著者
中屋敷 千尋
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

民主主義的政治制度が成功しているといわれるインドであるが、対象地の北インド・チベット系社会スピティ渓谷では、階層の下位に位置づけられる人々の政治的地位が向上する一方、儀式や祭礼の場面では中間層から下層の人々への差別的発言や暴力的行為が顕著になっている。本発表ではこの両義性の現状と背景を把握した上で、インドの政治体制と土着の階層制度がどのような関係にあるのかを明らかにすることが目的である。
著者
村橋 勲
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本発表の目的は、ウガンダのキリヤドンゴ難民居住地を事例とし、南スーダン難民の生計における難民の「自立」と依存を考察することである。ウガンダは、1955年から現在に至るまで、多くの(南)スーダン難民を受け入れてきた。発表では、ウガンダの難民政策の下での難民の生計活動とホスト社会の形成に注目し、生計における難民の「自立」が、個々の生計活動だけでなく、ホスト社会との社会経済関係に依存していることを示す。
著者
大戸 朋子 伊藤 泰信
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.91-91, 2012

本発表は、(1) 同人誌作家の活動、作品の発表過程についての微視的な記述を提示しつつ、(2)腐女子コミュニティを、内部の様々な軋轢の存在や、評価軸が外部の様々な要因によって変化する流動的なものとして捉え、さらに(3)二次創作作品がどのようなプロセスの中で評価され、コミュニティに受け入れられていくのかについて明確化するために、事象を科学社会学(科学者コミュニティ)の議論に重ねることを試みる。
著者
佐々木 剛二
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.148-148, 2010

本発表では、ブラジルの人類学者エドゥアルド・ヴィヴェイロス=デ=カストロの略歴、及びその仕事の概要を紹介した後、彼の理論の核心となっている「ペルスペクティヴィズモ(perspectivismo)」の考え方について詳しく論じることによって、その思想的背景や理論的射程に言及し、関心を持つ日本語話者の研究者たちの議論の発展に資することを目指す。
著者
中田 梓音
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.66, 2012

本発表では、京都のスナックでの記録した会話の分析をもとに、ママと客との間に見られるやりとりを考察する。とくに怒りやそれに類似する感情や「叱りつける」という行為を扱う。スナックは、ママが主に男性客に飲食物を提供する場所である。こうした場所で客を叱りつけて、その面子をつぶすということは通常考えられない。あってもきわめて計算されている。そこにはまた性的関係を回避する「脱性化」の機能も認められる。
著者
佐藤 知久
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.16, 2008

本発表は、ドラァグ・クイーンという現象についてアメリカ合衆国と日本での状況を比較検討しつつ論じるものである。特に本発表では1990年代初頭の合衆国から日本へのドラァグ・クイーン文化導入の経緯とその後の展開について考察し、日本ではドラァグの「転覆」「脱臼」的な効果がゲイ男性による批判的実践のみならず、ヘテロセクシュアル女性による美や女性身体をめぐる規範の批判としても用いられていることを指摘する。
著者
米田 信子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.255, 2008

ナミビアはアフリカ諸語による母語教育を推進しているが,アフリカ諸語の話者たちは英語による教育を望んでいる。英語なくしては現金収入も十分な情報も得ることができない現実の中での選択である。「母語で教育を受ける権利」だけではなく「自分の言語に誇りを持つ権利」が見直される必要があると思われる。本発表ではアフリカ諸語推進の可能性とそこにフィールドワーカーがどのように関わることができるのかについて検討する。
著者
深田 淳太郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.98, 2012

パプアニューギニア、ラバウルで用いられている貝貨の原料となる貝殻は、現在国境を越えてソロモン諸島西部地域から輸入されてきている。本発表では、この貝殻の輸出入のプロセスを辿り、そのネットワークがどのような歴史的な出来事と道具立て、そしてその状況に置かれた人々の実践の偶発的な巡り合わせとして出来上がっているのかを明らかにする。
著者
奥野 克巳
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.53-53, 2010

マレーシア・サラワク州(ボルネオ島)ブラガ川沿いの、人口約500人の狩猟民プナンは、動物と人間の近接の禁止と魂の連続性をつうじて、動物に対する生殺与奪をいわば反省なしに行う西洋とも、動物を殺生する宿命を認めながらも、動物の魂に感謝する日本とも異なる動物との関わり方を発達させてきた。本発表では、プナン社会における動物と人間の関係を民族誌的に記述した上で、自然と社会の二元論について再検討する。
著者
松田 有紀子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.143-143, 2012

本発表では、京都市内の5つの花街(祇園甲部・祇園東・上七軒・先斗町・宮川町)に共通する、お茶屋の商業上の慣習に注目することで、「女の街」の現在を生きぬくための技法を考察することを目的とする。 慣習がお茶屋の商売感覚に由来することを明らかにした上で、これを「安全な商売」を実現するために客との長期的で親密な関係に依拠して商売を営む感覚と定義し、その意義と現状における変容を指摘したい。
著者
西村 大志
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.17-17, 2008

人体模倣の多様な現場(具体的にはダッチワイフ、ドール、人体模型、ヒューマノイド型ロボットなど)では、どこまでも人間そっくりをめざす技術と、そこから独自の距離をおく手法が開発されてきた。また、人体模倣が精緻をきわめるなかで、「性」の問題が浮上してきた。これを、具体的に考察することで、人工身体における「性」の利用と隠蔽の問題を明らかにする。
著者
謝 黎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.125-125, 2009

本発表は、多民族国家中国の博物館で展示されている民族衣装を取り上げ、「民族識別」と博物館とのかかわりや、「民族」に対する博物館の基本姿勢、また展示物としての衣装の意義や博物館の展示基準などについて考察するものである。
著者
梶丸 岳
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

従来民俗学の流れに属する民謡研究は伝統的な場で歌われるうたのみを「民謡」と捉えてきたため、現在「民謡」として実践されている芸能の研究はほとんど進んでいない。そこで本発表では現在の「民謡」が実践される社会を捉える試みの一環として、秋田県における一曲民謡大会の運営と大会参加者に焦点を当て、大会が地域経済や民謡の規範化と民謡人の組織化、民謡の場の変遷といった要因が絡み合いつつ成立していることを示す。
著者
岡田 紅理子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

本発表は、台湾で「原住民族」と自称・公称されるオーストロネシア語族系先住民族のキリスト教への改宗要因を、「アミ」とカトリック教会を事例として検討するものである。多神的コスモロジーを有していたアミがキリスト教という一神崇拝へと移行し得た過程と、カトリック信仰が選択された要因とを彼らの日本植民地経験から分析し、「国家神道」を教化システムとしても作用する「宗教」として捉えることが可能であるのかを検討する。
著者
田川 夢乃
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

本発表の目的は、フィリピン、マニラ首都圏の日系カラオケパブX店でのフィールド・データをもとに、セックスワークの現場における金銭を介した交換と親密な関係について検討することである。ここでは特に、サービス提供者たちが「ボーイフレンド」や「ジョワ(jowa)」と呼ぶ顧客との関係性に焦点を当て、それぞれの関係には利害関係と恋愛関係の二分法では説明できない親密な関係性の広がりがあることを明らかにする。
著者
荒川 裕紀
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

兵庫県西宮市の西宮神社で毎年1月10日に行われる十日戎開門神事福男選びに関する歴史的変遷と現在の課題について提示する。特に高度経済成長から現在にかけてどのような変容が祭事や社会に変容があったのかについて、昭和から平成の過渡期に関しては主催者の神社側から「福男選び」の語が付与されたが、現在に至る過程でどのように受け入れられていったのか。参加者の語りと各種資料、アンケートから明らかにする。
著者
中村 昇平
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

本発表は、武術実践を通して醸成される集落の帰属意識が、同時に民族意識に現実味を与える実態を説明する。発祥地が明確に把握されたまま各地に伝播した武術流派がいかにして「集落独自の伝統実践」として実感され、それがいかにして民族意識とつながるのかを、技の「理解」と「改変」への態度から説明する。からだの感覚に染みつくような種類の技法の教授・学習の実践を通して帰属意識が実感され、強化される過程を明らかにする。
著者
松本 尚之
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

本発表では 、在日アフリカ人の間で2000年を前後して隆盛を極めた服飾ビジネスについて、特にナイジェリア出身者の事例を通して報告する。対象とするビジネスは、アメリカのポピュラー文化(ヒップホップ)の流行を背景として生まれたもので、彼らが携わるエスニック・ビジネスのなかでも日本人を対象とした点に特徴がある。服飾ビジネスの概要と変遷を論じ、ポピュラー文化のグローカル化と移民の関係について考察を行いたい。
著者
川口 幸大
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

本発表では、日本の内なるエスニシティへの他者化、および、それを内面化した自己他者化のプロセスに作用する文化認識と実態の所在について、「東北地方で暮らす関西人」である発表者のオートエスノグラフィーをもとに考察する。それをもとに、文化人類学における文化の捉え方を今ひとたび考え直してみたい。
著者
ウッド ドナルド
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

本発表では、1930年代に農民でありながら人類学的に生きた吉田三郎と、1990年代半ばから今日までの人類学者である私自身の生活と著作の関係を読み解くことで、東京に代表される「都会」に対し、「田舎」と呼ばれる地域で暮らし働く研究者のアイデンティティーと多義性について探る。学問の世界の片隅に位置する吉田と私が、自身の不確定な状況(リミナリティー)と和解しようとする試みは、方法こそ違え妙に似ている。