著者
松崎 一平 榎原 毅
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.259-263, 2020-12-15 (Released:2021-12-11)
参考文献数
6

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症対策として,山下病院では患者に関わる全スタッフに対して,勤務中はフェイスシールド着用が義務化された.フェイスシールド着用義務化以降,スタッフより頭痛やめまいの訴えがよく聞かれるようになった.そこで,医師・看護師全員に対してアンケートを実施し,フェイスシールド装着義務化前後での頭痛・めまいの頻度および症状の程度を比較検討した.当病院に従事する全ての医師12名および看護師89名にオンラインアンケートを実施した結果,フェイスシールド着用前に比べ,義務化されて以降,医療従事者の頭痛の頻度が増加している傾向(p=0.056)が示された.フェイスシールドを装着することでめまいを訴える頻度も有意に増加していた(p<0.01).フェイスシールドの長時間着用により,頭痛・めまいが誘発されている可能性が示唆された.人間工学的なフェイスシールド・デザイン,連続装着時間の指針など,人間工学研究の展開が望まれる.
著者
斎藤 真 中務 隆弘 池浦 良淳 水谷 一樹
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.212-218, 2007-08-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
6

本研究は, マルチディスプレイ型VDTの作業特性を明らかにし, ガイドラインや推奨事項を確立するための基礎資料を得ることを目的としている. 実験は10人の被験者を対象に編集作業とマウスポインティング作業をおのおの5分間, ディスプレイはシングル (1台), デュアル (2台) および大型の3条件について行われた. 評価は, 作業能率, 操作性, 頭部運動および頸部筋負担の四つの視点から行った.デュアルディスプレイおよびラージディスプレイは, シングルディスプレイよりも得られる情報量が多く, 操作がしやすいため作業能率が優れていることが示された. また頸部の筋負担はすべての実験条件で有意差が認められなかった. 特にデュアルディスプレイは, 画面が水平方向に広がるためラージディスプレイに比べて頭部運動が多く, 静的な筋負担を軽減する可能性が示唆された.
著者
北村 音壱
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.235-240, 1970

大阪国際空港周辺の航空機騒音の実態調査結果にもとづき, 航空機騒音の周波数特性, 航空機騒音の分布図, NNIの分布図, パワーレベル等を求め, これから飛行場周辺の騒音問題を考察した. 航空機騒音は, 離陸直後の航路直下の帯状地帯内で特に大きく, この地帯内では人間が生活するのに耐え難い程度の騒音被害が生じていると考えられる. これの根本的解決策は飛行場の移転しかないと考えられるが, 差当り技術的に可能な範囲での航空機騒音のパワーレベルの低減による基準の設定, 航路の適切な選定, 飛行回数の制限等が考えられる.
著者
堀尾 強 河村 洋二郎
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.423-430, 1994-12-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
9

箸の性質や持ち方と箸を扱う諸動作の動作時間との関係を明らかにするため, 男女大学生11名を対象に箸を用いた諸動作を解析した. 実験には14cm, 21cm, 33cmの長さの箸を用い, ダイズ, ニンジン, トウフをはさんで, あるいはつまんで運ぶ動作, ソーセージを切る動作, ハンペンをさく動作について, 作業時間, 動作中の手腕の筋電図, 指と箸の間の圧力を測定した. 作業時間は, ダイズ, ニンジンを運ぶときには箸の長さによる違いはみられなかったが, トウフを運ぶときには長い箸が, 切る, さく動作のときには短い箸ほど動作時間が短かった. また, 箸と接触する手の各部位の圧は, 持ち方により違いがあった. つまんだり, はさんで運ぶ場合, 伝統的な持ち方では各部位の圧の違いは箸の長さ, 食品の大小や性状によらず同じパターンであったが, 他の持ち方では各指の圧パターンのばらつきが大きかった. さらに手腕各筋の筋電図では, 短母指屈筋の振幅が大きいことが特徴で, ニンジンを運ぶ動作, ソーセージを切る動作, ハンペンをさく動作の場合, 長い箸のときは短い箸よりも短母指屈筋の筋電図振幅が大きかった. 箸の長さに関しては, 長い箸では, トウフを運ぶとき以外は, 作業動作が終ったときに箸を持つ位置が先端方向に移動していた. 中等度の長さの箸ではソーセージを切る動作でのみ先端方向へ, 短い箸ではトウフを運ぶ動作でのみ逆に後端方向へ移動していた. なお, 箸を用いた各動作の動作時間と身体計測値との相関はほとんど認められなかった.この動作時間, 圧の比較, 筋電図振幅の比較, および作業後の箸を持つ位置の比較から, 大きい食品を運ぶときは長い箸, 食品を切る, さくという動作では短い箸がよく, 動作に適した箸の長さが異なることが明らかになった. また, 箸に接触した指の各部位の圧の比較から, 伝統的な持ち方ではつまんだり, はさんで運んだ場合, 箸の長さ, 食品の大小や性状に関係なく, 各指にかかる圧のパターンは同じであり, 他の持ち方に比べて安定していることが示唆された.
著者
木平 真 小菅 律 岡村 和子 中野 友香子 藤田 悟郎
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.212-221, 2016

<p>パトカーは,警察活動における特殊な使われ方のため弁別されやすい外観をしているが,他の交通参加者との衝突を防ぐためにはパトカーの視認性は重要である.本論文では車両後部デザインの変更が車間距離の評価にどのように影響するか,コンピューター画面による実験で基礎的な検討を行った.結果,「POLICE」表記を付加すると車間距離の評価に影響を及ぼす可能性があること,および「POLICE」表記に下線を追加することによりこの実験環境では距離の評価が改善し,改善案になり得ることが判明した.</p>
著者
木平 真 小菅 律 岡村 和子 中野 友香子 藤田 悟郎
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.212-221, 2016-10-20 (Released:2017-11-28)
参考文献数
11

パトカーは,警察活動における特殊な使われ方のため弁別されやすい外観をしているが,他の交通参加者との衝突を防ぐためにはパトカーの視認性は重要である.本論文では車両後部デザインの変更が車間距離の評価にどのように影響するか,コンピューター画面による実験で基礎的な検討を行った.結果,「POLICE」表記を付加すると車間距離の評価に影響を及ぼす可能性があること,および「POLICE」表記に下線を追加することによりこの実験環境では距離の評価が改善し,改善案になり得ることが判明した.
著者
藤田 祐志
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-4, 2019-02-15 (Released:2020-08-21)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

人間工学を世界的に推進する観点から,重要なリサーチ・イシューを要約した.リサーチの姿勢に関わる5つの主要なイシューを議論しており,これらは(1)科学的研究と実践の相補的実行,(2)ステークホルダーの関与,(3)システミックなアプローチ,(4)人間工学の新たな役割,および(5)先見的姿勢である.また,将来に向けて,教育者が重要な役割を果たさなければならないと論じている.本稿は,国際人間工学連合で得られた10年近くにおよぶ筆者の経験にもとづいている.
著者
榎原 毅 鳥居塚 崇 小谷 賢太郎 藤田 祐志
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.155-164, 2021-08-15 (Released:2021-08-20)
参考文献数
19
被引用文献数
9

国際人間工学連合は人間工学(HFE;Human Factors and Ergonomics)のコア・コンピテンシーを改訂した.HFEの改訂コア・コンピテンシーの単位は7領域に集約・再整理され,システムズアプローチ視点がより強調される形となっている.改訂コア・コンピテンシーに基づき,今,社会の要請に応えるHFE専門家を育成するために必要と考えられるリサーチ・イシューとして,1)ステークホルダ関与に基づく解決策の提案,2)システムズアプローチに基づくシステム要素の調和,そして3)HFE主導による,あるべき近未来労働・生活様式ビジョンの策定,の3つのポイントを提案した.これらはHFEの世界的な動向を鑑み,国内のHFE研究者,実務者,専門家が今,学び,実践すべき重要なリサーチ・イシューである.
著者
嶌田 久美 増山 英太郎
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.311-318, 2000-12-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
13

デザイン活動において, デザイナーの視覚イメージ能力は大きな役割を果たしている. 本研究では視覚イメージの個人差として直観像素質を取り上げ, デザイン活動における直観像の機能についての基礎的研究を行った. まず, 工業デザインを専攻する大学生114名に質問紙調査を実施し, 主成分分析などによって日常生活における視覚イメージの使用傾向について概観した. 次に質問紙結果をもとに選出した15名を対象に直観像検査を実施し, 直観像素質者の検出を行った. その結果, 4名が直観像素質者であると判明した. 彼らは普段から視覚イメージをよく使用しており, 非素質者よりも頻繁に空想や想像を行っていることが示された. また, デザイン活動において不可欠と思われる, 視覚イメージの鮮明な保持や心的操作といった行為に対しても得意である傾向がみられ, 直観像素質とデザイン能力との関連性が推察された.
著者
坂倉 園江 柴村 恵子 小沢 としみ 新 恵美子
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.93-106, 1976-06-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

19才の日本人成人女性216名についてシルエッターによる写真を用いて体幹部における側面形態を整理分類した. 後面は肩甲骨後突点, 前面は乳頭点を基点とする垂直線からの頸部, 胴部, 腰部 (6項目) の出入りの寸法を読み取り, 資料とした. 6項目 (側面形態), 4項目 (上・下半身別), 3項目 (後・前面別) の組み合わせを行い整理分類すると3, 4項目の組み合わせでは一応の成果を得る事が出来たが, 6項目ともなると出現の最も高い組み合わせでも10.1%と低く体形の複雑さを示した. 胸部に対する腰部の変化については同一厚径25.5%, 腰部が薄いもの3.2%, 腰部が厚いもの71.3%であり, 姿勢については直立姿勢19.4%, 殿部後方突出44.4%, 腹部前方突出36.2%であった. これらの組み合わせは服種によっては体形別作図法の資料として. かなり活用でき得ると考える.