著者
城田 愛
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

本発表では、沖縄戦で被害をうけた故郷へ、飼養・食用の豚や薬、衣類、学用品などを送る資金集めのため、ハワイの沖縄系移民たちによっておこなわれた盆踊り(エイサー)大会や演芸会、そして唄をとりあげる。具体的には、ひとりの沖縄系二世の女性の生活誌・生活史に着目する。そして、ハワイと沖縄を架橋するこの女性の記憶と記録、および唄と踊りの舞台にみる、ハワイ、沖縄、日本、アメリカ(軍)の関係性をよみとくことを目的とする。
著者
石川 真作
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.132, 2009

ドイツは文化的ナショナリズムを統合の基礎とする非移民国として、自他双方から規定されてきたが、1990 年代からの緩やかな変化を経て、2004 年の移民法制定において実質的な移民国宣言をした。本報告では、そのようなドイツの社会空間における移民の位置づけについて検討する。
著者
中村 香子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.31, 2008

本発表では、観光業にたずさわるサンブルの若者の経験を事例として、「観光の文脈」と「本来の文脈」の関係は動的なものであり、特定のモノやコトをめぐって同時に誕生し、相互に対立するかたちで認識されるものであることを指摘する。そして観光と民族文化に関する研究の中心的なテーマである「真正性」や「文化の客体化」に関する議論を再考することを試みる。
著者
大西 秀之
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018-05-22

本報告では、2015年から2017年の過去3年間に実施した標津町管内の7地区に暮らす計60名の地域住民に対する現地での聞き取り調査に基づき、アイヌ文化を巡る多様な認識を明らかにするとともに、そうした多様性が生み出された背景を検討する。このような検討を通して、本報告では、標津町に暮らす地域住民が自他のエスニシティを超え、アイヌ文化を自らが暮らす地の文化資源として共有しうる多文化主義を志向したあり方を模索する。
著者
フィッシュ マイケル
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

This paper will explore the kinds of interventions into the Anthropocene in contemporary Japan that are enabled in the exhibits at the Nifrel aquatic and interactive zoo in Kansai.
著者
宇田川 彩
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本発表は、アルゼンチン・ブエノスアイレスで行った現地調査に基づき、2011年に社交スポーツクラブで開催されたユダヤ・ブックフェアを主要な事例として、アーカイブが創るユダヤ人コミュニティについて論じる。アーカイブする単一の主体が存在せず、ローカルタームとしての「文化」的、「宗教」的なユダヤ性がパラレルに存在していることが、現代的な「コミュニティ」の在り方であることを指摘する。
著者
石川 俊介
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

本発表では、長野県諏訪地域のケーブルテレビ局A社を事例に、ローカルメディアが地元の祭りに「当事者」として深く関わっていることについて論じる。発表者はA社の番組制作課にアルバイトとして関わりながらフィールド調査を行った。その中でA社が氏子である視聴者のニーズに即した番組制作を行っていること、氏子たちもそのサービスを祭りの一部として認識していることが明らかになった。
著者
山本 真鳥
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

サモア社会の伝統的な互酬経済は、海外への移住が広範に生じると共に、その送金がきっかけとなって大きな変容にさらされた。互酬性による儀礼交換の経済はその中で過剰に加熱してきた。その後2000年前後から、政府のイニシアチヴにより生じた、女性の伝統的な仕事の見直しと、儀礼交換縮小および「伝統回帰」の政策介入により、その制度にはさらに大きな変化が生じている。
著者
大石 和世
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.3-3, 2008

朝鮮半島では、10代前半の男女が結婚、または、女児が結婚を前提として夫方の家に入ることがしばしばあった。このことは、旧韓末以降、国家、知識人らが朝鮮半島の住民を啓蒙する際に問題化した。したがって、婚姻に関して法的な規制が行われ、また、複数の新聞・雑誌媒体を通して近代的知識人によって、早婚の弊害についての啓蒙的な宣伝が行われた。さらに、朝鮮の早婚にかかわる調査、研究、小説などが生産された。このように、「早婚」という問題は、法と教育、学術、文学の言説の交差する場であった。
著者
中野 麻衣子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

インドネシアの中では開発の優等生として今日豊かさを享受しているバリ州において、2007年に起こった、人々の知らぬ間に手続き上、外部からの推薦という形で新たなバリ人国家英雄が認定された出来事を取り上げ、その認定取り消し要求に及んだバリ人たちの批判の中から、過去の様々な記憶が喚起され、新たに認定されたその国家英雄を反転像として、国民としてもバリ人としても「真」なる英雄像が立ち上がっていった様相を分析する。
著者
シャクルトン マイケル
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.129-129, 2008

心境は奈良県の笠間(かさま)村の1930年代に生まれた共同体です。最初から、主なメンバーは笠間の家族の者だから、他の共同体('ウgピア`など)の歴史とかなり違います。 長い間、心境が百人以上の障害者(特に「精神遅滞」がある人々)のホームにしてから、かなり有名になりました。この障害者は現在心境の共同体価値観を特に守っている者になりました。この発表は特に a) 七十年間のサーヴァイヴァルのための政略 b)「うち」と「そと」の気持ち c) フィールドワークの驚いたこと、などに関します。
著者
コーカー ケイトリン
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

舞踏は、土方巽を創始者とする日本固有の前衛的なパフォーマンスである。本発表の目的は、土方の弟子であった舞踏家たちがいかに舞踏を伝承するかを明らかにし、身体と言葉の関係を問い直すことである。舞踏は特殊な指導方法を用いる。それは、舞踊の知識を持たない者から踊りを引き出すことと、非現実なイメージをもって身体的状態を変化させることである。
著者
石井 美保
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.147-147, 2008

本分科会では、憑依・夢・癒し・出産・老いを事例として、身体の規範化と偶発性の間を揺らぐ〈身体-自己〉のあり方を多面的に検討する。身体変容の経験を形成する言語行為や、日常と非日常の臨界における間身体的な共同性の生成とその破綻に着眼することを通して、日常的な秩序のコードから外れつつも、他との関係性の中で独自の健全さを模索する〈身体-自己〉の可能性を提示したい。
著者
宮崎 あゆみ
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本発表では、日本の中学校における長期のエスノグラフィを基に、どのように生徒たちが、いわゆる「女性語」「男性語」から乖離した様々なジェンダー一人称を使用し、自らの多様な一人称実践に解釈を加え、非伝統的なジェンダー言語イデオロギーの意味空間を構築していたかについて分析する。言語の解釈に注目することで、ジェンダー言語イデオロギーがどのように複雑化し、シフトしているのかをつぶさに観察することができる。
著者
飯國 有佳子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.128-128, 2010

これまでミャンマー(ビルマ)の精霊信仰における霊媒については、当人のセクシュアリティが守護霊との関係性を決定し、精霊からの招命の証拠として夢に反映されるというフロイト的分析がなされてきた。本発表では精霊からの招命としての夢を、霊媒個人の心理に還元せず社会的な行為として捉えながら、夢が語られる/語られない状況の変化が、精霊信仰という文化的システムにいかなる変容をもたらしているのかを分析する。
著者
亀井 伸孝
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

近年の大学および学生を取り巻く環境の変化を受け、フィールドワーク教育いかに構想していくかについて、実践事例をもとに検討する。愛知県立大学国際関係学科では、2011年から実施しているフィールドワーク・フェスタ「旅の写真展」の実践を通じ、フィールドワークの振興を図っている。フィールドワーク教育においては、学生たちがすでにもっているモノなどに着目し、その潜在能力を引き出して活かすことも重要であろう。
著者
中村 八重
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

自治体や民間団体を主体として朝鮮通信使を見直す事業が振興している。これらは「日韓交流」を掲げる団体と各地の自治体による、地域を越えて記憶を共有しようとする試みとみることができる。本発表は、全国の各地で朝鮮通信使行列の再現が行われるようになった現象をとりあげこうした事業の発展過程で新たに作られていく記憶と忘却されていく記憶について論じる。
著者
山内 健治
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.243-243, 2008

沖縄戦における集団自決壕からの生存者に関する聞き取り内容の社会人類学的分析である。沖縄本島で1945年4月2日に起こった、通称、チビチリガマとよばれる83名の死者をだした避難壕の様子と日本軍・米軍との人間関係の構造を分析し、人類学者としてのその意味を考察する。事例は、チビチリガマからの生還者・ハワイ・オアフ島在住・上原進助氏のライフヒスリーを中心とする。
著者
太田 好信
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.319-319, 2008

本発表は、政治学者と文化人類学者の両者が関心を示してきたテーマとして、先住民運動における政治とアイデンティティとの関係をめぐる議論の整理を目指す。具体的には、グアテマラ共和国の「マヤ民族」というアイデンティティを政治的アイデンティティの一例として再解釈する。最後に、政治的アイデンティティという視点から文化人類学におけるアイデンティティをめぐる一連の議論、文化による政治(運動)の是非などについて再考する。
著者
黄 潔
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

本報告は「憑く」という民俗現象に関する文化人類学的研究である。これまで積蓄してきた、日本民俗学の憑物信仰論や、中国華南少数民族の「蠱毒」に関する文化人類学研究の論点を、西南中国トン族の事例から考察する。調査地の語り及び呪術の実践のなかに表出する、鬼をめぐるトン族のもつ民間宗教や結婚禁忌との関係から、西南中国トン族の憑きもの信仰を論ずる。