著者
金森 史枝
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.83_3, 2017 (Released:2018-02-15)

本研究の目的は、大学在学中の体育会運動部と体育系サークルとの所属の違いが大学時代の過ごし方及び社会人となった現在における仕事の取り組み状況にどのような差をもたらしているかを明らかにすることである。体育会運動部所属であった社会人(男女各100名)と体育系サークル所属であった社会人(男女各100名)の計400名のアンケート調査(4件法)データを基に分析した。所属(体育会・サークル)と勉強との両立の有無(二値化)を独立変数、仕事の取り組み状況についての各質問項目の回答得点(高いほどポジティブ)をそれぞれ従属変数とした2×2の分散分析を男女別に行った。その結果、有意な交互作用がみられた項目における単純主効果検定により、サークル所属群では勉強との両立の有無で有意な得点差がみられなかったのに対し、体育会所属群では勉強との両立が非両立より有意に高い得点を示した。また、体育会所属の両立群がサークル所属の2群(両立/非両立)より高得点を示す一方、体育会所属の非両立群は4群中最低得点であった。以上から、社会人としての仕事の取り組み状況に関する体育会運動部所属効果はとりわけ勉強との両立が規定要因となることが示唆された。
著者
伊藤 詩織 佐々木 万丈 北村 勝朗
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.127_1, 2016 (Released:2017-02-24)

女性スポーツ競技者にとって、月経期間に痛みや症状があることは、競技力向上を目指す上でストレッサーとなることが予測される。本研究は経血の処置方法に着目し、布ナプキンの使用を女子大学生スポーツ競技者に適用することで、月経症状に対する意識に変容が見られるか検討をおこなった。A大学で部活動やクラブチームに所属している学生7名を対象とした。1か月目の月経期間は市販ナプキンで過ごし、その後3か月の月経期間は、ガーゼとコットンを体調によって組み合わせて使用し、月経期間が終了する毎にアンケート調査をおこなった。分析の結果、市販ナプキンの使用時に自覚された「ムレ」「かゆみ」などの不快感が有意に低減し、また認知的評価では、日常生活における月経随伴症に対するコントロール感の向上が示された。これらの結果から、市販ナプキンよりも通気性や保温性のある布ナプキンを使用することで、月経症状に対する意識が改善したと考えられる。さらに、月経による愁訴の一つである「集中力の低下」が低減したことも示され、布ナプキンを使用することが、より競技に集中することができるなど、競技力向上の一助となる可能性のあることが考えられる。
著者
矢邉 洋和 梅澤 秋久
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.294_2, 2016 (Released:2017-02-24)

2009年の米国教育省は、オンライン学習の効果を対面状況と比較した上で報告し、中央教育審議会答申(2012)では、これからの時代を見据え、「教室外学修」の重要性を説いている。本研究では、小学校4年生の体つくり運動において、オンラインストレージを用いた家庭での動画視聴(以下家庭での動画視聴)による反転学習型の授業を実践した。保護者へのアンケートおよびインタビューによる分析を通して、家庭での動画視聴におけるメリットとデメリットが示唆された。6回の動画配信のうち、保護者も平均5.4回視聴し、平均3.3回は、子どもと一緒に動画を見ていた。動画を一緒に見ながら、「学習へのアドバイス」や「称賛」、「学習内容への質問」といった会話が生まれる傾向が認められた。保護者自身の動画視聴への「楽しみ度合」と、「授業のねらいへの理解」、「1時間ごとの子どもの変化への気づき」、「負担感のなさ」に統計的に有意な相関関係が認められた(p<0.05)。ネットワーク自由記述およびインタビュー分析にはテキストマイニングソフトKH Coderを用い、分析を行った。
著者
小石 麿由桂
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.182_1, 2016 (Released:2017-02-24)

本研究の目的は水泳の自由形におけるターン動作の速い選手と遅い選手の動作の違いを比較検討し、速いターン動作の特徴を明らかにすることであった。大学競泳選手男子8名のターン動作を高速度カメラで撮影し二次元動作分析を行い、ターンタイムは壁から3mの地点を通過し、ターン動作を終え再び通過するまでとした(3RTT)。水平方向の頭頂及び重心の移動距離と第1局面(最終ストロークのキャッチから頭を下げるまで)タイム(r=0.64、0.82)、垂直方向の重心移動距離と第3局面(足が壁に接地している間)タイム(r=0.69)の間に有意な相関がみられたが、第2局面(頭が下がり、足が壁に接地)のタイムと3RTTには相関がみられなかった。F.Puelら(2012)は「最高のターン時間は回転を開始する時の頭から壁との距離、水平速度の力のピーク、ターンの間の通り道の長さの削減によりもたらされる」と述べている。これらのことから3RTTを短くするためには以下のことが重要である。1)ある程度壁に近づいて回転開始時の頭と壁との距離を短くし、第1局面の移動距離を短くする。2)第3局面のタイムを短くするために垂直方向の動きを小さくする。
著者
藤田 恵理 清水 美穂 跡見 友章 長谷部 由紀夫 跡見 順子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.155_3, 2019 (Released:2019-12-20)

身体は細胞と細胞が分泌する細胞外マトリクスからなる。老化や慢性炎症状態にある組織ではコラーゲンなどの細胞外マトリクスが沈着・線維化する。線維化した固い皮膚は身体の移動性を制限し日常の不活動の原因になりうるので、身体運動にとって重要である。卵殻膜は古くから東洋において皮膚治療への民間薬として使用されてきた。そこで我々は、可溶化卵殻膜を女性の皮膚に塗布したところ、腕の弾力性や顔のしわを有意に改善することを見出し、可溶化卵殻膜を塗布したマウス皮膚ではIII型コラーゲンが有意に増加した。さらに、特殊なMPCポリマーに結合した可溶化卵殻膜を付けた培養皿上でヒト皮膚線維芽細胞を培養する実験系を設計し、可溶化卵殻膜環境ではIII型コラーゲンなどの若い乳頭真皮を促進する遺伝子が誘導された。若い皮膚と同様のIII型/I型コラーゲン比(80%:20%)のゲルはI型コラーゲン100%ゲルよりも高い弾性をもたらし、そのゲル上のヒト皮膚線維芽細胞は高いミトコンドリア活性を示した。卵殻膜はIII型コラーゲン等の細胞外マトリクスの発現を誘導し、組織弾性の喪失を減少させることにより、身体活動を改善するために使用することができると考えられる。
著者
内田 良
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.61_2, 2016 (Released:2017-02-24)

リスク研究において、ゼロリスクは神話である。リスク研究の使命は、ゼロリスクを目指すことではなく、さまざまな活動のリスクを比較検討することから、とくにリスクが高いものについてそのリスクを低減していくことにある。スポーツ事故のなかでこの数年話題となった組(立)体操や柔道もまたそのような視点からリスクが検討されるべきであり、「安全な組(立)体操」「安全な柔道」こそが最終的な目標となる。 組(立)体操についていうと、近年、組み方の巨大化と組み手の低年齢化が進み、立体型ピラミッドの場合、幼稚園で6段、小学校で9段、中学校で10段、高校で11段が記録されている。頂点の高さ、土台の負荷、崩れるプロセス等において多大なリスクが想定される。実際に小学校において組(立)体操は、体育的活動のなかでは跳箱運動、バスケットボールに次いで負傷件数が多く、かつ実施学年((5~)6年生)や地域(実施していない学校や自治体もある)が限られるため、事故の発生率は高いと推定される。なお、低い段数でも事故が多く起きていると考えられることから、高低にかかわらず安全な指導方法を学校に伝えていくことが、私たちの課題である。
著者
川端 昭夫 木村 吉次
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.69_1, 2017 (Released:2018-02-15)

本研究の目的は、大正11年から昭和3年まで陸軍戸山学校教官であった大井浩を取りあげ、その欧州体育・スポーツ視察並びに体育論を検討し、また、大正・昭和初期の日本の社会体育促進との関わりについて考察する。主な資料は、「体育と武道」、「研究彙報」、「皆行社記事」、「陸軍大日誌」に収録された論文論説、また陸軍戸山学校関連書籍並びに朝日新聞を調査した。得られた結果を以下に示す。1)大井浩は、欧州諸国の視察の結果、軍隊体育、体育・スポーツ事情について度々報告した。軍隊体育における運動競技(スポーツ)の日本に適した様式による導入、日本における武道精神を含めた武道の普及、国民の軍事予備教育を意図した国民体育、特に青年体育の推進を奨励した。2)欧州諸国の視察報告を通して、日本の社会体育の普及の必要性を提言した。3)欧州諸国における女子体育・スポーツの隆盛を報告して、日本でのその普及を期待した。4)欧州諸国の新しい体操の趨勢や集団体操(マスゲーム)の隆盛を報告し、実際に第2回明治神宮競技大会のマスゲームの部の創設や戸山学校生による集団体操の演技参加を行い、日本で初めての公的なマスゲームの大会を実現した。
著者
田中 彰吾
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.10_2, 2019 (Released:2019-12-20)

パフォーマンスの速さと正確性、チームワーク、他者との身体的相互作用などが競われる点で、eスポーツはそれ以外のスポーツと多くの共通点を持っている。ただし、すべてのパフォーマンスがコンピュータに媒介されている点(computer-mediatedness)は、他とは異なるeスポーツの顕著な特徴である。コンピュータ媒介性は、次の2点で競技者の身体活動のあり方に変化をもたらすと思われる。第一は「道具使用」である。競技中のほぼすべての活動は、手元のデバイスと眼前のモニターを利用してなされる。ボールゲームや体操における道具使用と比べて、eスポーツにおけるそれは、目と手の協調を限定的かつ極端に推進する。第二は「仮想現実」である。競技が行われる場所は、現実のフィールドではなくモニター上に展開される仮想現実である。競技者は一人称視点でフィールドに入り込んだり、俯瞰しつつフィールド全体にかかわったりするが、いずれにしても、仮想現実における仮想身体を利用しつつパフォーマンスが行われる。当日の報告では、以上の2点について、現象学的な観点からさらに踏み込んで読み解いてみたい。
著者
長谷川 伸
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.185_1, 2019 (Released:2019-12-20)

本研究では大学野球投手24名を対象として、投球側と非投球側の他動的肩関節可動域(外旋可動域、内旋可動域、総回旋可動域)とその両側差、および投球速度(最高速度、平均速度)の測定を行い、投球側と非投球側の肩関節可動域の特性、および肩関節可動域と投球速度の関係を明らかにすることを目的とした。その結果、投球側と非投球側の比較において、肩関節の外旋可動域では投球側が非投球側に対して有意に高い値を示し(p<0.001)、内旋可動域では非投球側が投球側に対して有意に高い値を示した(p<0.001)。また、肩関節可動域と投球速度の関係では、投球側の肩関節外旋可動域(p<0.05)と外旋可動域の両側差(p<0.05)、総回旋可動域(p<0.01)と総回旋可動域の両側差(p<0.05)の4つの指標と最高球速および平均球速との間に有意な正の相関関係が認められた。このことから、肩関節の外旋可動域、およびそれに伴う総回旋可動域の大きさは投球速度を決定する要因の1つとなりうることが示唆された。
著者
崎田 嘉寛
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.72_1, 2018 (Released:2019-01-18)

1943年2月に『国有鉄道体操教範草案』(鉄道省)で制定された、いわゆる国鉄体操は、職種を問わず40~50万人を対象として実施されている。そのため、戦前期に乱立した体操の中でも、モデルケースの一つとして評価されている。この組織的な展開が可能となった背景には、各局・工場・教習所が、それぞれの職場で創案・実践してきたニルス・ブック由来のデンマーク体操方式を、集約・統合して国鉄体操が完成したという経緯がある。そして、1930年代後半からの現業部門を基盤とした国鉄体操の拡充と指導体制が、敗戦後直ちに国鉄体操の再開を可能にした要因の一つとなっている。本研究では、1940年代を中心とした国鉄体操の動向について、既存研究を新資料で再構成しながら記述することを目的とする。具体的には次の課題を複合的に考察する。①国鉄体操の制度的変遷を概観し、教範制定に至る現場等での取り組みを通覧し把握する。②国鉄体操とはどのような動きの体操であったのかを記録映画から分析し、どのように実施されていたかを個人資料を含めて事例的に検証する。③齋藤由理男、GHQ体育担当官、森田徳之助の果たした役割と影響について検討する。
著者
竹内 秀一
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.105_2, 2016 (Released:2017-02-24)

運動部活動などを舞台に物語が紡がれるスポーツ漫画は、我々とスポーツとの関わりを映し出すひとつの鏡といえる。例えば、1990~96年に井上雄彦氏によって連載された『スラムダンク』は、多くの若者をバスケットボールへと駆り立てた。このような現象を松田(2009)は、「マンガに描かれたスポーツ世界のリアリティが、逆に現実世界のスポーツのリアリティ感覚の受皿となる」と述べる。すなわち、スポーツ漫画は単なる表象文化ではなく、他方スポーツに新たな現実を生起させる循環装置にもなっているのである。ところで、漫画が世代ごとの「アイデンティティ」を確認する役割を担うという報告(諏訪、1989)もある。ここより、スポーツ参与者の同一性(=プレイヤー・アイデンティティ)を基底している言説、あるいは揺らぎのダイナミクスをスポーツ漫画から捉えることができるのではないか。そこで本研究では、スポーツ漫画におけるキャラクターの表象について、「アイデンティティ」という補助線を用いて考察していく。そして、そこから透けてみえる運動部活動における現代的な力学の様相を明らかにすることを目的とする。
著者
跡見 順子 清水 美穂 藤田 恵理 跡見 綾 東 芳一 跡見 友章
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.155_1, 2019 (Released:2019-12-20)

本発表では、講義と実践を組み合わせた運動生理学的教育プログラムの開発について報告する。地球重力場で進化した動物の仲間であり直立二足歩行を獲得した人の姿勢・身体運動は、他の動物と異なり、すべてを反射で行うことはできない。立位の重心に相応する部位は「丹田」と呼ばれ、武術では体幹コントロールのポイントとする。身体重心のトレーニングは、生理学的には随意運動により体幹の筋群をコントロールすることが可能である。しかし、体幹の深部筋を対象にした研究は方法上難しいので少ない。また体幹・脚・足・の連携制御により軽減される膝や腰等の関節痛予防のための姿勢やバランスの体育教育プログラムはきわめて少ない。本研究では、高校生70名、大学生・大学院生総勢50名を対象に、運動の脳神経系の連携機序や力学応答する細胞の基本特性などについての講義および仰臥位で自分自身の手で腹部を触り、触覚を感知し、自ら行う腹側の筋群・脚・足のエクササイズを毎日実践してもらった。その結果、身体的要素(姿勢、上体起こし回数、ジグザグ歩行回数等)の有意な増加や改善、および意識的要素(目覚め・寝つきのよさ、前向き)の改善がみられた。