著者
高島 正之 加納 源太郎 福井 武久 小倉 毅勇
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1984, no.7, pp.1083-1089, 1984-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
17
被引用文献数
3

イットリウムとネオジムの酸化物とフッ化物との固相反応によって新規化合物としてネオジムイットリウムフッ化酸化物が合成された。Y2O3とNdF3の反応は反応温度によって段階的であり,200~600℃ ではY2O3とNdF3の間でO2-とF-の交換反応が進行しYFOとNdFOを生成する。900℃を越えるとNdFOがYFOに置換型に固溶化し始め,1200℃以上でネオジムイットリウムフヅッ化酸化物が生成した。NdF3の混合割合が48~52mol%で斜方面体晶の,58~78mol%で正方晶の単一相生成物が得られた。前者ではY,NdF3O3が,後者ではY,Nd2F,O3が量論的化合物として合成された。Y2NdF3O,は530℃ 付近で斜方面体晶から立方晶への可逆的な相転移があるが,Y2Nd2F6O3は1400℃ 以下では空気中で安定で相転移もなかった。酸化物イオン導電性の立場から電気伝導性を調べた結果,Y2Nd2F,O3が650℃ で電導度が1.2×10-2S/cmで,酸化物イオン輸率が0.85以上の高い酸化物イオン導電性を示した。
著者
村田 勝英 牧野 忠彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1975, no.7, pp.1241-1248, 1975-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
18
被引用文献数
4

ポリスチレンの熱分解を流通式反応器を用いて行なった。分解温度330~370℃,大気圧下の分解では,分解生成物は大部分が室温で液状の分解油であり,分解ガスは少量(約0wt%)である。分解油のガスクロマトグラムをπ-パラフィの保持時間で区分し,その組成をかパラフィン換算の炭素数分布で表わすと,Cg,Cl8,C2C,付近にのみ成分が集中した特有な形状をしており,分解油からのポリスチレンの同定に用いることができるものと考えられる。また分解温度が高くなると分解油中のスチレンのモノマー,二量体,三量体の割合が増加し,他のトルエン,エチルベンゼン,クメン,α-メチルスチレン,1,3-ジフェニルプロパンなどの割合は,それぞれ減少することを示し,この結果とラジカル移動に基づく連鎖反応機構から予測される結果とは異なることを指摘した。
著者
藤郷 森 河田 達男 高嵜 裕圭 遠藤 敦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.4, pp.421-429, 1990-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
24

大谷石はゼオライト鉱物の一種である斜プチロル沸石(Clinopti1olite;Na6(A16Si30O72)・24H2O)を約65wt%含有することに注目して,吸着剤などの化学工業材料として活用をはかる目的で,イオン径を異にするメチレンブルーおよびアンモニア性窒素(NH4+)を吸着質として用いる液相吸着法を用いて,その特性変化を検討して来ている。今回は,大谷石試料と同様に斜プチロル沸石を主要構成鉱物とする山形県板谷産および秋田県二つ井産の天然ゼオライトを,さらに高純度で構造も単純と考えられる合成ゼオライトを参照試料に用いて,天然ゼオライトを酸処理することによって,天然ゼオライトの構成鉱物類の集合状態とその存在状態に関して検討を加えた。その結果,次のような点が明らかになった。(1)大谷石試料に含まれる斜プチロル沸石は耐酸性に乏しい特徴を有する。(2)一般に小さな比表面積値を示す天然ゼオライトを塩酸水溶液で処理することにょって,構成鉱物類の集合状態に関してかなりの知見が得られた。天然ゼオライトが少さな比表面積値を示す原因は試料中に含まれる少量の粘土鉱物類によることが明らかとなった。(3)天然ゼオライトと合成ゼオライとの対比から,天然ゼオライトは構成鉱物類が特殊な集合状態を形成している。この集合状態を活用すれば,低濃度のNH4+水溶液中に含まれるNH4+除去剤として十分活用可能である。
著者
永瀬 喜助 神谷 幸男 穂積 賢吾 宮腰 哲雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.3, pp.377-384, 2002 (Released:2004-03-05)
参考文献数
14
被引用文献数
9

低湿度環境で自然乾燥性を持つ重合漆液の調製を目的として,反応容器中で生漆の反復「くろめ」1)を行った.すなわち簡易な実験用漆液重合装置を試作し,「くろめ」処理の繰り返しによって生漆1)を重合させ,漆液中のウルシオールの変化と低湿度環境(20–25 °C,45–55%RH)での乾燥性を調べた. 生漆は反復「くろめ」によって酵素酸化が進行し,この中に含まれるウルシオール単量体が減少する.また,この反応における反応容器の底面積と処理量および処理時間には,相関関係があることがわかり,その関係式を推測した.さらに,これらの変化に伴い,ヒドロキシ基価と抗酸化力が低下して側鎖の自動酸化が起こりやすくなり,低湿度環境での自然乾燥性が発現することを見いだした.
著者
長瀬 裕 小松 利幸 角谷 嘉和 池田 幸治 関根 吉郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1979, no.11, pp.1560-1568, 1979-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
11

合成ポリアミドと天然ポリアミドの熱分解機構の相違と有毒ガス(-酸化炭素,シアン化水素)の発生との関連性を明らかにするため,ナイPtン6,ジスルフィド橋かけナイロン6,ナイロン6,6,絹および羊毛を試料として,ヘリウム気流中,真空中におけるTG, DTA測定およびGC, IR, MSを用いた熱分解生成物の分析を行なった。合成ポリアミドでは320~350。Cで分解が開始し, TG曲線が1段階となった。ナイロン6ではε-カプロラクタムを生じる解重合反応が主反応となり,シアン化水素は生成せず-酸化炭素もごく微量しか生成しなかった。ナイロン6にジスルフィド橋かけを施すとS-S結合の切断が分解開始点となり,同時に主鎖のN位がラジカル化されて解重合されやすくなることがわかった。また,ナイロン6,6ではアミド結合の加水分解にともない末端の脱炭酸および脱アンモニア反応が起きて主生成物は二酸化炭素,水,アンモニアであった。一方,絹および羊毛では分解開始温度は200~250。Cで合成ポリアミドにくらべ低く,二酸化炭素,水,アンモニアが熱分解主生成物であった。さらに容易に橋かけ反応が進行してTG曲線が3段階となり,その過程でシアン化水素,-酸化炭素が合成ポリアミドとくらべ多く発生することがわかった。
著者
住田 弘祐 國府田 由紀 岡本 謙治 高藤 勝 重津 雅彦 小松 一也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.10, pp.697-703, 1998-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13

酸化セリウムを酸素貯蔵材として使用したパラジウム担持触媒の二酸化硫黄 (SO2) ガスによる被毒現象を検討した. 還元雰囲気下において, 酸化セリウムに担持したパラジウムに吸着した硫黄の脱離温度は, 酸化アルミニウムに比較して高温化しており, 被毒状態からの触媒活性の回復に影響を与えていることが判明した. この高温化は, 吸着した硫黄量と触媒の状態変化の解析から, 還元されたパラジウムと酸化セリウム間における酸化セリウムの還元性に基づく栢互作用が原因であると推察された. また, 573Kにおける, パラジウム担持酸化セリウムのSO2被毒に対する酸化, 還元雰囲気の影響を検討した結果, 酸化雰囲気では, SO2の吸着が酸化セリウムの酸素貯蔵を阻害し, 還元雰囲気では, パラジウム表面を不活性化しているものと推論した.
著者
佐藤 和也 西久保 忠臣
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.11, pp.1514-1520, 1991-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
4

触媒として第四級オニウム塩やクラウンエーテル錯体を用いて種々の環状エ一テルとエステル類との付加反応の検討を行った。この結果,エポキシ化合物と酢酸p-置換フェニルエステル類との付加反応はよく進行し,置換基定数-0.268≦ σ≦+0.227の間でHammett則が成立することが明らかとなったが,エポキシ化合物と酢酸ベンジルや安息香酸メチルとの反応はあまり進行しなかった。また,エポキシ化合物とチオ酢酸S-ベンジルおよびチオ酢酸S-ドデシルとの付加反応はチオ酢酸S-フェニルの場合と同様に温和な条件下でも定量的に進行することが判明した。さらに,触媒としてクラウンエーテル錯体や第四級ホスホニウム塩を用いるとオキセタン化合物とチオ酢酸S-フェニルとの付加反応もよく進行することも明らかとなった。
著者
西久保 忠臣 杉本 頼厚 佐藤 和也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.11, pp.1506-1513, 1991-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
21
被引用文献数
2

種々の溶媒中でフェニルグリシジルエーテル(PGE)とチオ酢酸S-フェニル(PTA)との付加反応について検討を行った。その結果,この付加反応はトルエン中で無触媒条件下ではまったく進行しなかったが,DMF中では無触媒条件下でも進行した。また,この付加反応の触媒として種々のアルカリ金属化合物や金属塩化物が有効であることが見いだされた。これらの化合物のうち,特にKOCN,KF,CoCl2,カリウムフェノレート,酢酸カリウムなどが高い触媒活性を示した。またクラウンエーテルとアルカリ金属塩の錯体は高い触媒活性を示し,これを用いるとトルエンなどの非極性溶媒中でも反応はよく進行した。以上の結果から,エポキシ化合物と活性エステルとの付加反応においては反応溶媒および触媒の選択と,その組み合わせが重要であることが明らかとなった。
著者
巣山 隆之 坂田 忠 内田 芳明 大久 文一 吉田 壮大郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.9, pp.1204-1208, 1991-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
3
被引用文献数
1

3-シアノ-2-エチルイソ尿素を水酸化カリウム存在下で二硫化炭素と反応させ,ついでメチル化してdimethyl N-[(cyanoimino)ethoxymethy1]carbonimidodithioate3を合成した。3は活性であり,第二級アミンとの反応では3-cyano-1-[(disubstitutedamino)methylthiomethylene]-2-ethylisourea8を,また第一級アミンとの反応では1-substituted4-ethoxy-6-methylthio-1,3,5-triazin-2(1H)-imine9を生成した。9はアミン塩酸塩と室温で反応して,立体障害の小さい場合,1-substituted6-(substitutedimino)-4-ethoxy-3,6-dihydro-1,3,5-triazin-2(1H)-imine10塩酸塩を,また立体障害の大きい場合は,1-substituted4-(substitutedimino)-6-methylthio-3,4-dihydro-1,3,5-triazin-2(1H)-imine11塩酸塩を主に生成した。さらに3,9または10塩酸塩とアミン塩酸塩またはアミンとの反応により1-substituted4,6-bis(substitutedimino)-3,4,5,6-tetrahydro-1,3,5-triazin-2(1H)-iminehydrochloride(前報と同じように便宜的に1,2,4-三置換イソメラミンと呼ぶことにする)12塩酸塩を合成した。
著者
長尾 幸徳 佐藤 裕樹 阿部 芳首 御園 生尭久
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.8, pp.1088-1093, 1991-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7
被引用文献数
1

8-プロモメチル-1-メチルイソキノリン臭化水素酸塩1と水酸化ナトリウムおよびナトリウムアルコキシド(アルコキシド=メトキシド,エトキシド,プロポキシド,およびイソプロポキシド)の反応により8-ヒドロキシメチルおよび各8-アルコキシメチル置換の1-メチルイソキノリン類(3aおよび3b-e)を合成した。また,1,8-ビス(プロモメチル)イソキノリン臭化水素酸塩2とナトリウムアルコキシドとの反応では1,8-ビス(アルコキシメチル)イソキノリン類4a-dが得られた。一方,化合物1とアンモニアおよびアルキルアミン類(アルキル=メチル,エチル,プロピル,およびイソプロピル)との反応では8-アミノメチルおよび8-アルキルアミノメチル置換の1-メチルイソキノリン類(5aおよび5b-e)がそれぞれ合成されたが,化合物2とアミン類との反応では閉環が起こり1H-ベンゾ[de][1,7]ナフチリジン誘導体6a-eが得られた。
著者
青山 安宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.8, pp.1041-1049, 1991-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
31
被引用文献数
3

非極性有機溶媒中での多点水素結合に基づくホストーゲスト相互作用について検討した。用いたホストは2-ヒドロキシ-1-ナフチル基をもつポルフィリン誘導体および四つのアルキリデン基で橋かけした環状テトラキス(レゾルシノール)誘導体であるが,これらはいずれもフェノール性ヒドロキシル基(対)を単位水素結合部位としてもっている。ゲストはアミノ酸,キノン,ジカルボン酸,ジオール,糖,ヌクレオチドなどの生体関連物質である。多点相互作用に組み込まれた「分子内」水素結合は最適ゲストの捕捉に大きな選択性を与えるのみならず,いちじるしい鎖長選択性・立体選択性をもたらす。また,「分子内」水素結合の分子間水素結合に対する優i位性は約1 .5kcal/molである。このような相互作用を利用して糖類を有機溶媒に可溶化することができる。この場合,アノマー位に関して大きな立体選択性が認められる。一方,どのような糖が有効に抽出されるかについての選択性は糖分子全体の疎水性(脂溶性)に支配されている。多点相互作用の応用についてもいくつかの例で検討を加えた。最も重要なのは,非共有結合に基づくホスト-ゲスト相互作用が,機能性分子錯体の自発的な構築や光学活性ゲストの立体化学の決定に利用できる点である。その他,糖の合成化学にユニークな方法論をもたらし,多官能性有機触媒の開発にも新たなみちを拓いた。
著者
石井 裕子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.4, pp.316-320, 1991-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

ホウレソソウを水中で煮沸して含まれているシュウ酸カルシウム結晶の量,形態および結晶構造の変化を検討した。ホウレンソウを水で20分間煮沸して非結合性シュウ酸を抽出し0.1M塩酸中に一夜浸漬して全シュウ酸を抽出してそれぞれイオンクロマトグラフ分析して定量し,単位重量当たりの両者の含有量の差からシュウ酸カルシウムの含有量を求めた。実験に使用したホウレンソウ100g中に非結合性シュウ酸は730mg,全シュウ酸は912mgと実測され,シュウ酸カルシウムは二水和物として339mgとなった。さらにホウレンソウを長時間煮沸して抽出されるシュウ酸を定量し,全シュウ酸との差から煮沸後残存するシュウ酸カルシウム量を求めた。シュウ酸カルシウムは煮沸1時間後からわずかずつ減少し,約4時間後から減少速度が増加し,8時間煮沸すると約26%が消失した。ホウレソソウを煮沸する間に葉の中に存在するシュウ酸カルシウム結晶は表面からわずかずつ溶解し,まず微細な穴が生じ小さなき裂が現れ,数時間以上煮沸すると凝集体の構成粒子の結合部分が溶解し始め,別に再結晶と転移により小さなシュウ酸カルシウム一水和物の結晶が元の結晶表面に現れた。X線回折分析によれば,煮沸前ほとんど二水和物であったシュウ酸カルシウム結晶は8時間煮沸した後にはその約50%が一水称物に転移していた。
著者
村本 慶博 朝倉 英行 鈴木 仁美
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.4, pp.312-315, 1991-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
25

HPLCの標品を得るためにエチルベソゼン-3-スルホン酸8をつぎの方法で調製した。2-アミノエチルベンゼン9から,アセチル化,ニトロ化,加水分解,脱アミノ化および還元を経て,3-アミノエチルベンゼン14を得た。ジアゾ化後 SO2 と銅で処理してスルフィン酸15に導き,壇素でスルポニルクロリド16に変換し,さらに加水分解して8を得た。エチルベソゼンスルホン酸の 2-2,4-3 および3-異性体8は,0.1M KH2PO4-MeOH系のHPLCでこの順序で溶出した。エチルベンゼン1を98%硫酸を用いて20~120℃のいくつかの温度でスルホン化し,得られるスルホン酸混合物をHPLCで分析した。その結果,生成物2と3のほか,0.3~3.8%の8とジスルホン酸の存在を認めた。
著者
山下 隆治 児玉 光博 真鍋 修
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.6, pp.774-776, 1991-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5

Deithyl 2, 3-pryridine dicarboxylates 3 were easily prepared in one pot synthesis by the reaction of a-chlorooxaloacetate 1, a, p-unsaturated aldehydes 2 and ammonia. Especially, diethyl 5-ethyl-2, 3-pyridine dicarboxylate 3a was obta i ned in a good yield (81%) by the reaction of 1, 2-ethyl-2-prop enal 2a and ammonia in chloroform using an autoclave. In the reaction in an autoclave, the yield of 3 a in chlorobenzene or toluene was similar to that of chloroform. But under atmospheric pressure, the yield of 3a was lower in toluene, benzene, and ethanol than in chlorobenzene.
著者
安田 伍朗 堀 卓也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.3, pp.240-243, 1991-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4

N-Benzylation of phenanthro[9, 10-d]triazole gave the mixture of 1-benzyl-1H- and 2-benzyl-2H-phenanthro[9, 10-d]triazole (1c and 2c) such as N-Alkylation. The mass specctrometry can be used to distinguish clearly between the 1-alkyl-1H- and 2-alkyl-2Hphenanthro-[9, 10-d]-triazole. The 1-alkyl compound releases more N2H, which is further split with the (R-H) elimination to give base peak m/z 190, than do the 2-isomer, and so on the mass spectrun of 2-alkyl compound a base peak is parent peak. However the fragmenta tion patterns of the two benzyl compounds show similarities so structures are proposed for these fragment ions by consideration of rearrangement fragment C14H8N+(m/z 190) and C6H5CH2+ (m/z 91).
著者
伊藤 健児 永島 英夫 深堀 隆彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.3, pp.177-186, 1991-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
78
被引用文献数
2

新規アリルルテニウム(IV)錯体,Ru(η5-C5R5)L,2X(R=H or CH3;L=C0 or Ph3P; X=Cl or Br) または [Ru(η5-C5Me5)Cl2]2 に対するアリル基質の酸化的付加により合成し,R=CH3;X=Brの代表例につきX線構造解析を行った。これらアリルルテニウム錯体ならびに既知の[Ru(1-3:6-7:10-12-η-C12H18)Cl2を種々の有機金属試薬によりアルキル化し,多様なアルキル(アリル)ルテニウム(IV)錯体に誘導するとともに,この酸化状態にある炭素-ルテニウム(IV)結合の反応挙動を詳細に検討した。その結果,金属-炭素結合はCOtBuNC,アルケン類との反応においてまったく挿入活性を示さず,β-水素脱離と連続するヒドリドとアリル配位子間の還元的脱離をもっとも容易に起こす。C-C結合生成をともなう還元的脱離は80℃以上で進行し,いずれの場合もRu(II)化合物として安定化される。一方カチオン性のジエンルテニウム(II)活性種は第2のジエン分子と酸化的環化してC-C 結合を生成したのち,β脱離と還元的脱離による水素移動を連続して起こし,量論的および触媒的なプタジェンの二~三量化が高選択的に進行することを見いだした。
著者
清野 公師 寺井 忠正 後藤 邦夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.2, pp.149-152, 1991-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9

GrayanotoxinIII (3,5,6,10,14,16-hexahydroxygrayanotoxane ,G-III) は 3,6,14 位に第二級ヒドロキシル基,また, 5,10,16 位に第三級ヒドロキシル基の合計6つのヒドロキシル基をもつ四環性ジテルペノイドである。本報においては,0~100℃ の間に5段階の反応温度を設定し G-III を無水酢酸-ピリジンによりアセチル化反応を行うとともに,その反応経過を詳細に検討した。その結果,ヒドロキシル基のアセチル化に対する反応性は,6位が最も高く,以下,3位,14位,16位の順であった。この中で,6位のヒドロキシル基の反応性は極めて高く,0℃ではこれのみが選択的にアセチル化された。一方,3-OHと14-OHのアセチル化速度の比は,100℃においては 5 : 2 であったが,低温になるにつれその比が減少し,20℃では約 1:1 となった。さらに,第三級ヒドロキシル基については77℃以上で反応した結果,16位のみがアセチル化された。以上の結果から,この反応は逐次競争反応にしたがい進行することが判明した。
著者
宇野 文二 窪田 種一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.2, pp.101-109, 1991-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
56
被引用文献数
1

著者らは近年,電子スペクトルに対する置換基効果を置換基定数で記述する新しい方法を研究してきた。電子スペクトルで測定される一重項あるいは三重項遷移エネルギー(1.3Euv)は, Swain らの FR 置換基定数あるいは湯川らの置換基定数 (σi ,σπ+,σπ-)を用いて, 1.3EUV=aF+bR+C, 1,3EUV=ασi+βσπ++γσπ-+Cと記述された。そして,これらは共役系の n-π* 吸収帯を初め,共役系および脂肪族系の n-π* 吸収帯,分子内電荷移動吸収帯,分子化合物の分子間電荷移動吸収帯およびそれら錯体形成による成分化合物自身の吸収帯などに対する置換基効果に適用できる一般式であることを明らかにした。さらに,ベンゼン置換体の吸収帯を用いて,これらの式の適用限界を議論した。第一吸収帯に対しては合理的に適用できるが,第二吸収帯には適用できなかった。第二吸収帯に対する分子内電荷移動配置の寄与は置換基の種類にいちじるしく依存し,この吸収帯の性格がすべての置換基で同じでないためである。これらの一連の研究について,一般式の誘導の過程から種々の吸収帯に対する適用結果および分子軌道論によるその理論的背景を総合的に述べた。
著者
矢田 智 高木 弦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.1, pp.20-24, 1991-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
5

8族金属触媒によるメントン1とその異性体であるイソメントン2の還元アミノ化反応の選択性と立体化学について検討した。1の反応生成物は第一級アミン異性体のネオメンチルアミン4,メンチルアミン5とネオイソメンチルアミン6であった。第一級アミン異性体の生成率は5%Pd-C>5%Ru-C≧5%Rh-C>5%Pt-C>Raney-Co>Raney-Niの順で収率24~84%の問であった。5%Pd-C触媒では3種類の第一級アミン異性体中,4が45%の収率で最も多く生成したのに対し,5%Ru-C触媒では6が41%の収率で最も多く生成した。このように,触媒による第一級アミン異性体の生成物分布の違いは反応中間体のP-メンタン-3-イミン3と3のエナミン形,3-P-メンテン-3-アミン10との間でエナミン形-ケチミン形互変異性化が生じ,これらに対する水素付加速度の違いによって説明した。また,1や2の反応ではまったく第二級アミンや第三級アミンの生成は認められず,その原因を1,2や3の官能基に対する置換イソプロピル基の立体障害によって説明した。一方,2の還元アミノ化反応では1にくらべて反応が進みにくい。しかし,2の反応によって得られた第一級アミンの生成物分布は1の反応の結果と似ている。2の反応では2が1に異性化して反応が進行したことを示唆した。
著者
藤田 眞作 小山 行一 小野 茂敏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.1, pp.1-12, 1991-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19
被引用文献数
11

インスタントカラー写真に用いるo-スルホンアミドフェノール色素放出剤の分子設計における知見を述べる。この化合物の色素放出能力は,酸化と加水分解による。これらの効率が,ベンゼン環の置換基によって,大きく変化することを見いだした。とくに,相当する酸化体(o-キノン・モノスルホンイミド)の加水分解の副反応を調べ,それがt-ブチル基の立体障害により抑止できることを見つけた。一方,放出されるアゾ色素の堅ろう性は,アゾ成分中の電子供与基の存在で向上することを示した。色素放出剤の合成設計においては,o-アミノフェノール中間体の合成経路を種々検討した。その中から,ベンゾオキサゾールを経由する経路を開発した。Beckmann転位によるベンゾオキサゾールの合成法,スルホニルクロリドの合成条件,2-メトキシエトキシ基の導入方法,キノンの新規還元法を述べる。この研究によって,この色素放出剤を用いるインスタントカラーフィルムが,実用化された。