著者
矢野 円郁 藤岡 茉央 仁科 健
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.201-206, 2023-10-15 (Released:2023-11-03)
参考文献数
17

日本では,接客業の女性従業員は化粧を義務づけられることが多い.本研究では,飲食店の女性店員が化粧をしていない場合,客が不快に思うのかどうかを実験的に検証した.実験参加者に女性店員が接客をしている動画を見せ,その印象を評価させた.真の研究目的を悟られにくくするため,表情条件(笑顔/無表情)も追加し,複数の店員に対する評価を求めた.実験の結果,参加者の性別によらず,笑顔が印象を良くする効果は明確に示されたが,化粧の効果はほとんどみられなかった.また,化粧の実験操作に気づいた人(13名)においても,気づかなかった人(29名)と同様に,印象評価に化粧の効果はみられなかった.本研究結果が今後,女性に対する化粧義務の是非を議論するための材料の一つになると考える.
著者
河村 隼太 赤木 暢浩 角 紀行 和田 健希 武本 悠希 小東 千里 齋藤 誠二
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.223-229, 2023-10-15 (Released:2023-11-03)
参考文献数
25

本研究は,重心位置の異なるウォーキングシューズの着用が成人男性の歩容に与える影響を明らかにすることを目的とした.成人男性19名に対して重心位置の異なる靴(つま先重心,中央重心,踵重心)を着用させ9 mの歩行路を歩行させた.そして,フットクリアランス,床反力,下肢関節角度,下肢関節モーメントを算出した.その結果,荷重応答期の膝関節モーメントは踵重心がつま先重心と中央重心より有意に小さかった.荷重応答期の鉛直床反力(床反力鉛直ピーク1)は中央重心と踵重心がつま先重心より有意に小さかった.また,遊脚初期の膝関節角度と遊脚中期の股関節角度は中央重心がつま先重心より有意に小さかった.以上のことから,つま先重心では遊脚期前半において,クリアランスを確保するために膝関節と股関節の屈曲を増大させる必要があることが示唆された.また,踵重心では荷重応答期において,ヒールロッカー機能が安定的に発揮されることが示唆された.
著者
武部 真人 大下 和茂
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.216-222, 2023-10-15 (Released:2023-11-03)
参考文献数
24

本研究は,インソール先端部に取付けた突起物(突起インソール)による速歩時の蹴出しが,下肢関節可動域や歩幅に及ぼす影響を検討した.健常男性16名に3条件でトレッドミル歩行を実施した:普通条件はいつも通り歩行し,指示条件は立脚終期の蹴出しにより幅を伸ばすよう指示し,突起条件は突起インソールの突起を蹴出しながら歩幅を伸ばすよう指示した.指示条件では,蹴出しによる歩幅延長の指示時のみ,股関節および足関節可動域と歩幅が増加した.突起条件でも股関節可動域は突起インソール使用時のみ増加したが,足関節可動域と歩幅は,突起インソール使用前に比べて,使用時および使用直後で増加した.この関節可動域増加は立脚終期の足関節底屈増加によるものと考えられる.これらの結果は,準備運動などで突起インソールにより歩幅延長を促すことで,その後の運動では,突起インソールを使用せずとも歩幅延長効果が残存する可能性を示している.
著者
宮崎 由樹 井上 葉子 益尾 建志
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.68-73, 2020-04-15 (Released:2021-06-23)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究の目的は,作業環境・作業後の休憩場所が作業者の精神的疲労感に及ぼす影響を検討することであった.実験の被験者は,まず屋内あるいは屋上いずれかの実験環境で負荷課題(文章の書き写し)を行った.精神的疲労感は課題の前後で心理尺度(Profile of Mood States-2nd Edition)を用いて測った.被験者は,屋内ないし屋上で5分間の休憩を取得した後で,先ほどとは異なる,もう一方の実験環境で同一の負荷課題を行った.実験の結果,負荷課題前にくらべた負荷課題後の精神的疲労感の上昇の程度は屋内でも屋上でも変わらなかった.一方,5分間の休憩を取得することによる疲労感低減効果は,屋内にくらべて屋上の方が大きかった.これらの結果は,屋内にくらべて,作業後の休憩を屋上で取得することは疲労感解消に効果的であることを示唆する.
著者
大谷 璋
出版者
Japan Human Factors and Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.91-96, 1970-04-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
7

漸次一定速度で接近してくる視標の認知に対する精神作業の影響をみた. 精神作業としては聴覚弁別をもちいた. 聴覚弁別の難易度を変えて精神作業のむずかしさをかえた. 聴覚弁別を課したときの動体視力は視認距離と視覚で約10%低下した. また聴覚弁別をした時は, しなかった時と比較して視標に対する反応は1秒たらずおくれた. 視標が認知できる距離に達したときは, 視覚弁別もその影響をうけ. あやまりが多くなった.