著者
船越 仁 羽場 かおり 小原 加奈江 谷口 博美 玉懸 敬悦 藤田 勇三郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.9, pp.1516-1522, 1989-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6

光照射によって生じたジメチン型メロシアニン(MD)の光異性体が,安定体にもどる速度過程を4種の誘導体について測定し,熱異性化速度定数(ka),活性化エネルギー(Ea)に対する複素環効果とプロトンの触媒作用の機構について調べた。kdは複素環の種類,とくに硫黄の導入数によって5ケタもの差となって現われた。溶媒の種類およびpHの変化によって島はいちじるしく変わるが,Eaはほとんど変わらないこと,Arrheniusの頻度因子はほとんど複素環効果を示さないことなどから,異性化の中間体としてプロトン化メロシアニンが重要な役割を果たしており,かつ,活性化エネルギーはプロトン移動過程の障壁ではなくプロトン付加体の内部回転の障壁を反映しているという結論を得た。メロシアニンの熱異性化速度はプロトン性非水溶媒における潜在的プロトン活動度の定量化に役立つと提案し,純メタノールの塩酸等価水素イオン濃度として2×10-6mol・dm-3を得た。
著者
五十嵐 喜雄 〓上 奎介 知久 幸宏 今井 良子 渡辺 昭次
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.9, pp.1616-1619, 1989-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
4

種々のN-(置換フェニル)マレイミドを合成し,3種のかびについて抗かび試験を行ったところ,いずれも活性を示し,とくにN-(ジアルキルフェニノ)マレイミドは良好な結巣を与えた。ケルキル置換の位置と活性の闘係を調べるために,N-(ジメチルフェニル)マレイミドの各異性体の抗かび試験を行い,2,6に置換体および2,4-二置換体が多くのかびに対して活性を有することを知った。さらに,この2種のN-(ジメチルフェニル)マレイミドとN-(2,6-ジエチルフェニル)マレイミドは多くの細菌類,酵母類に対しても高活性であった。N-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミドは,1グラム陽性菌に対しては活性を示すものの,グラム陰性菌に対して活性を示さなかった。数種のN-(置換フェニル)マレイミドとフランのDiels-Alder付加体を合成し抗かび活牲を調べたが,無置換の化合物が弱い活性を示すものの,置換された化合物は活姓を示さなかった。
著者
徳村 邦弘 伊藤 道也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.8, pp.1311-1318, 1989-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
25
被引用文献数
5

室温ヘキサン中安定には存在し得ないパラ置換ベンジルラジカル(D0)の励起状態(D1)の電子スペクトル(D1→D0蛍光,Dn←D1吸収スペクトル)を,2段励起レーザー分光法により測定した。シアノ,メトキシ,フッ素,塩素がパラ位に導入されたベンジルの蛍光寿命が比較的長い(>50ns)ことから,励起状態ラジカルとアミンやジエンとの分子間相互作用を蛍光消光により検討した。また,これらラジカルが室温溶液中蛍光性であることを利用して,パラ置換トルエン三重項(T1)からパラ置換ベンジルラジカルニ重項(D0)へのT-Dエネルギー移動を明らかにした。
著者
太田 和子 岩岡 純子 上條 裕子 岡田 みどり 野村 祐次郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.9, pp.1593-1600, 1989-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
42
被引用文献数
7

イソオキサゾール類とエナミン類との反応により,ピリジン誘導体が生成することを見いだした。たとえば,イソオキサゾールと1-(1-シクロヘキセニル)ピロリジンを,THFまたはジオキサン溶液中,低原子価チタン塩(塩化チタン(IV)と亜鉛末から調製)の存在下還流して,1,2,3,4-テトラヒドロキノリンが得られた(収率75%)。同様の方法により,イソオキサゾール類とβ(またはα)-置換エナミンから,種々の3(または2)-位置換ピリジン類が得られた。しかし,5-メチルイソオキサゾール類との反応では,ピリジン類の収率はきわめて低かった。
著者
下茂 徹朗 村岡 富美子 染川 賢一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.10, pp.1765-1771, 1989-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
8

3種の2-ピロン-5-カルボン酸エステルと鎖状ビニルエーテル類とのDiels-Alder(DA)反応を60~80℃で行い,それぞれ主生成物の6種のen40-8-アルコキシ-3-オキソ-2-オキサビシクロ[2,2,2]オクト-5-エン-6-カルボン酸エステル(endo一体)〔1〕と6種のexo一体(2)を得た。また,2-ピロン-5-カルボン酸メチルと環状ビニルエーテルである2,3-ジヒドロフランとの反応では9-オキソ-3,8-ジオキサトリシクロ[5,2.2.02,6]ウンデク-10-エン-11-カルボン酸メチル(endo一体)〔3〕とexo一体〔4〕を得た。いずれも付加配向は特異的で生成物は安定である。一方,フマロニトリルとの反応はより高温条件を必要とし,endo-7,exo-8-ジシアノ-3-オキソ-2-オキサビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-6-カルボン酸メチル〔5〕を与え,テトラシアノエチレンと廉反応しなかった。その他定量的分析およびMINDO/2からの計算も行い,2-ピロン-5-カルボン酸エステルは逆電子要求型のDA反応性をもつこと,および反応点の立体効果および極性効果を受けることなどが推定された,また二,三のDA付加体の加水分解を行い,この方法ではベンゼン環のメタ位二置換もしくは1,3,5-三置換のポリカルボン酸誘導体が選択的に得られることがわかった。
著者
友田 晴彦 斎藤 正治郎 大石 雅文 白石 振作
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.12, pp.2059-2062, 1989-12-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
17
被引用文献数
5

2-アミノ-3-クロロキノキサリンが2,3-ジクロロキノキサリンのホル1ムアミド溶液ヘアンモニアガスを吹き込むことにより生成し,同様な反応系に過剰の塩化アンモニウムを添加すると2,3-ジアミノキノキサリンが生成した。ビス(3-アミノ-2-キノキサリニル)アミンは2,3-ジクPtPtキノキサリンのホルムアミド溶液に高温でアンモニアガスを吹き込むことにより得られた。5,11-ジヒドPt-5,6,11,12-テトラアザナフタセソを過マンガン酸カリウムで酸化すると1,4-ジヒドロ-1,4,9,10-テトラアザアントラセン-2,3-ジオンが生成した。従来知られているキノキサリン誘導体の融点の文献問の違いは,分子内および分子間縮合反応によることがわかった。
著者
林 罠生 伊藤 嘉彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.12, pp.1965-1971, 1989-12-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
25
被引用文献数
2

光学活牲ホスフィン配位子を含む遷移金属錯体を触媒とする不斉合成の研究を行った。光学活性フェロセニルポスフィンは,その側鎖上に各種の官能藩が導入できる独特の構造をしており,以下に示す触媒的不斉合成で,それぞれの触媒反応,反応基質に適合した官能基を有するフェ群セニルホスフィンを用いることにより,高い立体選択性を示した。1)金触媒不斉アルドール反応-β-ヒドロキシ-α-アミノ酸の不斉合成。2)ロジウム触媒による三置換アクリル酸の不斉水素化。3)パラジウム触媒アリル位不斉アミノ化およびアルキル化。4)パラジウム触媒不斉ヒドロシリル化一アリルシランの不斉合成。5)ニッケル触媒クロスヵヅプリングによる軸不斉ビナフチルの不斉合成。また,パラジウム触媒を用いたα,β一不飽和ケトンの不斉ジシリル化によるβ一ヒドロキシケトンの不斉合成やロジウム触媒によるスチレン誘導体の不斉ヒドロホウ素化など薪しいタイプの触媒的不斉合成を開発した。
著者
梶返 昭二 山本 益司 渡辺 茂樹 廣利 芳樹 西田 晶子 藤崎 静男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.10, pp.1757-1764, 1989-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

種々の9-置換9-(2-プロモメチルフェニル)フルオレン誘導体〔1〕(9-置換基としてOH,CH20HCOOH,COCH8,COOcH8など)を合成し,ついでこれらに塩基を作用させたところ,好収率でO-フェニレン基を環内に含むスピロフルオレン誘導体が得られた。また,いくつかの9-[2-(ヒドロキシアをぜルキル)フェニル]-9-フルオレノール誘導体〔2〕(ヒドロキシアルキル基としてCH20H,CH,C(CH8)20H,CH2C(CHs)(C2H,)OH,CH2C(C2H,)20Hなど)を合成し,これらを酢酸中,酸触媒存在下加熱して分子内脱水し,同じくスピロフルオレン誘導体を得た。また,こめ際のスピロフルオレン誘導体の生成機構を考察した。
著者
小野 雅之 吉田 哲郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.2, pp.234-239, 1981

ニオブ-チタン合金およびバナジウム-ニオブ合金の複合窒化物を作成する目的で60ニオブ-40チタン(wt%)合金粉末(粒径約80μ)ニオブ0チタン合金板(Nb:20,40,60,80wt%)および50バナジウム-50ニオブ(wt%)合金板を窒素中(1atm),700~1350℃で窒化し,断面の組織観察,EPMA解析ならびにX線解析により反応状況を調べ,合金組成の均一な複合窒化物合成の可能性を検討した。ニオブ0チタン合金ではまず高チタン濃度の針状窒化物を生成した。高チタン濃度の窒化物の析出した周辺は高ニオブ濃度の低級窒化物または合金相となった。さらに反応が進むと高チタン相と高ニオブ相が窒化増量にともない反応して表面から合金組成の複合窒化物を生成した。60Nb-40Ti合金粉末は1300℃,4時間で,またNb-Ti合金板(Nb:20,40,60,80wt%,厚さ約0.3mm)は1350℃,48時間でそれぞれ合金組成の複合窒化物となった。50バナジウム-50ニオブ合金では針状窒化物は奪成せ劣表面から合金組成の窒化物が層状に成長した。50バナジウム-50ニオブ合金板(厚さ約0.8mm)は.1350℃,48時間で合金組成の複合窒化物となった。
著者
山口 達明 長岡 伸郎 高橋 勝治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.7, pp.1164-1165, 1989-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
2

Kolbe-Schmitt type carboxylations of 1- and 2-na phthol by carbon dioxide in the homogeneous solution in aprotic solvents were found to proceed under ordinary pressure and ordinary temperature giving 1-hydroxy-2-naphthoic acid and 27hydroxy-1-naphthoic acid, respectively, in extremely high selectivities and yields, . The best yield (ca.80%) for the carboxylation of 1-naphthol was obtained by the reaction of its potassium salt in nitrobenzene at 80°C under 3.9 x 1O5 Pa of carbon dioxide within 30 min.
著者
尾中 篤 杉田 啓介 泉 有亮
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.3, pp.588-590, 1989-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Regioselective reductions of 2, 3-epoxy-1-alkanol and its derivatives are carried out by use of lithium borohydride supported on calcium ion-exchanged Y-type zeolite.2, 3-Epoxy-substituted ether is found to be reduced at the C-3 position with the above heterogeneous reducing reagent more regioselectively than 2, 3-epoxy-1-alkanol. High regioselection is attributable to the interaction between the organic substrate and the calcium ion in the zeolite since the reducing reagent supported on sodium ion-exchanged zeolite shows low selectivity.
著者
矢田 智 矢沢 直樹 山田 義和 助川 しのぶ 高木 弦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.4, pp.641-647, 1989-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
23
被引用文献数
4

白金族金属触媒による 4-t-ブチルシクロヘキサノン (1) の還元アミノ化反応と立体化学について検討した。反応生成物は第一級アミンの 4-t-ブチルシクロヘキシルアミン (2) と第二級アミンのビス (4-t-ブチルシクロヘキシル) アミン (3) などであった。(2) の生成は Pt<Os<h<Pd<Rh<Ruの順で収率59~97%の間であった。(3)はPtでは収率34%に対し, Ruではまったく生成しなかった。触媒によって(2)と(3)の生成量は異なる。これは反応中, 一時的に生成する4-t-ブチルシクロヘキサンイミン(6)やシップ塩基, 4-t-ブチル-N-(4-t-ブチルシクロヘキシリデン) シクロヘキシクルアミン(5)に対する水素付加の速度の違いと(5)の反応性の違いによる。たとえば, 別途に合成した(5)を用いてRu上, アンモニア存在下での水素付加反応では1分子の(5)から2分子の(2)が定量的に生成し, (3)は得られない。しかし, Ptではこ(5)から(2)と(3)が同時に得られた。(1)の還元アミノ化における立体化学ではいずれの触媒とも(2)のtrans-体よりも cis-体を多く生成した。また, (5)の立体構造を1H-NMRによって調べ, C-N結合がアキシアル(ax)結合とエクアトリアル(eq)結合をもつ2種類の立体異性体の存在を確認した。さらに(5)が水素付加されて得られた(3)では C-N-C 結合が ax-ax, ax-eq, eq-eq 結合した3種類の立体異性体が存在した。
著者
中沢 利勝 塩沢 佳幸 説田 和洋 板橋 国夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.7, pp.1103-1110, 1989-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

3-(2-ナフチルチオ)プロピオンアルデヒド〔1a〕およびそのメチル置換体〔1b,c〕を50%硫酸存在下,エーテル中で反応させると容易に閉環が起こり2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[2,1-b]チオピラン-1-オール〔2a〕および対応するメチル置換体〔2b,c〕がほぼ定量的に生成する。〔2a〕をクPtpaホルム溶液中塩酸とともに加熱すると,3H-ナフト[2,1-b]チオピラン〔3a〕がほぼ定量的に,ポリリン酸(PPA)中で加熱すると2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[2,1-b]チオピラン〔4a〕のみが70%得られた。また〔2b,c〕を同様に処理すると対応するメチル置換体〔3b,c〕,〔4b,c〕がそれぞれ高収率で得られた。〔2a〕を硫酸触媒存在下アルコール,チオールおよびチオカルボン酸などの求核剤と反応させるとまもの〔2a〕のヒドロキシル基は反応試剤によって容易に置換され,対応するエーテル,チオエーテル,チオカルボン酸エステルが,ほぼ定量的に生成した。さらに硫化水素とはチオールが,N,N-ジメチルチオホルムアミドとはチオギ酸エステルが,塩化テオニルとは塩化物が,それぞれ得られた。また,〔2a〕と臭化アヤをルとの反応では臭化物が,トリエチルアミン触媒存在下での臭化アセチルとの反応ではア竜トキシ体がそれぞれ得られた。1-ナフタレンチオールから得た3,4-ジヒドロ-2H-ナフト[1,2-b]チオピラン-4-オール〔7a〕も〔2a〕とほぼ同様の結果を示した。以上,〔2〕のヒドロキシル基は酸触媒存在下で,種々の求核剤により容易に置換されたが,アミン類による置換は,酸塩基触媒ともいずれも進行しなからた。
著者
砂本 順三 佐藤 智典
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.2, pp.161-173, 1989-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
70
被引用文献数
4

卵黄レシチンリポソームの構造強化と標的指向性を達成するために, 本研究では疎水性アンカーとしてパルミトイル基やコレステリル基で一部修飾した天然由来多糖でリボソーム表面を被覆した。多糖被覆リボソームの構造安定性は, 内包蛍光ブローブの流出抑制およびリボソームの酵素的分解抑剃により確認された。また多糖の構造に依存した標的指向性も発現した。すなわち, アミロペクチンやマンナン誘導体で被覆したリボソームは貧食細胞との親和性に優れ, 動物に静脈投与したのち肺への特異的な集積がみられた。この特異性を利用して, 抗菌剤 (アンホテリシンB, ミノサイクリンおよびシソマイシンなど) や免疫賦活剤 (ポリアニオンポリマー) をこれらの多糖被覆レポソームにカプセル化することで, それぞれ, 細胞内増殖菌に感染した動物モデルでの抗菌活性およびマクロファージの活性化を顕薯に向上することに成功した。つぎに, がん細牌への特異牲を付与するために, プルラン被覆リポソームへ抗体を化学的に結合した immunoliposomeを作製した。認識素子として CSLEX1 のサブユニット IgMs を結合したリボソームは, 特異がん細胞との高い結合性および, PC-9 肺がん移植マウスでの腫瘍指向性を示した。また, 抗がん剤アドリアマィシンを immunolipasame にカプセル化することで, 動物モデルでの顕著な腫瘍増殖抑制効果も観察された。
著者
肥田 宗政 三井 利幸 藤村 義和
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.6, pp.972-976, 1989-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
3
被引用文献数
2

合成樹脂の構造推定を行なう一手段として, パーソナルコンピューターを使用した多変量解析法の適用を試みた。まず, 14個の構造のわかった既知の合成樹脂と, 3個の構造のわからない未知の合成樹脂について, それぞれに熱分解ガスクロマトグラフィーを行なった。つぎに, 個々のパイログラムをピーク高と保持時間をもとに数値化し, 多変量解析のためのデータとした。多変量解析において, クラスタ憎分析では, ウォード法, 主成分分析では, 合成変量の分散を最大にする方法, 因子分析では, 規準パリマックス法を使用して, 距離, 主成分得点, 因子得点を計算した。得られた数値を総合的に判断して, 未知の合成樹脂の構造推定を行なった。その結果, 未知試料は, 高圧ポリエチレンあるいは, ポリ-1, 2-ブタジエン, 未知試料2は, 既知試料中に特に類似したものはなく, 未知試料3は, 天然ゴムとの類似盤が高いことがわかった。
著者
野平 博之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.6, pp.903-914, 1989-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
67
被引用文献数
4

優先晶出法およびジアステレオマー塩法など, 主として選択的な結晶化現象を利用した光学活性体の効率的な取得方法の研究を行なった。優先晶出法においては, 自然分晶する化合物の検索方法を提示し, この方法により新たに多数の自然分晶する化合物を見いだした。また, 優先晶出法において, 分割効率をいちじるしく向上させることができる共存塩法を開発した。さらに, ラセミアミンとラセミカルボン酸の組合せにおいて, その難溶性ジアステレオマー塩が自然分晶する例をいくつか見いだし, これによりラセミ体同士の組合せから4種類の活性体を一挙に得る方法を提示した。ジアステレオマー塩法においては, できるかぎり効率の高い分割剤の検索方法を提示し, この方法を用いて種々の生理活性をもつ化合物をはじめ, 多数のアミン, カルボン酸, アルコール類の光学分割を行なった。さらに, 新しい合成光学分割剤として, trans-およびcis-2-ベンズアミドシクロヘキサンカルポン酸 ([1]および[4])とcis-2-(ベンジルアミノ)シクロヘキサンメタノール[23]を提案し, これらが合成光学分割剤として有用であるとを示した。
著者
玉野 美智子 中林 幹夫 纐纈 銃吾
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.5, pp.891-894, 1989-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
2

9-(Acyloxy)anthracenes were synthesized by the reactions of anthrone (9(10 H)-anthracenone) with acyl chlorides.Treatment of these substances with various metal halides in benzene under reflux gave the corresponding 10-acylanthrones and anthrone.
著者
巣山 隆之 曽我 卓生 宮内 一憲
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.5, pp.884-887, 1989-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19
被引用文献数
10

It was found that amines added to the N-cyano group on cyanoguanidines in the presence of FeCl3 or ZnCl2 under mild conditions. For example, the reaction of cyanoguanidine [2a] with butylamine, proceeded at room temperature in the presence of FeCl3 to give butylbiguanide [1a] in 99% yield. Similarly, [2a] or N-cyano-N'-phenylguanidine [2b] reacted with diethylamine, benzylamine, hexadecylamine, octadecylamine and aniline at room temperature or under reflux in dioxane or tetrahydrofuran to give the corresponding biguanides [1].In the presence of ZnCl2, [2] and two equivalents of amines were heated in refluxing dioxane. The initial products, biguanides [1]-ZnCl2 complexes, were readily hydrolyzed by aqueous ammonia or amines to give hydropchlorides of [1].When N-substituted-N'-cyano-S-methylisothioureas [3] reacted with primary amines in the presence of FeCl3 or ZnCl2 the addition to the cyano group and the substitution of the methylthio group with amines occurred at the same time to yield the corresponding [1].
著者
山本 忠 漆間 貴史 幸本 重男 山田 和俊
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.4, pp.760-763, 1989-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

A new method for the preparation of (Z)-4-alkylidenebutenolides is described. Coupling reaction of acetylenic stannanes with enol triflates of β-keto esters gave the corres ponding (Z)-2-alken-4-ynoates which were hydrolyzed and then subjected to cyclization in the presence of HgO to give moderate yields of (Z)-4-alkylidenebutenolides.
著者
杉岡 正敏 青村 和夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.3, pp.471-476, 1973
被引用文献数
2

いろいろの固体触媒によるエタンチオール(ET)の接触分解をパルス反応器を用いて行なった。この結果,エタンチオールの分解に活性を有している触媒はB酸点を有しているNHY-ゼオライト,固体リン酸(SPA),シリカ-アルミナ(SA)ばかりではなく, Al,08およびアルカリ金属ゼナライト,MeY(Me=Li, Na, K, Rb, Cs)のようにB酸点を有していない触媒もまた分解活性を示すことがわかった。しかしながら,CaO, MgOのような固体塩基は不活性であった。エタソチオールの分解生成物はNH,Y, SPA, SAおよびMeYではエチレンと硫化水素のみであったが, A130,ではエチレンと硫化水素とともにかなりの量のジエチルスルフィドが生成した。<BR>NH,Y, SPA, SAおよびA1203によるETの分解はピリジンで被毒されたが, MeYでは被毒されなかった。さらに,NH,YとSPAのエタンチオール分解活性は触媒の焼成温度の上昇とともに低下し,その活性低下はクメン分解の活性低下とよく対応していた。<BR>以上の結果から,エタンチオールの分解に対するNH,Y, SPA:およびSAの活性点はB酸点であるが,A1203とMeYではB酸点とは異なると考えられたので,その活性点に関して考察を加えた。