著者
マルラ 俊江
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.31-37, 2018-01-01 (Released:2018-01-01)

カリフォルニア大学(UC)システムでは,日本研究に携わる教員と学生の教育・学習・研究をサポートするため2014年2月からEBSCO社提供日本語電子書籍のDDA(demand-driven acquisition)を実施してきた。このプログラムには,UCシステム中San Franciscoを除く9キャンパスが参加し,日本語電子書籍2,858点を提供,2017年7月までに336点がすでに購入済みである。この報告書では,UCにおけるDDAがどのように運用されているのかを紹介し,プログラムを通して提供および購入された日本語電子書籍を分析の上,今後の課題に言及する。
著者
グッド 長橋広行 グッド 和代
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.19-24, 2017-01-01 (Released:2017-01-01)

米国では電子資料の増加にともない大学図書館の役割が,蔵書構築から学習スペースの提供や更なる学習支援に転換してきている。私たちは電子書籍の増加が図書館サービスの転換を促し,利用者支援を向上させると期待してきた。しかしここ数年の電子書籍を取巻く環境は,私たちが予想していたものとは違うようだ。学生はいまだ紙書籍を好み,電子書籍の読み辛さは改善されず,大学図書館の電子書籍購入予算は減少している。本稿ではその問題と原因を2つの最新の全米調査報告書から探り,大学図書館で電子書籍サービスを支える職員たちの取り組みを報告する。最後に日本語電子書籍への要望を添える。
著者
藤代 裕之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.58-63, 2011-02-01
参考文献数
28

ソーシャルメディアの登場は, ジャーナリズムに大きな影響を与えている。ソーシャルメディアを利用することで, 新聞やテレビといったマスメディアを介さずに多くの人々に対して情報発信することが可能になった。本稿では, 海外と日本においてソーシャルメディアがジャーナリズムに与えた影響や課題についての事例を紹介し, まず, 記者だけでなく個人もジャーナリズム活動に関与するようになっていることを明らかにする。次いで, 情報発信者も, メディアスクラムやプライバシー侵害, 倫理問題に直面していることに触れ, 情報発信者である「私たち」がどのような役割や責任を担っていくかを考察する。
著者
栗山 正光
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.489-494, 2010
参考文献数
45
被引用文献数
1

主に図書館界における世界各国および国際レベルでのメタデータに関する取り組みについて概観する。最初に国際的な取り組みの例としてダブリン・コア,次に国レベルというより国際レベルと考えられる米国議会図書館のメタデータ標準維持管理活動について述べる。さらに,イギリス,ドイツ,フランスの各国立図書館のプロジェクトを紹介し,EUの電子図書館ユーロピアーナ,オーストラリアおよびニュージーランドの活動についても紹介する。最後に日本の国立国会図書館と国立情報学研究所の活動について述べる。
著者
小川 俊彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.504-510, 1994
参考文献数
2

公共図書館における自習室の問題は,図書館の本質的サービスでないとしながらも,30年以上その必要性を認めてきている。新しい図書館を作り出していくために,市民や行政に,そしてマスコミに対して,図書館のあるべき姿をどう訴えていくのか,市民に期待される図書館とは,を検証していく。更に,具体的なPRの方法として,サインやパンフレットなどの必要性と,作成する目的について考えてみる。しかし結局は,図書館のPRは口コミで伝わるものであり,そのきっかけは職員のサービスによるものである。
著者
畑林 一太郎 新井 紀子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.511-515, 2011-12-01
参考文献数
4

学校教育法施行規則等の省令改正を背景に,研究機関毎での研究者総覧構築のニーズが高まっている。研究者向けサイエンス基盤サービスResearchmapには,外部システムに対してデータ提供する機能が用意されている。この機能を利用することで,各研究機関は機関毎の研究者総覧を低コストかつ,短期間で公開することが可能になった。また,研究者は自身の研究活動における情報を高品質でかつ,長期間にわたって安定的に公開することが可能になった。本論文では,同機能を使った研究機関の研究者総覧をクラウド上に構築した際のメリットを提示する。
著者
時実 象一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.426-434, 2014-10-01

この記事は,ここ数年のオープンアクセスの動向について詳述するもので,前後編に分かれる。この前編では,はじめにオープンアクセスの定義と歴史について,特にゴールド・オープンアクセスとグリーン・オープンアクセスについて簡単に説明した。近年研究助成機関と各国政府のオープンアクセス志向が強まり,米国・英国など主要国で助成研究成果論文の無料公開が義務付けられている。なかでも,2013年2月の米国OSTPのメモ,2012年6月の英国のFinch Reportとその影響,ECの動向などについて解説した。さらに,米国では,この義務化に対応するための出版社の取り組みCHORUS,図書館の取り組みSHAREなどの動きがある。 CHORUSはCrossRefのFundRefに支えられている。こうした,義務化を支えるインフラストラクチャーについて述べた。
著者
大島 裕明 山本 祐輔 山家 雄介 高橋 良平 ヤトフト アダム 中村 聡史 田中 克己
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.2-7, 2011-01-01
被引用文献数
1

Web情報には多様な情報が存在しており,本当に信じてよいのかどうかは慎重に検討しなくてはならない。特に,Web2.0コンテンツは,これまでの本や新聞などのメディアよりも,情報の品質が低い可能性があるため,信憑性の検証が必要であると考えられる。本稿では,そのようなWeb情報の信憑性という課題に対して,情報技術がどのような役割を果たせるかということについて議論する。まず,情報の信憑性という概念について整理を行う。また,現在,Web情報の信憑性に関連して行われている研究について紹介する。さらに,われわれが行っているWeb情報の信憑性検証技術に関する研究の紹介を行う。
著者
林 賢紀
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.242-247, 2008-05-01

本稿では,Web上の検索エンジンについて標準的な検索手法になりつつあるOpenSearchについて概説するほか,1)OPACを題材として,図書館システムに標準で用意された検索ページを解析し,タイトル検索のみ可能なシンプルな検索ページへ再構成を図ることで検索に必要な最小限の要素の把握,2)OpenSearch Descriptionファイルを作成し,Firefox上から直接OPACを検索するプラグインの作成,3)作成した検索プラグインの設置とインストール方法について解説する。
著者
山崎 久道
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.46-51, 2008-02-01

図書館や情報サービスにおいて,分類はどんな位置づけにあるのか,あるいは分類的思考というものがあるとすれば,それにはどんな意義があるのか。こうした点に関連して,分類することの意義,時間という経営資源の節約,情報検索における分類的思考の意味,情報サービスにおける分類的思考の効果,予見可能性を提供することの重要性,学問分野の俯瞰,語からの検索の限界,OPAC利用の問題点など,さまざまな視点から述べる。最後に,一般社会における分類的思考の問題点を示す。分類的思考は,図書館や情報サービスにおいて基盤的位置を占めるものと結論付ける。
著者
廣田 未来
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.489-494, 2011-12-01
参考文献数
9
被引用文献数
1

お茶の水女子大学附属図書館では,2007年から「ラーニング・コモンズ」「キャリアカフェ」といった学生のための学習空間の創出に取り組んできた。全学的な教育改革の動きに連動したこの取り組みにより,学生支援のための学内の各部署の連携が促進されている。また,学生と図書館職員の協働「LiSA(リサ):Library Student Assistantプログラム」を通して,学生の「学習支援」「キャリア形成支援」にも取り組んでいる。小規模図書館であるお茶の水女子大学図書館が学内の他の部署との連携や学生との協働によって,どのように学習空間と学生支援の充実に取り組んできたかを報告する。
著者
原田 隆史
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.182-186, 2011-05-01

日本における図書館システムは1980年代から導入が進められ,主として図書館のハウスキーピング業務の効率化に大きく寄与してきた。しかし,その後の図書館システムの進歩は遅く,特に利用者サービスの中核をなすオンライン閲覧目録(OPAC)については,他のWebサービスと比較して時代遅れであるとも言われてきた。近年,このような状況が少しずつ変化してきている。たとえば,クラウド・コンピューティングを利用した図書館システムやオープンソース・ソフトウェアとして開発されたシステムの出現,ディスカバリ・インタフェースと呼ばれる新しいOPACの提供などはその代表である。また,図書館が取り扱う資料自体も従来の紙媒体の資料だけではなく,電子ジャーナルや電子書籍など多様なものとなってきている。本稿では,このような多様化してきた図書館システムの状況について概説する。
著者
宮入 暢子 森 雅生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.206-213, 2021-05-01 (Released:2021-05-01)

2012年10月にレジストリサービスの提供を開始したORCID(Open Researcher and Contributor ID)は,世界中で各種の学術情報システムやサービスに広く実装され,総登録者数は2020年末までに1,000万人を超えている。本稿では,運営組織としての非営利団体ORCIDや,研究者情報基盤としてのORCIDの特徴と提供サービスについて概観し,1,000を超える機関メンバーや23のコンソーシアムによって支えられるORCIDコミュニティの現況について解説する。
著者
平田 義郎 山崎 裕子 金子 芙弥 野中 真美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.318-323, 2023-08-01 (Released:2023-08-01)

冊子で定期購読をしていた学術雑誌は,1990年代に電子ジャーナルが登場すると,大学図書館ではビッグディール契約と呼ばれるコレクション契約を締結するようになった。ビッグディール契約はシリアルズクライシスに歯止めを掛ける一定の効果があったが,学術雑誌の価格上昇問題は解決しておらず,その対応策として注目されてきたのがオープンアクセスである。そうした流れから,転換契約と呼ばれる,出版社に対して行われる支払いを購読料からオープンアクセス出版料にシフトさせることを意図した契約を締結する大学図書館が増えてきた。本稿では,転換契約やその課題等を解説すると共に,論文公表実態調査等のオープンアクセスに関する大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)の取り組みを紹介し,今後の展望等を述べる。
著者
竹内 比呂也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.45-50, 2023-02-01 (Released:2023-02-01)

デジタル・トランスフォーメーション(DX)とは,単に既存の業務をデジタル技術によって実行するものに置き換えるのではなく,デジタル技術を用いることで,これまでの業務にかかる制度,組織,ビジネスモデル,文化等の変革を誘導するものと考えられている。本稿では,大学図書館におけるこれまでのデジタル化,学術コミュニケーションの動向や教育研究のデジタル化の動向など踏まえながら,DXに向かう道筋を,大学図書館機能を構成するコンテンツ,空間,人的支援の領域に分けて,デジタイゼーション,デジタライゼーション,DXという段階を踏まえて提示する。
著者
上村 侑太郎
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.29-33, 2022-01-01 (Released:2022-01-01)

近年,特許情報を経営戦略・事業戦略策定へ活用しようという取り組みが多くの企業で行われている。特許情報が活用できる範囲は,戦略策定の広範囲にわたるとともに,経営戦略・事業戦略策定には素早い分析が求められる。特許情報分析を行うにあたり,技術の俯瞰,特に,課題・解決手段の把握は重要である。課題・解決手段の抽出は人間が明細書を読み込み,明細書から抽出することが一般的であるが,この抽出作業には時間的コストがかかるという問題点がある。そこで,テキストマイニング手法であるword cloudと共起ネットワークを同時に用いて,効率的に,広い分野で,素早く課題・解決手段を抽出できる手法の検討を行った。
著者
久保田 晃弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.419-424, 2020-08-01 (Released:2020-08-01)

マニュエル・リマが『視覚的複雑性』のサイトと本で試みた,ビッグデータのアルゴリズミックな可視化の分類学を出発点に,ゲシュタルト心理学のプレグナンツの法則(人間の知覚の特性),レイコフ&ジョンソンの「イメージスキーマ」(身体的経験の概念化)を介した,大規模データからの人間の意味の読み取り可能性を考える。次に,近年さまざまな分野から注目されている,圏論にもとづく「圏的データベース」を紹介し,有向グラフによる図式という圏の基本構造が,視覚的複雑性(可視化)とイメージスキーマ(意味)のダイナミズム,さらには宇宙の構造(物理学)をつなぐ共通言語になる可能性を提示する。
著者
木村 幹夫
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.378-384, 2012-09-01

東日本大震災時にメディアが果たした役割を実証的に検証した。被災3県の地上波テレビ,ラジオは,津波からの避難時には放送の停波がほとんどなく,大津波警報や余震情報をリアルタイムで放送した。震災当日から特番編成を立ち上げ,以後CMなしの24時間放送を数日間継続し,被災状況に加え,ライフライン情報,生活関連情報,安否情報,避難所情報などを放送した。また,被災地では津波からの避難時および直後の時期にラジオを筆頭にマスメディアが大きな存在感を示した。東京など周辺地域ではSNSやストリーミング・サイトなどネット系メディアの役割も注目されたが,被災3県についてはマスメディアの貢献度,評価は,ラジオを筆頭にネット系メディアのそれをはるかに上回っていたことが実証された。