著者
井上 健二郎 吉田 光男
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2H4OS3b02, 2023 (Released:2023-07-10)

インターネット広告の成長は著しく,中でもディスプレイ広告の日本国内の市場規模は,インターネット広告全体の3分の1を占める.ディスプレイ広告は画像とテキストで構成され,広告主は広告を通じて消費者と接触し,購買を促すことで売上収益を最大化する.商品の均質化とニーズの多様化が進む現代社会では,広告による消費者心理への訴求がますます重要となっている.しかし,どのような訴求が消費者心理に影響を与えるかは十分に明らかでない.本研究では,ディスプレイ広告の一つであるInstagram広告で実際に配信された,Health products(健康食品)とCosmetics(化粧品)の広告テキストを,LIWC(Linguistic Inquiry and Word Count)を適用することで訴求を定量化し,CTRとの相関を分析した.その結果,消費者の不安や危機感を喚起するネガティブな訴求がCTRと関係していることがわかった.
著者
平井 翔太 村岡 雅康 岡崎 直観
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4Xin138, 2023 (Released:2023-07-10)

人間が言語機能を獲得する上で、視覚情報は重要な役割を担っている。様々な自然言語処理タスクで成功を収めている大規模言語モデルの多くは、テキストデータのみを用いて学習される。Vokenizationの研究は、自然言語処理タスクにおける大規模言語モデルの性能を向上させるために、視覚情報を大規模言語モデル学習に取り入れるという新しい方法を確立した。しかし、Vokenizationでは、文中の異なるトークンに同じ画像を割り当ててしまうため、大規模言語モデルが効果的な単語埋め込み表現を学習することができない。本研究では、大規模言語モデルの性能をさらに向上させるために、大規模言語モデル学習においてトークンに割り当てられる画像をtop-kまたはtop-pサンプリングを利用して多様化する方法を提案する。実験の結果、言語理解ベンチマークであるGLUEにおいて、本手法の有効性が示され、Vokenizationのtop-1検索を用いたベースライン手法を上回った。
著者
笹嶋 宗彦 石橋 健 山本 岳洋 加藤 直樹
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1N4GS1003, 2023 (Released:2023-07-10)

兵庫県立大学社会情報科学部では,実践力のあるデータサイエンティストの育成を目標に,学部1年生,2年生を対象として,連携企業の実データを用いた課題解決型演習(PBL)を実施しており,今年で4年目となる.本学部が育成を目指すデータサイエンティストとは,ITスキルと統計学の知識を用いてデータを分析する力だけではなく,実社会の課題を定式化し必要なデータを収集する力や,分析の結果を用いて社会をよくする提案が出来る社会実装力を備えた人材である.低学年はデータ分析力が低いが,ツールを利用して実データを分析し,実店舗へ向けた販売施策を提案する過程を体験することで,経営を改善することへの興味を持たせることや,データだけでなく現場を見て考えることの重要性を学ばせることを狙いとしている.2019年の学部創設以来1年生向けのPBLを4回実施し,今年度は新しい試みとして,実習対象となる店舗を1店舗に限定して実施した.事後に学生アンケートを取ることで,演習を評価した.本稿では,2022年度実施したPBL演習の概要と,これまでのPBL演習を通じて得られた,実データを利用するPBLの長所と課題について述べる.
著者
下西 風澄
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2R5OS28a04, 2023 (Released:2023-07-10)

近年の認知科学を巡る哲学研究の潮流は、意識の身体性や環境との相互作用に着目している。神経生物学者のフランシスコ・ヴァレラはこうした認知哲学を「身体化された心」と呼び、認知が単なる記号的な情報処理として普遍的に機能するのではなく、それぞれの個別の歴史性を有した身体や、その有機体が行為する状況に深く依存してはじめて捉えることができるという観点に注目した。こうした認知の身体性を広く解釈すれば、認知とは、それを行う認知主体の身体的な習慣、使用する言語、活動する生態環境などの総合的な環境のなかで捉えるべき対象となる。別の言い方をすれば、意識はいわば「文明と共進化」する視座のなかから理解すべき現象でもある。 筆者は『生成と消滅の精神史』(文藝春秋、2022)にて、この「文明と共進化する意識」という観点から、古代・近世・現代の西洋における意識、夏目漱石の文学において描かれた意識を対象に論じたが、本発表では、漱石の作品における意識の描かれ方とその理論における捉え方を比較し、日本における意識の捉え方を考察する。
著者
武田 英明
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2Q5OS20a01, 2023 (Released:2023-07-10)

IT社会さらにAI社会と社会が発展するにつれ、人個人のあり方にも変化が求められている。本稿では伝統的な個人(individual)の概念から離れて、新たに分人(dividual)を基本とする人と社会のあり方を検討する。我々はすでにSNS等において自らの一部として参加していたり、分人的活動をしている。そこでむしろ、分人を社会の基本単位として社会を構成することで、よりIT/AI社会に適合したシステムになると考える。分人概念の歴史的経緯、分人型システムの要件、分人型システム実現への課題などをまとめる。
著者
西堤 優
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1K4OS11a05, 2023 (Released:2023-07-10)

昨今、人工主体(AI)による人の感情の分析・認識の技術開発が活況を呈している。この技術が進展し、さらにAIが人から読み取った感情の情報をもとに適切な仕方で応答するようになれば、AIはますます本物の人間と区別がつかないような振る舞いをするものになるだろうし、私たちはそのようなAIに対して、感情を帰属させるようになるかもしれない。しかし、実際にAIが感情を持つことはできるのだろうか。本発表ではAIが感情を持つことが可能なのか、もしAIが感情を持ちうるとすればどのようなものなのかについて考察する。そのために、心理学や哲学において現在提案されている感情についての理論を比較検討しつつ、感情における身体性の役割について論じたい。また、AIが感情を持つなら、もしくは、持たないとしても私たちが感情を帰属させるなら、どのような倫理的配慮が必要となるのかについても検討を加える。
著者
西尾 駿斗 武藤 敦子 島 孔介 森山 甲一 松井 藤五郎 横越 梓 吉田 江依子 犬塚 信博
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.3M5GS1003, 2023 (Released:2023-07-10)

流行語についての研究は、語の定着の過程の分析や、語のジャンルごとの流行の度合いの分析などがあるが、どれも流行の定義を定量的に行っておらず、流行の定着度の分析を行うには十分でない。そこで本論文では、Twitterにおける単語の流行と定着の定義を定量的に行い、定義に基づいた語の流行期間について、機械学習による予測を行った。まず、ある流行語の一定期間内の使用回数に対し閾値を設定し、流行状態とそうでない状態を定義した。次に、ある期間における語の使用回数の推移を用いて、一定期間後に流行状態であるかを複数の機械学習手法を用いて予測のためのモデルを作成した。作成したモデルを用いて予測を行った結果、高い精度で流行状態の予測が可能であることを確認した。最後に、モデルの各特徴量の重要度を数値化し、流行が長期化するための条件について考察を行った。
著者
狩山 和亮 吉仲 亮 山本 章博
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第27回 (2013) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1F51, 2013 (Released:2018-07-30)

本論文では,大学入試センター試験の数学問題文を対象とした検索手法を提案する.文中で特定の役割を持つ記述を生成するパターンの発見によって,問題文を大問文と小問文からなる構造へ構造化する.さらに,Earth Mover's Distanceを用いて数式集合間の類似度を定義し,数式を含む小問文間の類似度を定義する.これらを用いた検索手法の有効性についてNTCIRで配布されるデータを用いて評価を行った.
著者
佐々木 明 大倉 俊平 小野 真吾
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1H1GS1102, 2022 (Released:2022-07-11)

アプリ内で提示される記事を提示ロジックのパーソナライズの強さによって段階分けし、パーソナライズへの嗜好性と閲覧記事の多様性の関係を調査した。 その結果、閲覧記事の多様性が高いユーザほど長期的なエンゲージメントが高くなる一方で、よりパーソナライズが強く効いたロジックを好むユーザほど閲覧記事の多様性が低くなってしまうことがわかった。
著者
磯谷 光毅 大沢 英一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1I4GS4c03, 2021 (Released:2021-06-14)

近年SNSが広く利用されている中,誹謗中傷の様な攻撃的な投稿がなされる場合があり問題となっている.そこで誹謗中傷などの攻撃的な投稿についてその特性を理解した上で効果的な対策を考案することが必要である.本研究では意見が二分されるようなテーマについての誹謗中傷などの攻撃的な投稿の,発生や収束といったダイナミクスを的確に表現することができるモデルを構築しその特性について分析することを目的とする.モデルには各ユーザについて中立,賛成,賛成かつ攻撃的,反対,反対かつ攻撃的の5つの状態を定義し状態遷移に周辺ユーザの影響を考慮するよう設定した.DTWにより実際のTwitterにおける攻撃的状態にあるユーザとモデルでの攻撃的状態のユーザの推移についての時系列の距離を測った結果,提案モデルは賛成かつ攻撃的について4.493,反対かつ攻撃的について7.443であり各状態をランダムで遷移した場合の132.2,170.0と比較し類似度が高いモデルを構築することが可能であった.また攻撃的なユーザの,同意見周辺ユーザへの影響を抑えると攻撃的状態ユーザ総数の割合の累計が減少することが示された.
著者
諏訪 正樹
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4C3GS1304, 2020 (Released:2020-06-19)

「状況依存性」という概念は、人工知能/認知科学の基礎とも言える「情報処理モデル」へのアンチテーゼとして、1980年代中盤以降に登場した。「現場に入り込み渦中の人にならないと(もしくは実際に手を動かして実行してみるまでは)、どんな認知が生じるかが想定できない」ということを論じたものである。「現場に入ってみて(手を動かして実行してみて)初めてわかる(気づく)ことがある」ということである。さらに言えば「渦中の人になれば確実に何かに気づくのだけれど、それをあらかじめ予測すること(モデル化すること)が難しい」ということでもある。現場や実践はモデル化できるほど、単純ではない。当事者になってみないとわからないことで、満ちあふれている。 一方、フレーム問題は、人工知能が未だに越えられない高いハードルである。「認識フレーム」を臨機応変には変えられないという問題である。渦中の人になり、状況依存的に何かに気付くことが、認識フレームを変え、想定外の物事に対処するということであるという意味で、「フレーム問題」と「状況依存性」は表裏一体の関係にある。
著者
林 美衣 森 直樹
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.3D1OS12a01, 2021 (Released:2021-06-14)

近年,ファッション分野への人工知能技術の適用が注目されている.本研究は複数の衣服やアクセサリーの画像で構成されたコーディネートを学習した深層学習モデルからコーディネートの出来栄え点を獲得し,それを用いてファッションコーディネートプランを最適化する手法を提案する. 提案手法ではまず学習済みの Bi-LSTM + VSE モデルに手持ちの服を組み合わせたコーディネートを入力し,出来栄え点を獲得する.その点数を元に熱力学的遺伝アルゴリズム (Thermodynamical Genetic Algorithm : TDGA) を用いて複数のコーディネートからなるリスト,つまり着まわしプランを作成した.期間中同じコーディネートを使用してはいけない,3 日以内に同じアイテムを使用してはいけない,期間中一度も使っていないアイテムがあってはならないという制約を課し,多様性を考慮しながら着まわしプランを作成可能とした. 数値実験により,提案手法がユーザが購入を検討しているアイテムが価値があるかを定量的に評価し,どのアイテムを買うべきか推薦するツールとしても活用できることを示す.
著者
荒堀 淳一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2J5OS24a01, 2022 (Released:2022-07-11)

AI ガバナンスをめぐる国内外の動向としては、AI 原則からガバナンスの具体化への進捗が顕著と言われる。各国政府や国際機関だけでなく、多くの企業や団体がAI 原則案を公表している。 AI 原則を社会で実現するための自律的なガバナンスや規制案の考え方は多様であり、AI開発者や活用者の自主性に任せるものから、当局により厳格な規制を課すべきだとする案もあり、とくに後者の場合には今後のイノベーションを阻害する要因となりかねない。 本稿では、特にエポックメーキングなEUの規制案を俯瞰したうえで、将来のAI技術開発や実装に与える影響について検討したい。
著者
石塚 光 白松 俊 小野 恵子
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1P1GS1003, 2022 (Released:2022-07-11)

2つの対立する主張があった際に,そのどちらの主張も否定せずに発展した答えを導くことを「アウフヘーベン」という.アウフヘーベンは日本語で「止揚」と訳される.この止揚の考え方は,話し合いや議論の場などで,皆の納得できる高度な結論を導くうえで重要だと考えられる. 本研究では,議論において対立意見の止揚が起こるのに必要な要素を明らかにするため,まずは止揚の度合を定量化した上で,議論実験とその分析を行った.その結果,議論中に自分の意見の根拠となる情報として投稿されたURLの数と,議論での止揚の度合いの間に弱い正の相関関係が確認された. また議論で止揚が起こるには前提として,対立する主張が存在する必要がある.しかし実際の話し合いや議論では,皆が似たような主張で対立する主張を述べる人が少ない,または存在しないことがある.このような状態は,議論の中で意見の偏りが生じていて,止揚が起こりにくい状態だといえる.そこで本研究では,議論においてbotが少数派の意見を補強する情報を投稿する,意見の偏り解消手法を提案する.
著者
岡田 雅司 谷口 忠大
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2M1OS19a01, 2022 (Released:2022-07-11)

本稿では、世界モデルに基づく強化学習であるDreamerV2とDreamingを拡張したDreamingV2を提案する。DreamerV2は潜在状態をカテゴリ変数で表現する離散世界モデルを用いた強化学習手法である。またDreamingは、対照学習により、一般的な世界モデル学習におけるオートエンコーディング(再構成)の過程を用いない強化学習手法である。提案するDreamingV2は、DreamingV2の離散状態表現とDreamingの再構成不要な世界モデル学習の両者を採用した手法である。5つのロボットアームのタスクのシミュレーション実験において、DreamingV2はDreamerV2および最新の世界モデルを上回る性能を達成した。DreamingV2は実世界の不連続的なダイナミクスを離散表現で適切に表現でき、また実世界の複雑な画像観測の再構成を不要とすることから、DreamingV2はロボット強化学習の有効な手段であると考えられる。
著者
大柿 高志 吉仲 亮 山本 章博
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第28回 (2014) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4A15, 2014 (Released:2018-07-30)

近年、古典和歌のテキストデータベースがWebやCD-ROMで公開されてきている。それにともなって、マイニングの技術が文学研究においても利用され始めている。これまでの古典和歌の文学研究は自立語による語句の分析が主だった。しかし、和歌は朗詠の文化を持ち、音が重要な意味をもつことも十分考えられる。和歌を音素の記号列に変換し、テキストマイニングを行うことで、新しい和歌の分析手法を提案する。
著者
塩崎 恭平 田中 一晶 中西 英之
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第27回 (2013) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1G52in, 2013 (Released:2018-07-30)

ビデオチャットにおいて,ロボットを用いて身体動作や身体接触を再現する場合,映像とロボットを組み合わせたシステムのデザインによってソーシャルテレプレゼンスが変動する可能性がある.本研究では,身体接触と身体動作を再現する指相撲ロボットハンドを開発し,ロボットハンドの配置や操作者の映像の範囲を変えて組み合わせた.これらの方法がソーシャルテレプレゼンスにどのような影響を与えるか検証する実験を行った.
著者
南 朱音 小林 優希奈 甲野 佑 高橋 達二
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2I5GS203, 2020 (Released:2020-06-19)

複雑な入力情報から取るべき行動を推論する深層強化学習は,強力な関数近似器での学習(Deep Learning)が発展の核となった.強化学習には教師あり学習とは異なり,自分でデータ収集しなければならない探索の概念を持ち,単純な強化学習の一種であるバンディット問題では最適な探索アルゴリズムが明らかになっている.しかしながら関数近似を用いる文脈付きバンディット問題では最適な探索が保証されなくなる.そこで本研究では従来とは異なる探索アルゴリズムの検証を行った.人間は報酬の目標水準を持ち,それを満たす行動を速やかに探索する性質(満足化)が知られている.この満足化を応用した文脈付きバンディットアルゴリズムに応用した linear Risk-sensitive Satisficing (LinRS) は人工的な分布を用いた課題では既存アルゴリズムと比較しても良い成績が得られている.本研究では実世界から実測データでの文脈付きバンディット問題での検証を行った.人工データより実世界データの成績は悪化すると言われており,その対処法として LinRS における適切な探索のための目標水準の調整について議論する.
著者
森永 凌汰 玉城 大生 小野 智司
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2B5GS602, 2022 (Released:2022-07-11)

近年の深層ニューラルネットワーク(DNN)の急速な発展は,自然言語処理(NLP)分野においても様々な技術革新を起こしている.しかし,DNNがその性能を発揮するためには大量の学習データが必要であり,特に教師信号のラベル付けがボトルネックとなっている.このため,教師なし学習データから教師あり学習データを生成する自己教師あり学習が注目を集めている.一方で,日本語を対象とした文章校正支援の研究が広く行われており,表記ミスや同音異義語誤りなどの表層的な誤りの検出が可能となっている.本研究では,文法的あるいは意味的な整合性に基づいて,文の接続関係の妥当性を判定する自己教師あり学習方式を提案する.提案手法は,ランダムに選択された2つの文を切断し,結合することで文を合成し,結合箇所へのラベル付けにより,教師なし学習データから教師あり学習データを合成する.実験により,NLPタスクにおける提案手法の有効性を確認した.
著者
朱 中元 中山 英樹
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第31回 (2017) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2O42, 2017 (Released:2018-07-30)

ニューラル機械翻訳モデルにアテンションが重要な役割を果たしている。しかし、アテンションモデルの計算は全ての位置について行われるためで、計算複雑さを大幅に上昇した。本研究では、冗長なアテンション計算を削減できる新しいメカニズムを提案する。提案モデルは、位置に基づくペナルティを計算し、大きくペナルティされた位置に対するスコアの計算はスキップされる。実験で、計算を平均50%以上削減できることを確認した。