著者
荒牧 憲隆 清松 潤一 岡林 巧 藤井 治雄
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.359-373, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
31
被引用文献数
1 3

我が国には,火山灰質粗粒土が広く分布し,特殊土として取り扱われ利用されることが多い。これらの土粒子には,粒子内空隙を有することが知られており,現在の地盤材料の試験方法では対応が困難となることも見受けられる。そのため,物理的諸性質の測定値には,ばらつきが多くなることが予想される。本研究では,粒子内空隙を有する種々の火山灰質粗粒土を対象に,土粒子の密度試験ならびに粒度試験を行い,測定値のばらつきに及ぼす試料の準備や実験方法での影響因子について検討することを目的としている。その結果,火山灰質粗粒土の物理的性質の評価においては,人的,機械的なばらつきに加え,材料そのものの特性により,著しく影響を受けることが認められた。このような材料での計測,品質評価においては,試料の均質性や準備状況に充分配慮を行う必要があることが示唆された。
著者
高井 敦史 保高 徹生 遠藤 和人 勝見 武 東日本大震災対応調査研究委員会 地盤環境研究委員会
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.391-402, 2013-09-30 (Released:2013-09-30)
参考文献数
19
被引用文献数
8 9

東北地方太平洋沖地震では,地震動のみならず津波による甚大な被害が発生した。具体的には津波の波力による建築物の倒壊や堤防の損壊,土砂の運搬および堆積,膨大な災害廃棄物・津波堆積物の発生等が挙げられる。公益社団法人地盤工学会東日本大震災対応調査研究委員会地盤環境研究委員会(以下,地盤工学会地盤環境研究委員会)では,津波堆積物の堆積状況を広く把握することを目的とし,2011年12月20~22日に福島県沿岸部の東西約7 km×南北約12 km の津波浸水範囲において,計158 地点を踏査し堆積状況を調査した。本研究では,この調査結果を基に津波堆積物の分布特性を明らかにするとともに,津波堆積物を地盤材料として利活用するために不可欠な科学的知見の集積を目的に,当該地から試料を採取し,のべ約1400検体を用いた室内試験により,津波堆積物の物理化学特性を評価した。
著者
土田 孝 由利 厚樹 加納 誠二 中藪 恭介 矢葺 健太郎 花岡 尚 川端 昇一
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.339-348, 2013-06-30 (Released:2013-06-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1

広島県内9箇所のまさ土斜面でにおいセンサを用いて地盤内のにおいの強さを調べた結果,最大1000のにおい強度を観測した。においの強さは地盤による相違が大きく,土の強熱減量が大きいほどにおい強度は大きかった。底部ににおい発生源を置き降雨を一次元的に浸透させる模型実験を行った結果,地下水面が上昇し表層部に近づいたときに地表面のにおい強度が急増することを確認した。実験結果は,深い層に強いにおいが存在する地盤において,豪雨時に地盤内のにおいを含む空気が地下水位の発生と上昇によって地表面に押し上げられにおいが発生する可能性を示している。
著者
加納 誠二 土田 孝 中川 翔太 海堀 正博 中井 真司 来山 尚義
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.243-259, 2011-06-30 (Released:2011-07-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

2009年7月24日から25日にかけての連続した降雨により,東広島市志和町内うち地区の残土処分場で崩壊が発生し,流動化した土砂が流下して住宅1戸が全壊した。本論文は本災害の原因について考察したものである。災害発生箇所は何回かの地形改変を経て残土処分場となっていたため,三次元レーザー測量による崩壊後の地形の把握,軽量動的コーン貫入試験による崩壊土砂堆積厚さの調査,過去の測量地図,航空写真の解析を行って,地形改変履歴を明らかにし崩壊直前の地形を推定した。崩壊した残土斜面の底部には帯水層が存在し豊富な地下水が流れており,崩壊後の現地調査と降雨後の地下水位の上昇を考慮した安定解析により,地下水位が帯水層から約9m 上昇し斜面全体の安全率が1 以下となり,すべり崩壊が発生したと推定された。降雨によって飽和度が高まっていた崩壊土砂は,地下水の流出とともに流動化し約9°の傾斜を500m 流下したと考えられる。
著者
大山 将
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.465-470, 2020-09-30 (Released:2020-09-30)
参考文献数
16

水銀汚染土壌(模擬汚染土壌および実際の汚染土壌)に対して,酸化マグネシウム系材料(マグネシウム系固化材)および高炉セメントB種により不溶化処理を検討した室内試験の結果および不溶化処理土の長期溶出挙動の観察結果について報告する。水銀溶出量によっては助剤の併用が必要であるが,マグネシウム系固化材は水銀に対して安定して高い不溶化効果が長期間持続することが最長10年の観察により確認された。高炉セメントB種についても,水銀に対して一定の不溶化効果を発揮すること,材齢の進行により不溶化効果が増加すること,中性化(pH低下)により不溶化効果が低下する可能性があることを示した。
著者
杉山 歩 井原 哲夫 永翁 一代 辻村 真貴 加藤 憲二
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.13-21, 2021-03-01 (Released:2021-03-02)
参考文献数
43
被引用文献数
1

高レベル放射性廃棄物の地層処分や地中熱利用等に関連して,地質環境の基礎データの収集・整理が進められている.近年の国際動向をみると微生物情報を収集していく必要性が認識されつつある一方,未だにその知見は限られている.深部地下水における微生物の基礎情報を他の水質情報と共にデータベース化していくためには,微生物解析手法を体系化し,データ集積を進める必要がある.本報は北海道幌延町浜里沿岸域に位置する大深度掘削井から採取した深部地下水を対象に行った微生物解析の結果と一度の採水で効率的に地下水中の微生物に関する基礎情報,すなわち微生物数,群集構造,活性,群集構成を評価する手順を示した.
著者
桑野 玲子 佐藤 真理 瀬良 良子
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.219-229, 2010-06-30 (Released:2010-07-02)
参考文献数
12
被引用文献数
17 13

近年都市部で頻発している道路陥没は,多くの場合老朽埋設管の破損部等から土砂が流出することに起因し,社会的損失が大きいにもかかわらず,対症療法的な対策が中心となっているのが現状である。陥没にははっきりした原因が特定できない場合も多いが,現象の解明よりも復旧が急がれるという実務上の要請もあり,陥没を引き起こすような地盤内空洞・ゆるみの生成・進展のメカニズムには不明な点が多い。路面下の地表近傍で顕著な空洞が存在するような陥没寸前の状態においては,地中レーダー探査技術により比較的高い確度で探知可能であるが,空洞が深層部にある場合,空洞・ゆるみの境界が不明瞭な場合,輻輳した地下埋設物と空洞・ゆるみ部が渾然としている場合などは,探知技術の限界により問題箇所の検出が困難な場合が多い。本研究では,地盤陥没を未然に防止するための探査手法を高精度化するために,地盤内空洞・ゆるみの形成過程を明らかにし空洞・ゆるみのパターンを類型化すること,さらに陥没に至る“危険な”空洞・ゆるみを抽出することを目指している。小型及び中型土槽を使用し,底面の開口部から土砂を流出させ模型地盤内に空洞・ゆるみを作製し,そのメカニズムを調べた。また,大型ピット内地盤の模擬空洞・ゆるみの探査実験を行い,空洞周りのゆるみに着目した探査の可能性を検討した。
著者
國生 剛治
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.463-475, 2013-09-30 (Released:2013-09-30)
参考文献数
19
被引用文献数
10 2

液状化の判定には応力的判定法(FL法)が標準的方法として使われている。液状化発生をより直接的に支配する物理量として損失エネルギーに着目したエネルギー的液状化判定法も提案されてきたが実用には至っていない。継続時間の長い海溝型地震や継続時間は短いが振幅の大きな地殻内直下型地震など多種類の地震動に対し統一的に液状化判定を行うためには,エネルギーに基づいた方法が優れている。ここでは密度・細粒分含有率の異なる三軸液状化試験のデータをエネルギー的観点から分析し,供試体中の損失エネルギーが繰返し応力の波数や振幅に関わらず間隙水圧上昇や発生ひずみと一意的な関係があることを示し,それに基づいたエネルギー的液状化判定の具体的方法を提案した。さらにエネルギー法をモデル地盤に適用し,同一地震動を入力させた応力法と比較することにより,その特徴と可能性を明らかにした。
著者
川尻 峻三 布川 修 伊藤 賀章 西田 幹嗣 松丸 貴樹 川口 貴之 太田 直之 杉山 友康
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.153-168, 2014 (Released:2014-06-30)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

地震後における盛土の降雨耐力低減メカニズムを把握するため,振動台で加振した模型盛土を用いた散水実験および三軸試験装置を用いた単調載荷時の任意の軸ひずみの時点での変水位透水試験を実施した。本模型実験条件の範囲では,加振終了後ののり肩部の鉛直変位が大きい場合には,加振が無い場合の60%程度の累積降雨でのり面に変状が発生した。また,加振によってクラックが発生した実験ケースでは,間隙水圧増分が局所的に大きくなることを確認した。一方,変水位透水試験では,載荷履歴の有無や載荷時のひずみの大きさが透水係数に与える影響は小さいことがわかった。以上の模型盛土実験および変水位透水試験の結果から,加振による変状の程度によっては,加振履歴が無い場合と比較してクラックが主たる要因となって透水性が高くなり,散水中の水位上昇速度が速くなると考えられる。
著者
小山 倫史 高橋 健二 西川 啓一 大西 有三
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.61-67, 2010-03-26 (Released:2010-03-26)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

近年多発しているゲリラ豪雨では,極めて短時間に降雨量が変化するため,斜面表層部の湿潤履歴によっては,数秒単位で多量の雨水浸透が発生し,斜面安定性を著しく低下させ,斜面崩壊を誘発する.したがって,数秒単位の鋭敏な雨水浸透現象を評価する必要性があり,そのためには,まず,降雨量を数秒単位で精度よく計測する必要がある.本研究では,超音波レベル計を用いてリアルタイム雨量計の開発を行った.本雨量計は,超音波により円筒形の雨受けに溜まった水位(降雨量)を1秒ごとに計測することで,従来の転倒枡型雨量計を用いた場合に生じるタイムラグを生じることなく,リアルタイムで精度よい計測が可能である.また,雨量計測の結果を1次元の飽和–不飽和浸透流解析に用い,従来の降雨強度として用いられる時間降雨量(あるいは10分毎降雨量)を入力値とした場合と比較し,降雨境界条件の入力方法の相違が降雨の浸透特性に与える影響について調べた.
著者
秦 吉弥 一井 康二 野津 厚 酒井 久和
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.747-759, 2014

盛土構造物の性能照査や被災再現などのために入力地震動を設定するにあたっては,地震動のどの周波数帯域が盛土の被害に大きな影響を及ぼすかを検討しておくことは,非常に重要である。そこで,本研究では,2次元逐次非線形FEMによる地震応答解析を,釧路空港の高盛土の横断面を対象に実施し,盛土斜面における残留変形量と入力地震動の周波数成分との関係について基礎的な検討を行った。その結果,やや短周期帯域(0.5-2Hz付近)の地震動が盛土の残留変形に対して大きく影響すること,ただし,残留変形に影響する周波数帯域は盛土の固有周波数とも無関係でないことなどを明らかにした。
著者
為重 誠 川村 國夫 駒田 秀一 宮村 雅之 埴原 強 室井 辰盛
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.289-305, 2009
被引用文献数
3

2007年3月25日に発生した最大震度6強の能登半島地震により,能登有料道路は柳田IC~穴水IC間48.2kmにおいて,大規模な高盛土の崩壊が11箇所,路面の段差・クラックが37箇所,橋梁損傷が6箇所と甚大な被害が発生し,地震直後から車輌通行止めの事態に至った。関係者の尽力により1ヶ月間の応急復旧工事の後に暫定的に通行が可能となり,その後の本復旧工事を経て,2007年11月30日に全面復旧を成した。本文では,盛土構造物を対象に能登有料道路の特徴,地震による被害の状況,対策工のために行った土質調査や試験結果,そして,復旧工法の設計,施工に至る一連の流れを述べるとともに,被災原因についても検討した。被災のメカニズムとして,地下水で飽和された盛土法尻部が地震力により脆弱化し,これによって盛土内のすべりが発生した可能性が高いことを示した。
著者
野澤 伸一郎 白崎 広和 和田 旭弘 友利 方彦
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.127-137, 2012
被引用文献数
3

東北地方太平洋沖地震では,鉄道も広い範囲で被災した。JR東日本線において,地震動では在来線の盛土・切土が被害を受けたが,それぞれの規模は大きくなく,線路延長では最大でも120m程度であった。トンネルの被害は新幹線,在来線とも極めて軽微であった。京葉線はじめ鉄道沿線で液状化が発生したが,高架橋,橋梁については,変状は無かった。津波による被害は甚大であり,海岸線を走る5線区の盛土,切土では50箇所にのぼる被害を受けた。海岸にある防潮堤や鉄道盛土と隣接した架道橋の存在により,被害の形態や規模は異なっていた。
著者
稲積 真哉 眞鍋 磨弥 大津 宏康 佐野 博昭
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.369-379, 2015

海面廃棄物処分場において護岸として施工される遮水工には,その強度や施工性に優れる鋼(管)矢板による鋼製遮水工が多く利用されている。既往の研究において,実験や調査から鋼製遮水工の耐久性や遮水性能はその機能を十分達成する評価が得られている。また,鋼製遮水工の遮水性能を評価する上で重要となる継手箇所の遮水材に関しても,様々な手法により長期的な性能評価が行われている。しかしながら,鋼材箇所の劣化を考慮した遮水性能の評価は進んでいない。本研究では鋼製遮水工の信頼性劣化評価を行い,その結果を基に意思決定基準としてライフサイクルコスト(LCC)を求め,海面廃棄物処分場の補修工法の選定等への活用を検討している。
著者
土田 孝 森脇 武夫 田中 健路 中井 真司
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.53-68, 2016
被引用文献数
6

2014年8月20日に発生した広島土砂災害では,107か所の土石流と59か所のがけ崩れが同時多発的に発生し死者75名,負傷者44名,全壊家屋133棟,半壊家屋122棟という甚大な被害が発生した。本災害は急激な気象の変化により線状降水帯が形成されて,特定の範囲に時間80mmを超える猛烈な雨が突然降り出して2時間以上継続することにより発生した。本報告は雨量を用いた土砂災害の危険度評価手法が本災害をもたらした雨量についてどのように適用されたかを検討し,今後改善すべき点について考察を行った。
著者
畠 俊郎 高橋 裕里香 西田 洋巳 安田 尚登
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.151-160, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
18

近年,日本近海に存在する新しいエネルギー資源としてメタンハイドレートが注目されている。このメタンハイドレートを分解してメタンガスを生産する場合,堆積層の強度低下等に伴う地盤変形によって生産活動等が阻害される可能性が危惧されている。本研究では,この地盤変形の抑制に日本近海で採取したメタンハイドレート胚胎層サンプルから新たに単離した微生物の代謝機能を活用する生産支援技術の適用性について検討した。太平洋側および日本海側で採取したメタンハイドレート胚胎層サンプルを対象に尿素の加水分解酵素であるウレアーゼ生産能を持つ微生物の単離を行うとともに,この単離微生物を対象として模擬堆積物の間隙内にカルサイトを析出させる室内試験を実施した。その結果,カルサイトの結晶析出による粒度分布の変化および粘着力の増加に伴う強度増進効果が期待できることが明らかとなった。
著者
小嶋 正樹 杉井 俊夫 八嶋 厚 沢田 和秀 森口 周二
出版者
The Japanese Geotechnical Society
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.33-43, 2006

道路防災点検によって抽出された早急に対策を要する膨大な数の危険斜面の中から, 優先的に対策を施すべき危険斜面を選定するための手法として, すべての危険斜面に対して対策の優先順位をつけるロジットモデル解析を提案する。岐阜県内の特定の地域を対象に, 防災専門家による点検結果の所見に含まれるキーワードから, これまでに優先的に対策が施された危険斜面の選定に大きな影響を及ぼしたと考えられるキーワードを抽出し, そのキーワードを基準要因とする要因モデルを構築した。構築した要因モデルを岐阜県内の他の地域に適用して対策の有無の的中率を算出し, 本解析手法の妥当性を検証した。また, 本解析手法をシステム化するにあたり道路防災点検結果をデータベース化し, 解析・データ管理する基盤として道路防災GISを構築した。
著者
古田島 信義 鈴木 雅文 中出 剛 片山 政弘 手塚 仁 木佐貫 浄治
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.469-478, 2017 (Released:2017-12-31)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本減水対策を実施した北薩トンネルは,鹿児島県北薩地域と鹿児島空港を結ぶ北薩横断道路に建設中の,紫尾山を貫く延長4,850mの山岳トンネルである。トンネル中央付近の低速度帯からは,高濃度のヒ素を含む地下水が時間当たり約300t湧出し,地域の水環境への影響が懸念された。そのため,ダムのグラウチング工法により減水対策工を実施した結果40 t/h以下に減水することができた。
著者
西岡 孝尚 澁谷 啓
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.397-415, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1

特殊土に位置づけられる火山灰質粗粒土のうちスコリアは,これまで十分な報告がなく,その工学的性質に関して十分議論されていないため,地盤材料としての適否の判断が難しい。そこで本論文では,富士山の東部山麓地域に広く分布する「スコリア」と称される火山砕屑物を用いて,盛土や構造物の裏込め材など道路土工への利用を目的として,その土質性状の把握と工学的性質を原位置および室内試験により詳細に検討した。一連の調査・試験の結果から,当該地域に分布する「スコリア」は,透水性,圧縮性,せん断強度のいずれの側面からも砂礫材料と同等あるいはそれ以上の水理・力学特性を示すことが分かった。例えば,スコリアを所定の締固め度で盛土施工すれば,十分な安定性が得られるばかりでなく,飽和化による沈下等の変状は発生しないことが分かった。一方,単位体積質量が1.0Mg/m3前後と小さいこと,粒子の破砕性が顕著なため,施工時の粒子破砕による粒度分布の変化により結果的に所定の締固め度を満足せず,盛土の性能低下が生じる可能性がある。
著者
三村 衛 吉村 貢 寺尾 庸孝 豊田 富士人 中井 正幸
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.141-155, 2011-06-30 (Released:2011-07-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

岐阜県最大の前方後円墳である昼飯大塚(ひるいおおつか)古墳の史跡整備の一環として実施された発掘調査に伴い,地盤工学の観点から墳丘盛土の調査を行った。破壊的な調査・試験方法が適用できないことから,本質非破壊調査手法である表面型RI密度水分計と針貫入試験を適用した。針貫入試験による力学的な特徴から墳丘盛土がほぼ水平の構造を持つことが明らかとなった。部分的には斜めの層構造も確認され,古墳墳丘の築造材料の掘削・運搬・荷降ろしの過程を考察する資料を得た。また,強度の変動パターンを分析することにより,墳丘盛土が15~40cm程度の層厚で築造されたという痕跡が得られ,墳丘試料に対する締固め試験により,墳丘盛土の築造時の締固めエネルギーは,およそ人が足で踏み固めたものに相当する0.1×EcJIS程度であることがわかった。墳丘復元に使用される候補材料についても室内地盤材料試験を行って,現墳丘の性状に近い材料を選定し,墳丘復元工事の施工方法を提案した。