著者
西川 智
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.261-268, 1996-11

阪神・淡路大震災に対しては、広く世界の71か国2国際機関から緊急援助の申出があり、国連人道問題局に通報があったものだけでも44か国政府ほか多数のNGOの緊急援助を日本は受け入れた。これらの緊急援助活動や物資の提供は、当時の日本のマスコミに大きくとりあげられ、いわゆる「美談」も数多く報じられた。しかしながら、これらの緊急援助が実際に被災者に役立ったかについては、これまでほとんど検証されていない。本稿では、筆者が国連人道問題局(DHA)災害救済調整部において、阪神・淡路大震災への国際緊急援助の担当官として地震発生直後から3週間の連絡・調整業務を行い、その後、神戸においてこれらの国際緊急援助について実地調査を行った結果に基づいて、今回の国際救援活動の問題点と教訓について報告する。この地震は、世界のマスメデイアの関心を引き付ける要素を全て有していた。有名な国日本での大都市神戸での衝撃的な地震、世界の主要なマスコミは、最も象徴的な被災現場の映像と被災者へのインタビューで拾った最も悲劇的な実話を選択し全世界に配信した。人的被害についての日本の発表方法も、その慣習を知らない海外のマスコミと視聴者に大きな誤解を与えた。神戸に入った国際NGOの多くは、この誤解を前提に現地入りを決定し、現実が余りに違うことに戸惑った。スイスとフランス政府から捜索犬が派遣されたが、その能力を発揮することはできず、遺体を発見するにとどまった。被災地・被災者にとって何が最も有効かを考えると、これらの国からの捜索救助チームの到着時期からして、別の形態の援助が有効であった。被災地の医療ニーズは、地震直後から1週間の間に劇的に変化した。海外からの医療チームが国際マスメデイアで報道された被災地のイメ一ジで救援活動に従事しようとしても、ニーズにマッチした活動は困難であった。今後、日本で大災害が発生することをも想定して、今回の経験に鑑み各国の支援の申し出に対して、それをいかに有益なものに誘導するかといった、準備が必要である。
著者
大西,一嘉
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, 1996-11

1995年兵庫県南部地震では、震災による直接的な死者数だけでも5504人にのぼり、その約9割は建物倒壊によりもたらされたものと考えられている。特に耐震性の低い木造住宅に倒壊が集中し未曾有の人的被害を生んだ。本報告では、まず、神戸市における死者(3410人)について、被災場所となった建物側の要因との関係を整理した結果の概要を示し、地震による人的被害の状況を概観した。その結果、戸建てでの死者が多い東灘区と、木賃、文化、長屋などの共同建てでの死者が多い灘区との違いが明確に示されている。また、中高層共同住宅でも283人の死者が出ている点、無被害建物での死者(95人)の多くが共同住宅で発生している点なども、今後詳細に解明していくべき課題として残されていることを指摘した。ついで、建物全壊率、死者発生率ともに高かった東灘区を対象として、建物被害と人的被害の関連性についての、典型地区アンケートを実施した結果を報告した。東灘区全体の建物被害の特徴は、既存調査(都市計画学会関西支部+建築学会近畿支部都市計画部会の合同建物被災度実態調査にもとづいて、都市住宅学会住宅復興チームが行った戸数単位集計結果)によれば戸建と高層共同住宅の全壊率が高い点にある。また東灘区の南部-帯には木賃、長屋の老朽密集地区が拡がっており、被害の激しかった深江地区ではこれら老朽低層共同住宅の全壊率は85%以上にのぼると言われている。対象とした調査地区では、震災直後に木造住宅に関する詳細な現地調査が実施されており、今後、人的被害研究会(太田裕(山口大学)氏を代表とする、学際的な研究組織)における協力体制のもとで、一連の調査資料の照合を進めることで人的被害に関する予測モデルの構築を目指している。ただ、現段階ではこれらを重ね合わせた詳細な分析にはいたっておらず、本報告ではアンケート調査による集計結果をもとにした人的被害構造の概括的分析にとどまっている。結果を要点は以下のとおりである。死者の出た世帯では、当日の在宅者の3人に1人が亡くなっている反面、同じ家にいた人で、重傷、軽傷者は少なく、負傷者発生率は、死者発生率の半分以下であった。この事は、生き残った人の3分の2は大した怪我もなく救出されている事を示している。地区全域での人的被害でも、近年のわが国における地震被害と比較しても死者発生率の高さが顕著であり、脆弱な家屋構造による人的被害の発生は、発展途上国型災害の様相をみせていると考えられる。地域全体としてみた時、死者から軽傷者にいたる人的被害総数を、地域災害医療ニーズとして考えると、今回の調査によれば住民の2割を占めることとなる。
著者
渡辺 実
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.2, pp.107-116, 1992-05

1992年2月2日午前4時4分、東京は6年ぶりに震度5(強震)の地震に見舞われた。この明け方の地震で、マスコミは何を伝えたのか、在京のテレビ・ラジオ局の災害放送の手腕を問われた地震であったが、果たして実態はどうであったのか。本論分は、地震発生直後、テレビ・ラジオの各媒体で数時間にわたって特番体制をとったNHKとニッポン放送の災害放送の実態を検証し、その問題点を検証した。地震直後の各局がとった対応は、NHKテレビが火起こしのあと4時6分には放送を開始、7分にはスタジオからテレビ・ラジオ5波同時放送で午前6時まで災害放送を行った。他のテレビ各局は、スーパーのみの対応がほとんどであった。民法ラジオ局の中でニッポン放送は、生放送中である「オールナイトニッポン」の番組を組み替え、午前7時まで3時間にまたって災害放送を行った。地震直後、火起こしから素早い対応を見せたNHKは、地震発生から6分後の4時10分まで「東京の震度は3」と報じた。この震度報道を見た人は「たいした地震ではない」と思い、再び布団に入った人も多く、問題なのは震度5以上で非常収集がかかる防災要因の参集が遅れた現象が見られたことである。また、幸いにも今回の地震では津波が発生していないが、もし津波が発生していたらと思うと、ぞっとする出来事である。地震発生から1時間の放送内容を分析すると、第1報で伝えなければならない「火の元注意、津波注意に関する事項」が忘れられており、NHKにおいては各地の震度のくり返しと、断面的な情報の羅列が目立ち、多くの課題を残した災害放送の内容であった。ニッポン放送の放送内容もNHKと同様な問題を持っているが、入試に係わる交通情報を伝える等、地震情報をリスナーの生活感覚とつながりを持った内容で伝えている点は、評価に値する。さらに、午前5時からのニッポン放送は、緊急出社している社員に途中の駅から状況をリポートさせる等、「面」の災害放送の試みがなされた。これは、今から3年前のロマプリエタ地震時の教訓から我々が学んだ、「面の安心情報」への第一歩を踏み出したものと言えよう。
著者
高橋,堅二
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.1, 1991-05

昭和51年8月「東海地震説」が発表されて以後、静岡県では県民と一体となった東海地震対策が推進されてきた。その一環として、県では東海地震に対する県民意識を隔年毎に、又県政世論調査においても一部地震関係の調査を実施している。これにより、県民の意識や実態、経年的な変化を把握し、地震防災に係る施策を検討する基礎資料としている。以下は、この調査資料をもとに分析した「県民の防災意識変化」の要旨である。1 県民意識の変化分析(1)東海地震に対する関心度58年度から6年間の経過で関心層が約7%減少しており、ゆるやかな意識低下を続けている。男女別、年代別においては大差ないが、地区別では東部における関心層の減少率が低い。これは、これまで年中行事のごとく発生していた伊豆半島東方沖の群発地震や平成元年7月の海底噴火のためと思われる。県政世論調査による「地震発生後の行動についての話し合いの有無」においても、同様な傾向が見られる。しかし、「東海地震説」発表以前の昭和46年度における調査では61.1%と高い結果を見るが、これは、44年11月「駿河湾から遠州灘沖での地震発生の可能性大」との発表が、県民にかなりの動揺を与えていた結果と思われる。(2)家庭内対策の実施状況(1)家族の話し合いが必要と思われる対策項目について、わずかづつ低下しているが、これは(1)の関心度と相関があり、地震に関する話題が家庭内で減少していることを表している。(2)「出火防止対策」の項目では他より実施率が高いものの、やや低下を示すのは、種々の安全装置の普及によるものと思われる。(3)「家具の固定」「食料・飲料水の備蓄」等では、販売商品の多様化によるためか、実施率の上昇を示す。2 イベントと意識変化元年度の県民意識調査によれば、伊東、熱海両市を中心とした東部地区の「関心度」「家具の固定」が他地区に比較し高い結果を示している。この結果が平成元年発生した群発地震から海底噴火にいたる一連の現象によることは明らかであり、イベントとの遭遇が意識変化と大きくかかわっていることが分かる。中西部においては、51年度目立ったイベントがなく静穏であることが、家庭内対策必要性の認識を弱めている。3 意識低下の要因と今後の対策防災意識を低下させている要因は種々考えられるが、中でも、「日本(特に東海地震予想震源域)において、近年、大きな地震がない」ことが最大であろう。今後、適度な揺れを待つことができない以上、県民が東海地震に対する正しい認識を身につけると共に、地震に備えた日頃の家庭内対策の重要性を認識するよう、県・市町村一体となった啓蒙、啓発活動を繰り返し展開していく必要がある。
著者
村上 ひとみ
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.2, pp.95-106, 1992

エルジンジャン地震は3月13日現地時間の19時18分にトルコ東部で発生した。USGS発表の表面波マグニチュードは6.9、震央はエルジンジャン市から南東約4kmの地点である。筆者は3月27日-4月9日の間、東京工業大学の本蔵義守氏、神戸大学の高田至郎氏と共に現地調査に赴いた。ここでは被害の概要と緊急対策について報告する。なお、地震学的報告は本蔵(1992)に、土木構造物の被害については高田・他(1992)に詳しい。
著者
田中 重好 鈴木 聖敏
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.2, pp.35-44, 1992

1992年9月28日午後5時から7時にかけて,津軽地方を強風とともに襲った台風19号は、東北電力弘前営業所管内の85.0%にのぼる世帯を停電させた。本研究は、停電に関連した情報の流れを整理し、停電をめぐる「情報ニーズと情報提供」の問題にしぼって、経験的に検討した。今回の台風災害の経験を踏まえて、今後、どういった情報提供がなされるべきなのかを、考えておきたい。第1は、高度情報化社会を迎えて、災害時ではあれ、情報ニーズはきわめて高いという事実を確認すべきである。第2は、電話社会との関連の問題である。これまで、災害時にはさまざまな形で、電話が輻輳し、混乱をきたすことが指摘されてきた。しかしながら、この対策が、電話会社によるトラヒック制御という観点からのみ取り上げられて、地域のコミュニケーション・シムテムの設定という観点が不足していた。電話の輻輳をラジオ放送が低減することは可能であるはずであり、これが可能となれば、本当に必要な情報は電話をとおして連絡できるようになる。第3に、こうしたコミュニケーション・システムという観点は、今後、公共機関からマスメディアをとおして住民に情報を伝達するという一方向モデルではない、さまざまな形のフィードバック回路を組み込んだモデルを構想してゆくことにつながるはずである。最後に、そのさい、各メディア間を、いかに「仕切る」かが重要な課題となる。たとえば、ラジオは災害情報の地域内の流れを「仕切る」可能性をもっている。「ラジオが災害情報の地域内の流れを『仕切る』」とは、具体的にいえば、たとえば次のようなことが考えられる。東北電力に殺到した住民からの電話のうち、特定のものに関しては連絡を自粛してもらうように呼びかける(一般的呼びかけ型)とか、地域ごとの復旧見通しをきめ細かくラジオで放送することにより、電話での問い合わせの一部を減少させる(情報提供型)とか、停電を強いられている住民に対して補完的手段をとるように呼びかけることにより、停電による生活障害や心理的負担感を軽減する(補完的手段提示型)といったやり方である。
著者
中原,光春
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, 1994-08

近年日本各地では釧路沖地震、能登半島沖地震、さらには奥尻島に多大な被害を与えた北海道南西沖地震とあいついだ。また、本年は新潟地震から30周年に、昨年は関東大地震から70周年にあたっていた。一方、防災啓蒙の観点でいうと、災害が繰り返すにもかかわらず、防災意識はその継続が難しいとも言われている。本論文は、関東では1923年の関東大地震以来、大規模の地震が発生していないことから、どうしても低下しがちな防災意識を、一つの興味ある例題を実施することで、歴史的な関心と現代技術への興味を高め、防災意識の向上をめざすものとして位置付けられる。とりあげた例題は、明治23年に建設された当時の超高層ビル"浅草凌雲閣"である。この建物は1923年の関東大地震で崩壊した。この崩壊を防ぐため現代技術を70年前にタイムスリップさせ、救済のシミュレーションを実施したものである。その結果現代技術は多くの難問を克服できることが判明した。しかし、著者は地震はあくまで人知を超えたものであり、謙虚に技術の発展を捉え、今後の技術開発の重要性を認識すべきであると主張したい。なお、本論文は、(財)震災予防協会の発行する「地震工学振興会ニュース」No.136号に掲載されたものである。
著者
田中 淳
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.123-128, 1995

阪神・淡路大震災時における身体障害者の状況と対応行動、問題について、難聴者に対して実施したアンケート調査結果を中心に紹介するとともに、災害弱者対策の課題を提起した。アンケート調査は兵庫県難聴者福祉協会および神戸市難聴者協会の協力の下に両協会会員323名を対象に行った。回収数は256通、回収率は79.3%である。回答者は高齢者が比較的多く、また聴覚障害者全体からみると聴力の重い人がやや多い。また、いわゆる「ろうあ者」は含まれていない。したがって、兵庫県内に2万人近くいる聴覚障害者全体からみると調査結果には偏りがある可能性がある。なお、聴覚障害者、視覚障害者、肢体不自由者、内部障害者ならびに支援団体、行政に対する聞き取り調査の結果も一部補足として紹介した。その結果、7%が家具等の下敷きになったほか、落下したものにあたりけがをした人やガラス等を踏んでけがをした人もそれぞれ7%を超えている。家屋の被害は全壊が18.0%、半壊が17.2%と8人に1人は大きな被害を受けている。地震後、情報を求めてテレビ等をつけているが、緊急時の情報伝達メディアは音声メディアが多いことから、42%が状況がつかめなかったとしている。とくに、広報車等によるガス漏れや避難命令の広報を知ることかできなかった人もいる。避難をした人は31.3%であり、自宅が全壊被害を受けた人では87.0%に上っている。避難先は知人・親戚宅が40.0%と多く、ずっと避難場所にいた人は17.5%にであった。それ以外の人は避難先を変えている。避難所から自宅に出た人は15.0%、知人・親戚宅に13.8%、逆に知人や親戚宅から避難所へ2.5%などとなっていた。しかし、障害者にとって避難所生活にはいろいろな制約があり、健常者と同じ生活水準を保つことは難しかったようだ。情報補償面や移動面での壁、障害者理解の面での壁が指摘されている。以上の結果をもとに、災害弱者対策を進める上で必要と思われる課題を、生命補償、情報補償、移動補償、経済補償に整理して提起した。
著者
戸松 誠 岡田 成幸
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.363-370, 1996
被引用文献数
1

1995年兵庫県南部地震により都市直下地震の恐ろしさが改めて認餓された。従来より行政体は当該地域の被害評価を前提とし、それに則って地域防災計画を策定することを基本としてきた。しかしながら被害評価に必要な想定地震は、プレート境界に発生する海溝型地震に主力がおかれていた。従って地域への地震動入力を評価する手法も、海溝型地震を主としたものについて開発が進んできた経緯がある。例えば、海溝型地震は震源距離が比較的大きいため、地震を点震源として扱い得る。Kawasumiに代表される距離減衰式に表層地盤の影響を補正する簡便手法による地震動予測が可能である。しかし、直下地震についてもこのような扱いが可能なのかは検討する余地がある。特に、想定地震の震源パラメータの設定誤差(揺らぎ)が、地域の地震動入力評価結果に与える影響の大きさを事前に知っておくことは、地域の地震被害評価の観点から非常に重要であると思われる。しかしながら、この点を意識し、直下地震による被害評価を行っている事例はあまりみない。本論文は、直下地震を想定した場合、地域の地震動評価・被害評価において考えておかねばならないことについて、主として震源パラメータ設定誤差の観点から考察する。本論で例にする札幌市は現在直下地震を考慮した被害評価・地域防災計画の見直しが進められているが、沖積層が厚く堆積しているため都市直下の活断層の位置が特定できない。そのため震源パラメータを一つに絞り込むことは不可能である。可能性のあるいくつかのパターンでシミュレーションをする必要があり、その結果をもって有効な被害評価・地域防災計画のあり方を提案する必要がある。シミュレーションめ結果以下のことが明らかとなった.札幌市の震度分布は、小林・翠川の方法を用いて求めた基盤面への入射波最大速度に、北海道南西沖地震から求められた増幅率を乗じて、表層地盤種別の補正値を加えて予測を行う。引き続き海溝型と直下地震の震源パラメータの揺らぎが震度分布に与える影響を調べた。その結果、直下地震は海溝型に比べて断層深さ・破壊開始点・断層位置の影響が大きいことがわかった。そして実際に36パターンの震度と被害予測を行うことにより、理学・工学・行政の3者間のルールでこれらの地震の特徴を明らかにし、想定地震を決定する必要がある。直下地震と海溝型地震ではその地震動入力を評価する際に注意すべき点が異なり、それがその後の地震防災計画立案に極めて大きく影響する。直下地震は震源パラメータ設定のわずかな揺らぎが、地域内の地震動・被害無を大きく変化させてしまう。直下地震の被害想定を1パターンのみについて行うのは、実際の地震被害と全く異なった結果を生じかねない。地域の被害地震想定に当たり十分配慮すべき点として指摘する。
著者
清水 善久 根岸 七洋 吉川 洋一 小金丸 健一
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.91-95, 1996-11

都市ガス事業者は、地震発災後に、二次災害を防止するためのガス供給停止について、迅速かつ速切な判断を下す必要がある。東京ガスのSIGNAL(地震時導管網警報システム)はその判断を支援することを目的に開発され、331ヶのSIセンサー、20ヶの液状化センサー、5ヶの基盤地震計の情報を地震発災直後に高信頼性の無線網により収集する地震動モニタリングシステムの展開、また地盤条件、埋設管、建物、液状化危険度、地震時埋設管被官事等の豊富なデータベースの構築、及び被害推定システムの整備を実施し、1994年6月より実稼働している。また、別途開発した復旧基本計画策定システムと連動させ、地震発災直後に復旧に関する手立てが即時実行可能となったため、結果的に早期復旧が図れることとなる。さらに、1996年9月より、震度3相当以上の大きさの地震が発生した際は、SIGNALの331ヶ所の最大SI値及び最大加速度について、インターネットの東京ガスホームページを通じて一般公開を始めた。このデータの公開により、地震情報・データベースの共有化の促進と、それらの地震防災などの研究への活用が期待される。
著者
熊谷 良雄 三好 幹夫
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.307-318, 1996-11
被引用文献数
1

1.研究の背景・目的・概要 1995年1月17日の未明に発生した「平成7年(1995年)兵庫県南部地震」は、高架道路・鉄道,建築物等の物的施設に甚大な被害をもたらすとともに、戦後最大の人的被害と百万人以上の被災者を生み出した。発災直後から被災地での食料や生活必需品等の不足が伝えられたが、被災者にとっては必要な情報の入手困難や不足も大きな社会的問題となった。そして、情報の不足は多くの混乱をもたらし、この混乱は発災から1週間以上を経過した震災復旧期においても見られた。情報伝達手段が地震によって途絶もしくは制約された中で、大量に発生した被災者に正確かつ迅速に十分な情報を伝達するかが大きな課題となった。そこで、本研究では、これまでの災害情報の研究ではあまり取り上げられなかった災害復旧期の情報需給バランス-伝達された情報と必要とされる情報との整合と不足-に焦点をあて、神戸市を対象として、情報の受信側[被災者]と情報の発信側[神戸市,新聞]とのギャップを明らかにし、今後の災害情報のあり方を検討するための基礎的な示唆を得ることを目的とした。研究の概要は以下のごとくである。情報受信側については、住民アンケート調査と神戸市における市民電話相談の受付内容を用いて、復旧に関わる様々な情報を被災者がいつ,どのように利用したかについて、被災者の属性との関連で整理・分析した。一方、情報発信側としては、被災地で発行されている新聞と神戸市の広報紙に着目し、これらと神戸市のプレス発表の内容とその時期について比較分析をおこなった。そして、両者の情報需給バランスを分析した上で、災害復旧期における情報発信側の効率的な伝達手段について提言をおこなった。 2.研究の結論 本研究の結論は以下の3項目にまとめることができる。 (1)阪神・淡路大震災のような激甚な災害の場合、自宅崩壊等の激烈な被害を受けた世帯と直接的な被害がほとんど無い世帯との情報ニーズの乖離は大きく、肌理細かい情報発信が必要とされる。 (2)行政広報紙は、被災者への情報を網羅しようとする姿勢はあったものの、発行間隔や紙面量等の課題を抱えており、新聞社と非常時の紙面提供等の協定を事前に結び、短い時間間隔で十分な紙面量を確保することが望まれる。 (3)地元紙の情報発信は、様々な被災状況を持った多様な被災者のニーズにも応えることが望まれる。
著者
岡田 成幸 坂井 忍
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.277-286, 1994-08

1993年釧路沖地震の特徴として、室内でのケガ発生が多かったとの指摘がある。これは何を根拠としているのであろうか。震度と負傷率の関係をみる限り、過去における地震(1978年宮城県沖地震・1983年日本海中部地震)との間に大きな違いはない。むしろ、これまでの地震同様の負傷者発生状況であったといえる。しかしながら、釧路沖地震について特に室内でのケガ人発生が印象づけられているのはなぜであろうか。震度と住家被害率の関係をみてみると、釧路沖地震は本州を襲った地震に比較し同一震度に対する住家被害率、は小さい。すなわち、北海道の木造住家は本州のそれに比べ耐震性が高い。住家被害が小さかった割には、負傷者が相応に発生したため、クローズアップされたのかもしれない。いずれにしても、住家の耐震性向上が、負傷者低減にはそれほど寄与していないことになる。わが国の木造住家の構造様式は靭性に富み、ある程度の耐震性が保証されているなかで、家具の転倒等による室内変容が今日の日本の地震時の人的被害の様相を決定づける主要因となりつつある。室内変容に配慮した防災対策を本格的に考えていく必要性がある。室内変容の実態と負傷者の関係を詳細に調査すべく、釧路沖地震発生後、釧路市内の集合住宅を対象に聞き取り調査を行った。調査の主要項目は地震前の家具配置、地震時の家族の行動軌跡、家具転倒・散乱状況、負傷の有無とその発生場所・原因、および震度調査である。解析は地震時に家族のとった種々の行動を分類し、それを地震発生時を原点とする時系列上に整理し、行動パターンを特定していくというものである。その結果以下のことが判明した。この地震は震源深さが約100Kmと深く、したがって、釧路市内での初期微動継続時間が比較的長かった。この間に、主婦らは火の始末・避難のための移動・要介護者の保護などの必要な行動をほとんど完結している。主要動が始まり、行動がままならなくなったときには比較的安全な場所へ移動し終わっていた。すなわち、この地震では負傷者が多いことが指摘されているが、実際は揺れ方が幸いし、被害は最小限に押さえられていたと言うべきであろう。地震感知から主要動に即時に移行するような揺れ方をする、いわゆる直下型の地震であったならば負傷者はさらに増えていたことは容易に推測できる。なお、本論文は平成5年度文部省科学研究費突発災害調査研究・総合研究(A)「1993年釧路沖地震による被害の調査研究(研究代表者 鏡味洋史)」成果報告書(平成5年3月)に既発表のものである。
著者
熊谷 良雄 佐藤 貴茂
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.7, pp.298-303, 1997-11
被引用文献数
1

The Great Hanshin-Awaji Earthquake Disaster gave us many lessons learned in relation to emergency responses by public sector. After the Quake, the Basic Plan for Disaster Prevention, which was editted by the Central Disaster Prevention Council, was revised twice. And also, almost all prefectural disaster prevention plans were revised or have been revising. In this paper, we try to evaluate prefectural disaster prevention plans before and after the Great Hanshin-Aawaji Earthquake Disaster. Some conclusions of this study are as follows : ・Contents of prefectural disaster prevention plans were enriched remarkablely. ・Response for person who need emergency help was planed by almost all prefectures. ・Almost all prefectures are not yet ready to accept emergency aid from foriegn countries.
著者
坂本 朗一 高梨 成子 吉井 博明
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.355-360, 1995-11

これまでの地域防災計画(地震編)策定の考え方は、地域に被害をもたらすと予想される切迫性のある大地震の特定から出発し、断層モデルを設定した上で、統計学的に扱いが可能な物的被害を予想し、応急対策計画を策定するというものであった。このようなアプローチは、時間とお金がかかるだけでなく、地震学的にある程度わかっている地震しか対象にできず、しかも応急対策計画にとって必要な重要施設の物的・機能的被害を扱うことができないという欠点を持っていた。しかし、阪神・淡路大震災以降、震度7クラスの地震対策の必要性が叫ぱれている。この発想は、現在の地震学の知識の中で切迫性が高いと考えられるもののみに限定して地震応急対策を考え、計画化するという従来の考え方と一線を画すものである。すなわち、地域社会の安全を脅かすリスクからみて対策をとっておくことが必要と判断される地震をまず設定し、計画策定の基礎にしようとしているからである。このような課題を解決するための手法の一つとして、シナリオ型地震被害想定が考えられる。この手法は地震像の曖昧性と被災地域の狭域性から指摘される問題を解決し、さらに、被害想定と応急対策計画の明確な対応づけを行うと共に、策定過程においてのコミュニケーション・プロセスを重視するという点で、より実践的な防災計画を確立することが可能である。
著者
小村 隆史 平野 昌
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.7, pp.136-139, 1997
被引用文献数
5

The Disaster Imagination Game (DIG) is a newly developed method for disaster drill based on the know-how of the Commanding Post Exercises of the JSDF, it uses maps and transparent overlay. Participants of DIG will be appointed to members of the virtual commanding post of disaster relief activities. By recording various details on maps, participants can easily grasp the situation of affected areas, and also easily discuss how to command relief activities. Exchange of ideas and views of the participants of DIG will deepen their understanding on relief activities. The characteristics of DIG are; simplicity, participatory, good cost-performance, it stimulates the imagination, and is creative. Not only professionals but also volunteers can enjoy DIG without special knowledge, and will be able to manipulate the know-how of DIG by themselves, by trial and error. DIG will be one of the most useful methods in the "capacity building" for disaster relief of the general public. In addition, DIG will be one of the best ways to facilitate understanding between each other and to build up a face to face relationship, the most important factor for disaster relief.
著者
長能 正武
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.193-204, 1996-11

阪神・淡路大震災は未明の時間帯に発生したため、6000人を越えた死者やそれ以上の負傷者のほとんどが住宅で生じている。事務所、工場などの職場の被害も著しいものであった。仮に日中に地震が発生していたならば、職場などでの人的被害は甚大であったろうと考えられる。しかしながら、職場における被災状況に関する情報に乏しかった。そこで、建築学会近畿支部構造部会が企画した第2次アンケート調査に職場への復帰や職場の被災状況に関しての質問を組み込んだ。アンケート結果の職場の被災状況に関する項目の単純集計結果について報告する。回答者は690名で、多くは被害の著しかった地域周辺に居住している。回答の10%は、職場の建物が外観上からも倒壊状態や明らかに危険な被害を受けていた。建物で入りロの被害で立居入りが困難、若しくは不可能であった回答は20%であった。この事は、逆に見ると避難が困難になることにつながる。多くの職場では室内の散乱が著しい。重量のある物品棚や書棚の移動、転倒、飛びの回答がある。もし、業務中の地震であったなら、死亡若しくは重傷被害を受けたと感じた回答が29%に達した。地震発生の時間帯が違った場合の、災害状況の検討資料として今後の展開を図りたい。
著者
室崎 益輝 岩見 達也
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.129-134, 1995-11
被引用文献数
1

〔研究の背景〕 私達の研究室は、阪神淡路大震災の被災地の真っ直中にあるということで、被災実態調査を行ううえで、調査に関連する情報が入りやすい、寝泊まりできる空間が確保できる、さらに必要な調査員の手配が可能であるといった「利点」を有していたために、各種の調査の基地として活用された。お得の調査団の基地となるとともに、多くの調査ボランティアィアの溜まり場ともなった。そのため、様々な調査をお手伝いするというか共同で実施する機会に恵まれた。例えば、筑波大学熊谷研究室と(株)まちづくり研究所とは、避難所のボランティア活動についての共同調査を実施した。(株)地域環境防災研究所とは、出火原因や延焼動態についての共同調査を実施した。そのなかの一つに、(株)野村総合研究所との共同調査がある。住民、自治体、ボランティア団体、職能団体、企業等のそれぞれについて、地震時の対応行動や日頃の防災対策について、アンケート調査を実施した。このなかでの私達の研究室の果たした役割は「名義貸し」程度のことであったが、アンケート結果については共有化しそれぞれが分析を加えるという形をとった。本報告はそのうちの企業に対する調査について私達神戸大学側が速報という形でまとめたものである。単純集計の域をでておらず研究論文といえるものではないが、企業の対応を知る一端にでもなれぱと思い報告するものである。今後、クロス集計などより緻密な分析を行い、有益な指針を引き出したいと考えている。 〔調査の方法〕 アンケートは、一部・二部上場企業および生命保険会社2,238社に対して、郵送により送付回収する方法(郵送留置法)で実施している。調査期間は1995年4月24日〜5月9日で、有効回収数は378票で回収率は16.9%であった。アンケート項目は、大きく(1)被害の実態、(2)震後の対応、(3)事前の対策、(4)支援の実態、(5)今後の対策に大別される。主な回答業種をあげると、商業関係企業57社、建設関連企業34社、化学関連企業32社、機械関連企業30社、銀行関連企業27社、輸送機器関連企業24社、電器機器関連企業21社、サービス関連企業20社などである。なお、被災地域内に本社をおくものは31社、支社営業所をおくものは208社、工場をおくものは51社、店舗をおくものは29社、倉庫物流拠点をおくものは56社であった。 〔調査の結果〕 本調査で得られた主な結論は以下の通りである。・約8割の企業は何らかの被害を受けている。・被災地に隣接する大阪に対策本部を設置した企業が多い。・地震時の対応マニュアルを作成していなかった企業が半数近く存在する。・人的支援をおこなった企業が5割、物的支援をおこなった企業が6割あった。・今後の対策として緊急時マニュアルや緊急時連絡網の見直しなどソフトな対策の強化をはかろうとする企業が多い。
著者
天国 邦博 呂 恒倹 望月 利男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.29-41, 1995

人口密集地域の直下で発生したM7.2の1995年兵庫県南部地震は、神戸市を中心として、阪神・淡路地域において極めて大規模な人的、物的被害を与えた。災害に備え、同じ被害を二度と発生させないために、多くの研究者は、今回の地震災害、震災対応などに対して、様々な角度から調査、研究を行っており、震災に関する情報が多く報告されている。しかし一方では、今までの震災や、調査報告は、その内容がほとんど被害の大きい地域に関するものであり、被害規模が相対的に小さい地域に関する報告が比較的少ない。例えば大阪府のような被災周辺地域の被害については、せいぜいトータル的な人的被害と物的被害の集計値を報じ、被害内訳に関する比較的詳細な報告が少ないと思われる。このことは、大阪府などのような被災周辺地域における被害の報告は、神戸市、西宮市、芦屋市などの大規模被災に比べて、その規模が小さいために生じた調査、報告の偏りであると考えられる。しかしながら、災害の全体像を把握するためには、被害の波及範囲の究明が重要であり、震災周辺地域における被災様態に対する調査は不可欠と考える。また、被害規模が比較的小さい地域に対する調査、分析は、重大な被害を受けた地域に対する相対的・副次的現象、また、見落としやすい現象や、被災者及び避難者の実状などの掌握の補充に寄与するものと考えられる。本論文では、大阪府内の主な被災地である豊中市において発生した家屋被害、ライフライン・道路の被害をまとめ、これらの物的被害と地盤・地形および市街地形成時期との関係について考察を加えた。また人的被害に対して、被害原因の内訳、被災者の個人属性などについて検討を行った。さらに、避難者の健康状況、住宅所有などに対して考察した。
著者
谷口 仁士 小川 雄二郎
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.391-398, 1994-08

地震と震度 1994年6月6日、15時47分(現地時間)ごろ、コロンビア南部のカウカ県パエス村近くを震源とするマグニチュード6.4(Richter Scale)の地震が発生した。コロンビア国立観測所(Colombia National Seismological Network)によって求められた震源位置は、北緯2.9度、西経76.08度、震源深さ10kmの比較的浅い地震であった。この地震によってコロンビアのほぼ中央域が有感地域となった。各地の震度(MM震度階)は震央から40km以内で6〜7、震央距離100km付近のカリ、ポパヤン、ネイバ市で5〜6である。また、震央から約300kmに位置するボゴタ市域でも地震を感じた。著者らは6月18日より現地に入り被害調査を行ったので、ここにその被害概況を速報として報告する。被害の概要 地震当時、コロンビアは雨期で降り続く降雨によって地盤は完全に飽和状態となっていたため、被害のほとんどは斜面崩壊とその土石流による災害であった。被害が発生した地域はネバド・デル・ヴィラ火山(標高:5,750m)の南から南下するパエス川に沿った地域である。斜面崩壊と土石流による物的被害 ネバド・デル・ヴィラ火山山頂付近の万年氷が地震動で崩壊しパエス川に流下するとともに震源地域のいたるところで斜面崩壊が発生した。これらの土砂は土石流となってパエス川を流下し、この流域に点在する村々を襲い多くの家屋と人命を奪い、マグダレナ川のベタニア(Betania)にあるダムサイト付近まで達した。特に甚大は被害を被った震央付近の卜エス村ではこの土石流によって村全体が消滅した。地震動および土石流による家屋被害は、倒壊・流失家屋:620戸、被災家屋:2,400戸となっている。また、パエス川流域の道路や橋梁は斜面崩壊や土石流によっていたるところが被災し、特に、土石流によって流出した橋梁は10ヶ所にもおよんでいる。震央から約140kmに水力発電ダムがあるが、このダムに直接被害は発生していない。しかし、土石流による流木や土砂がダムサイトまで到達しているため、ダムの貯水機能障害など間接被害が発生している。今後も土砂の流下・堆積によってこの機能障害はますます増大する危険性がある。人的被害 当初の新聞報道による1,200人の死者・行方不明者の多くは高台に逃げ、最終的には死者200人、行方不明100人となっている。また、ホームレスなどの被災者は14,000人にのぼっている。
著者
佐野 清二 井野 盛夫
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.2, pp.137-144, 1992-05

[調査の目的]大規模地震対策特別措置法第7条により強化地域内の百貨店・病院・学校・福祉施設等不特定多数の者が出入りする施設、毒・劇物・火薬・高圧ガス・石油等の製造、ガス・水道・電気事業、大工場等、その他防災上重要な施設又は事業を管理し、運営する者が警戒宣言が出された場合に施設等で実施する防災措置等について具体的に地震防災応急計画を作成し、所管する官庁に届出等を行わなければならないことになっている。静岡県において平成3年4月1日現在、作成義務者数24,946件に対し19,612件の届出があり、毎年僅かずつ届出率が低下している。提出状況の定価理由と企業の地震防災対策の実施状況を把握するため、今回のアンケート調査を実施した。[調査結果]防災に対する県民意識が徐々に低下しつつある中で、事業所についても過去3回の結果と比較してみると全体の傾向として横ばいないし下降の傾向にある。特に防災計画の作成に関して従業員に対する判定会招集時、警戒宣言発令時の業務の継続、避難、帰宅方法等に東海地震に対する認識の低下が見られた。