著者
李 錦純
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.99-105, 2007 (Released:2007-08-10)
参考文献数
15
被引用文献数
2

本研究は、在日コリアン高齢者の介護保険サービス利用意向に関連する要因分析を行い、介護保険サービスに対する認識とニーズを明らかにすることを目的とした。東京都A区の在日コリアン高齢者民族団体所属会員のうち、65歳以上の会員全員に調査票による訪問面接調査を行った。調査項目は介護保険サービスの利用意向の有無と(1)素因(基本属性・日本語のコミュニケーション能力・家族介護指向)(2)利用促進・阻害要因(サービス周知度・経済状況・公的年金受給の有無・サービス利用実績)(3)ニード要因(主観的健康感・ADL・IADL)とした。χ2検定により、利用意向の有無とすべての項目との関連を検討した。分析対象者78名の特徴として、在日2世高齢者が35.9%含まれていたこと、家族介護指向が強いこと、識字能力に幅があること、無年金者が26.3%存在したことが挙げられた。69.2%が利用意向を示し、家族介護指向と経済状況との関連において有意差が認められた。介護の社会化を肯定的に受け入れており、自宅において家族中心で外部のサービスも取り入れるという介護を望む者が多かった。年金受給の有無と経済状況・年齢に有意な関連があり、高齢で無年金の在日コリアンにとって、介護保険料・利用料の負担は日本人高齢者以上に大きく、必要なサービスを抑制する可能性が示唆された。サービスへのアクセスを容易にできるような支援体制の整備、個々人の介護ニーズに対応した包括的な援助が望まれる。
著者
小松 隆一 高取 郁子 佐藤 峰 高木 史江 花田 恭
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.26-30, 2005

目的:ニカラグァ国グラナダ県の若者のHIV関連の問題について調査の実施を支援し、関係者に対する働きかけを行った。<br>方法:グラナダ県の中等学校在学の10代後半の生徒に性行動調査を実施した。調査参加校は教育セクターの協力により選ばれた。<br>結果:689名が調査に参加した。16歳男子では33.3%、女子は7.2%、18歳ではそれぞれ48.1%と18.5%に性経験があり、性交経験者のうち、過去1年間に性交をした割合は男子で66.4%、女子で80.0%となった。金銭授受のない性行為でのコンドーム使用は、男子の28.2%、女子の13.3%だった。<br>考察:調査結果からは、現状とニーズの情報が得られ、保健と教育セクター及び当事者である生徒代表らの討議により、保健と教育セクター間の連携促進の契機となった。行動調査は、地域住民や行政のセクターを越えた支援を得るのに有効と考えられる。今後、保健と教育の連携を促進しニーズを満たす一方、ピア・グループの能力を高め、より効果的な対策が目指されている。
著者
永井 真理 木下 真里 青山 温子
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.53-63, 2007 (Released:2007-05-15)
参考文献数
28

イラクは紛争中の状態にあり、また比較的ジェンダーバイアスが大きいとされているイスラム社会の一つである。イラクの女性保健医療従事者を、治安の安定している他国で育成することの可能性や問題点について検討するための基礎資料として、イラクにおける女性医療従事者の背景、すなわち、社会および家庭での役割や立場、キャリアに対する意識、紛争が保健情勢に与えた影響などについて調査した。治安上の理由により、イラク国内において調査を行うことができなかったため、エジプトで4週間の第三国研修に参加していたイラク人女性医師 16 名を対象に、面接調査を行った。調査対象者の多くは、同性と主に接する産婦人科・小児科などに従事していた。職場内で差別を感じることはあまりなく、大変意欲的に仕事を行っていた。結婚の際も、仕事を妨げることのない相手を選ぶ傾向にあった。また、数ヶ月以内であれば、家族と離れて国外研修に参加することにも積極的であり、家族の理解や支援も得られていた。皆、研修受入国よりも研修内容を重要視しており、受入国の宗教の違いや、イラクからの地理的な距離は、ほとんど問題としていなかった。今後必要な研修分野として彼女たちが挙げたのは、病院管理システム、看護師の意識向上を目的とした研修などであった。イスラム社会では、女性に対する医療には、女性医療従事者が必要とされる場合が多い。また、紛争の際には、女性や乳幼児が特に健康被害を受けやすい。イラク国内の治安が安定し、国内での直接支援が可能になるまでは、積極的に女性医師に対する国外研修を推進することが、国内の女性や乳幼児の健康改善につながる支援策と考えられる。
著者
梶井 英治
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.129-131, 2018-06-20 (Released:2018-07-19)
参考文献数
3
著者
井伊 雅子
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.99-104, 2018-06-20 (Released:2018-07-19)
参考文献数
26
著者
井上 千尋 松井 三明 李 節子 中村 安秀 箕浦 茂樹 牛島 廣治
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.25-32, 2006 (Released:2006-06-09)
参考文献数
17

本研究は、東京都心の医療機関における、1990年から2001年まで12年間の外国人分娩事例のうち、日本語によるコミュニケーションが困難な事例について検討することにより、言語の問題に伴う在日外国人の周産期医療上の課題を明らかにし、その対策について考察した。日本語によるコミュニケーションが困難なことにより、医療従事者と妊産婦との適切な意思伝達の阻害、保健・医療・福祉に関する情報不足、の2点が特有の問題として挙げられた。特に意思伝達の阻害は、病歴や自覚症状の確認困難、相互信頼関係形成と精神的支援の阻害、医療従事者の負担の増大を引き起こし、さらにインフォームドコンセントに基づく医療サービス提供の妨げになっていた。外国人妊産婦に対して、日本人と同じようにインフォームドコンセントに基づいた医療を提供するには、医療通訳制度を整えることが急務の課題であると考えられた。
著者
沼倉 和美 窪田 和巳 徳永 瑞子
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.261-270, 2017-12-20 (Released:2018-01-10)
参考文献数
14

目的  本研究では、カメルーン共和国において、母親のマラリアに関する知識の実態を把握した上で、母親のマラリアに関する知識と子どもへの予防対策との関連を明らかにした。方法  2014年8月から9月に、カメルーン共和国ヤウンデ市のA保健センターへ予防接種に来ていた5歳未満児の実子を養育している母親50名を対象とし、筆者らが作成した質問紙をもとに聞き取り調査を行なった(回収率:100%)。質問紙は、母親のマラリアに関する知識、母親が子どもに実施している予防対策、マラリアの情報源、および対象者の属性により構成された。母親のマラリアに関する知識の項目(全4項目)を独立変数、子どもに実施している予防対策(全1項目)を従属変数として共分散分析を行った。分析の際には、対象者の属性を共変量として投入した。母親の年齢とマラリアの原因に関する知識について、それぞれ子どもへのマラリア罹患予防対策としての蚊帳の使用状況との関連においてX2検定を行った。結果  対象のうち、マラリアの原因について「蚊の刺咬」を知っている人は40人(80.0%)、知らない人は10人(20.0%)、マラリアの情報源として「病院や診療所の医療関係者(医師、看護師、助産師)」は39人(78.0%)、「テレビ」は26人(52.0%)であった。  マラリアに関する知識の項目(全4項目)と子どもに実施している予防対策の項目(全1項目)との関連において実施した共分散分析では、すべての組み合わせにおいて有意差が認められた。  マラリアの原因に関する知識と子どもへのマラリア罹患予防対策としての蚊帳の使用状況との関連において、X2検定では有意傾向が認められた。結論  本研究から、マラリアの原因、症状、予防対策、経済的負担に関して知識のある母親は、マラリアの予防対策を実施していることが明らかになった。  これらのことから、適切な予防対策によりマラリア罹患率や5歳未満児死亡率を減少させるために、マラリアの原因や蚊の習性を含めた正しい知識の普及が重要である。
著者
藤並 祐馬
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.137-148, 2016-06-20 (Released:2016-07-21)
参考文献数
15

本項では、著者が専門家として携わった日本とインドネシアのODAにおける看護実践能力強化プロジェクト(以下、プロジェクト)の2012年12月から2015年12月までの経験が提示され、そのプロジェクトにおける経験や結果を基にラダーの活用法について議論が行われている。  プロジェクトでは、インドネシアにおいてラダーの強化とラダーを応用したカリキュラム作りを通した看護師の継続研修を強化する取り組みが行われている。その取り組みを通して、インドネシアではラダーをカリキュラム作成、研修の計画立案と運営、看護師の職務権限の付与、効果的な人材配置などに応用していることが明らかとなった。また、近年組織運営において内部統制を強化する重要性が認識されるようになっているが、現在インドネシアで強化が進められているラダーの形にいくつかの要素を足すことで、ラダーが内部統制としても応用可能である事が明らかとなった。  現在日本でも多くの病院がラダーを導入しているが、その多くが人材育成を目的としている。一方で、筆者は文献研究やプロジェクト活動の結果から、①一貫性のある看護管理、②病院と看護師のコミュニケーションツール、③公平・公正な評価、④研修内容の明確化と効果的な研修計画、⑤病院と外部とのコミュニケーションツール、⑥職務権限付与の根拠、⑦内部統制などにも活用することを提案した。
著者
松田 正己
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.106-112, 2014-06-20 (Released:2014-07-17)
参考文献数
18
著者
江上 由里子 安川 孝志 廣田 光恵 村越 英治郎 垣本 和宏
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.171-181, 2012-06-20 (Released:2012-07-18)
参考文献数
18

インドネシアは中央政府主導による保健医療制度の整備により健康水準の向上を図ってきたが、2001年以降の急速な地方分権化政策は、地方の保健医療制度やその機能に大きく影響を及ぼし、保健医療サービスにおいて地域間格差を広げた。リーマンショック後の経済成長率は2010年に6%を超えるなどインドネシア経済は好調であり、保健政策はより具現化し、保健指標も改善してきている。そこで本稿では、インドネシアの公衆衛生に深く関わった筆者らが最新の資料などを収集し、インドネシアの保健医療に関わる関係者に有用な資料として包括的にまとめた。保健指標保健指標は全体的に改善傾向にあるが特に母子保健指標はASEAN周辺国と比較してまだ悪い。感染症疾患も多く、まだ多くの顧みられない熱帯疾患(Neglected Tropical Disease, NTD)も発生している。鳥インフルエンザ(H5N1)人発生例の報告数は依然世界で発症例・死亡例とも最も多い。生活習慣病や喫煙など新たな課題もでている。保健医療制度インドネシアの保健医療制度の概観を述べた。地方政府の保健医療行政能力を向上し同時にコミュニティーの再活性化を図ることを重視しているほか、保健所を治療のみならず地域の予防およびアウトリーチ活動の中心と位置づけ、その運営支援を行っている。保健予算は増額しているがまだGDP比で2%に留まっている。医療施設も医療従事者数も増加しているが充足していない。国民皆保険を目標として貧困者向けのコミュニティー健康保険の適応を拡大し、無料診療を受ける人が増加している。保健政策保健省戦略計画2010-2014を保健政策の軸として、コミュニティーが自立して保健の向上に取り組むことおよび公平性を展望としている。結語疫学的かつ人口動態的な移行期にあるインドネシアは、感染症や妊産婦死亡・栄養問題といった発展途上国に典型的な保健問題とともに、成人病や事故など非感染症の増加という二重疾病負担になっている。また、国民皆健康・ユニバーサルヘルスカバレージを目標としている現在、保険制度の拡充とともにその制度に対応できるだけの保健医療サービスの拡充も求められ、将来を見据えた保健医療サービスの拡充や人材育成が望まれる。
著者
伊藤 美保 飯田 奈美子 南谷 かおり 中村 安秀
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.387-394, 2012-12-20 (Released:2013-01-24)
参考文献数
22

目的本研究は、医療通訳を実施している当事者に対して質問紙調査を行い、医療通訳業務や研修の内容、医療通訳の現場での課題などを明らかにすることを目的とした。方法通訳者を派遣しているNPO、地域の国際化協会や、通訳者を雇用している医療機関等に通訳者への配布を依頼し、郵送にて直接回収し分析した。結果有効回答数は284名(有効回答率33.4%)であった。5年以上の経験者が46.1%いたが、常勤の通訳者は少なく、76.4%が派遣の形態をとっていた。対応言語は、手話を含む14言語であった。通訳頻度が月4回以下のものが68.3%であったが、8.5%は月20回以上の医療通訳の機会があった。回答者の54.4%が総時間20時間以上の研修を受けていた。医療従事者と患者の間に位置する通訳者として、種々の困難さに直面している実態が明らかになった。考察医療通訳者を直接対象とした本調査により、すでに多くの医療通訳者が現場で活動している実態が明らかとなった。研修を受ける機会が少なく、通訳技術の維持向上に必要不可欠な研修体制の充実が必要であった。医療従事者側と患者側の双方に、通訳者の効果的な活用方法と公平性という業務範囲を明確に説明し、同時に通訳者を精神的にも支える立場のコーディネーターが必要である。
著者
中村 安秀
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.52-55, 2013-06-20 (Released:2013-07-30)
参考文献数
7