著者
大嶋 繁 山田 真理絵 根岸 彰生 大島 新司 齋木 実 小林 大介
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.175-178, 2016 (Released:2016-09-21)
参考文献数
4

薬剤師の在宅業務の充実を目的として, 在宅患者の症例を基に作成したシナリオおよび高機能患者シミュレータを用いた『フィジカルアセスメントアドバンス講習会』を行った. その際シナリオを用いた演習を行い, 薬剤師が在宅で実施すべき項目 (在宅業務必須項目) の実施率 (実施者数/受講者数) を, 訪問薬剤管理指導料の算定要件等を基に作成したチェックシートを用いて調査したところ, 項目ごとの差が大きかった. 本調査結果から薬剤師が在宅業務を実施する上で, 患者の生活を支えることを意識した薬学的管理業務のトレーニングの必要性が示唆された.
著者
鈴木 幸恵
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.121-126, 2015 (Released:2015-06-25)
参考文献数
13
被引用文献数
2

目的 : DNAR意思表示のある終末期がん患者の臨死時に救急車要請となった理由を救急救命士へのインタビューにより把握した内容から明らかにする.方法 : 某都道府県の救急救命士19名への半構成的面接. 音声録音により逐語録を作成し, 質的分析を行った.結果 : DNAR意思表示のある終末期がん患者が臨死時に救急車要請となった理由として, 《DNARに関する社会的整備が未確立》, 《救急車の役割に対する認識不足》, 《看取りのための医療支援が不十分》, 《介護施設での看取り体制が不十分》, 《救急隊に頼れば何とかなるという認識》, 《在宅死を避けたい家族の思い》, 《家族の動揺》の7つが明らかとなった.結語 : DNARに関する社会的整備未確立の背景があり, DNARの意思を尊重した看取りへの医療支援が不十分であることや家族側の要因によってDNAR意思表示のある終末期がん患者が臨死時に救急車要請となることが示唆された.
著者
横林 賢一
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.322-325, 2010 (Released:2015-05-30)
参考文献数
7

クリニカルジャズはEBMと臨床経験の振り返りを調和させつつディスカッションを進める教育セッション (症例検討会) として知られている. 振り返りを重要な構成要素とするクリニカルジャズは, Reflection in action, Reflection on action, Reflection for actionのすべてに関与しており, 省察的実践家にとって有用なツールとなる. また, 振り返りが含まれることを特徴とするポートフォリオとも親和性が高い. ポートフォリオのアウトカム領域に合致する症例をクリニカルジャズ方式で検討することで, クリニカルジャズはポートフォリオ検討会としての役割も果たす.
著者
津野﨑 絹代 安達 杏菜 和泉 泰衛
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.123-128, 2020-12-20 (Released:2020-12-29)
参考文献数
11

目的:当院外来治療センター(以下センター)は内科系を中心に複数の診療科が利用しており,体調不良患者の診察待ち,各種処置,輸血等が行われる.診察までの時間や滞在時間が長くなる問題もあり,センターに診療看護師(NP)を配属する効果を検討した.方法:センターの利用者記録を元にNP配属前後の10か月間にセンターを利用した患者を対象として後方視的研究を行った.結果:センターの総利用件数は配属前13,154件,配属後15,257件と1日当たりの平均利用件数は有意に増加していた.一方,診察待ちで利用した配属前1,079名,配属後1,112名の比較では診察までの時間は短縮されていなかったが,滞在時間は約10分間有意に短縮され,入院した患者では滞在時間の平均は約30分間有意に短縮していた.結論:センターへのNP配属により診察待ちで利用する患者の滞在時間が短縮され,診療の効率化につながっている事が示唆された.
著者
押切 康子 杉澤 秀博
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.85-91, 2018-09-20 (Released:2018-09-26)
参考文献数
14
被引用文献数
1

目的:多剤併用の高齢患者の服薬に対する不安とその関連要因を明らかにすることである.方法:慢性疾患で定期的に6剤以上処方されている65歳以上の患者9名に半構造化面接を行った.この質的データをSteps for Coding and Theorizationを用いて分析した.<>は概念,≪≫はコンポーネントを示している.結果:服薬に対する不安の要因には≪医療職の支えの欠如≫と≪薬剤についての否定的な経験・理解≫があった.他方,<服薬の自己調節>と<医師への訴え>という≪不安への対処の試み≫を行った人は不安をもっていなかった.不安を抱かなった人では≪医療職の支え≫と≪多剤併用の肯定≫が不安を抑制するように働いていた.結論:多剤併用を受けている高齢患者の服薬への不安は服薬の自己調整につながる可能性があることから,医療職は多剤服用に対する患者の不安を理解し,解消に向けての働きかけが必要である.
著者
渡邉 秀寿 川村 正太郎
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.44-45, 2017-03-20 (Released:2017-03-25)
参考文献数
5

潰瘍性大腸炎の初回診断時に一過性全健忘を呈した症例が,潰瘍性大腸炎の再燃時に一過性全健忘の再発作をきたした.精神的ストレス,疼痛等が一過性全健忘の誘因となると報告されているが,潰瘍性大腸炎の再燃も誘因となる可能性が示唆された.プライマリケア医を含め,潰瘍性大腸炎の治療に携わる医師は一過性全健忘の合併につき知っておく必要がある.
著者
可知 悠子 井上 真智子 川田 智之
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.214-218, 2016 (Released:2016-12-26)
参考文献数
18

目的:近年, 低所得層が増加し, 受診抑制による健康悪化が懸念されている.本研究では, 経済的理由による受診抑制に関する医師の認識ならびに, 受診抑制を防ぐ工夫をより多く行っている医師の特徴を明らかにすることを目的とした.方法:都内10区2市の全内科診療所1989箇所の医師各1名に郵送調査を実施し, 患者の受診抑制の経験, 受診抑制を防ぐ工夫, 基本属性などの約60項目を尋ねた.結果:回答の得られた617名のうち(回収率31%), 550名(男性454名)を分析対象とした.約9割の医師が患者の受診抑制を認識しており, 「安価な薬を選択する」といった受診抑制を防ぐ工夫を行っていた.こうした工夫をより多く行う医師は40・50歳代, 総合診療の立場, 患者同意・参加型の治療の意思決定の実践, 受診抑制をより多く経験という特徴を持っていた.結論:総合的診療や患者参加型の治療の意思決定といったプライマリ・ケア機能を重視する医師ほど, 受診抑制を防ぐための診療上の工夫をより多く行っていることが示唆された.
著者
浅川 朋宏 川畑 秀伸 村上 学 木佐 健悟 大島 寿美子 寺下 貴美 小野寺 慧洲 大滝 純司
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.249-253, 2014 (Released:2014-09-26)
参考文献数
15

目的 : 財政破綻を機に医療資源の縮小を伴う医療の合理化に直面した住民の思いと, 新たな医療体制への住民の考え方を明らかにし, 医療の合理化において考慮すべき要素を探索する.方法 : 自治体の財政破綻に直面したX市の住民を対象に, 医療の合理化に対する思いと今後の医療のあり方への考え方の2点を質問し, 質的な分析を行った.結果 : 医療資源縮小を伴う医療の合理化への住民の思いと, 新たな医療体制への住民の考え方として「医療の合理化の進め方」, 「地域医療のあり方」, 「行政, 医療者の姿勢」の3つのテーマが抽出された.結論 : 医療の合理化おいて, 行政や医療機関が合理化の過程および内容に関して住民の意見を受け止め, 地域の歴史的背景や住民の心情を理解することが重要である.
著者
目黒 浩昭 山口 美佳 長岡 正範
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.59-61, 2022-06-20 (Released:2022-06-21)
参考文献数
7

鉄欠乏によりパニック症を発症したと考えられた1例を報告する.鉄はセロトニンを始め脳内モノアミンの産生において重要な役割を担っており,鉄欠乏と不安障害や抑うつ気分の合併が報告されパニック症の合併の報告も散見される.症例は30代の女性事務職員.頻繁なパニック発作で受診した.氷食症など鉄欠乏を疑うエピソードがあった.貧血はないが血清フェリチン値5.8 ng/mLと高度の鉄欠乏を認めた.鉄剤の補充とともに症状は改善した.血清フェリチン値の再低下の際に軽い発作を認めたが再補充による正常値の維持によりその後の発症を認めていない.若年女性にはかなりの割合で貧血を伴わない潜在的鉄欠乏が存在する.パニック症や抑うつ,不安障害を有する若年女性には抗うつ薬など一般的治療法とともに鉄欠乏も想起し検査を行い,鉄欠乏が存在するなら鉄補充により症状改善を期待することができるのではないだろうか.
著者
久保田 理恵 瀬﨑 瑛美
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.43-51, 2023-06-10 (Released:2023-06-24)
参考文献数
14

目的:緊急避妊薬(ECP)のオンライン診療では,研修を受けた薬剤師が調剤,服薬指導を行う.またECPのover-the-counter(OTC)化についても検討されている.本研究は薬剤師のECPへの意識や取り組み現状を明らかにする.方法:無作為に選択された薬局薬剤師229名を対象に,Webアンケート調査を実施した.結果:薬剤師のECP関連知識の自己評価は作用機序の知識不足31.9%をはじめ低く,薬剤師の60.3%は女性の心理面サポートに不安があることが示唆された.オンライン診療によるECP処方箋を応需した薬剤師はいなかった.46.9%が将来研修を受講し処方箋を応需したいと考えていた.44.5%の薬剤師は,ECPのOTC化に反対だった.結論:多くの薬剤師はECPの知識不足,患者の心理的サポートに不安を感じている.対応マニュアルや説明書,OTC化への準備も必要であると考えられた.
著者
尾下 豪人 渕田 比呂志 伊藤 徳明 妹尾 美里 磯山 正子 山本 祐太郎 由田 彩佳 大﨑 慶子 川﨑 広平 奥崎 健
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.26-31, 2019-03-20 (Released:2019-03-28)
参考文献数
20

目的:閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS)のリスク評価における日本語版STOP-Bangテストの有用性を検証する.方法: OSASのスクリーニング目的でパルスオキシメトリー検査を受けた内科入院患者を後ろ向きに検討した.結果:受検者144人のうち,3%酸素飽和度低下指数≧10/hrの精査対象者57人に精密ポリグラフィ検査を施行し,17人を中等症,29人を重症のOSASと診断した.受信者動作特性曲線分析の結果,STOP-BangテストのBMIカットオフ値は従来の35 kg/m2よりも30 kg/m2にした場合に良好な診断能を示した.STOP-Bangテスト値3点以上を陽性とした場合,中等症―重症SASを検出する感度は95.7%,特異度は42.9%だった.結論: STOP-Bangテストは簡便にOSASリスクを評価できる.
著者
孫 大輔 塚原 美穂子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.129-132, 2018-09-20 (Released:2018-09-26)
参考文献数
6

オープンダイアローグは,「社交ネットワークの視点」や「不確実性への耐性」といった7つの原則に基づき,「ポリフォニー(多声性)」の状態を目指す対話的アプローチである.この手法は,フィンランドで精神疾患に対するアプローチとして始まったが,今後プライマリ・ケア領域でも大きな可能性を持つと考えられる.特に複雑性・不確実性の高いケースに対して有効性が期待される.
著者
青木 拓也
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.40-44, 2015 (Released:2015-03-27)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

プライマリ・ケアの質を評価する重要性は一層高まっており, 海外ではプライマリ・ケアの原理およびタスクに関する質指標が, 政策決定や医療提供者の質向上等に活用されている. 中でもプライマリ・ケアの原理を評価する上で, 患者中心性は重要な概念であり, 欧米では質評価尺度を用いた患者経験調査が実施されている. 残念ながら, 我が国での質評価に関する実効的な取り組みは現状では乏しいが, 先行研究によれば, 我が国で重要なプライマリ・ケアの原理は, 近接性, 包括性, 協調性, 時間的継続性, 良好な患者医師関係 (対人的継続性) , 地域志向性, 家族志向性と考えられる. 今後患者中心性を始め, 有効性や患者安全等, 複数の側面からの評価を通し, プライマリ・ケアの質的整備を推進していく必要がある.
著者
加藤 萌 富田 理哉 後藤 高明 西園 久慧 加藤 光樹
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.42-48, 2022-06-20 (Released:2022-06-21)
参考文献数
18

目的:在宅医療を受けている患者における訪問看護利用と往診時診療時間との関連を明らかにすること.方法:2019年9月1日から11月30日の間に日本の3ヶ所の都市部クリニックで在宅医療を受けていた患者を対象とし,両者の関係について単変量解析および多変量解析(施設クラスターを考慮した負の二項回帰分析)を行った.結果:解析対象者は278人であり,訪問看護の利用は単変量解析,多変量解析いずれにおいても,有意に往診時診療時間の減少に関連していた(それぞれ P < 0.018,P < 0.001).訪問看護の利用による往診時診療時間の減少量は平均10.3分(95%信頼区間,9.9-10.8)と推定された.結論:訪問看護の利用によって往診時診療時間が短縮することが示された.訪問看護は在宅医療において医師の負担を軽減しうることが示唆され,より良い協働方法についてさらなる研究が必要である.
著者
小﨑 真規子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.117-123, 2019-06-20 (Released:2019-06-26)
参考文献数
76

アンコンシャス・バイアス(Unconscious bias,無意識の偏見)は,誰もが持っている潜在的な観念や態度のことで,本人の意識されないところで行動や意思決定に影響を与える.近年,指導的立場にある女性が少ないことや待遇等における男女格差などに通底する原因として女性に対するアンコンシャス・バイアスの影響が指摘されている.医学界のように従来からの男性領域においては女性医師に対する否定的なアンコンシャス・バイアスは大きく,女性医師は様々な場面でアンコンシャス・バイアスの影響に曝される.その影響は女性への公正な評価を妨げ,女性が持てる能力を十全に発揮することを妨げる.アンコンシャス・バイアスの影響を低減するためには,女性自身を含む関係者への教育と多元的でシステマティックな介入が必要である.
著者
石丸 直人
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.151-154, 2020-12-20 (Released:2020-12-29)
参考文献数
5

市中病院には,臨床疑問が溢れており,臨床研究にふさわしいフィールドである.一方で,忙しい臨床現場で臨床研究を行い続けていくことには困難も伴う.臨床業務と並行して臨床研究を行うアカデミックジェネラリストにとって,マニュアル通りに成功した話ばかり聞かされても,味気なさを感じるかもしれない.日常疑問,臨床疑問を研究疑問に繋げて,臨床研究を実施するには,メンターやサポートして下さる方々との出会いが大きな意味をもつ.仲間を作り,自分の限界を知り,数を打ち,失敗経験から学び,臨床研究を教えることで,市中病院での臨床研究が更に実施しやすくなるものと考える.
著者
今永 光彦 外山 哲也
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.33-37, 2017-03-20 (Released:2017-03-25)
参考文献数
16

目的:介護老人福祉施設入所者において,緊急入院のリスク因子を検討することを目的とする.方法:埼玉県内にある2ヵ所の介護老人福祉施設に,2013年5月1日の時点で1年間以上入所している170例を対象とし,過去起点コホート研究を行った.先行研究を参考に,研究者らが臨床的に重要であると考えた因子も加えて,それらの17項目と1年以内の緊急入院の有無との関連について検討した.単変量解析を行い,P<0.05を基準として変数選択を行い,多変量解析を行った.結果:1年以内の緊急入院は70例(41.2%)で認めた.多変量解析(ロジスティック回帰分析)で有意な因子は,慢性心不全(OR:5.73,95%CI:1.37-23.84)・褥瘡(OR:16.70,95%CI:1.89-147.41)・1年で5%以上の体重減少(OR:2.47,95%CI:1.07-5.68)であった.結論:介護老人福祉施設入所者において,「慢性心不全」・「褥瘡」・「1年で5%以上の体重減少」が,緊急入院のリスク因子であった.
著者
平山 陽子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.48-51, 2016 (Released:2016-03-25)

「カトレア」は子育てや自分の病気など時間的, 体力的に十分に研修に力を割けない女性を対象にしたプログラムである. 当直免除, 土日休み, 時短制度の利用が可能. その代わりプログラムの期間を3年半~4年に延長している. また, 研修者の事情を職場が共有し協力が得られやすいように工夫している. 時間が短い中で指導医との振り返りの時間を確保すること, ポートフォリオ作成の時間が足りないことなどが課題である.
著者
國吉 保孝 加村 梓 安田 すみ江 田代 実
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.116-120, 2015 (Released:2015-06-25)
参考文献数
14

目的 : アナフィラキシーを呈した即時型食物アレルギーの小児例について, 年齢・原因食物別の内訳と臨床像を把握する.方法 : 2008年1月~2013年12月までの6年間に, 当院救急外来を受診した15歳以下のアナフィラキシーを呈した即時型食物アレルギー49例について, 診療録より後方視的に検討した.結果 : 原因食物の内訳は, 魚卵 (9例) , 鶏卵 (8例) , ソバ (8例) が三大原因であった. このうち, 0歳は鶏卵58% (7/12) , 1~6歳は魚卵31% (5/16) , 7歳以上はソバ38% (8/21) がそれぞれ最多であった. アドレナリン筋肉内投与が実施されたのが12例で, 内訳はソバ4例, 鶏卵3例で, 魚卵は1例のみであった.結論 : アナフィラキシーを呈した即時型食物アレルギーの小児例の原因食物は, 年代によって傾向が異なり, 年齢を考慮した啓蒙が必要と考えられた. 他の報告と比較して魚卵の頻度が高く, 地域の食習慣による影響が示唆された.