著者
田中 雅一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.63, 2012

本分科会の目的は、女性による接客が主たる職場で、男性客を叱りつけるという行為について考察することである。これによって、働く女性のエイジェンシーや、仕事とジェンダーならびにセクシュアリティとの関係についての理解を深め、感情労働研究に貢献したい。具体的に取り上げるのは、銀座のクラブホステス、京都のスナックのママ、関東の芸者、日本人セックスワーカー、在韓米兵相手のフィリピン人セックスワーカーである。
著者
西川 麦子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

多文化社会における文化人類学のフィールドワークと社会的実践を、大学教育にどのように取り入れ、表現・協働・発信力を培うアクティブ・ラーニングを展開できるのか。アメリカのコミュニティラジオ局と連携し、日本の大学の教室から番組を制作・発信するメディア実践の授業を紹介する。学外の組織、関係者、大学の教職員、学生が協働し、教室と海外メディアをつなぎ、「他者に伝える」営みのなかで、身近な暮らしを見つめ直す。
著者
川口 幸大
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.12, 2010

この分科会では、共産党による統治のもと60年を経た今日の中国社会において宗教がいかなる諸相にあるのかを、キリスト教、イスラーム教、チベット仏教、民間信仰についての共産党の政策と、人々の具体的ないとなみに着目しつつ議論する。
著者
近藤 有希子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

1990年代前半に大規模な紛争と虐殺を経験したルワンダ共和国において、国民の安全と治安は重大な関心事項である。これまでルワンダの国家は、開発における「優等生」と称賛されるとともに、その統治が「強権的」だとして非難されてきた。本発表では、そのようなルワンダの政治体制が、統治者の意志と実践だけによるものではなく、地域の人びとの安全を希求する想像力や実践とが交差するなかで、構築し維持されてきたことを描き出す。
著者
劉 振業
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

本発表では、中国における麻雀の役割を考察する。具体的には調査地である中国広州市のX社区の星光老年の家での麻雀を詳細に描写することによって、賭博や互酬性による新たな社交の可能性を提示したいと考える。麻雀は遊びの一種として、中国においてはさまざまな場面で目にする。しかし、麻雀は常に賭博をはじめ、その中毒性による家族関係の悪化や社会生活の撹乱など、多様な負のイメージが認められる。発表者は、星光老年の家にて調査を続けてきたが、その中で観察される麻雀が、異なる形でプレイされていたのである。星光老年の家とは、中国民政部が2001年に高齢化の加速のために実施した星光計画によって、老人のためにサービスを提供する場として建てられたものである。元々実力と偶然を両方が勝利に必要な麻雀というゲームを、運という偶然の部分を強化して不確実性を好む傾向を強調する一方、ゲーム後に認められる不完全な互酬性によって不確実性がもたらす勝敗の不平等的な関係を短期間で修正し、調和関係に向かわせるという複雑な仕組みが、本発表の事例には見いだせる。
著者
浅井 優一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.95, 2012

本発表は、フィジーのタイレヴ地方ダワサム地域において、2010年に開催された首長(ラトゥ; Ratu)の即位儀礼が実行されるまでの過程で為された議論に焦点を当て、儀礼開催を望む長老・氏族が、土地の「あるべき過去の姿」/神話を再解釈し、それを再現する首長の即位儀礼を決行することによって、儀礼開催反対派を排除し、氏族間の権力関係を再編成したこと、一種のクーデターを成功させた過程を明らかにする。
著者
楊 小平
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

本発表は、広島市における原爆遺構の観光化を検討することで、戦争の記憶の表象と越境の関連性を考察することを目的としている。
著者
秦 玲子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

本発表は、ニュージーランド・マオリ(以下、マオリ)の伝統的タトゥーであるモコ復興の過程について、モコを刻む彫師、そしてモコをまとう人々、個々人の経験に注目して報告するものである。個々人の経験に注目することで、マオリ文化復興への理解を深めると共に、各地の文化復興運動をめぐる議論に貢献したい。
著者
岩間 春芽
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

本研究の問いはネパールの北西部を援助を行いに訪れた人達がどのようにしてネパール北西部の情報を得て、どのような想像をしているのか、また想像の共有によりどのような現象が生じているのかである。4つの事例から「貧しいネパール北西部」を想像するメディアスケープが存在しており、世界の様々な地域の人たちが同じような想像を共有しており、想像した人達が更に援助を広めるという現象を引き越しているということが言える。
著者
二宮 健一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

1906年に米国で生じたペンテコスタリズムは、その後グローバルに拡散し、多様なローカル化の様相を見せている。ジャマイカの場合、ペンテコスタリズムは、アフリカ的信仰形態とキリスト教が習合した「リバイバリズム」の信者を吸収して成長した。本発表では、ジャマイカのペンテコステ派教会はリバイバリズムを蔑視、批判する一方、その音楽活動はリバイバリズムの影響を残し、一部で両者の交流も創出していることを示す。またこの考察を通して、ペンテコスタリズムと在来宗教の関係を音楽的側面から分析するアプローチの可能性を検討する。
著者
沼崎 一郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

本発表の目的は、幼少時の交叉文化体験、青年期の留学体験、帰国後の教員体験を「ものがたる」ことを通して、生活と人類学の間で発表者のアイデンティティとポジショナリティが如何に揺れ動いてきたか、そしてその揺らぎは報告者の生活と人類学的態度とに如何なる影響を与えてきたかを考察することである。特に、人類学と日本研究に対する発表者の態度の揺らぎについて、反省的に検討を加えてみたい。
著者
深田 淳太郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.119, 2008

パプアニューギニアのトーライ族の人々は税金や授業料の支払に貝貨を使用する。貝貨と法貨の間には交換レートが存在し、日常的に様々な商品がこのレートで売買されている。しかし葬式の際に盛んになされる商品の売買ではこのレートは完全に無視される。このようなケースで通常注目されるのは葬式という場の特殊性だろう。が、本発表では逆にその葬式(=図)を「特殊」に見せる「通常の交換レート」(=地)の「秘密」に迫りたい。
著者
深山 直子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.138, 2008

ニュージーランドでは、近年の「文化ルネッサンス」と「再部族化」の動向のなかで、「伝統」的マオリ・アイデンティティがますます強化される傾向にある。しかし最大都市オークランドに生きるティーンエイジャーを対象とした調査分析からは、重層的で、時にヨーロッパ系住民社会及び「伝統」的マオリ社会に対抗するようなオルタナティヴなマオリ・アイデンティティが、形成・維持されていることが明らかとなった。
著者
コーカー ケイトリン
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

本発表の目的は、ポール・ダンスの実践に焦点を当てて、エンスキルメントの中でフィーリングと想像力がいかに働くのかを明らかにすることにある。とくに、ポール・ダンスの危険性に着目して論を進める。そこで、運動に関わるフィーリングは自己受容性感覚(プロプリオセプション)だけではなく重力や抵抗の原理、遠心力などと共に、三次元的に動くための方向付けおよびエフォートとなり、想像力は繰り返される動きがスキルに変容する鍵となると論じる。
著者
竹川 大介
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

フィールドワークの社会実践の現場として、北九州市内の生鮮市場である旦過市場における8年間の店舗「大學堂」の運営をおこなってきた。ここで最近になって市場再整備という大きな社会的葛藤が浮上し、一店主としての当事者性と大学に籍を置く者としての関わり方が問われることとなった。人類学とフィールドとの関わりについて考えるために、市場と大学のマリアージュが生みだそうとしている、答えとゴールのない模索を紹介する
著者
中村 八重
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

本発表は韓国のレトロブームのなかで植民地遺産としての建築物がどのように位置づけられているのかを、建築物の観光化をめぐる現象の分析を通じて明らかにしようとするものである。植民地時代の衣装を新しいものとして消費することが若い世代で流行している。こうしたブームが、従来「生きた歴史教育の場」という役割が課せられていた植民地遺産をめぐる言説や現象に与える影響を検討する。
著者
織田 竜也
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

ヴァーチャリティがリアリティを獲得する現場を「2.5次元」と概念化し、そこでの諸現象、とりわけ「ゲーム」「コスプレ」「聖地巡礼」に焦点を当てて考察する。事例としては『Street Fighter Ⅱ』や『戦国BASARA』を取り上げる。
著者
宮平 盛晃
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

台東県パイワン族の2村落を対象に、動物を要する村落レベルの儀礼や、狩猟といった動物との関わり方の実態に焦点を当てた分析から、それら動物の可変性と不変性の原理を考察した。分析の結果、両村落とも儀礼に要されていた野生動物の猪は市販の豚へと変化し、本来なら、猪を使いたいという意識が存在するものの、法律的な問題、狩猟を行える若者の不在、豚肉を安くて容易に入手できるという経済的かつ合理的な理由から、その実現は非常に困難であるという現状が明らかになった。
著者
小川 さやか
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

本発表では、香港・中国広州市在住のアフリカ系居住者たちが、出身国や言語、宗教(宗派)および「アフリカ(性)」を基盤に重層的にアジア諸国とアフリカ諸国をつなぐ組合を結成していることを明らかにし、彼らの組合運営の論理と実践を市民社会論と認知資本主義をめぐる議論の接点から探る。それを通じて「信頼」や「互酬性」に対する期待を伴わない市民社会組織活動のあり方を提示する。
著者
松川 恭子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.108, 2011

世界におけるメディア技術の拡大は均質ではない。儀礼・演劇など旧来メディアとマスメディアの連続性及び利用の現状を微細にみることで、グローバリゼーション下の共同体意識・実践の現代的あり方について明らかにすることが可能だ。本発表では、インド西部ゴア州で主に上演されている演劇ティアトルを取り上げる。CD、VCD、DVD、インターネットによるティアトルの展開とゴアとゴア外に居住する人々のネットワークについて考察する。