著者
萩原 卓也
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.93-93, 2012

本発表は、日本における女子プロレスラー(以下、レスラー)の痛みをめぐる経験をみていくことで、その経験を介して生まれる身体的な共同性を考察する。そこから、身体を介したエンパワーメントの議論や、スポーツにおける痛み研究が捉え損ねている、間身体的なつながりの位相を指摘することを目的とする。そして、その身体的な共同性こそが、レスラーたちを「エンパワー」している根本に存在するものである可能性を考えていきたい。
著者
喜多村 百合
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.114-114, 2012

インドで1993年に導入された地方分権化策により、「静かな革命」とも言うべき変化が村落社会にもたらされつつある。地方議会の33.3%(州によっては50%へ移行)の女性枠を通じ、多くの女性議員が地方行政の意思決定に関わりはじめている。本報告では、分権化先進州とされるケーララ州T県Sパンチャーヤトの女性議員と収入創出プログラム(クトゥンバシュリ)参加女性の実践を考察を通して、ジェンダー規範とジェンダーニーズの狭間で生成する混淆的エイジェンシーを考察する。
著者
海野 るみ
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.197-197, 2009

今回の報告では、まず、映画『ツォツィ』を巡るR指定論争にみる「大人のモラル」間の対峙―配給会社vs映画倫理委員会―並びに同映画の試写会に参加した子どもたちの感想について分析し、三者の映画に対する視点のズレを明らかにする。また、同映画を通して子どもたちが観た、現代の身近な社会の現実=「子どものリアル」について議論する。 こうした議論を踏また上で、「話が通じない」まま展開するように見えるコミュニケーションについて、ズレの所在を質すことを始めとする、「話の通じなさ」を問題にすることに潜在する志向性を明らかにすることで再検討する。
著者
花坂 哲
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.184, 2008

ナイル河東岸に位置するアコリス遺跡では、前1000年紀の居住域・墓域から、短い手足を持った人形(ヒトガタ)の粗製土製品が数多く出土する。それらは例外なく、腹部に「へそ状突起物」を持ち、頭部を欠いた状態で発見される。世界各地の古代社会に見られる「地母神」的な土製品や、日本の縄文時代の「土偶」研究を参考にしながら、宗教・神話体系ができあがっていた当時のエジプト社会における、民間信仰について論じる。
著者
シンジルト シンジルト
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

多民族多宗教が共在する中国西部牧畜地域には多様な屠畜規範があったが、こうした「在来の屠畜規範」を凌ぐものとして、今、動物福祉という思想に基づく「新しい屠畜規範」が導入されている。「新しい屠畜規範」の導入が、「人と動物」及び「人と人」の関係の在り方に何をもたらそうとしているのか。動物福祉という思想が誕生した政治的歴史的な背景、西部牧畜地域のおかれた社会的文化的な状況を射程にいれながら考察したい。
著者
大川 真由子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.11-11, 2011

本発表は、本国の植民地化活動に伴い属領の東アフリカに移住したのち、脱植民地化の過程のなかで本国に帰還した入植型帰還移民、アフリカ系オマーン人にとっての帰還およびその後の実践に着目することで、彼らの歴史認識を明らかにすることを目的としている。東アフリカでのオマーン人の歴史を残す作業のなかで彼らが元移住先をどのように語っているのかをみたうえで、その認識を形成する歴史、社会的諸要因について考察する。
著者
松平 勇二
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

ショナ族は祖霊「ムズィム」(mudzimu)を信仰の対象とする。特に父系クランのムズィムは守護霊としてその子孫を守ると考えられている。ムズィムは憑依を通じて子孫と会話をおこなう。元首長のムズィムは、クランの政治的指導者としても重要な役割を果たしてきた。本発表では、ムズィムの概念を喪明け・相続の儀礼「クロワグワ」(kurova guva)から考察する。この儀礼において死者のムズィムが清められ、家族のもとに守護霊として迎えられる。
著者
池田 光穂
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

この分科会は、発表者の各々が文化人類学、社会人類学、生態人類学、医療人類学、芸術人類学、宗教学等の学徒として、各々のフィールド経験からインスパイアーされた「犬との出会い」を、さまざまな文献を渉猟しつつ、知的に再構成した試論の集成として出発する。本分科会は、従来の「人間と動物」の関係論という研究分野が、もはや「動物一般」として取り扱えない状況に到来しつつあることを、多様な事例を通して指摘する。
著者
川本 直美
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

本発表ではメキシコ西部ミチョアカン州T村にあるカルゴ・システム(自治的、行政的および宗教的な社会組織)が、グローバル化や村内の対立の影響を受けいかに変容しているのかを検討し、現代の文脈で同システムのカルゴを果たすことへの新たな意義及び村内でのカルゴの現在の位置づけを明らかにしたい(ここでいうカルゴとはスペイン語で「(義務的な)仕事」を指す)。
著者
近藤 宏
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.149-149, 2009

現在、各国の先住民は問題を抱えながらも、憲法や法律を通じ権利主体として国家に位置づけられるようになっているが、パナマ共和国では1972年の改正憲法に基づく法律によって、先住民は特別行政区を管理する主体と位置付けられている。さらに80年代以降、数度にわたり「集合的主体」としての先住民の性質を規定する法律が発布されていった。こうした法的な動向とパナマ先住民の先住民の活動について報告する。
著者
パホモフ オレグ
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.109-109, 2009

本発表では3つのエスニック・フェスティバル、ロサンゼルス・コリアン・フェスティバル(アメリカ)、東九条マダン(京都)、ロシア・コリアン・フェスティバル"友好に国境なし"(ロシア)を比較検討する。まずフェスティバルの社会的コンテクストについて言及する。そして同じコミュニティに属する他の言説、主流社会に触れ、"構造的カップリング"が個々の実例でいかに実現されているかを見ていきたい。
著者
小池 郁子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.189-189, 2008

本発表は、西アフリカ・ヨルバの神々であるオリシャを崇拝するアフリカ系アメリカ人の社会宗教運動をとりあげる。本発表の目的は、運動の集団的な拠点であったオヨトゥンジ村が衰退した後に、オリシャ崇拝者が米国の各地に個別に設立したオリシャ崇拝・コミュニティと地域社会との関係について考察することである。米国各地の地域社会はオリシャ崇拝者をいかに受容し、また、受容しなかったのかについて事例をもとに考察する。
著者
柘植 あづみ
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.84-84, 2011

不妊治療や生殖医療研究または再生医療研究には人の卵子の提供(授受)が伴う。卵子提供には、社会経済的格差や身体の危険性、身体の商品化などについての批判がある。にもかかわらず卵子は提供されている。報告者はオーストラリアや韓国、アメリカ、日本での共同調査(主に半構造的なインタビュー調査)の結果から、卵子提供の理由として「金銭授受が伴う場合も伴わない場合にも「卵子提供」を「利他的な行動」として説明する理由を、ジェンダーの視点から分析する。
著者
熊田 陽子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.193-193, 2009

人間は、ある目的を達成するためだけに生きているのではなく、その過程や行為を楽しむ(「遊ぶ」)ものであると考えたホイジンガは、人間を「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」と呼んだ。様々な性行為も、生殖という目的だけで行われるわけではなく、それ自体の面白さを楽しむ「遊び」である。本発表では、あるSMクラブを事例に、そこで働く女性たちがSMプレイをどのように認識しているのかついて、「遊び」を手がかりに検討する。
著者
福井 栄二郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.310-310, 2008

本発表は、看護学生が医療人類学を学ぶ意味を考察する。彼女たちは必ずしも文化人類学的な思考に同調せず、進化主義的な考えを持っていることも多い。では、近代医療の実務者としてトレーニングを積む彼女たちに、文化相対主義を基本姿勢とする医療人類学を教える意味はどこにあるのだろうか。こうした問題をアンケート調査から考察し、文化相対主義と進化主義を架橋するような実践を探ってみたい。
著者
福井 栄二郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.301-301, 2008

本発表では、老年人類学の新たな可能性を提示するが、その足がかりとして、社会構築主義―つまり「老人」というカテゴリーやそこに付随する社会的な規範は社会的、言説的、歴史的に構築されているという考え方―の再考を行いたい。発表者が調査を行なってきたヴァヌアツ・アネイチュム島の「伝統を知らない」とされる老人の事例をもとに、「老人」を構築する行為とは、一体何なのかを探求する。
著者
深海 菊絵
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.134-134, 2010

「ポリアモリー(polyamory)」とは、複数の者を同時に「誠実」に愛する恋愛実践、とその実践者たちを指す。本発表の目的は、ポリアモリー実践者たちの葛藤の語りに注目し、偶発的で予測不可能な日常の中で、彼/彼女たちがいかに他者との関係を築いているのか、という問いを探究することである。具体的には、(1)ポリアモリー理念を共有する仲間たちの関係性、(2)ポリアモリー関係にある者同士の関係性、の二方向から検討を試みる。
著者
三瀬 利之
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.6-6, 2009

現代人類学史では、マリノフスキイによって確立されたフィールドワークの先駆的な形態は、1900年前後のケンブリッジ大学系の一連の探検調査にあるとされてきた。しかし本発表では、「パンジャーブ学派」と形容される植民地インドのスーパーエリート官僚に注目し、彼らの「科学的行政」の一環として行われた1870年代の社会調査にこそ、近代的なフィールドワークの最初の実験的な試みがあったという可能性を検証する。
著者
近藤 祉秋
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本発表は、隠岐島の「水木しげるロード延長プロジェクト実行委員会」による、妖怪を主題とした観光開発を事例として、妖怪研究者のキュレートリアルな〈まなざし〉が偶発的な遭遇のなかで有形の観光資源をうみだす過程を扱う。本発表においては、有形と無形のはざまをたゆたう中で、偶発的な動きをする人間と非人間のネットワークのなかにときおり結ばれる結節点として、「妖怪」を捉えることを提案したい。
著者
深川 宏樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.92-92, 2011

本発表では、ニューギニア高地エンガ州における呪いの事例から、軋轢の解消と身体の社会的構築の関係について論じる。エンガ州では、ある人が軋轢を理由に他人に悪意を抱いて死ぬと、それが呪いとなって相手を重病におとしいれる。人は重い病にかかると、故人との軋轢を想起し、故人の息子との仲裁で軋轢の解消を試みる。この事例から本発表では、個人の身体の変調や死が、軋轢の解消を導く社会的過程の要となっていることを論じる。