著者
林 忠男 奥山 瑞樹 角田 貢
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.337_1, 2019 (Released:2019-12-20)

近年コンピュータ上でおこなう対戦型ゲームがeSports競技として急速に普及してきている。eSportsは身体全体を用いるphysicalスポーツと異なり身体的障害がハンディにならない場合も多く、健常者と対等におこなえる競技という点でパラリンピック競技以上に障害者および健常者がお互いに高いモチベーションを得られる可能性がある競技である。中でも世界的普及率が高く2022年杭州アジア大会でも採用の可能性が高いゲームがネットワーク対戦ゲームの一つLoLである。しかしながらインターネットをはじめとするネットワークを用いることから大学等の教育機関で実施するためにはセキュリティをはじめとする様々な環境条件を明らかにすることが重要である。大学内LANにおいてセキュリティを確保するためにVPNを構築し、IPsec方式の暗号化を施したネットワーク環境からLoL日本サーバーに接続した。結果、応答速度は28~32msecであった。eSports実施においては十分に高速とは言えない値であったが推奨動作環境の約2倍以上の処理能力のコンピュータ端末であればストレスなくゲームが遂行できることがわかった。
著者
篠原 康男 上田 憲嗣 島崎 崇史
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.83_3, 2019 (Released:2019-12-20)

学士課程における教養体育では、「体育」ではなく、「スポーツ」が科目名に含まれていることが多い(梶田ほか、2018)。これは、当該科目で扱うスポーツ種目に関して、ルールや技術だけでなく、その成り立ちをも含めた幅広い知識を学ぶことが期待されているからであろう。そのため、学士課程における教養体育とは、ただそのスポーツ種目を実践するだけでなく、自分たちが生きる社会とスポーツのかかわりを「学び、考える場」ともいえよう。そこで本研究では、自然科学・人文科学・社会科学など様々な観点からスポーツ種目を捉えたコラムを配布教材として作成・配布し、学生の教養体育での学びに与える効果を検討した。対象はR大学における「スポーツ方法実習Ⅰ」でバドミントンを選択した2クラスとし、コラムを配布する介入クラスと、コラムを配布しない非介入クラスに分けた。介入クラスに対しては、第1回目から第14回目の各授業内で「バドミントン×○○」というテーマのコラムを配布し、内容の解説を行った。これらのクラスに対し、授業の学習に関するものや身体活動量(IPAQ)、健康度と生活習慣に関するアンケートを実施し、コラムの配布効果を検討した。
著者
鈴木 秀人
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.83_1, 2018 (Released:2019-01-18)

暴力的行為(体罰やしごき)が繰り返されてきた運動部の過去を振り返ると、それを行使する側の問題を問う必要があることは勿論であるが、結果的にそれを長期間にわたって許してきた側の問題を問うことも必要ではないか、というのが本研究の根底にある問題意識である。 暴力的行為を許してきた側を問う視点として発表者が着目してきたのは、かかる行為とその行使の基盤となっている監督と選手間や上級生と下級生間の封建的な上下関係の起源を旧軍隊の行動様式に求める「軍隊起源説」という俗説である。 発表では、当の軍隊が消滅してしまった後々まで、軍隊に起源があるとされる行動様式がなぜ運動部の中で継承されたのかを説明できないという弱点を持つにもかかわらず、我が国の多くの人々がこの説を共有してきた理由を明らかにし、暴力的行為を許容してきた側に見られる問題を新たに提起する。
著者
住野 幾哉 山口 香 小林 好信 橋本 佐由理
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.285_2, 2016 (Released:2017-02-24)

近年、水泳の萩野公介が北島康介の、「ありのままでいいんだ」との言葉で蘇生し、リオオリンピック出場を決めた。言葉によるエンパワーメントの重要性が再確認された出来事である。スポーツ選手に対する言葉掛けには大きな意味がある。キックボクシングは相手と対峙し打撃を主とする競技であり、心理面へのアプローチが競技パフォーマンスに及ぼす影響は非常に大きいと推察される。本研究は、キックボクシング選手がエンパワーメントされる言葉についての知見を得ることを目的に、選手が励まされた言葉は何であったのかに着目してインタビュー調査を行った。対象は学生キックボクシング選手10名である。分析方法は、ジョナサン・スミス(Smith J. 1997)の解釈学的現象学的分析を参考にスーパーバイザーの指示の下で分析を行った。その結果、彼らが励まされたと感じた言葉は大きく「賞賛」「教示」「励まし」「受容」というカテゴリーに分類された。なかでも「励まし」「受容」に分類されたものが多かった。また、指導者が与える言葉だけではなく、家族、先輩、チームメイトなどといった重要他者から発せられる言葉が選手に与える影響が大きいこともわかった。
著者
東山 明子 丹羽 劭昭
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.100_1, 2017 (Released:2018-02-15)

笑いがパフォーマンスにポジティブな影響を与えることが様々な研究から明らかにされてきている。笑顔に関係する表情筋の中で最も重要な働きを司る大頬骨筋の収縮により、口角を引き上げ、笑顔になる。 そこで心理的要因や快感情からの笑いではなく、口角を上げるだけ、あるいは逆に下げるだけでの影響の程度を検討した。健常な大学生男女20名を対象とし、連続数字の加算作業による精神的負荷のかかる状況において、口角の指示なし、口角上げ、口角下げの3条件で行い、優勢前額皮上電位、心拍数、注意力正答率、状態不安得点について、比較検討した。その結果、心拍数では、口角上げによる鎮静効果は特に見られなかったが、優勢前額皮上電位は口角上げと下げの両条件で口角指示なしよりθ3波が減少する傾向が見られ、注意力正答率は口角上げが口角下げより高い成績を示す傾向が見られ、状態不安得点は口角指示なしより口角上げのほうが低かった。口角を上げることは不安減少と注意力向上に効果があることが示唆された。
著者
武田 剛 酒井 紳 高木 英樹
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.145_2, 2017 (Released:2018-02-15)

競泳競技はスタート台やプール壁をけることで得られる速度が泳ぎ(ストローク動作)よりも高い。この高い速度を維持する目的で、自由形種目では完全水没状態でドルフィンキックやフラッターキックを使用し、ストローク動作(クロール泳)に移行する。競技会において選手が使用するこのキックの種類は、ドルフィンキックのみとドルフィンキック後にフラッターキックを使用するタイプに分けられる。このドルフィンキック後に使用するフラッターキックの影響を明らかにすることを本研究の目的とした。対象はよくトレーニングを積んだ大学生男子競泳選手8名とした。実験参加者にはプール壁からの水中スタート後のキックの種類をドルフィンキック後フラッターキック(試技①)、ドルフィンキックのみ(試技②)の2種類で実施してもらった。選手の水着に自発光型防水LEDマーカーを貼り付け、画像分析法(2次元DLT)によって選手の泳速度を算出した。試技①のフラッターキックの使用によって有意な泳速度の低下が確認され、クロール泳の浮き上がり動作におけるフラッターキックの使用は大きな減速を招くことが明らかとなった。
著者
岸野 力 武田 剛
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.211_1, 2017 (Released:2018-02-15)

競泳トレーニングにおいて抵抗体やゴムチューブによる牽引泳をスプリントトレーニングとして導入されるようになってきた。しかしながら実際のトレーニング現場ではチューブでの牽引力を日常的に評価することは少ない。そこで本研究は牽引力とスプリントパフォーマンスの関係性を明らかにし、スプリントトレーニングとしての牽引泳の意義とゴムチューブを介して得られる牽引力のトレーニング指標としての活用法を提案することを目的とした。対象者は日常的に水泳のトレーニングを十分に積む男性15名とした。試技は25mの屋内プール(25m×7レーン 水深1.1~1.2m)にて25mクロール泳タイム測定と牽引泳パワー測定に分けて行った。牽引泳パワー測定は牽引泳8秒と12秒休息×8セットのトレーニング内容で行った。牽引力の計測にはデジタルフォースゲージ(FGPX-100日本電産シンポ社製)にゴムチューブを装着し、クロール泳中の牽引力を測定した。牽引力の最大値、平均値と力積を求め、スプリント泳速度との相関関係を検討した。結果として最大泳速度と最大牽引力との間に有意な相関が認められ、25mの最大泳速度と牽引泳での最大牽引力には高い関係性があることが明らかとなった。
著者
林 享 草薙 健太 水上 拓也 松井 健
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.217_3, 2017 (Released:2018-02-15)

近年、スポーツ選手の競技力向上を目的として、体力や技術のトレーニングに加えて、精神面のトレーニングとしてのイメージトレーニングが注目されている。最近では、水泳界において、小型防水ビデオカメラを用いることで水中でも主観的な映像からバーチャルリアリティー映像(VR映像)を体験することが可能になり、競泳選手の新しいイメージトレーニングの手法としてVR映像が使用できる可能性が考えられる。以 上のことから、本研究の目的は、競泳選手におけるVR映像が、最大努力泳に及ぼす影響を明らかにすることとした。本実験には、鍛錬された男性競泳選手11名が参加した。被験者はVR映像視聴(VR)とVR映像視聴しない(コントロール)試技を行い、VR試行では視聴直後に100m自由形全力泳を行った。測定項目は、100m泳タイムおよび乳酸値であった。実験の結果、100m泳タイムはVRがコントロール条件より速くなる傾向がみられ、レベルが低い選手ほどタイムの改善が顕著であった。また、乳酸においては、最大値がVRにおいて高くなる傾向にあり、最大値から全力泳後10分後までの減少量も、VRがコントロール条件に比べて有意に大きかった(p<0.05)。
著者
野村 美咲 生田 泰志 谷川 哲朗
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.220_3, 2017 (Released:2018-02-15)

ドルフィンキック動作で、高い泳速度を得るためには、各関節動作を狭くし身体の振り幅を小さくすることによりストローク頻度を大きくすることが重要である(仁木2013)。練習時にこの動きを習得するためにフィンを使用することが多くある。本研究では、水中ドルフィンキックにおけるフィンの使用による泳パフォーマンス及び身体関節角度の変化を明らかにすることを目的とした。対象は、大学水泳部に所属する男子競泳選手7名、女子競泳選手7名であった。対象者は、15mドルフィンキック泳を最大努力でフィン未使用、フィン使用の計2本実施した。対象者の右側方より水中映像を撮影し、その映像よりキック速度、キック頻度、キック長、キック幅、肩関節角度・腰関節角度・膝関節角度及び足関節角度の最小値及び最大値を求め、フィンの使用前後で比較した。その結果、フィン着用時のキック速度の増加はキック長の増加によること、また、フィン使用時に肩関節及び膝関節の屈曲が少なくなることにより、キック幅が減少したことが明らかとなった。さらに、足関節の過伸展により足先のしなりが生まれたと考えられる。
著者
増澤 拓也
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.97_2, 2018 (Released:2019-01-18)

バランス能力を向上させる手法として、2点間に張った平らなロープ上でバランス維持するスラックライントレーニング(SL)と、体幹部の堅牢性を高める体幹トレーニング(CT)が、近年注目を集めている。この両者のトレーニングはいずれもバランス能力の向上を目的としているが、SLは重心位置を動かすことで積極的に安定点を探る制御方法をとり、CTは重心位置を動かさず支持基底面から逸脱させない制御方法をとるため、制御様式が大きく異なる。本研究の目的は、SLおよびCTが姿勢安定性向上に及ぼす効果を明らかにすることである。実験参加者をSL群、CT群および統制(CO)群に配置し、15分間のトレーニングを週2回のペースで合計8回実施した。その訓練前後において重心動揺計とビデオカメラを用い、姿勢安定性の評価・分析をおこなった。分析の結果、SL 群は片・両脚の安定面と不安定面上それぞれで重心動揺が改善され、CT群は両脚時のみ重心動揺が安定化した。
著者
林 誠 岩間 圭祐 小野 誠司 木塚 朝博
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.225_3, 2017 (Released:2018-02-15)

野球の投手における練習方法に、自分自身のピッチングフォームを巻き戻すように行う逆再生シャドーピッチングがある。本研究では、逆再生シャドーピッチングの達成度が高い者と低い者との間で投球能力に違いがあるのか、さらに、動作をイメージする能力が逆再生シャドーピッチングや投球能力に影響しているか否かを明らかにすることを目的とした。大学野球投手16名(平均球速;128±5.6km)を対象者とし、逆再生シャドーピッチングテストとコントロール及び球速を測るピッチングテスト、動作のイメージの鮮明さを測るイメージテストの3つを実施した。その結果、逆再生シャドーピッチングの達成度が高い者と低い者はそれぞれ8名ずつであった。また、高い者は低い者と比べ球速に有意な差はないがコントロールにおいて有意に優れ、イメージテストにおいても有意に得点が高いことが認められた。これらのことから、逆再生シャドーピッチングの達成度が高い者はコントロールと動作を鮮明にイメージする能力に優れていることが明らかとなった。したがって、自分自身が投げるピッチング動作を鮮明にイメージできることが、コントロールの向上につながっている可能性がある。
著者
堀内 元 桜井 伸二
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.147_1, 2017 (Released:2018-02-15)

野球のバッティング動作では、左右の股関節が力学的エネルギーの主な発生源であることが示唆されている。そこで、本研究の目的は、股関節で発生する力学的エネルギーに関連する動作および力の発揮について検討することであった。男子アマチュア野球選手98名のバッティング動作を記録し、バットヘッドスピードと股関節角度および股関節で生成された力学的エネルギーの相関係数を算出した。その結果、いずれの時点での股関節角度においても、バットヘッドスピードとの間に有意な相関関係は認められなかった。また、捕手側の股関節では伸展トルクによる力学的エネルギーの発生がほとんどで、バットヘッドスピードと有意な相関関係が認められた。加えて、投手側の股関節では屈曲トルクおよび内転トルクによって発生した力学的エネルギーの割合が大きかった。これらのことから、野球のバッティング動作では、バットヘッドスピードの大きさによって股関節角度に差異はなく、左右の股関節の非対称な力の発揮によって力学的エネルギーが生成されていることが明らかになった。加えて、捕手側の股関節における伸展トルクの発揮能力がバットヘッドスピードに関連することが示唆された。
著者
川上 諒子 澤田 亨 岡 浩一朗 坂本 静男 樋口 満
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.310_3, 2017 (Released:2018-02-15)

本研究は、野球場におけるプロ野球観戦が特定の応援チームを持たない高齢者の感情や主観的幸福感にどのような影響を及ぼすかについて検討を行った。参加者は65歳以上の男女16人であった。プロ野球観戦の日を3日間設け、野球場でプロ野球を1日観戦するよう依頼した。質問紙を用いて、平常時および観戦直前、観戦直後の感情と主観的幸福感を調査した。感情の調査には一般感情尺度を、主観的幸福感の調査には日本版Subjective Happiness Scaleを用いた。解析の結果、観戦直前では平常時よりも安静状態を示す「ゆったりした」(P<0.01)や「平穏な」(P=0.04)という感情が有意に高まった。一方、観戦直後には主観的幸福感が平常時よりも有意に高値を示した(P=0.02)。また、試合結果の違いによる感情や主観的幸福感への影響についても検討したが、試合の勝敗と感情や主観的幸福感の変化との間に関連は示されなかった。以上の結果より、高齢者が野球場まで出掛けて行きプロ野球を観戦することによって、観戦直前には安静状態が高まり、観戦直後には主観的幸福感が高まる可能性が示唆された。
著者
兄井 彰
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.95_1, 2017 (Released:2018-02-15)

野球では、重いバットで素振りをした後、通常使っているバットを振るとバットが軽く感じる筋運動感覚残効が生じることが知られている。そこで、重いバットを振った後の筋運動感覚残効の大きさの特定とバットのスイングスピードに及ぼす影響を明らかにするために実験を行った。実験1では、基準試行として900gのバットで素振りをした後、介入試行で900g、1050g、1200gのバットで素振りを行い、さらに、後続試行として840gから1000gまで、20g刻み、14種類のいずれかのバットで素振りを行わせた。その際、基準試行と後続試行でのバットの重さを比較させ、重いか軽いかの判断を参加者に求めた。その判断から主観的等価点を求めた結果、1200gのバットで素振りを行った後では、40g程バットを軽く感じる筋運動感覚残効が生じていた。実験2では、1200gのバットで素振りをした後、900gのバットで素振りを行わせた際のスイングスピードを測定した。その結果、バットをフルスイングする条件では、スイングスピードに差は見られなかったが、ボールを打つイメージでスイングさせる条件では、有意にスイングスピードが速かった。
著者
松浦 孝明
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.343_2, 2016 (Released:2017-02-24)

[はじめに] 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律が施行され、教育現場においても施設設備だけでなく、授業内での適切な教材の使用や障害の特性に配慮した指導が求められている。しかし、文部科学省等から合理的配慮事例集が示されているが、体育授業に関する事例はほとんど見られない。本研究では、地域の小学校等に在籍する肢体不自由児に対する合理的配慮事例集を作成し、今後のインクルーシブな体育授業の充実に寄与することを目的とする。[方法] 筑波大学附属桐が丘特別支援学校の教育相談による支援事例および地域の小学校や中学校から転入した児童生徒に対するアンケート結果から、体育授業の参加を困難とすると思われる要因(障害特性、認知特性など)を整理するとともに、適切な配慮について整理する。[まとめ] 体育授業への参加を困難にする要因は、身体の動かしにくさ、ボールや用具の扱いにくさ、車いすなど補助具の利用、視覚情報処理の難しさ等に整理された。また、合理的配慮の事例は、施設設備、教材、指導法、人的配置などに分類し、体育授業全般に共通するものと個別の指導内容に応じたものに整理することで利用しやすい事例集になると思われた。