著者
武蔵 由佳 箭本 佳己 品田 笑子 河村 茂雄
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.165-174, 2012 (Released:2016-03-12)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究は大学生の学校生活に対する満足感と精神的健康の関連について明らかにすることを目的とした。学校生活満足度尺度(河村, 2010)とUPI学生精神的健康調査(全国大学保健管理協会, 1966)を,大学生222人(男子64名,女子158名)を対象に実施した。結果,学校生活不満足群,非承認群,侵害認知・不適応群は,UPIの自覚症状,また訴え内容別の抑うつ傾向,対人不安,強迫傾向・被害関係念慮において,学校生活満足群よりも有意に得点が高いことが明らかになった。さらに,侵害認知・不安定群と学校生活不満足群は,Key項目得点において学校生活満足群よりも有意に得点が高いことが明らかになった。学校生活不満足群が精神身体的訴え得点において学校生活満足群よりも有意に得点が高いことが明らかになった。本研究から,精神的健康の問題を抱える学生や学校適応の問題を抱える学生をアセスメントする必要性が示された。
著者
小池 春妙 伊藤 義美
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.11-19, 2015 (Released:2017-03-31)
参考文献数
24

本研究の目的は,自尊感情と自己効力感の精神科受診意図に対する影響を検討することだった。そのため,自尊感情のモデルでは,受診への感情反応を介した自尊感情の受診意図への影響が検討された。自己効力感は,受診行動の容易さと受療行動への自己効力感とに分けて測定され,それぞれの受診意図への影響が検討された。大学生326名に対して,自尊感情,うつ病症例文,精神科受診意図,受診への感情反応,受療行動への自己効力感,受療行動の容易さに関する質問紙調査を実施した。参加者は症例文を病気だと認識できたかどうかで,病気認識群(183名)と非病気認識群(143名)に分けられた。共分散構造分析の結果,(a)自尊感情と自己効力感は精神科受診意図に直接影響しなかった。(b)受診への感情反応を介した自尊感情の受診意図への影響はあったが低かった。(c)受療行動への自己効力感は行動の容易さを介して受診意図に影響していたことなどが示された。以上の結果から,精神科受診率向上のためには,精神科受診に対する否定的態度の改善とともに,受診行動の取り組みやすさの向上も必要であることが示唆された。
著者
高橋 幸子
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-10, 2013

本研究は,日常的な対人ストレスを身近な他者に相談して解決する過程を検討することを目的とした。研究1では,対人ストレスを身近な他者に相談する過程を,「相談への期待」「知覚された相手の反応」「心理的適応感」の3段階とし,大学生114名を対象とした質問紙調査から各段階の探索的検討を行った。研究2では,3段階を測定する尺度を作成し,大学生268名を対象とした質問紙調査から3段階の関連を検討した。その結果,身近な他者への相談過程は,相談者が支援を期待した際に,相談相手が期待通りに支援し,感情の回復や気持ちの解決がもたらされる過程と,相談者が情報収集を期待した際に,相談相手が期待通りに情報を提供し,問題解決への意欲,成長感,できごとの解決がもたらされる過程が明らかになった。
著者
水野 雅之 千島 雄太
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.94-105, 2018-10-31 (Released:2020-01-05)
参考文献数
39

本研究の目的は,大学生活への期待と現実のギャップに対する否定的反応とその対処が大学適応に及ぼす影響を検討することであった。まず,ギャップへの否定的反応とその対処を測定する尺度の項目を自由記述調査によって収集した。その後,期待と現実のギャップを経験した大学生130名を対象に質問紙調査を行った。分析の結果,ギャップへの否定的反応尺度は単因子構造であり,ギャップへの対処尺度は「鼓舞」「転籍の検討」「消極的受容」「肯定的捉え直し」の4因子構造であることが見いだされた。階層的重回帰分析を実施したところ,否定的反応と肯定的捉え直しの交互作用が有意であり,否定的反応を強く経験しているとき,肯定的捉え直しと大学適応の間に正の関連がみられた。加えて,主効果については大学適応に否定的反応は負の影響を,鼓舞は正の影響をもっていた。
著者
向井 隆代
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.202-211, 2010 (Released:2015-12-14)
参考文献数
51
被引用文献数
1

本研究は,中学生を対象とする質問紙調査によって,思春期の身体的発達が心理的適応に及ぼす効果を検討することを目的とした。特に,身体的発達を身体発育の段階と同級生の中での相対的タイミングの両側面からとらえ,個人差の要因として検討することを試みた。合計628名の中学生(男子312名と女子316名)に対し,身体的発達の状況のほか,抑うつ傾向,不安症状,身体的訴え,および攻撃的行動の指標を含む無記名の質問紙を実施した。その結果,男女ともに身体的発達段階と抑うつ傾向や不安症状の間には有意な関連が認められたが,男子では,学年の効果を統制すると一部の関連は有意ではなくなった。女子においては,初潮経験後6か月後から1年未満の生徒の抑うつ傾向と不安症状が高かった。また,発達タイミングとの関連においては,早熟群の女子と晩熟群の男子の抑うつ傾向が高く,これらの結果はおおむね国内外の先行研究と一致する方向であった。本研究の結果より,思春期の心理的適応を検討するにあたり,学年や年齢だけでなく,身体的発達による違いも考慮に入れることの重要性が示唆された。
著者
金井 嘉宏
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.114-119, 2010 (Released:2015-12-14)
参考文献数
22

本研究の目的は,自閉症スペクトラム傾向の高い大学生が低い者に比べてソーシャル・サポートを受ける可能性(知覚サポート)を低く認知しているかどうかを調べること,および自閉症スペクトラム傾向,知覚サポート,被害念慮と抑うつの関係を調べることであった。302名の大学生を対象に調査を行い,Autism-spectrum Quotientを用いて自閉症スペクトラム傾向を測定した。分散分析の結果,自閉症スペクトラム傾向の高い群は低い群に比べて知覚サポートが低かった。また,自閉症スペクトラム傾向の低い群では,知覚サポートが高いと抑うつが弱かったのに対し,自閉症スペクトラム傾向の高い群では抑うつに対する知覚サポートの効果がみられなかった。一方,自閉症スペクトラム傾向が高い群において,知覚サポートが高い場合には,被害念慮の程度によって抑うつ得点に違いがみられ,被害念慮が低ければ抑うつが弱かった。これらの結果は,自閉症スペクトラム傾向の高い大学生に対して,知覚サポートを高めることによって抑うつの減弱をねらうためには,被害念慮をアセスメントと介入の対象にすべきであることを示している。
著者
中村 聡美
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-13, 2018-06-30 (Released:2019-10-01)
参考文献数
26

本研究の目的は,集団認知行動療法による介入の評価を質的・量的の両側面から行い,介入によるうつ病休職者の職場のストレスに対する認知および行動の変容過程を質的側面から明らかにすることである。企業組織に在籍し,うつ病休職中で復職を目指す16名に対して集団認知行動療法を実施し,前後に質問紙調査および半構造化面接を行った結果,当事者の語りおよびBDI-Ⅱの得点差(Z=-2.330, p=.017)から,介入後の抑うつ気分に改善が認められた。同時に,職場のストレス処理に対する認知および行動からなる労働スタイルにも変化が生じ,柔軟性が増していた。休職前の〈埋没的労働スタイル〉は,休職中に〈職務解放労働スタイル〉へと変化し,集団認知行動療法後は〈職務統制労働スタイル〉へと変化しており,各段階を連続的に捉えると,核となる現象特性として,《自己完結的労働スタイル》の緩和のプロセスが認められた。職場復帰を目指すうつ病休職者に対して集団認知行動療法を実施する際,《自己完結的労働スタイル》に関わる認知や対処行動(解決策)に着目し,緩和の方向を意識して介入することが目標になり得ると考えた。
著者
草野 智洋
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.11-19, 2012 (Released:2016-03-16)
参考文献数
37

本研究では,大学生373名に対する質問紙調査の結果から,大学生のひきこもり傾向と人生の意味・目的意識との関連について検討した。ひきこもり傾向の下位尺度である他者からの評価への過敏さ,孤立傾向,自己否定・不全感のうち,孤立傾向については男性のほうが女性よりも,他者からの評価への過敏さについては女性のほうが男性よりも,有意に得点が高かった。男女ともに,自己否定・不全感と人生の意味・目的意識との関連が最も大きかった。ひきこもり傾向の高い群と低い群とで人生の意味・目的意識の内容を比較したところ,主体性,実存的充足,自殺観において,男女ともにひきこもり傾向の低い群のほうが高い群よりも有意に高い得点を示した。一方で,未来受容,死生観,病気・苦悩観については,男女とも両群に差はみられなかった。大学生のひきこもり傾向と人生の意味・目的意識との間に関連があることが示され,大学生が自らの人生に主体的に関わり,人生に意味や目的を見いだしていくことが,ひきこもりの予防にもつながる可能性が示唆された。
著者
渡辺 将成 長谷川 晃
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.73-80, 2017 (Released:2019-04-05)
参考文献数
14

本研究は,楽観性と悲観性が重要性の異なる2つのストレス場面で選択されるコーピング方略とどのような関連があるのかを検討し,楽観性と悲観性の機能的な差異を明らかにすることを目的とした。145名の大学生が楽観性,悲観性,およびコーピング方略を測定する尺度に回答した。参加者は重要性の高い学業上のストレス場面と重要性の低い場面を想起しながらコーピング尺度に回答した。重要性の高い場面では,楽観性は計画立案,情報収集,肯定的解釈と正の相関が示された。また,重要性の高い場面と低い場面において楽観性と肯定的解釈の関連に差が認められ,楽観性が高い者は重要なストレス場面では積極的に肯定的解釈を用いるが,重要ではない場面ではそこまで肯定的解釈を行わず,認知的な資源を節約していることが示唆された。一方,悲観性は重要性の高い場面と低い場面の両方で選択される先延ばしと正の有意な相関が認められ,この関連は楽観性の影響を統制した場合でも有意であった。以上のようなコーピング方略との関連の差異が楽観性と悲観性を区別する特徴であると考えられる。
著者
田中 美帆 齊藤 誠一
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.160-169, 2016

本研究では,成人期における生と死に対する態度尺度を作成し,成人期の生と死に対する態度に影響を与える要因について探索的に検討した。研究1においては,成人期の261名のデータに基づく因子分析の結果,死への不安・恐怖,人生の目標,死後の世界への信念,生と死のつながり,生への執着の5因子が抽出された。各因子に対応する下位尺度を構成し,クロンバックのα係数を算出したところ,十分な内的整合性が得られた。次に,構成概念妥当性の検討の結果,人生の目標と信頼・時間的展望―不信・時間的展望の拡散との間,死後の世界への信念と霊魂観念との間などに相関関係が認められ,尺度の妥当性が支持された。研究2では,研究1において作成された尺度を用いて成人期および中年期の465名を対象に質問紙調査を実施し,死別経験が生と死に対する態度に与える影響を検討した。その結果,死別経験のある人においては中年期より成人期のほうが,女性においては死別経験のない人よりある人のほうが,より死に対する不安や恐怖を抱いていることが示された。
著者
大谷 哲弘 木村 諭史 藤生 英行
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.127-137, 2013 (Released:2016-03-12)
参考文献数
42
被引用文献数
1

本研究では,就職を希望する高校3年生(N=1,064)を対象に,進路意思決定の際の進路選択におけるソーシャルサポートに対する知覚(以下,進路選択サポート知覚)の影響について検討を行った。重回帰分析を行った結果,「親のサポート」「先生のサポート」から進路意思決定への正の有意なパスがみられた。次に,進路選択サポート知覚の組み合わせと進路意思決定に及ぼす影響について検討を行った。その結果,進路選択サポート知覚の組み合わせとして「友人・教員知覚型」「友人・親知覚型」「全般的知覚型」「友人未知覚型」「平均的未知覚型」の5つの解釈可能な型が抽出された。さらに,進路意思決定を従属変数とした1要因分散分析を行った結果,「全般的知覚型」の者は,他のどの型の者より進路意思決定得点が有意に高かった。以上のことから,進路意思決定に対して,進路選択サポート知覚を促進することの重要性が示唆された。
著者
青柳 宏亮
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.83-90, 2013 (Released:2016-03-12)
参考文献数
32

本研究では,心理臨床場面におけるカウンセラーのノンバーバル・スキルのひとつであるミラーリングの効果について検討を行った。実験協力者16人に対して,キャリア・プランについての模擬カウンセリングが実施され,カウンセラーのミラーリングと,クライエントの共感についての体験・評価との関連が分析された。その結果,カウンセラーがミラーリングを行った群は行わなかった群に比べてクライエントがより共感を認知しやすくなり,ラポールの形成につながるポジティブな印象・体験を有意にもたらすことが示された。これらの結果は,共感という現象の過程とミラーリングの関連をデータによって実証したものであると考えられた。
著者
久冨 香苗
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.30-39, 2014

本稿は,身体症状を呈している相談室登校男子に筆者がスクールカウンセラー(以下SC)として関わった事例を報告したものである。本生徒はネガティヴ感情の表出方法として身体症状を呈しており,その身体症状に大人が注目することでその症状が維持されていると見立てた。よって,援助の目標は,本生徒がネガティヴ感情を身体症状でなく言語的に表出できるようになること,とした。本稿では,本生徒がネガティヴ感情を言語的に表出できるようになるために筆者が行った援助の工夫について考察した。また,本生徒の学校での周りの大人(おもに養護教諭・担任)へのコンサルテーションの重要性についても考察を行った。
著者
土居 正城 加藤 哲文
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.189-198, 2011 (Released:2016-03-12)
参考文献数
26
被引用文献数
3

本研究の目的は,スクールカウンセラー(SC)の職務内容の明確化がスクールカウンセラーと教員の連携促進に及ぼす効果を検討することであった。そのために「SC積極活用プログラム」を作成し,小学校1校と中学校1校に導入し,その効果を検討した。標的行動を「相談行動」と「協力して行う問題解決行動」とし,スクールカウンセラーと教員の行動を観察した結果,プログラム導入後,標的行動が増加した。また,受入体制,SCの活動,連携行動についての質問紙を実施したところ,プログラム導入後に多くの下位尺度で得点の増加がみられた。本研究の結果から,スクールカウンセラーと教員の連携を促進するためには,スクールカウンセラーの職務内容を明確にすることが有効であることが示唆された。
著者
矢島 道 矢島 新 松田 英子
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.214-225, 2013

本事例は,実際には色素斑が認められないにもかかわらず,顔のしみへのこだわりや関係妄想を主訴とする中年女性に対し,認知行動療法にて援助した面接過程の報告である。本事例のクライエントは,数年前に偶然夫と見知らぬ女性との写真を見つけたことをきっかけに,身体醜形障害と妄想性障害を併発(皮膚科医院メンタルクリニックの医師が診断)し,皮膚科受診を繰り返していた。カウンセラーは,クライエントと支持的な関係を作り,被害妄想や顔のしみへのこだわりに対しては自動思考記録表により現実に即した認知的再構成を促し,また,症状の遷延化に基づく二次的な不安や抑うつ症状に対しては行動の活性化を図るため週間活動記録表を導入した。クライエントの認知と行動の適応的変容を目的として,6か月間に12回の心理面接と面接終了1か月後に1回のフォローアップ面接を実施した。その結果,クライエントは現実と妄想の区別が可能になり,社会生活上のトラブルに対処できるようになった。同時に顔のしみへのこだわりも消失していった。心理アセスメントの結果からも,身体醜形障害と妄想性障害を合併する成人事例に対する認知行動療法の有用性が示唆された。
著者
金子 泰之
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.199-208, 2011

本研究は,中学生の問題行動を研究対象とした。そして,〈規範文化の低い学校〉と〈規範文化の高い学校〉では,同じ問題行動を生徒が引き起こしていても,その動機が異なるという仮説を検討した。中学生1,306名(学年別では1年生15学級384名,2年生16学級467名,3年生17学級455名,性別では男子735名,女子571名)を対象とし,①問題行動経験尺度,②問題行動動機尺度,③規範意識尺度の3つをたずねる質問紙を実施した。③規範意識尺度をもとに,〈規範文化の低い学校〉と〈規範文化の高い学校〉の2群に分けた。そして,②問題行動動機尺度を説明変数,①問題行動経験尺度を目的変数とし,重回帰分析を2群それぞれに行った。その結果,〈規範文化の低い学校〉と〈規範文化の高い学校〉では,生徒が問題行動を引き起こす動機は異なっていることがあることが明らかとなった。同じ問題行動を引き起こしていたとしても,規範文化の水準によって問題行動を引き起こす動機は異なることがあるため,学校の特徴をふまえて教師が生徒指導を行う必要性が示唆された。
著者
鈴木 聡志
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.43-50, 2010 (Released:2015-12-14)
参考文献数
24

わが国では1934年からの約10年間に教育相談施設が多数開設され,それに伴い教育相談のあり方が議論された。当時の教育相談は,親等に忠言(アドバイス)を与えることを主としていた。本研究は,昭和10年代の教育相談における忠言の科学性に関する議論を,現代的観点から再検討する。常識に基づいた忠言が推奨されていたが,これは科学的ではないようである。知能検査と実態調査が科学性を保証すると考えられていたが,それらは処置をもたらさなかった。条件発生的考察も科学性を保証すると考えられていた。これはゲシュタルト心理学に基づく児童理解で,これが展開していたなら,わが国独自の臨床心理学となる可能性があったと考えられる。