- 著者
-
中嶋 謙互
- 雑誌
- 情報処理
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.6, pp.641-646, 2006-06-15
日本ではしばしば,楽観的な見通しを述べるよりも,さまざま問題点を並べて悲観的な発言をするほうが「賢い」行動であるとされる.しかし,自分たちの未来に夢を抱き,技術や社会の発展のために努力を続けていくには,楽観的な見通しが必要不可欠である.私は,現在の日本において「楽観的な物言い」が不足しているとつねづね感じている.本論文では,50年後の情報科学技術について,現在,日本において活発に研究・開発されているロボットやコンピュータなどが,人々の生活や社会や考え方がどのように変わっているかについて,手元の時計を2055年に設定し,幅広くそして楽観的に考えた.最終的には,ソフトウェアの力によってハードウェアの潜在力を最大に引き出すことによって,想像もできないほど大きな価値を創造できることを強調し,その後,日本人の「モノ」作りの能力を21世紀において活かしていく方法についても考えていく.日本の経済と産業が世界の中で誰にも認められる存在を維持するために,日本人としてできることは何なのかがイメージできるような内容を目指した.この論文を読んだ若い人たちが,将来,日本が国際的に貢献し得る分野があることを知り,職業選択の参考にすることができれば望外の喜びである.