著者
町田 樹
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.38_2, 2017 (Released:2018-02-15)

フィギュアスケートは、氷上においてジャンプやスピン、ステップなどの卓越した「身体技術」に加え、思想や感情、物語を体現するための「表現技術」を競うスポーツである。基本的に「滑る」、「跳ぶ」、「回る」等の動作で構成されるフィギュアスケートだが、それらの動作を駆使して発揮される一連のパフォーマンスは、ときに「踊る」、「表現する」という動詞によって言い表される芸術的な動きの連続性として捉えられる。では、なぜ人はフィギュアスケーターの演技に美的な価値を見出すのであろうか。その理由の一つとしては、長い歴史の中で様式化されたフィギュアスケート特有の動作と音楽の間に、強力な相関関係が成立しているからであろう。本発表では、実際に発表者による自作振付の映像を用いながら、フィギュアスケーターの身体技術と音楽の密接な関係性を中心に、分析を試みていきたい。なお、発表者はフィギュアスケーターとしてのキャリアを23年間継続させており、現在プロフィギュアスケーターとしても活動を展開している。従って、本発表は研究者の観点と共に、フィギュアスケートの実演家および振付家の視点からも見解を提示するものである。
著者
川上 泰雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.37_2, 2017 (Released:2018-02-15)

トップアスリートや舞踊家、音楽家など、様々なジャンルで活躍するエリート達は、いずれも人間の身体能力を極めて高いレベルで達成している「達人」であるといえる。人々を驚嘆、感動させるこうした達人たちの動きに関して精力的に研究・実践活動を進めている4名の専門家を演者としてお招きし、本シンポジウムを企画した。「達人技」の域に達する動作の機序、音楽・リズムとの絶妙な協調を成し遂げる情報処理能力や身体制御方略、そして人々の感動を呼ぶ達人の動きのポイントなどについて、各氏より最新の研究成果をご披露いただく。会場では「達人技を科学する」というテーマのもと、各演者の話題を中心に議論を行い、領域横断的な考察を深めることを目指す。シンポジウムに割り当てられる合計時間の関係から、パネルディスカッションは最小限とし、各演者のご発表と質疑応答にできる限りの時間を充てる予定である。バイオメカニクス研究領域はもちろん、ご興味をもたれる様々な研究領域の皆様のご参加と、積極的な意見交換をお願いする次第である。芸術の域にまで高められた人間の究極の動きに迫り、身体能力の多様な可能性を探りたい。
著者
下代 昇平 谷本 道哉
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.128_1, 2017 (Released:2018-02-15)

背景・目的:近年運動において、体幹の剛体化は、四肢の土台としての働き、下肢から上肢への力の伝達等の観点から注目されている。体幹を剛体化させるトレーニング(TR)としてプランクなどの体幹TRが注目されており、実施の際には腹圧の上昇を伴うことが重要といわれている。本研究では体幹TRをはじめ、各種運動時の腹圧を調べることを目的とした。なお、腹腔の構造上、腹圧の上昇は体幹を伸展させるトルクが生じる。この観点からの検証、考察も行うこととした。方法:プランク・バックブリッジ等の体幹TR、スクワット・ベンチプレス等の各種筋力TR、ジャンプ・投打動作等のダイナミックな競技動作を実施し、運動中の腹圧を肛門よりカテーテル式圧力計を挿入して測定した。結果:腹圧の上昇の程度は「体幹TR(3~10%)<<筋力TR(7~47%程度)<ダイナミックな競技動作(38~61%:いずれもバルサルバを100%とする)」であり、体幹TRは小さい値であった。また、体幹伸展トルクを生じるような動作において特に腹圧が高まる様子は観察されなかった。
著者
矢野 裕介
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.70_2, 2017 (Released:2018-02-15)

1937年の日中戦争突入により国家総動員法が公布され、国内体制が戦時体制に移行していく中で、武道は1939年に設置された武道振興委員会の答申にみられるように、その戦技化を要求された。それがために、剣道においては斬撃姿勢による基本的な技が採用され、竹刀についても長さを3尺6寸とする真刀に近いものが使用されたように、より実戦的(軍事的)な内容へと改変された。また剣道の訓練で培った技術を氷上戦にも即すべく、剣道とスケートを融合させた「氷上剣道」なるものも考案、実施されるようになった。とはいえ、従前の武道史研究では氷上剣道に焦点をあてた研究は見受けられず、その存在について語られることはこれまで全くといっていいほどなかった。そこで本研究では、前廣節夫・岡部直己(1940)の『氷上剣道教育指導法』(筆者蔵)を中心に採り上げ、分析を行うことを通して、氷上剣道の実際について明らかにしていくことを目的としている。本書は、氷上剣道を統括していたとみられる日本氷上剣道会が発行したもので、その「使術ノ要領」、「教育一般ノ要領」(基本動作、応用動作、試合教習、試合)、「審判」法等が詳説されているからである。
著者
波戸 謙太 木野村 嘉則
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.235_2, 2017 (Released:2018-02-15)

本研究は、野球初心者が全力投球を反復した際の球質の動態を明らかにすることで、その際に内在する諸問題について検討し、特にスピードトレーニングの投球練習における適正反復投球数について検討することを目的とした。実験試技は、野球初心者である男性2名に対して、屋内において捕手方向に各々の最大努力度によって、フォーシームの握りでストレートを投球させた。投球数は20球1セットとし、合計5セットの計100球の投球を行わせた。その結果、投球数の増加に伴い、ボール速度が減少した。その際、セット内における球速および回転数の変動が大きかった。さらに、野球経験者と比較すると、球速が低く回転数が少なかった。よって、野球初心者はボール速度を増大することに加え、回転数を増大させること、球質を安定させることもトレーニング課題となりえることが想定される。また、野球初心者では、21~40球目にボール速度の大きな減少がみられたことから、スピードトレーニングの投球数は20球までを適正反復回数の目安とすることで、より効率よく球速をはじめとした球質の向上への効果を期待できる可能性が示唆された。
著者
勝亦 陽一
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.170_3, 2017 (Released:2018-02-15)

本研究は、大学生を対象に運動有能感に対する相対年齢効果の性差を明らかにすることを目的とした。対象はスポーツ実技科目を選択履修した男子1326名および女子1479名とし、質問紙により調査を行った。被検者には、運動有能感(17項目)、過去の体育に対する意識(5項目)について、「非常にそう思う」(5点)から「まったくそう思わない」(1点)の5段階で評価させた。生まれ月は、4群(4–6、7–9、10–12、1–3月)に分けた。運動有能感について、因子分析により共通要因を算出した。その結果、「身体的有能さの認知」、「統制感」および「受容感」に分類された。各因子得点を算出し二元配置(性別×生まれ月)を行ったところ、「身体的有能さの認知」においてのみ交互作用が示された(男子>女子、女子のみ4–6月>1–3月)。また、過去の体育に対する意識のうち、「球技種目が得意だった」について交互作用が示された(男子>女子、女子のみ4–6月>1–3月)。以上の結果から、大学生の運動有能感に対する相対的年齢効果には性差があること、その原因は過去の体育における球技種目にある可能性が示唆された。
著者
宮原 祥吾 原田 健次 新海 陽平 稲葉 泰嗣 荒牧 勇
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.111_1, 2017 (Released:2018-02-15)

近年、脳の局所的な構造が運動・認知スキルと関連するという報告が相次いでいるが、スポーツ選手を対象とした報告は少ない。そこで本研究は、野球熟練者の投球コントロール能力と関連する脳部位の構造的特徴を明らかにすることを目的とした。C大学野球部のピッチャー9名(右利き)に対し、的の中心点を狙った右投げ投球、左投げ投球をそれぞれ30球ずつ行わせた。それぞれの条件について的中心からの平均距離を計算した。すべての被験者のT1強調MRI脳画像を計測し、Voxel Based Morphometry解析により、それぞれの投球条件において、的中心からの距離と脳灰白質容積の相関のある脳部位を同定した。その結果、いずれの条件においても、的中心からの平均距離と右頭頂葉の灰白質容積に有意な正の相関関係が認められた。頭頂葉は、空間的な運動制御に重要な役割を果たす脳部位であり、投球コントロール能力に頭頂葉の構造的発達が重要であることが示唆された。
著者
池田 隼 熊谷 仁 畠山 廣之 井口 祐貴 島嵜 佑 内藤 久士 吉村 雅文 福 典之
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.132_1, 2017 (Released:2018-02-15)

【背景】αアクチニン3遺伝子(ACTN3)のR577Xやアンジオテンシン変換酵素遺伝子(ACE)のI/D多型は運動能力に関連する。サッカー選手において、瞬発的および持久的な能力はポジションごとに異なるが、遺伝子多型とポジションの関連は不明である。【目的】サッカー選手におけるACTN3 R577XおよびACE I/Dとポジションの関連について検討した。【方法】対象者は、日本のJリーグ、なでしこリーグおよび大学トップレベルチームに所属するフォワード(FW)、ミッドフィルダー(MF)およびディフェンダー(DF)とした(男子:159名、女子:75名)。唾液からDNAを抽出し、TaqMan法によりACTN3 R577X(rs1815739)およびACE I/D(rs4340)の遺伝子型を分析した。【結果】男子選手においてのみ、ACTN3多型の頻度はポジションごとに有意に異なり(P<0.05、カイ二乗検定)、FW>MF>DFの順にRR型が多く、XX型が少なかった。一方、ACE多型は、男女に関係なくポジションとの関連は認められなかった。【結論】男子サッカー選手において、ACTN3 R577X多型はポジション特性に関連する可能性が示された。
著者
衣笠 泰介
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.44_2, 2017 (Released:2018-02-15)

独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)と連携する地域タレント発掘・育成(TID)事業は、現在、24地域にまで拡大している。こうした中、平成25年度に立ち上げた全国規模のナショナルタレント発掘・育成(NTID)プログラムでは、将来性の豊かな人材と優れたコーチを出会わせるため、「発掘・検証・育成」の3つの段階がある。発掘においては、種目適性型、種目選抜型、種目最適(転向)型の3つのモデルがあり、コーチの眼のみならず、科学的分析を行っている。この段階では、エビデンスに基づいた測定項目の選定やワールドクラスの選考基準の設定が求められる。検証においては、成長率の算出等を通してポテンシャル(潜在力)を見極めている。育成においては、目標大会から逆算して設定した最低水準(ベンチマーク)に対するパフォーマンスを追跡している。平成28年度には、オリンピック・パラリンピック一体型発掘プログラムを開発し、クラス分けと科学的測定によるパラリンピック選手の発掘も開始した。最終的には、暦年齢よりも生物学的アプローチを通して、エビデンスを蓄積しながらオリンピック・パラリンピックパスウェイの構築を目指す。
著者
金森 史枝
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.83_3, 2017 (Released:2018-02-15)

本研究の目的は、大学在学中の体育会運動部と体育系サークルとの所属の違いが大学時代の過ごし方及び社会人となった現在における仕事の取り組み状況にどのような差をもたらしているかを明らかにすることである。体育会運動部所属であった社会人(男女各100名)と体育系サークル所属であった社会人(男女各100名)の計400名のアンケート調査(4件法)データを基に分析した。所属(体育会・サークル)と勉強との両立の有無(二値化)を独立変数、仕事の取り組み状況についての各質問項目の回答得点(高いほどポジティブ)をそれぞれ従属変数とした2×2の分散分析を男女別に行った。その結果、有意な交互作用がみられた項目における単純主効果検定により、サークル所属群では勉強との両立の有無で有意な得点差がみられなかったのに対し、体育会所属群では勉強との両立が非両立より有意に高い得点を示した。また、体育会所属の両立群がサークル所属の2群(両立/非両立)より高得点を示す一方、体育会所属の非両立群は4群中最低得点であった。以上から、社会人としての仕事の取り組み状況に関する体育会運動部所属効果はとりわけ勉強との両立が規定要因となることが示唆された。
著者
川端 昭夫 木村 吉次
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.69_1, 2017 (Released:2018-02-15)

本研究の目的は、大正11年から昭和3年まで陸軍戸山学校教官であった大井浩を取りあげ、その欧州体育・スポーツ視察並びに体育論を検討し、また、大正・昭和初期の日本の社会体育促進との関わりについて考察する。主な資料は、「体育と武道」、「研究彙報」、「皆行社記事」、「陸軍大日誌」に収録された論文論説、また陸軍戸山学校関連書籍並びに朝日新聞を調査した。得られた結果を以下に示す。1)大井浩は、欧州諸国の視察の結果、軍隊体育、体育・スポーツ事情について度々報告した。軍隊体育における運動競技(スポーツ)の日本に適した様式による導入、日本における武道精神を含めた武道の普及、国民の軍事予備教育を意図した国民体育、特に青年体育の推進を奨励した。2)欧州諸国の視察報告を通して、日本の社会体育の普及の必要性を提言した。3)欧州諸国における女子体育・スポーツの隆盛を報告して、日本でのその普及を期待した。4)欧州諸国の新しい体操の趨勢や集団体操(マスゲーム)の隆盛を報告し、実際に第2回明治神宮競技大会のマスゲームの部の創設や戸山学校生による集団体操の演技参加を行い、日本で初めての公的なマスゲームの大会を実現した。
著者
村井 梨沙子 荻原 朋子 長登 健
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.261_1, 2017 (Released:2018-02-15)

ゴール型ゲームにおけるサッカーでは、足でボールを操作することの難しさから、ゲーム中の状況判断が難しいことや、意図的ではないキックが頻発すること、さらに、ボールに触れることなくゲームが終わってしまうことも少なくないという指摘がある。そのため、ボールを蹴る・止める動作を確実に保障できる教材を実践することが求められている。 そこで本研究では、攻守分離された状態でボールを足で扱う「フロアキックボール」(井上,2016;小畑,2016)を参考に教材を再構成し、その教材を用いることで、児童のボールを蹴ったり止めたりする技能を高め、効果的に学習内容を身に付けさせることができるか検証した。対象者は千葉県内N小学校4年生37名であった。毎時間のメインゲームの映像を撮影し、ゲームパフォーマンス(パス、トラップ、シュート、シュートまでの所要時間等)について、映像分析ソフトStudio Codeを用いて分析した。その結果、相手の間やコートの隅を狙ってシュートを蹴る児童が見られるようになった。詳細な結果と考察は、当日発表する。
著者
春名 匡史
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.144_1, 2017 (Released:2018-02-15)

体幹伸展運動に伴う肩甲骨後傾運動は、オーバーヘッドスポーツで障害予防やパフォーマンスアップに重要となる。本研究の目的は、体幹伸展時の、肩甲骨と、上位胸椎、下位胸椎、腰椎および肋骨運動の運動連鎖を定量評価することである。対象は20歳代健常成人男性6名。対象者の肩甲骨、胸腰椎および肋骨(肋骨下縁に6個貼付)の骨特徴点に赤外線反射マーカを貼付し、端座位での体幹中間位と体幹最大伸展位(視線前方注視かつ上肢脱力位)を光学式モーションキャプチャ・システムにより静的に計測した。カメラ座標系に対する肩甲骨座標系の回転を肩甲骨の外観上の運動とし、胸部座標系に対する肩甲骨座標系の回転を肩甲骨の胸郭に対する運動とし、それぞれオイラー角で表現した。上位胸椎(1–7胸椎)、下位胸椎(7–12胸椎)、腰椎(12胸椎–5腰椎)および肋骨運動は各マーカ間の距離の和で表現した。肩甲骨前後傾、上位胸椎、下位胸椎、腰椎および肋骨運動それぞれに対して、体幹中間位から体幹最大伸展位への変化量を求めた。外観上の肩甲骨後傾運動は下位胸椎伸展に、胸郭に対する肩甲骨後傾運動は腰椎伸展および肋骨下制に影響されることが明らかとなった。
著者
鈴木 明哲
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.26_2, 2017 (Released:2018-02-15)

現代におけるオリンピックやスポーツの教育的価値、そして体育やスポーツによる人格形成は揺るぎない価値として広く世界に流布されており、もはやそこに懐疑を挟むことはタブーである。 しかし、私たちはこれらの不変的な価値にあまりにも縛られすぎていないか。これらの不変的な価値によって、果たして多くの人々が幸福を感じ、そしてまたスポーツそのものが豊かに発展しているのであろうか。そもそもこれらの不変的な価値はどのようにして誕生し、世界に広まっていったのか。歴史的に検証し、現代との「ずれ」を指摘することは、スポーツに「託せないこと」を見出す手立てとなり得る。 本報告では、近代スポーツの功罪を、スポーツ教育と近代オリンピックという二つの事例から考えてみたい。近代以降、スポーツの教育的価値が形成され、しかも公教育システムとオリンピックムーブメントという二つの巨大な力を得て全世界に広まっていった。この教育的価値がいかに現代との「ずれ」を生じているのかを「罪」とし、逆に何が「功」として拾い上げられ、捉え直されるべきであるのか、体育・スポーツ史の立場から提案してみたい。
著者
若槻 遼 相馬 満利 柏木 悠 船渡 和男
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.144_3, 2017 (Released:2018-02-15)

【背景】立位での身体運動において足部は常に荷重を受けており、荷重の有無によって特にアーチ構造に変化がみられることが報告されている。本研究の目的は、異なる荷重条件における足部の3次元形状の違いを明らかにすることである。【方法】対象は、健常な成人75名(男性49名、女性25名)の右足とした。足部への荷重は、立位での全荷重、半荷重および座位の3条件とし、それぞれの静止姿勢における足部形状を、3次元足形測定装置INFOOTを用いて取得した。得られた足部の各項目を全荷重で正規化し、比較を行った。【結果及び考察】全荷重に対して、半荷重の内踏まず長及び舟状骨点高以外の項目で有意な差がみられた。しかし、全荷重に対して半荷重は外果最突点高が高かったが、長さと幅の各項目の差の平均が1%未満であった。座位は全荷重に比べ、長さの各項目が1.0±0.7%短く、幅の各項目が1.8±1.0%狭く、高さの項目が6.0±4.3%高かった。半荷重と全荷重とでは足形状に顕著な違いはみられなかったが、座位においては荷重軽減の影響により、内側縦アーチ、外側縦アーチ及び横アーチ構造に変化がみられ、各項目に差が生じたことが推察された。
著者
東山 明子 丹羽 劭昭
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.100_1, 2017 (Released:2018-02-15)

笑いがパフォーマンスにポジティブな影響を与えることが様々な研究から明らかにされてきている。笑顔に関係する表情筋の中で最も重要な働きを司る大頬骨筋の収縮により、口角を引き上げ、笑顔になる。 そこで心理的要因や快感情からの笑いではなく、口角を上げるだけ、あるいは逆に下げるだけでの影響の程度を検討した。健常な大学生男女20名を対象とし、連続数字の加算作業による精神的負荷のかかる状況において、口角の指示なし、口角上げ、口角下げの3条件で行い、優勢前額皮上電位、心拍数、注意力正答率、状態不安得点について、比較検討した。その結果、心拍数では、口角上げによる鎮静効果は特に見られなかったが、優勢前額皮上電位は口角上げと下げの両条件で口角指示なしよりθ3波が減少する傾向が見られ、注意力正答率は口角上げが口角下げより高い成績を示す傾向が見られ、状態不安得点は口角指示なしより口角上げのほうが低かった。口角を上げることは不安減少と注意力向上に効果があることが示唆された。
著者
武田 剛 酒井 紳 高木 英樹
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.145_2, 2017 (Released:2018-02-15)

競泳競技はスタート台やプール壁をけることで得られる速度が泳ぎ(ストローク動作)よりも高い。この高い速度を維持する目的で、自由形種目では完全水没状態でドルフィンキックやフラッターキックを使用し、ストローク動作(クロール泳)に移行する。競技会において選手が使用するこのキックの種類は、ドルフィンキックのみとドルフィンキック後にフラッターキックを使用するタイプに分けられる。このドルフィンキック後に使用するフラッターキックの影響を明らかにすることを本研究の目的とした。対象はよくトレーニングを積んだ大学生男子競泳選手8名とした。実験参加者にはプール壁からの水中スタート後のキックの種類をドルフィンキック後フラッターキック(試技①)、ドルフィンキックのみ(試技②)の2種類で実施してもらった。選手の水着に自発光型防水LEDマーカーを貼り付け、画像分析法(2次元DLT)によって選手の泳速度を算出した。試技①のフラッターキックの使用によって有意な泳速度の低下が確認され、クロール泳の浮き上がり動作におけるフラッターキックの使用は大きな減速を招くことが明らかとなった。
著者
岸野 力 武田 剛
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.211_1, 2017 (Released:2018-02-15)

競泳トレーニングにおいて抵抗体やゴムチューブによる牽引泳をスプリントトレーニングとして導入されるようになってきた。しかしながら実際のトレーニング現場ではチューブでの牽引力を日常的に評価することは少ない。そこで本研究は牽引力とスプリントパフォーマンスの関係性を明らかにし、スプリントトレーニングとしての牽引泳の意義とゴムチューブを介して得られる牽引力のトレーニング指標としての活用法を提案することを目的とした。対象者は日常的に水泳のトレーニングを十分に積む男性15名とした。試技は25mの屋内プール(25m×7レーン 水深1.1~1.2m)にて25mクロール泳タイム測定と牽引泳パワー測定に分けて行った。牽引泳パワー測定は牽引泳8秒と12秒休息×8セットのトレーニング内容で行った。牽引力の計測にはデジタルフォースゲージ(FGPX-100日本電産シンポ社製)にゴムチューブを装着し、クロール泳中の牽引力を測定した。牽引力の最大値、平均値と力積を求め、スプリント泳速度との相関関係を検討した。結果として最大泳速度と最大牽引力との間に有意な相関が認められ、25mの最大泳速度と牽引泳での最大牽引力には高い関係性があることが明らかとなった。
著者
林 享 草薙 健太 水上 拓也 松井 健
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.217_3, 2017 (Released:2018-02-15)

近年、スポーツ選手の競技力向上を目的として、体力や技術のトレーニングに加えて、精神面のトレーニングとしてのイメージトレーニングが注目されている。最近では、水泳界において、小型防水ビデオカメラを用いることで水中でも主観的な映像からバーチャルリアリティー映像(VR映像)を体験することが可能になり、競泳選手の新しいイメージトレーニングの手法としてVR映像が使用できる可能性が考えられる。以 上のことから、本研究の目的は、競泳選手におけるVR映像が、最大努力泳に及ぼす影響を明らかにすることとした。本実験には、鍛錬された男性競泳選手11名が参加した。被験者はVR映像視聴(VR)とVR映像視聴しない(コントロール)試技を行い、VR試行では視聴直後に100m自由形全力泳を行った。測定項目は、100m泳タイムおよび乳酸値であった。実験の結果、100m泳タイムはVRがコントロール条件より速くなる傾向がみられ、レベルが低い選手ほどタイムの改善が顕著であった。また、乳酸においては、最大値がVRにおいて高くなる傾向にあり、最大値から全力泳後10分後までの減少量も、VRがコントロール条件に比べて有意に大きかった(p<0.05)。
著者
野村 美咲 生田 泰志 谷川 哲朗
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.220_3, 2017 (Released:2018-02-15)

ドルフィンキック動作で、高い泳速度を得るためには、各関節動作を狭くし身体の振り幅を小さくすることによりストローク頻度を大きくすることが重要である(仁木2013)。練習時にこの動きを習得するためにフィンを使用することが多くある。本研究では、水中ドルフィンキックにおけるフィンの使用による泳パフォーマンス及び身体関節角度の変化を明らかにすることを目的とした。対象は、大学水泳部に所属する男子競泳選手7名、女子競泳選手7名であった。対象者は、15mドルフィンキック泳を最大努力でフィン未使用、フィン使用の計2本実施した。対象者の右側方より水中映像を撮影し、その映像よりキック速度、キック頻度、キック長、キック幅、肩関節角度・腰関節角度・膝関節角度及び足関節角度の最小値及び最大値を求め、フィンの使用前後で比較した。その結果、フィン着用時のキック速度の増加はキック長の増加によること、また、フィン使用時に肩関節及び膝関節の屈曲が少なくなることにより、キック幅が減少したことが明らかとなった。さらに、足関節の過伸展により足先のしなりが生まれたと考えられる。