脈をよくとらえていることを確かめた.
著者
鈴木 聡 鈴木 宏昭
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.3150-3158, 2011-12-15

レポートライティングにおいて,レポートに関連する文献を深く読解し,その内容に対する書き手である学習者の意見を構築することは不可欠である.文献を深く読解するためには,文献に下線・コメント(マーキング)を付与しながら文献の各部分を吟味しつつ読み込むことが重要である.そして,学習者の意見を構築するためには,論理的に考えて文献の問題点を探るよりも,できるだけ直感的・感情的に反応して学習者の意見をコメントの形で外化する方が有効であることが示されている.しかし,そうしたコメントには学習者の独善的な意見や,それでもなお論理的な欠陥を含む意見が含まれている可能性がある.そこで,そのようなコメントの問題点を修正する方法として,学習者同士がマーキングを共有し,相互にコメントし合うことが有効と考えられる.本研究では,以上のプロセスをWeb上で行えるシステムEMU(Emotional and Motivational Underliner)を開発・運用し,学習者がどのように以上のプロセスを進めるのかについて分析した.その結果,良いレポートが書ける学習者は,そうでない学習者と比べ,文献内容に否定的・懐疑的なマーキングを中心に着目し,そのマーキングに対して肯定的なコメントを多く産出する傾向がみられた.この結果をふまえ,今後の分析,およびシステムの機能の追加・修正の方針についても論じる.In writing an academic essay, it is indispensable for learners to deeply understand related documents and to build arguments to claim their opinions. To understand the documents, adding underlines and annotations on them is crucial. Besides, to build arguments, previous studies suggest that it is more effective to externalize learners' opinions based on their intuitive and affective response than to logically deliberate. Nevertheless, there should be inappropriate and illogical thought in such learners' opinions. To improve the opinions, sharing the opinions among learners and adding comments on the opinions can be effective. In this study, we are developing the EMU (Emotional and Motivational Underliner) system which enables learners to add annotations, share the annotations among them, and add comments on others' annotations on the Web. We analyzed usage of the EMU system in a class for undergraduate students. The analysis implied that learners who wrote good essays tend to focus on the others' annotations which represents negative and skeptical attitude to the document, and add affirmative comments on such annotations. Discussion on further analysis, and addition and modification of the EMU system follows.
著者
早川 卓弥 土方 嘉徳 西田 正吾
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.1929-1942, 2015-09-15

ニコニコ動画をはじめとして,動画の再生に同期して表示される動画コメントを投稿可能な動画共有サービスが広まっている.本研究では,動画コメントから面白いコメントを抽出する手法を提案する.この手法ではコメントに対する他のユーザの反応コメントを利用している.反応コメントの推定を動画時間と実時間という2つの時間軸から行い,コメント量の時間的変化から面白いコメントを抽出する.抽出したコメントに対し,動画サービスに備わっているコメントの評価機能による得票数との比較と,複数人の評価者による面白いコメントかどうかの判定結果との比較により,評価を行った.結果として,2種類の時間情報を用いることで面白いコメントを抽出することができる可能性があることが分かった.
著者
石塚 正也 高田 哲司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.1877-1888, 2015-09-15

携帯端末で個人認証を行う利用者にとって覗き見攻撃は現実的な脅威の1つである.この脅威に対する既存の対策方法は,入力操作や画面を隠すというほかにいくつかの提案がなされているが,それらの提案手法には入力手法の複雑化や学習負荷,秘密情報の増加にともなう記憶負担の増大,専用デバイスが別途必要などの問題がある.これに対して本論文では,現時点において入手可能なスマートフォンで暗証番号認証を行うことを想定し,スマートフォンの振動機能を応用することで覗き見攻撃への安全性を向上させうる暗証番号入力手法CCC(Circle Chameleon Cursor)を考案した.振動機能の利用により,CCCは視覚的情報による秘密情報の特定を困難にしつつ,認証操作時における認証端末と利用者間での秘密情報共有を可能にする.またその共有秘密を既存のダイヤルによる暗証番号入力操作に応用することにより,最小限の学習負担と記憶負担増加量ならびに別途専用デバイスは不要という利点を持つ入力手法となっている.このアイデアを基にAndroidスマートフォンアプリとしてプロトタイプを実装し,被験者による攻撃実験を実施した.その結果,3つの利用状況において認証操作を録画した動画記録から入力値を正しく特定できた被験者は0人という結果を得た.
著者
栗山 繁
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.1657-1666, 2015-08-15

画像検索では各データに付与された関連キーワードをクエリとして用いる方法が一般的であるが,画像認識の分野では類似のシーンや物体を含む画像をクエリとして用い,その特徴量から類似内容の画像を検索する手法が数多く提案されている.イラスト素材となるクリップアート等の画像は,描かれている内容だけでなく作画のスタイルでも絞り込み検索ができれば,画風や画調に統一感のあるコンテンツを制作する際に役立つものと考えられる.本論文では,作画スタイルが類似したクリップアートやイラスト等の素材画像を検索する際等に利活用できるスタイル識別子の生成方法を提案する.数千枚のイラスト画像群を用いた実験により,50バイト以下の識別子で既存手法よりも高い検索精度が得られることを確認した.
著者
徳差 雄太 松谷 健史 空閑 洋平 中村 修
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.1593-1603, 2015-08-15

遠隔地間におけるより複雑なインタラクションのために,低遅延な映像通信システムがますます求められている.一般的な民生用カメラではクロックを同期するためのクロック入力が利用できないため,送受信間で発生するクロックの誤差を吸収するバッファが必須となり,そのバッファリングによって通信遅延が増加していた.そこで,本論文では,民生用カメラおよびディスプレイを用いて,HD画質の非圧縮伝送を行うための低遅延映像通信システムを市販のFPGAボードを用いて設計実装した.送受信間の映像同期信号のジッタを最小限に抑えるための同期システムをFPGA上に実現し,受信側のバッファを最小限に抑えている.本映像通信システムの通信遅延とそのジッタを高輝度LEDと照度センサを用いて計測したところ,カメラとディスプレイを除くシステム間における遅延を1ms以内に抑えることができた.これは同期機構を用いない市販の映像通信システムにおける遅延のたかだか5%であり,この差は体感的にも有意である.
著者
金久保 正明
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.1937-1950, 2013-07-15

近年,いわゆる「ことば工学」の一環としてシステムに駄洒落を自動生成させる試みが盛んになり,駄洒落に基づくなぞなぞの生成等,様々な応用のほか,面白い駄洒落を自動的に絞り込む方法等も模索されている.一方,形態素解析では入力文に対して複数の形態素解析結果が得られることがあり,このとき意図されていなかった解析結果は駄洒落として見なすことができる.また,駄洒落と見なせる複数の文の間では,共通する読みの平仮名文字列における双方の単語区切り位置が食い違う場合もあり,これらは意外性の高い駄洒落になると思われる.そこで,本論文では形態素解析を類音に拡張し,文節レベルの変換が可能なシステムを提案する.駄洒落の面白さを高めるため,通俗的な名詞群を基本体言とし,他の単語もそれらと連接する可能性の高いもので揃えた.区切り位置の異なる文が生成されやすくするため,短い単語を増やし,特に文頭,文末に来る読み1字の単語を多く登録するような工夫をしている.詳細な試験評価により,一定レベルの意外性,面白さを有する変換文の生成が確認された.Two different sentences which resemble each other in pronunciation are humourous. Japanese language morphological analysis systems can make two different sentences which have pronunciations which are in step with each other. This paper proposes the generation system of sentences which sound like entered sentences by morphological analysis manner. The proposed system has something low class word database, to generate funny sentences. This paper shows subjects experiments in order to confirm the validity of the proposed system.
著者
安原 宏 小山 法孝
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.1449-1455, 1995-06-15

近年、計算機を用いた文書整形技術は格段に進歩してきた。TEXと呼ばれる自動組版システムやPOSTSCRIPTと呼ばれる文字図形の記述言語の出現で電子出版が容易にできるようになった。これらの技術を利用すると従来の日本語行組版を変えるような新しい試みが可能となる。本論文では、日本語のべた詰め表記に対して欧米言語で取られているような単語分かち書きに近い手法の文書整形を提案し、実験システムの概要を述べる。整形処理は整形規則に基づいて実行しており、文書の種類によって異なる整形を施すことが可能となる。整形規則は単語や文字のサイズ、単語や文字の間隔を単語の見出しや品詞、構文構造などを用いて記述するため自然言語処理技術が必須となる。これらの規則を組み合わせると特定の単語を大きくしたり、助詞を小さくしたり、平仮名の続く文節の間には少し隙間を入れたりすることが可能になる。実験の結果、従来のモノスペース組版と比較してプロポーショナル組版の持つ読みやすさや自然さを出すことが可能になった。
著者
栖関 邦明 杉山 阿葵 長橋 健太郎 岡田 謙一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.2-13, 2010-01-15

災害時救急救命活動において特に緊急に治療を必要としない軽症患者や中等症患者の治療を一時的に遅らせることや,緊急度が高く助かる見込みのある傷病者をトリアージ(選別)することが災害時救急救命において行われている.現在のトリアージ活動において電子化がなされていないため傷病者の急激な容体の悪化などをリアルタイムで把握ができない,医療従事者が多数の赤タグ負傷者の搬送順を決められないことが問題点としてあげられる.本研究では我々は無線センサネットワークを利用し,傷病者を従来の絶対基準によるトリアージ評価により分類した後,生体情報と外傷の情報をもとに傷病者同士を相対的に比較し,同じ色に分類された傷病者集団の中でどのくらい治療を優先するのかを自動的に割り出すシステムを提案した.システムの機能検証用に作成した人間のバイタルサイン発生装置バイタルサインジェネレータを用いて実験を行ったところ,システムがリアルタイムに変化する傷病者の生体情報を取得し,バイタルサインが急激に変化している傷病者を割り出すことが可能であるという結果が得られた.
著者
下村 秀樹 並木 美太郎 中川 正樹 高橋 延匡
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.457-464, 1992-04-15
被引用文献数
15

本論文は 形態素解析処理に基づいて 日本文の誤りを検出する新しい手法(コスト比較法)と その誤り検出能力を提示するわれわれはまず 形態素解析処理を考察し 形態素解析が 単語をノードとする木の最小コストパス探索問題にモデル化できることに着目したこのモデルでは 単語のもっともらしくなさの程度がコストの大きさで示され 文節数最小法や最長一致法などの従来の代表的な手法は このモデルでのコスト設定と探索制御の一例として表現できる次に その形態素解析モデルを 文中の誤り検出という観点から検討したその結果 誤りを含む文を解析した場合には解析結果のコストが大きくなることを利用して 解析結果の各単語のコストをしきい値と比較することによって誤りを検出するという 従来にはない新しい手法(コスト比較法)を考案した本研究では コスト比較法の誤り検出能力を確認するために 単語接続確率モデルに従ってコストを設定した形態素解析を実現し 誤りを含む文を解析して 実験を行ったその結果 コスト比較法によって 多種類の誤り(誤字 脱字 仮名漢字変換誤りなど)を指摘できることがわかった本論文では コスト比較法の誤り検出能力の定量的 定性的実験結果を述べるとともに 誤りの正確な位置や原因の特定 誤りを判断するしきい値の設定 などの残された課題にも言及する
著者
重信 智宏 野田 敬寛 吉野 孝 宗森 純
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.255-266, 2004-01-15
被引用文献数
3

無線LANとPDAを用いた柔軟な授業支援システムSEGODON-PDAを開発した.従来の固定型の授業支援システムは,計算機室などの計算機を設置した教室のみでしか実施できず,管理に手間がかかるという問題があった.PDAは比較的安価であり,携帯性に優れるため,柔軟なシステムの運用が可能である.SEGODON-PDAは,内容の異なる2つの授業に対する支援を行う.講義形式の授業では,学生が授業中に演習問題を授業用のウェブサイトからPDA上にダウンロードし,そこで解答する.学生は,PDAを持ち,画面上の解答を見ながら板書する.また,宿題をPDA上にダウンロードし,次回の授業までに教室外で解答を行う.発想法を学ぶ実習形式の授業では,PDAを用いたアイディア収集や発想法の結果を無線LANとPDAを利用して口頭発表を行う.開発したSEGODON-PDAを大学3年生の2種類の授業へ適用した結果,以下のことが分かった.(1)無線LANとPDAを用いたSEGODON-PDAは,講師と学生との対話性のある支援が行え学生から高く評価された.(2)様々な授業内容に対する支援が可能であり,教室外での宿題や予習などにも利用可能であった.We have developed a flexible lecture support system using PDAs and wireless LAN, named SEGODON-PDA. A conventional fixed lecture support system has been carried out only in the classroom such as a computer room. The problem is the trouble of management. PDAs are comparatively cheap and their portability is good. A flexible system can be built using PDAs. The system can support two types of lectures. We applied SEGODON-PDA to a lecture-type class. Students could download the contents for the lecture using a wireless LAN in class and could write something on a blackboard while carrying and seeing a PDA. They could do their homework outside of the classroom. We applied SEGODON-PDA to an exercise-type class. Students could collect ideas for the exercise of an idea generation method. They make a presentation about results of the exercise using their PDA with a wireless LAN. We have applied the system for third year students. The results of the applications are shown below. (1) The results of the application show that SEGODON-PDA is effective and highly evaluated. The class became interactive between the lecturer and students. (2) The system could support several types of lectures. The system could also support the homework or the preparation outside of the classroom.
著者
宝珍輝尚
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.444-452, 1994-03-15
被引用文献数
3

データがグラフ(データ表現グラフ)で表現されているデータベースに対する統合演算を提案する。提案する統合演算は、2つのデータ表現グラフをマージする集合橿向の演算である。本演算は、あらかじめすべてのデータを1連結グラフで表現しにくい場合に、とりあえずn個の連結グラフとしてデータを格納し、検索時に動的に点を統合して操作する場合や、既存の点をマージしてあらかじめ設定された構造と異なる構造のグラフとしてデータを操作する場合に有効である、本論文では、まず、前提とするグラフに基づくデータモデル、ならびに、問い合せ方式について述べる。次に、従来提案されているグラフに対する集合指向の演算について述ぺ、これらの演算ではアドホックに2つのデータ表現グラフをマージしようとすると手続き的になり使用に耐えないという間題点を示す。そして、この問題点を解決する統合演算を提案する。統合演算として、データ表現グラフの要素の一意性に墓づく関係続合、制約統合、外統合を提案し、要素の値に墓づいて統合を行うための複写指定と融合指定を提案する。最後に、提案した演算の宣言性を評価し、アドホック問合わせにおいて有効であることを示す。
著者
新谷 研 角田 達彦 大石 巧 長尾 眞
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.855-862, 1997-04-15
被引用文献数
9

新聞の関連記事を検索する手法を提案し,実験により評価した結果について報告する.本研究で提案する手法は,名詞を中心にキーワードになりそうな単語を表層的に判断して重みをつけ,その重みを点数化し,記事間の関連度を記事間で共起した単語の点数の総和により評価するというものである.重みをつける尺度は,(a)記事中において出現回数の多い単語の重みを高くし,出現回数の少ない単語の重みを低くすること,(b)各記事の初めの方に出現する単語の重みを高くし,終わりの方に出現する単語の重みを低くすること,(c)過去1年分の新聞記事においてあまり出現しない単語の重みを高くし,よく出現する単語の重みを低くすること,の3点である.実験を行った結果,元記事以後2週間の範囲に存在する関連記事を適合率96%,再現率66%で抽出できた.We propose a new method of retrieving relevant newspaper articles.Our method is based on word weighting,and it is based on three important points:(a) A word has a high weight if it often occurs in the article.(b) A word has a high weight if it is in former sentences of the article.(c) A word has a high weight if it rarely occurs in newspaper articles for last one year.This method retrieves relevant articles within two weeks since the original article was printed.As a result,its precision is 96%,and its recall is 66%.
著者
寺田 実
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.1541-1548, 2015-07-15

筆者は過去に大きな探索木に対する計数問題を推定するため,乱数による選択と深さ優先探索を組み合わせた手法「複合モンテカルロ法」を考案し,箱詰パズルhexominoの解総数を推定した.今回,その手法に基づき長時間の計算を行った結果,推定値の収束が安定しないという問題点が明らかになった.分析の結果,その原因は推定に用いる分岐数の積のばらつきにあることが分かった.それを軽減するために,分岐数の積に閾値を設けて全探索に入るという手法を新たに考案して計算を行ったところ,従来よりも安定した推定を行うことが可能になった.またこの手法をN-Queens問題についても適用したところ,一定の成果が得られた.