著者
原田 康徳 勝沼 奈緒実 久野 靖
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.1765-1777, 2014-08-15

近年,コンピュータプログラミングが小学校教育においても重要な教育テーマと見なされるようになりつつある.わが国においても,小学生を対象とした多くのプログラミング教育活動があるが,その大半は専門家が教え,多数のヘルパーがつくものであり,そのまま公立小学校などに導入することは難しい.本稿では東京都墨田区立緑小学校の課外活動である「みどりっ子クラブ」において,教育用プログラミング言語「ビスケット」を使用したプログラミング教育の事例について報告している.この活動は,1人ないし2人の非専門家の地域ボランティアによって,各回数名~数十名の児童を集めて3年半にわたり実施されているが,本稿で報告する教え方に関する多様な工夫やそれをサポートするビスケットシステムの工夫のおかげで,うまく機能している.評価として,参加児童の数名に対してインタビューを実施した結果,(1)子どもたちはコンピュータをブラックボックスではなくそのうえで自力で面白いものが作れるようなものだと認識するようになったこと,(2)プログラミング上のさまざまな「技」を進んで教え合っており,協同学習がうまく行われていることが示された.
著者
桑原 和宏 Victor Rlesser
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.32, no.10, pp.1269-1280, 1991-10-15
被引用文献数
8

分散ネットワークにおいて複数のエージェントが資源の割当を協調して行うマルチステージネゴシエーションにおけるグローバルなゴール間の競合の検出手法を提案するマルチステージネゴシエーションではどのエージェントも完全なグローバルな情報を持たず 各エージェントは自分の所における局所的な資源の割当を他のエージェントに通信し お互いにその影響を交換しあうことによって全体として整合のとれた資源の割当を行うこの時 局所的な影響をどのように表現し通信したらよいかが問題となる特に資源の割当の制約が強すぎてすべてのグローバルゴールを満たすことができない場合がでてくるため エージェント間で交換する情報に基づいてグローパルゴール間の競合関係が正しく検出できるようにする必要があるここではマルチステージネゴシエーションの扱う問題の定式化を与えるそこではグローバルゴールはいくつかのグローパルプランを持ち そのうちの一つを実行することによりそのグローバルゴールは満足される各エージェント内での資源割当における選択を基にしてグローバルプランを表現し それに基づいて各エージェント内での競合情報を表現し エージェント間で交換することによって グローバルゴール間の競合を正しく認識できるようにしたさらにその競合情報はグローバルゴールを満足させる解の探索にも有効である
著者
嶋田 敬士 山田 亨 高崎 友香 野口 祥宏 山崎 郁子 福井 和広
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.2569-2581, 2014-12-15

病院でのリハビリテーションの一環として行われる取り組みの1つに,音楽療法士が音楽の力を意図的・計画的に利用して,患者の心身障害の回復や機能の改善に役立てる音楽療法がある.従来その効果は,病院や音楽療法士が各々独自に設けた評価基準と介入内容の記録などを通じて質的・量的に評価する方法が試みられてきたが,患者の症状,回復状況や個性が様々なことなどから,客観的で統一的な評価方法を確立することは非常に困難であった.そこで我々は,患者の心身賦活にともなって広く一般的に見られる表情である笑顔に着目し,評価記録用に撮影された音楽療法時の映像データのみから患者の笑顔度を定量化した.さらに,あらかじめ構造化されていた療法内容に着目し,介入の質が異なる場面での笑顔度の違い,それらの経過回数にともなう変化を統計的に検定した.その結果,療法内容と経過にともない統計的に有意な患者の表情変化を確認するとともに,その変化が従来行われてきた主観評価結果とも高い相関を示していることを確認した.
著者
中田 愛理 平山 拓 大菅 直人 宮本 真理子 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.1177-1185, 2003-04-15
被引用文献数
5

コンピュータの低価格化,小型化,無線通信技術の発達により,モバイルコンピューティングやユビキタスコンピューティングに注目が集まっている.会議室など人が集まる場にはコンピュータやコンピュータ以外の様々なモノが存在しており,複数の端末や情報処理能力を持つモノでネットワークを構成し,情報の交換や共有を行うような協同作業支援システムの必要性が高まってきている.しかし,現状では数人でグループを作り,その場でネットワークを構築するためには,既存のネットワーク設備との接続に構造上/運用上の制約があったり,グループ加入のためのコンピュータ操作を行わなければならないといった手間が生じたりする.また,コンピュータ以外のモノとの情報交換はシームレスに行われていないという現状がある.そこで本稿では,近づくことにより自動的に集まったことを認識し,その距離に基づいてグループを構築し,情報共有を支援するシステムDistance Aware Collaboration System(DACS)を提案する.そして,DACS上で動作するプロトタイプのアプリケーションを実装し,評価を行った.ユーザはDACSを通じて,持ちよった様々な情報や機器を協同作業の場で利用することが可能となる.Along with the development of wireless communication technologies andthe miniaturization/low cost of computers, the mobile and ubiquitouscomputing have now become the focus of public attention.However, in the present condition, in order to make a group from severalpersons and to build a network on that spot, the time and effort thatconnection with the existing network equipment must have therestrictions on employment on structure, or computer operation for groupsubscription must be performed arises.Therefore, in this paper, we proposed DACS (Distance Aware CollaborationSystem) which makes it possible to automatically create a collaborationenvironment between users, or between a user and object, based onphysical distance between them, and implemented a prototype of someapplications. We also carrid out some experiments to evaluate DACS. Asa result, users can share information and objects, and get or use themseamlessly.
著者
野口 博範 大森 健児
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.2383-2389, 2003-09-15

本論文では,グラフ分割問題を一般化した重み付きグラフ多分割問題を遺伝的アルゴリズムを用いて解く方法を提案する.また,具体的な例として,小選挙区での分割問題を取り上げる.本論文の方法を用いることで現在の小選挙区の区割りより,人口格差の点で良質な結果を実現できる.This paper describes a genetic algorithm for multiple partitioning of a graph with weighted-vertexes and weighted-edges so that the conventional graph partitioning problem is expanded to more general application areas. This paper also presents applicable examples of this algorithm by proposing the dividing method in ordr to allocate constituencies automatically. This method has successfully given us better results than the conventional method.
著者
奥井 善也 原田 史子 高田 秀志 島川 博光
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.361-371, 2009-01-15
被引用文献数
2

日本の大学では大人数の学生に対して教員1人が講義を行う形式が多くとられている.日本の学生は,大勢の人々がいるまえでは質問しにくいと感じることが多いので,教員に質問できない状況に陥りやすい.よって,教員が講義中に学生の理解度を判断することは難しい.学生と教員の間でコミュニケーションがとりくにいことが教材の改善を困難にしている.そのため日本の大学では教員からの一方向教育となり,これが理解に行き詰まる学生を減らせない1つの原因となっている.本論文では,双方向教育を実現するため,講義中に教え方を修正し講義後に教材を改善するという,2つのフェーズに分けた講義支援を提案する.講義中のフェーズにおいては,教員の説明に対する学生の反応を獲得し,講義中の学生の理解度を学生と教員との間で互いに共有する.講義後のフェーズにおいては,講義中に取得した学生の学習項目別の理解度と学習項目間の依存関係を考慮し,学生の理解困難箇所を特定し教員に提供する.本手法の講義中のフェーズにおける講義支援を大人数講義に適用した結果,適用しないクラスに比べ試験の平均正答率が50点満点中2.22点向上した.また,大学生5人に対し講義を行い,学生に理解に行き詰まった内容に対するアンケートを実施したところ,理解困難に陥る原因は,理解困難に陥ったときに学習していた項目の依存知識と相関することが判明した.In many classes of universities in Japan, a teacher gives a lecture to a lot of students. Japanese students would hesitate to ask questions in front of many people. It is difficult for a teacher to judge the understanding level of each student during a lecture. Therefore, the teacher is not able even to improve his approach to teaching and the teaching materials according to the understanding level of students. This paper proposes a method for teachers to improve teaching faculty. The proposed method consists of two phases. In the first phase, a teacher can acquire students' responses. Students and the teacher share students' understanding levels from the responses during a lecture. The other phase identifies difficult learning items from dependency among learning items. The method identifies difficult learning items from acquired student understanding level during the lecture and the dependency to improve learning materials after the lecture. We applied our method to actual classes which consist of many students during a lecture. The student examination scores in the class to which our method is applied have been superior to that in a class without our method by 2.22 point. A verification experiment has proven that we should consider the dependency among learning items as a possible cause of difficulties to understand learning items.
著者
富永昌治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.302-311, 1993-02-15
被引用文献数
9

相互反射現象はシーンの見えを大きく変えることがあるのでコンピュータビジョンの分野でしぱしば重要な問題となる。本諭文では、拡散反射表面間の相互反射を、カラー反射モデルを用いて解析する方法を示す。まず、2つの凸物体表面からの反射光は共通の相互反射成分と表面に固有の拡散反射成分からなる2色性反射モデルで記述できる。解析の方法は、Funt?Drewの色空間解析を一般化して、厳密なスペクトル解析と実用的な画像解析に分けて記述する。最初に、2表面から計測した反射光のスペクトル分布から、共通相互反射成分と固有拡敵反射成分のスペクトル分布を推定する方法を示す。そして、これらのスペクトル情報がわかれば、表面の分光反射率と照明光の分光電力分布という重要な物理量が求まることを示す。次に、画像解析のために同様な解析法を3次元色空間に適用する。特に固有物体色の絶対的な色ベクトルを推定するアルゴリズムを提案する。最後に、2枚の色紙を用いる実験で解析法の妥当性を検討する。スペクトルデータより各色紙の分光反射率と照明光の分布が得られた。計測画像より相互反射色の色度と各色紙の固有色が推定でき、原画を2つの反射成分に分離できた。さらに推定の精度も確認した。
著者
原田 康徳 勝沼 奈緒実 久野 靖
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.1765-1777, 2014-08-15

近年,コンピュータプログラミングが小学校教育においても重要な教育テーマと見なされるようになりつつある.わが国においても,小学生を対象とした多くのプログラミング教育活動があるが,その大半は専門家が教え,多数のヘルパーがつくものであり,そのまま公立小学校などに導入することは難しい.本稿では東京都墨田区立緑小学校の課外活動である「みどりっ子クラブ」において,教育用プログラミング言語「ビスケット」を使用したプログラミング教育の事例について報告している.この活動は,1人ないし2人の非専門家の地域ボランティアによって,各回数名~数十名の児童を集めて3年半にわたり実施されているが,本稿で報告する教え方に関する多様な工夫やそれをサポートするビスケットシステムの工夫のおかげで,うまく機能している.評価として,参加児童の数名に対してインタビューを実施した結果,(1)子どもたちはコンピュータをブラックボックスではなくそのうえで自力で面白いものが作れるようなものだと認識するようになったこと,(2)プログラミング上のさまざまな「技」を進んで教え合っており,協同学習がうまく行われていることが示された.Recently, computer programming is being recognized as an important topic in elementary schools of the next decade. Even in Japan, various activities which teach programming to elementary school children are in progress. However, most of those activities are taught by professionals (of programming education), with supoort of many assistants; such activities cannot be ported as-is to public schools. In this paper, we introduce our experiences with "Viscuit" educational programming language on Midorikko-club, after-school activities held in Midori elementary school, Sumida-city, Tokyo. The activities, in which ten to several tens of children have attended, are led by small number (one or two) of local non-professional volunteers for more than three years. Thanks to the novel teaching method and supporting funcionalities of the Viscuit system, both described in this paper, the activity turned out to be very successful. As an evaluation, we have conducted interviews to some of the attended children, which has shown that (1) children have become to recognize that computers are not the blax boxes, but something on which they can create interesting things, and (2) they have become to enjoy teaching various programming techniques each other, thus realizing cooperative learning.
著者
西村 雅史 伊東伸泰 山崎 一孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.1395-1403, 1999-04-15
被引用文献数
27

我々は先に 日本人が感覚的にとらえている単語単位を 既存の形態素解析プログラムの出力である形態素単位との統計的対応関係から自動推定する方法を提案し それを認識および発声の単位とする離散単語発声の日本語ディクテーションシステムを構築した. この人間の考える単語単位を連続音声認識の認識単位としても利用することを試み 特に 他の大語彙連続音声認識システムで用いられることの多い形態素単位と比較してその有効性について調査した. また 認識単位の定義が一意に決まらない現状をふまえて 日本語の連続音声認識システムの評価方法を提案するとともに 不特定話者の大語彙音声認識実験結果について報告する. 男女各10名に対する認識実験の結果 文字誤り率3.0% 単語誤り率4.3%が得られた. さらに 句読点の自動挿入方法や 未知語モデルと単語N-gramモデルによる単語単位の自動分割方法などについても述べる.In this paper, we discuss a word-based continuous dictation system for Japanese. We previously proposed a statistical method for segmenting a text into words on the basis of human intuition, and developed an isolated-word-based Japanese dictation system. By comparing the word units used for the isolated word recognition with grammatical units, we show that the former are also very useful for continuous speech recognition. Evaluation of the performance of this continuous dictation system showed that the character error rate was 3.0%, and that the word error rate was 4.3%. We also present a method for inserting punctuation marks in spoken texts automatically, and a method for segmenting Japanese text into words by using an N-gram model, focusing on the handling of unknown words.
著者
緒方 広明 矢野 米雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.2354-2363, 2004-10-15
被引用文献数
9

本論文では,ユビキタスコンピューティング環境において,学習者個人個人にあった形RTRPL(right time and right place learning)で,適応的に日常的な学びを支援するユビキタスラーニング環境を提案する.特に言語学習は,辞書やテキストを用いた学習だけでなく,日常生活で獲得される部分も大きいと考えられており,本論文では言語学習を対象としたユビキタス学習環境CLUEを提案する.具体的には,CLUEは3つのサブシステムからなる.1つ目は,学習者が日常生活の経験で得た知識を共有し,RTRPLを促す,用例学習支援システムである.2つ目は,学習者の対話相手や周りの状況を把握し,それに合わせて適切な待遇表現を提示する,待遇表現学習支援システムである.3つ目は,RFIDタグを日用品につけ,日常生活の中で単語学習を支援するシステムである.本論文では,これらのシステムの開発と利用実験について述べる.This paper proposes a ubiquitous learning environment that supports daily learning at the right time and at the right place (RTRP) in ubiquitous computing environments. Especially, it is said that language is acquired in everyday learning (outside school) rather than using dictionaries and textbooks (inside school). Therefore, this paper proposes a computer-supported ubiquitous language learning environment called CLUE (Collaborative-Learning support-system in Ubiquitous computing Environments). CLUE consists of three subsystems. The first system supports sentence learning, which provides the useful expressions at the right place at the right time. The second system helps polite expression learning. In Japan, there are four levels of polite expressions. This system provides the right level of politeness, deriving from personal information of another person and user's situation. The final system supports learning vocabulary, which detects the objects around learner using RFID tag, and provides the learner the right information at the moment. This paper describes the implementation and experimentation of those systems.
著者
西村 克信 工藤 知宏 天野 英晴
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.1644-1654, 1998-06-15
被引用文献数
5 3

Pruning Cacheは,大規模なCC?NUMA型並列計算機においてディレクトリを動的に構成する手法である.この方法は,ページ単位で共有関係を管理したり,更新型のプロトコルを用いるなど,データ共有を行うプロセッサ数が多い場合に特に有効である.さらに,システムが階層型結合網を持つ場合,縮的階層ビットマップディレクトリ法(RHBD:Reduced Hierarchical Bitmap Directory)を組み合わせて用いることにより,互いの弱点を補うことができ,より高い性能を得ることができる.トレースドリブンシミュレーションによる評価の結果,多くのアプリケーションプログラムにおいて,32エントリ2wayの構成で75%以上のヒット率を実現することが分かった.さらに大規模な階層型結合網を持つシステムに関して確率モデルにより評価した結果,従来の1対1転送の方式に比べて転送容量の点でほぼ等しく,レインテンシの点で有利であることが分かった.The pruning cache directory method is proppsed for dynamic hierarchical directory management on large scale CC-NUMA systems in which a node aggressively shares data with other nodes.By a combination with RHBD(Reduced Hierarchical Bitmap Directory) method,dynamic directory is queckly formed and managed with a small additional hardware.Trace driven simulation shows that the hit ratio of the 2-set associative cache with 32 entries is more than 75% in most of applications.From the probabilistic simulation of a large system,it appears that the combination of the pruning cache and the RHBD achieves better latency and bandwidth than those of traditional directory management methods bassed on 1-to-1 message passing.
著者
山田 茂
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.964-969, 1992-07-15
被引用文献数
8 1

従来より日本では ソフトウェア開発のテスト工程における代表的な品質評価法の一つとして テスト実施時間と発見・除去されたソフトウェアエラー数の関係を ゴンペルツ曲線に代表されるS字形成長曲線により記述し ソフトウェア内の潜在エラー数の推定やテスト項目数の消化率をはじめとするテスト進捗度の確認が行われてきた本論文では この決定論的モデルとしてのゴンペルツ曲線モデルを テストにより発見される総エラー数に対して確率則を導入することにより再構築し ソフトウェア信頼度成長モデルとしての汎用性を高めるここで 導入される確率則は ソフトウェア信頼性モデルによく採用され 有望視されている非同次ポアソン過程(NHPP)である従来のゴンペルツ曲線に修正を加えた上でNHPPの平均値関数 すなわち任意のテスト時刻までに発見される総エラー数の平均値に適用し 新たに期待残存エラー数 ソフトウェア頼度 MTBF (平均ソフトウェア故障時間間隔)などの信頼性評価尺度を導出するこれらの定量的尺度は 従来のゴンペルツ曲線モデルでは導出でき通かつたものであるさらに ゴンペルツ曲線に基づくNHPPモデルの信頼性評価例も示す
著者
岡本 雅巳 合田 憲人 宮沢 稔 本多 弘樹 笠原 博徳
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.513-521, 1994-04-15
被引用文献数
32

本論文ではFortranプログラムにおける、基本ブロック・ループ・サブルーチン間の粗粒度並列性を階層的に利用する階層型マクロデータフロー処理手法について述べる。筆者らは既に粗粒度タスク間の並列性をマクロタスクの最早実行可能条件解析を用いて自動抽出する単階層のマクロデータフロー処理手法を実現している。階層型マクロデータフロー処理は、従来の単階層マクロデータフロー処理では利用していなかったループやサブルーチン等のマクロタスク内部の粗粒度並列性も抽出することを可能にする。特に、本論文では階層型マクロデータフロー処理手法におけるマクロタスクの階層的定義手法、マクロタスク間の階層的並列性抽出手法、および階層的に定義されたマクロタスクの階層的なプロセッサクラスタヘのスケジューリング方式について述べる。また、本手法のOSCAR上での性能評価の結果についても述べる。
著者
藤井 叙人 佐藤 祐一 若間 弘典 風井 浩志 片寄 晴弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.1655-1664, 2014-07-15

ビデオゲームエージェント(ノンプレイヤキャラクタ:NPC)の振舞いの自動獲得において,「人間の熟達者に勝利する」という長年の目標を達成する日もそう遠くない.一方で,ユーザエクスペリエンスの向上策として,『人間らしい』NPCをどう構成するかが,ゲームAI領域の課題になりつつある.本研究では,人間らしい振舞いを表出するNPCを,開発者の経験に基づいて実現するのではなく,『人間の生物学的制約』を課した機械学習により,自動的に獲得することを目指す.人間の生物学的制約としては「身体的な制約:“ゆらぎ”,“遅れ”,“疲れ”」,「生き延びるために必要な欲求:“訓練と挑戦のバランス”」を定義する.人間の生物学的制約の導入対象として,アクションゲームの“Infinite Mario Bros.”を採用し,本研究で獲得されたNPCが人間らしい振舞いを表出できているか検討する.最後に,獲得されたNPCの振舞いが人間らしいかどうかを主観評価実験により検証する.
著者
大西 啓介 加藤誠巳
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.970-979, 1992-07-15
被引用文献数
4

近年パーソナルコンピニータ等の情報機器の高速化および高機能化が進むと共に地図データベースが整備されつつあるこのような状況の下で自動車に対し適切な経路を探索・提供するシステムが望まれているが未だ実用には至っていない道路網における経路案内では 時間的に早く行けること 分かりやすいことが重要な要因となると考えられるが このためには交差点における右左折等のコストを加味して経路探索を行う必要がある本論文ではこのような交差点における右左折等のコストを導入するための道路網ネットワークのデータ構造について述べ このデータ構造を用いて任意の出発点から任意の目的点に至る第K番目までの最小コスト経路を探索する手法を与えているまた実用的観点から代替経路として使用し得ると考えられる第左番目までの有効代替経路の定義と探索法についても述べている本論文ではさらにここで示した経路探索の手法を首都圏都心部の道路網ネットワークに適用し 複数個の有効代替経路を探索し 得られた結果を地図 文章 画像 音声等のマルチメディアを用いて案内するシステムの概要についても述べている
著者
村上 純 田所 嘉昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.1675-1681, 1993-08-15
被引用文献数
1

入力信号系列がいくつかの正弦波と付加的な白色雑音により構成されている場合に、雑音成分を低減する処理は、ディジタル信号処理の主要な目的の一つである。その手法の一つに、対象とする系のテプリッツ形線形予測モデルを構成して、より低いランクのテプリッツ形近似行列を計算する手法がある。近似行列が求まれば、雑音成分を低減した信号が再現される。具体的な計算方法は、特異値分解(SVD)を利用したWilkesらの方法が一般的に用いられている。しかし、この方法は、SVDを何度も計算するので、かなり計算時間がかかる。そこで我々は、同様な近似行列を計算する、より高速なアルゴリズムを開発した、本手法は、周波数艦定でよく用いられる相関行列を、離散フーリエ変換の回転因子から成るベクトルの積で近似する事法を応用したものである。計算の高速化のためには、固有値計算の一手法であるブロックベき乗法を利用して、すべての特異値を近似的に一度で求めるようにした。
著者
戸次 圭介 横田 孝義 浜田 亘曼
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.605-613, 1988-06-15

高機能LSIの論理設計期間を短縮するためには 後れた論理DAシステムが必要となる.論理設計はテータパス 制御回路 およびこれらの構成要素となる機能モジュールのそれぞれの設計に分類することができる制御向路には結線論理方式とマイクロプログラム方式があるが 大規模で複雑な論理回路はほとんど後者の方式が採用されている.そのためマイクロプログラム方式の制御回路の設計を自動化することが重要となる.そこで本論文では マイクロプログラム方式の制御回路の構成方式をモデル化し この構成モデルに基づいた論理合成アルゴリズムを検討した.これにより マイクロプログラムのアドレス順序情報と分岐機能を定義する情報から マイクロプログラムのアドレス制御を行う部分の論理回路を自動合成することが可能となった.本方式は宣言的データとして表現された制御構造モデルを用いて論理回路の自動合成を行うものであり モデルの蓄積により容易に設計空間の拡張が可能となるまた論理型言語Prologを用いて本アルゴリズムの実装を行い 実際に回路の合成を試みた結果 本アルゴリズムが実用可能となることが確認できた.
著者
藤井 寛 山中 康史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.1945-1955, 1997-10-15
被引用文献数
29

ディジタル画像流通においては品質を保持したコピーおよびネットワークによる転送の容易さに起因する,違法コピー氾濫の防止が重要な課題である.違法コピーの危険性から提供者には見本画像の公開に抵抗があり,そのため利用者は事前の内容確認が困難である.我々は画像情報流通を阻害する本問題を解決する,JPEGおよびMPEG1画像データのスクランブル方式を開発した.本方式は暗号を用いて画像データを変換し,品質を劣化させたスクランブル画像を生成する.スクランブル解除は暗号鍵によって制御され,高速な変換に基づくリアルタイム・スクランブル解除によって違法コピーを防止できる.効果的宣伝と違法コピー防止のためにはスクランブルの程度が制御可能であることが望ましい.本方式はブロック内パラメータ,密度,領域の3つのパラメータでこれを制御する.さらに,画像データは複数の鍵によって多重にスクランブルすることも可能である.多重スクランブルは鍵の個数による画像品質制御および複数の著作権の存在する画像の保護に利用できる.During the distribution of digital images,protection against peracy is important because it is easy to duplicate digital data without deterioration and to spread pirated versions through networks.Providers of image data cannot disclose the original data for fear of piracy,yet still need to advertise their products and to allow customers to evaluate a product prior to paying for it.This paper presents a method for scrambling image data encoded in JPEG or MPEG1 in order to solve this problem.Our method uses a cipher algorithm for data transformation to generate a deteriorated version of the image data.Its high-speed transformation enables real time descrambling,thereby preventing illegal copying.For effective advertisements and copyright protection,the degree to which image data is scrambled should be controllable.Using our method,scrambling can be controlled by the intra-block parameters,density and area.The method also allows a single image to be scrambled a number of times using different scrambling keys.Multiple scrambling can be used to determine the image quality based on the level of payment.It can also be used to protect image data composed of several parts,the copyright for each part being owned by different authors.
著者
長谷川 修 金出 武雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.1795-1807, 2003-07-15
被引用文献数
5 3

人と車両が入り混じる,対面通行の一般道路映像中の移動物体を対象に,(1) {車両,人物,その他} の識別および車両ならばその種別の識別,(2)対象が含む主要な色の推定,を同時に行うビジョンシステムを試作した.識別する対象の種別は,実験システムの入力映像中に多く見られた,{小型作業車,セダン,バン,トラック,人物(単数,複数とも),その他(ノイズなど)}とし,また色は {red-orange-yellow,green,blue-lightblue,white-silver-gray,darkblue-darkgray-black,darkred-darkorange} の色グループから選択させた.入力映像として晴天もしくは曇天の午前9時から午後5時の間の映像を用いた実験の結果,種別と色の識別結果が双方ともオペレータの目視による識別結果と合致した場合を正答として,91.1%の正答率を得た.また本研究では,上記の機能を利用し,あらかじめ設定した特定対象(種別と色の組合せから特定される)を映像中から検出させる実験も行った.特定対象を {FedEx社の集配車,郵便車,パトカー} に設定して行った実験の結果,92.9%の正答率を得た.こうした識別や推定の機能は,統計的線形判別法(線形判別分析)と非線形識別則(重みつきK-最近傍法)を組み合わせる手法を導入して実現した.This paper describes a vision system that recognizes moving objects(cars and humans) on general streets. The system classifies objects based on shape appearance and estimates their colors from images of color video cameras set up toward a street.The input images were obtained between 9:00 a.m. and 5:00 p.m. in fine or cloudy weather conditions.The types set up in the system are {human, sedan, van, truck, mule (golf cart for workers), and others}, and the colors are {red-orange-yellow, green, blue-lightblue, white-silver-gray, darkblue-darkgray-black, and darkred-darkorange}.Moreover, the system can selectively extract specific targets, such as FedEx vans, police cars, mail vans and others from objects based on classified and estimated results. For classification and estimation, we cooperatively used a stochastic linear discrimination method (Linear Discriminant Analysis: LDA) and a nonlinear decision rule (weighted K-Nearest Neighbor rule: K-NN).
著者
高橋 静昭 安原 治機 長嶋 祐二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.28, no.10, pp.1080-1086, 1987-10-15
被引用文献数
1

模擬試験の得点や共通一次の自己採点などから 入試における合格最低点を推定する場合 合格者の学力の水準と入学の難しさの2つは 合格最低点とは微妙に異なる.それは 模擬試験の得点等と大学入試得点の相関係数の値が1より小さいことに起因する.もし相関係数が1ならば 合格最低点の入試得点者のみが 最低点に対応する模試の境界得点者となる.しかし 相関係数が1より小さくなるに伴って 合格最低点よりやや高い入試得点者と低い得点者の双方が模擬試験の対応する境界得点となることが多くなる.合格率が1/2以下のときには 高得点者の方が少ないので前者の人数が後者を上まわる.したがって模擬試験の対応境界得点近傍の受験者の合格率は 1/2より小さくなる.さらに同様の関係で 合格最低点近傍の受験者の模試の平均点は模試の境界得点より低くなる.逆に 合格率が1/2を超えているときは 模試の境界得点の受験者の合格率は1/2より大きくなる.これらの関係は 従来公表されている難易度では十分に説明されていない.本論文では 模試得点や自己採点等の変数Xとそれによって評価される大学入試得点Yが 2次元のガウス分布に従うものとしてモデル化し 合格最低点 最低合格者の水準および合格難易度の3つを定量的に定義し検討する.さらにこの統計モデルを用いて 合格者の中の入学手続者の入試得点上の分布を表現し 入学手続の予測に応用することを提案する.