著者
境 泉洋 中村 光 植田 健太 坂野 雄二
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.865-873, 2007-10-01

目的: ひきこもり状態にある人の活動範囲に影響を与える要因を明らかにすることを目的とした.対象・方法: ひきこもり状態にある人の家族473名を対象にひきこもり状態にある人の活動範囲とひきこもり行動チェックリストに回答を求めた.結果: (1)活動範囲をカテゴリカル主成分分析によって「対人交流のある場所」と「利用自由な場所」に分類したところ,「利用自由な場所」への外出頻度が高かった.(2)1日あたりの外出時間が長く抑うつが強いほど「対人交流のある場所」への外出が多い.(3)1カ月あたりの外出日数が多いほど「利用自由な場所」への外出が多く,家族回避行動が強いほど「利用自由な場所」への外出が少ない.(4)攻撃的行動が多いほど1カ月あたりの外出日数が多く,生活が不規則であるほど1カ月あたりの外出日数が少ない.結論: ひきこもり状態にある人と家族の関係や攻撃行動に焦点を当てた介入によって,ひきこもり状態にある入の利用自由な場所への外出が促進される可能性が示唆された.
著者
秦 多恵子 川畑 篤史 伊藤 栄次 喜多 富太郎
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.651-658, 1989-12-01
被引用文献数
1

自律神経失調症の1モデル動物であるSARTストレスマウスでは, 血小板数減少, 骨髄巨核球数増加および出血時間の延長が既に報告されている。今回はこれらの現象について, SARTストレスとは異なったタイプのストレスを負荷した動物との比較の観点から, さらに詳細な検討を行った。1)ラットにおいても, マウスの場合と同様, SARTストレスによる血小板数減少は認められた。2)2日間の寒冷ストレス負荷によって血小板数の増加がみられたが, 1時間負荷および5日間の負荷では無変化であった。急性の拘束水浸ストレスマウスでは血小板数減少が認められた。電気ショックおよび拘束ストレスを急性的に負荷すると血小板数の増加が認められたが, 慢性的に負荷すると急性時の変化は消失していた。3)骨髄巨核数はSARTストレス以外のストレスによっては変化しなかった。4)拘束水浸ストレスによる血小板数の減少はストレス負荷中止3時間後には完全に回復していたが, SARTストレスによるそれは中止後5日経過してもなお認められた。5)SARTストレスにより出血時間は2倍以上に延長したが, 拘束水浸ストレスによっては約35%の延長が認められたのみであった。6-Hydroxydopamineにより体表面血流量の増加を来したマウスでは, 約50%の出血時間延長が認められた。以上の成績より, 自律神経失調症を伴ったSARTストレス動物における血小板数減少は, このストレスの1つの特徴であると考えられる。また, SARTストレスによる出血時間の延長には血小板数減少のほか, 血流量の増加も関与している可能性が示唆される。
著者
田山 淳
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1033-1041, 2008-12-01

近年,日本の中学校における長期欠席児童数は,10万人を超える事態になっている.不登校の改善や予防的措置を行うためには,彼らのパーソナリティをより詳しく知る必要がある.本研究では,登校行動とパーソナリティの関連を探るため,中学生37名(男子20名,女子17名)に対して,標準化された2つの質問紙とともに,簡便な投影法であるバウムテストを実施した.質問紙の結果から,登校行動不良児は,学級での居場所がなく,進路意識が低いことがわかった.バウムテストの結果では,登校行動不良児が描いたバウムは,筆圧が弱く,樹冠が角張っていることが明らかになった.このような不登校傾向児のバウムテストの特徴は,抑うつ感,不適応感,保守傾向,神経過敏などを示す可能性が示唆されている.結論として,中学生における不登校傾向とバウムテストのいくつかの特徴との関連が明らかになった.
著者
坂口 幸弘 恒藤 暁 柏木 哲夫 高山 圭子 田村 恵子 池永 昌之
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.697-703, 2004-09-01
参考文献数
14

全国規模の実態調査を行い,ホスピス・緩和ケア病棟における遺族ケアの提供体制の現状を明らかこした.87施設から回答が得られ,回収率は90%であった.87%の施設が遺族ケアのニーズはあると認識し,84%の施設がすべての遺族を遺族ケアの対象と想定していた. 44%の施設では遺族ケアは勤務外で,手当は特になかった.30%の施設では遺族ケアのための教育を行っていなかった.1施設のみが,明文化された基準に基づくリスク評価を行っていた.56%の施設は専門家との連携を取つていなかった.半数以上の施設が,遺族ケア実施上の諸問題として,不十分な教育,組織体制の不備,時間の不足,人材の不足を経験していた.
著者
柏木 哲夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.441-447, 2002
参考文献数
11

ホスピス,ターミナルケア,緩和医療の3つは歴史的にも,その内容からしても多くの共通点を有している.近代的ホスピスは,一般病棟での「やり過ぎの医療」による苦痛に満ちた死への「アンチテーゼ」として登場したとみることもできる.ホスピスケアの内容が知られるようになるとともに,ターミナルケアのあり方が問われるようになってきた.一般病棟においても,苦痛の緩和を中心にしたhosoice mindedcareの重要性が認識されるようになってきた.さらに,末期癌のケアを中心に発達してきたホスピスでの経験を,癌のあらゆる段階へ,また,エイズ,心疾患,肝疾患,腎疾患,糖尿病,痴呆などへも広げ,苦痛の緩和を専門とする緩和医療という概念が注目されるようになってきた.
著者
飯田 俊穂 熊谷 一宏 細萱 房枝 栗林 春奈 松澤 淑美
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.945-954, 2008-11-01
被引用文献数
2

動物とのふれあいが人によい効果をもたらすことは知られている.特に子ども・障害者・高齢者などによい効果をもたらすことが新聞,雑誌などで取り上げられており,不安やストレスの軽減効果が示されたとの報告や,ペットといるだけで精神状態が安定し自然治癒力が高まるなどの報告もある.そこで今回われわれは,学校不適応傾向の児童・生徒に対するアニマルセラピーの心理的効果についての分析を試みた.結果として3回以上のアニマルセラピーで,Profile of Mood States(POMS)(緊張-不安,活気,疲労,混乱),AN-EGOGRAM(NP,FC,AC)に有意な変化を認めた.POMS(抑うつ-落ち込み,怒り・敵意)の値は低下,AN-EGOGRAM(CP,A)の値は上昇したものの有意差は認めなかった.以上のことより,アニマルセラピーを3回以上施行した症例に対し,心理状態(緊張-不安,活気,疲労,混乱)の改善,自我状態の安定傾向を認めた.
著者
宗像 恒次
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.37-46, 2002-01-01
被引用文献数
1

長期に引きこもる青少年の家族関係には, 親を必要とすることで認められようと依存する本人と, 本人に必要とされていることで認められようと共依存する両親の相互補足的構造がある.親子ともども, 無条件に愛されなかった申告なトラウマが世代間伝達されており, 愛情飢餓感が強く顕在あるいは潜在化したストレス行動特性の強さで測定できる.SATイメージ療法は再誕生, 再養育イメージの変換法によって, 両親が本人に無条件の愛情を示せるパーソナリティに変容できるよう支援しつつ, 本人にも同じ支援をとるものである.SATイメージ療法の効果は, 大脳皮質の酸素濃度, 行動特性, IgA, 副腎皮質ホルモンなどの変化, 行動変容の記録を用いて評価することができる.