著者
石井 裕繁 城田 欣也 井上 義明 清水 孝史 岩崎 洋一郎 辻本 大起 平野 康文
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.223-230, 2022-02-15 (Released:2023-02-19)
参考文献数
14

症例1は90歳代男性.2021年6月X−1日にファイザー社製新型コロナワクチン(BNT162b2)接種.同6月X日に胸痛あり当院受診,下壁誘導のST上昇を伴う胸痛にて急性心筋梗塞の診断で緊急心カテーテル施行,左前下行枝末梢の閉塞を認めた.ガイドワイヤーは容易で小径バルーンの拡張のみで再灌流を得たが,病変位置,造影所見からプラーク破綻ではなく血栓塞栓症を強く疑った.最大CKは590 U/Lと心筋ダメージはわずかであった.心エコー上左房拡大や短絡所見はなく,経過中心房細動は認めなかった. 症例2は70歳代女性.2021年8月X−20日にBNT162b2接種.同8月X日に胸痛あり当院受診.前胸部誘導のST上昇あり急性心筋梗塞の診断で緊急心カテーテル施行,左前下行枝近位部の閉塞を認めた.ガイドワイヤー通過に難渋し,血管内超音波(IVUS)で明らかなプラークを認めた.薬剤溶出ステントを留置し良好な開存を得たが最大CK 7628 U/Lと大きな心筋障害を認めた. 2症例とも経過は良好であったが,2回目のワクチン接種にあたり,1例目は原因不明の血栓塞栓症のため2回目のワクチン接種は中止とし,2例目はワクチンとの関連は否定できなかったが通常発症の心筋梗塞と判断,低心機能となったことから2回目のワクチン接種実施とした.ワクチン接種が進むにつれ同様のケースが増えてくるものと思われ,何らかの判断基準が必要と考えられた.
著者
田中 愛子 伊藤 賀敏 鶴岡 歩 波多野 麻衣 吉永 雄一 重光 胤明 澤野 宏隆 一柳 裕司 西野 正人 林 靖之 甲斐 達朗
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.88-92, 2013-01-15 (Released:2014-09-12)
参考文献数
9

近年,心臓震盪は子どもが突然死する原因の1つとして徐々に認識されてきた.輿水らの報告では,心臓震盪は胸郭のコンプライアンスが大きい若年者に多く,Maronらの報告や国内例ともに18歳以下に多くみられる.当施設では最近3年間で3例の心臓震盪を経験した.症例1:41歳,男性.日本拳法練習中に胸部打撲を受け,心肺停止となった.初期波形は心室細動(ventricular fibrillation;VF)であり,電気的除細動を含む蘇生処置を施行された.心肺停止17分後に心拍再開し,当施設に救急搬送された.搬送後も意識障害が遷延したため,脳低温療法を施行し,社会復帰を果たした.症例2:18歳,男性.フットサルの練習中,ボールを前胸部でトラップした際に倒れ,心肺停止となった.初期波形はVFであり,電気的除細動を含む蘇生処置された.心肺停止6分後に心拍再開し,社会復帰した.症例3:27歳,男性.柔道の試合中,相手ともつれ合い倒れて,心肺停止となった.初期波形はVFであり,電気的除細動を含む蘇生処置にて,心肺停止8分後に心拍再開し,社会復帰した.院外心肺停止のうち,心室細動に対しては,早期の電気的除細動が良好な神経学的転帰と関連しているといわれている.上記3症例からも,特にスポーツを行う場には自動体外式除細動器(automated external defibrillator;AED)の普及が急務と考えられる.
著者
堀本 拡伸 高橋 優 久保 俊彦 芦原 俊昭
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.371-376, 2011 (Released:2012-10-03)
参考文献数
2

症例は38歳, 男性. 小学生時から労作時や緊張した時を中心に開始と停止の明瞭な動悸を自覚していたが, 30分程で消失するため放置していた. 2009年4月, 軽労作で呼吸困難感が出現し, 2日後には座位でも自覚するようになったため, 近医を受診. 心電図でwide QRS頻拍を指摘され当科に救急搬送された. 当院到着時の心電図はwide QRSで左脚ブロックパターンを呈しており, 毎分200拍程度の頻拍にもかかわらず症状は軽微で血行動態も保たれていた. アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate; ATP) 急速静注によりR-R間隔が短縮するとともにnarrow QRSに変化し, 続いて一過性完全房室ブロックを経て正常洞調律に回復した. この経過から, 左側副伝導路を有する房室回帰性頻拍が左脚ブロックによりCoumel現象を生じていたと疑われた. 電気生理学的検査により左側壁の副伝導路を認め, カテーテルアブレーションによる離断とともに誘発不能となり根治したことから, 上記診断が裏づけられた. ATP投与によりCoumel現象が確認でき, 頻拍の機序が房室回帰性頻拍であること, かつブロックを生じた脚と同側に副伝導路が存在することを同時に診断でき, その後の検査, 治療に非常に有用であったwide QRS頻拍の1例を経験した.

11 0 0 0 OA 右心機能評価

著者
林田 晃寛
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.768-772, 2013-07-15 (Released:2014-09-16)
参考文献数
9
著者
高橋 啓子 奥村 恭男 永嶋 孝一 園田 和正 古川 力丈 佐々木 直子 磯 一貴 黒川 早矢香 大久保 公恵 中井 俊子 渡辺 一郎 平山 篤志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.SUPPL.2, pp.S2_6-S2_14, 2016-12-30 (Released:2018-08-15)
参考文献数
7

症例は41歳男性.B型WPW症候群に伴うwide QRS頻拍に対し,電気生理学的検査を施行した.心室連続刺激中の心房最早期興奮部位はHis束電位記録部位であったが,心室早期刺激で左側後壁副伝導路の存在が示唆された.心室早期刺激でclinical wide QRS頻拍(SVT1)が誘発され,右側側壁副伝導路を順行,房室結節を逆行する逆行性房室回帰性頻拍と診断した.SVT1は室房伝導時間が短縮し,His束電位が心室(V)波に重なるSVT2へと変化した.その間,His –心房(A)波間隔は一定であったことからSVT1の室房伝導は機能的右脚ブロックであったのに対し,SVT2ではそれが解除されたと考えられた.さらにその後の心室早期刺激でwide QRS頻拍SVT3が出現し,これは室房伝導の順序は変化しないまま,narrow QRS頻拍SVT4に変化した.これらは房室結節を順行,左房後壁副伝導路を逆行する順行性房室回帰性頻拍と診断した.wideからnarrowへの変化はCoumel現象による左脚ブロックが解除されたためと考えられた.さらに副伝導路間を旋回するSVT5と,通常型slow-fast房室結節回帰性頻拍(SVT6)も誘発された.以上より,順伝導のみの右側副伝導路,潜在性左側副伝導路,房室結節遅伝導路を焼灼し終了した.
著者
良永 真隆 林 睦晴 横井 博厚 藤原 稚也 吉川 大治 向出 大介 杉下 義倫 鎌田 智仁 伊藤 丈浩 多賀谷 真央 井澤 英夫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.1213-1218, 2015 (Released:2016-10-13)
参考文献数
10

ビタミンB1欠乏症, 特に衝心脚気は現代では非常に稀な病態であるが, 1990年代から食生活の変化に伴い若年者に加え, 高齢者の症例も散見されるようになった. 症例は意識障害にて救急搬送された中年男性で, 胸水・腹水含め, 全身性の著明な浮腫を伴っていた. 心臓超音波検査では重度のび漫性左室収縮低下を認めたが, 生活歴・食事歴よりビタミン欠乏を疑い, ビタミン補充治療を施行するも改善に乏しかった. ビタミン利用障害の可能性も考慮し, 大量補充療法を施行したところ, 速やかな意識状態の正常化を認め, 浮腫も改善した. 最終的には心機能も正常範囲に回復し, 社会生活への復帰が可能となった. 改善後, ビタミンB1負荷検査にて, ビタミンB1の利用障害が認められた. 本症例のような偏食を伺わせる生活歴を持った原因不明の循環不全においては, 高拍出性心不全の病態でなくても, 脚気心の可能性を念頭に置く必要がある. 通常のビタミン補充療法で改善を認めない場合でも, ビタミンB1の利用障害が存在している可能性を考慮し, 典型的なWernicke脳症の症状を呈さなくても, 心不全に意識障害を併発している場合には, 早期から高用量のビタミンB1投与も検討する必要があると考えられた.
著者
田中 耕史 井上 耕一 豊島 優子 岡 崇史 田中 宣暁 外海 洋平 野里 陽一 岩倉 克臣 藤井 謙司
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.SUPPL.3, pp.S3_48-S3_53, 2014 (Released:2015-10-26)
参考文献数
1

症例は51歳男性. 頻拍の加療のため近医より紹介となった. 洞調律時, V1誘導はrsR’ パターンで+/-のデルタ波を伴っていた. 発作時心電図は230bpmのregular wide QRS tachycardiaであった.  心臓電気生理学的検査では頻拍中の心房最早期興奮部位は冠静脈洞入口部近傍であり, His不応期での心室期外刺激で頻拍はリセットされた. 房室結節を順行性に, 後中隔副伝導路を逆行性に伝導する正方向性房室回帰性頻拍と診断した.  冠静脈入口部近傍で頻拍中に高周波通電を行ったところ頻拍は速やかに停止した. その後, 逆伝導は房室結節を介するもののみとなり, デルタ波も消失した. 一方, 右脚ブロックが顕在化し, QRS幅は術前140msから術後160msに拡大した. 術前は, 右側後中隔副伝導路を介して右室が早期に興奮していたため元来の右脚ブロックがマスクされ, QRS幅も相対的に狭くなっていたと考えられた.
著者
鷹見 洋一 樂木 宏実
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.404-408, 2015 (Released:2016-04-15)
参考文献数
3
著者
奥山 由紀 梅村 敏
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.312-317, 2014 (Released:2015-03-10)
参考文献数
43
被引用文献数
1
著者
武田 宏太郎 竹本 真生 江島 健一 多田 英生 籾井 英利 砂川 賢二
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.8, pp.946-951, 2009 (Released:2013-06-12)
参考文献数
24

症例は32歳, 女性. 近医美容形成外科にて頭皮上眼瞼移植術, および大腿部と臀部の脂肪吸引術を施行された. 帰宅途中に気分不良, 呼吸困難となり総合病院に救急搬送された. 血圧70mmHgとショック状態で, 胸部X線写真にて肺血管陰影の増強を認め, 急性うっ血性心不全と診断された. 心筋逸脱酵素の上昇があり心筋障害の存在が示唆され, 心エコーでは心機能は左室駆出率20%と低下し, 左室中部から基部が全周性に無収縮で心尖部のみが収縮していた. 緊急冠動脈造影を施行されたが正常冠動脈であった. 精査加療目的で同日当科搬送となった. 来院時, 肺うっ血を認めるも循環動態は安定していた. その後心室壁運動異常は急速に改善し, 第6病日の心エコーでは壁運動は正常に回復していたため, 第8病日に軽快退院となった. 本例は美容形成外科術後に冠動脈支配では説明できない領域に左室壁運動異常が生じ, 数日で急速に改善したことより, たこつぼ心筋症と考えられた. 典型的には心尖部の動きが低下し, 心基部が過収縮するたこつぼ型を呈する. 本例のように逆たこつぼ型を呈するたこつぼ心筋症は比較的珍しいと考えられたため, 文献的考察を加えてここに報告する.
著者
南 学
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.799-804, 2017-08-15 (Released:2018-08-15)
参考文献数
9