著者
木村 忠正
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.76-76, 2009

本報告では、まず、地域SNSをコミュニティネットワークの文脈に定位し、社会関係資本と情報ネットワークとの関係という観点から分析を行う。さらに、今後の研究発展に向け、数理社会学的社会的ネットワーク分析(SNA:social network analysis)ではなく、John Barnes、Clyde Mitchellら、文化的意味、質的分析を含みこんだマンチェスター派の研究を改めて検討する。
著者
うりやんはい なちんしょんほる 額爾 徳尼 るぶさんどるじ じゃるがるさいはん 藤田 昇 山村 則男 小長谷 有紀 吉川 賢
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

本研究は,モンゴル国の草原にて,遊牧民に携帯させたGPSで季節移動,群れの中で放牧されているヒツジに設置したGPSロガーで日帰り放牧の経路を記録した.また、植生調査と遊牧民対象に聞き取り調査を実施した.その結果,季節移動の回数と距離が気候条件によって異なり,日帰り放牧が暖季に水と草原の生産力,寒季に気温に影響されていた.変動する環境条件に対する遊牧の適応が、草原生態系の持続性に寄与していると示唆された。
著者
友松 夕香
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

本研究では、ガーナ北部の西ダゴンバ地域を事例に、物理的空間としての一つの「家」に住まう、夫婦をはじめとした様々な関係にある人々が、労働や財のプーリングを通じ、どのように経済的共同性を生みだし、「家族」を可視化させているのかをみていく。これを通じて、家族を一つの経済単位として仮定してきた1970年代までの構造人類学と、それ以降の家族の間の競合関係を強調してきたフェミニスト人類学における家計論を再考する。
著者
朝水 宗彦
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

本発表は、観光を用いた地域おこしとして、地方におけるMICEの定着化について、ソフト面から検討する。対象である山口市は、「E」部門では2015年に世界スカウトジャンボリーが開催されるまで、何度かプレイベントを実施し、徐々にボランティアを含んだスタッフの育成に努めてきた。ただし、「C」部門の国際会議は継続性が不十分で、記念行事的な開催が続いているため、国内外の諸事例を経験的に学んでいくことが重要である。
著者
高倉 浩樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

2011年3月に発生した東日本大震災は、地震・津波・原発爆発による放射能被害の三つの被害をもたらした。本分科会は、このうち放射能被害に関わる人類学的取り組みについて現状報告を行い、知見を共有するとともに、このテーマでの研究の発展と方向性について、参加者とともに検討することを目的とする。3.11 Tohoku Earthquake ended in three disastrous impacts of earthquake, tsunami, and radioactive pollution from the explosion of Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. This panel is to focus on the radiation disaster and societies. The purpose is to exchange the knowledge on the disaster case studies and to argue the way of development as an anthropological discipline with the participants.
著者
平野(野元) 美佐
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021

沖縄・宮古島では、子供の人生儀礼として、小学校入学祝い、高校合格祝い、成人祝いが盛大に祝われる。100人以上の客を迎えることも珍しくない各家庭の玄関先では、祝儀としての貨幣と返礼品としての金券が交換される。没個性的で交換価値が明確な貨幣と金券が、それぞれどのように使用されているのかに注目し、その交換が経済的余裕のないなかでも大規模な祝儀を持続可能にしていることを論じる。
著者
劉 振業
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021

本発表では、中国マカオ社会におけるディーラーの事例から、マカオ社会の「ディーラー時代」が抱える問題点について考察する。「ディーラー時代」とは、マカオ社会に最も重要な影響をもたらすのはディーラーであり、就職選択肢の少ないマカオ社会の中でディーラーを勤めて無為に過ごすディーラーたちの退廃感を指す。「低学歴高収入」のディーラーに対してマカオ政府は保護策を施しており、マカオ人しか勤めることができないと決めている。先行研究は主に若者ディーラーを対象としたアンケート調査であり、「ディーラー時代」におけるマカオのディーラーの退廃感の実態をよりよく理解するためには、年長者ディーラーの過去についての語りや、若者ディーラーの生へのアプローチが必要であると思われる。本発表は、「仕事」を超え、マカオ社会の安定性を保つために階層の流動性の低下を招いた必要性のある不必要な仕事であるディーラーの生き方について述べる。
著者
松永 康佑
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021

樺太アイヌ古式舞踊の記録・継承を目的として、樺太アイヌ協会員の方々の舞踊の収録・モーションキャプチャ計測・撮影を行い、顔、衣装を含めた再現CG映像の制作を行った。過去に携わった伝統舞踊CG映像の経験をふまえつつ、AIベースの顔作成手法を取り入れた本制作のワークフローについて説明する。
著者
宮崎 あゆみ 野澤 俊介 フルカワ ギャビン
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

In this paper, we explore the discourse and performance of <i>josou</i>, 'men dressing as women,' based on our ongoing qualitative research on participants in university <i>josou</i> contests. We argue that these participants turn <i>josou</i> into diverse technologies of the self (Foucault 1988) through refashioning their own language and body and mobilizing a network of expertise and social relations for their labor of transformation.
著者
友松 夕香
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.78, 2010

地域社会で重要な樹木資源には、所有や分配のあり方を規定する制度が存在する場合がある。本報告では、ガーナ北部ダゴンバ人集落の女性の間でみられるシアナッツの収穫権を再分配する慣行に着目する。収穫権利が再分配される背景や条件を、資源量、控除性、分配規範、投下労働の原則、土着樹木への文化的信仰、排除性、シアナッツおよび収穫の生態的特性から考察する。
著者
松岡 秀明
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.27-27, 2009

ブラジルで布教している日本の新宗教である世界救世教の非日系信者が、自らが信じる宗教をブラジルの諸宗教のなかでどのように位置づけているかを検討する。
著者
脇田 道子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.50, 2011

インド北東部の中国、ブータンとの国境地帯に住むモンパとよばれる人びとの主として女性の民族衣装に焦点をあて、その変化が意味する「指定トライブ」としてのモンパ内部のエスニシティの生成と周辺のさまざまな民族集団とのローカルポリティクスについて考察する。同じ州の離れた地域に住むメンバや東ブータンの山岳地帯の牧畜民ブロクパとの関係についても、民族衣装を手掛かりとして考察を試みる。
著者
佐島 隆
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

イスラーム文化が卓越していると考えられるトルコのクルバン(犠牲)について、ハジュベクタシ町を中心にしてその多様な意味を明らかにしてみたい。クルバン(犠牲)についてはイスラームの文脈で説明されることが多いが、当該地域で観察すると、それ以外の方が多いことが、統計資料からも明らかになった。そこで個人や家族による願かけやアレヴィー・ベクタシの文脈行われるクルバンを中心にして報告する。
著者
近藤 祉秋
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

近年、日本の各地でニホンジカ(<i>Cervus nippon</i>)による獣害が問題とされるようになってきたことを受けて、国や地方自治体はシカ個体数の調整を喫緊の課題と見なすようになってきた。その動きを受けて、シカ肉の商品化が各地で試みられている。本発表では、九州山地のある「ジビエ」事業を事例として、ヘザー・パクソンが提唱したmicrobiopolitics概念をたよりとして、マルチスピーシーズ民族誌の観点から分析する。
著者
竹村 和朗
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本発表は、個人の語りを書くことについて考察する。録音された対話をそのままテクストにしたドゥワイヤーの実験的民族誌の手法と異なり、発表者は、Gの語りを録音せず、わずかなメモと記憶にもとづき会話の後に記したフィールドノートを材料とする。この違いにもとづき、個人の語りを書く人類学者の役割は、「立ち聞きする者」でも「対話者」でもなく、聞いた話を自ら解釈し再構成する「ノンフィクション作家」であると論じる。
著者
石森 大知
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.89, 2009

近年のメラネシアで顕在化したエスニック紛争や政治的不安定な状況下、公共宗教の観点から、キリスト教の教会が果たす役割に注目が集まっている。ソロモン諸島ニュージョージア島にクリスチャン・フェローシップ教会の教会ネットワークとは、聖霊憑依の経験を契機として親密圏が転化する形で創造された社会空間であり、そこに連帯意識や公権力への抵抗などの要素が潜在する。
著者
石森 大知
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.171, 2008

マナをめぐる議論は、19世紀末のコドリントンによる報告以来、大変な蓄積がある。しかし、太平洋の人々がキリスト教徒となった現在でも、マナは伝統的信仰の象徴として扱われる一方、同概念とキリスト教的価値観との関連性は不問にされてきた。そこで本発表では、ソロモン諸島の事例に依拠し、マナは、聖霊とも結びつき、名詞的または実体的な「超自然的力」と認識されていることを明らかにするとともに、その社会・歴史的背景について考察をおこなう。
著者
野澤 俊介
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

マリノフスキーが発案した「交感」概念を言語人類学、とりわけ記号論的視点から再考し、交感性に分析の眼差しを向けることが「やりとりの人類学」における方法論的、理論的枠組みへどのように寄与するのかを考察する。ヤコブソンのコミュニケーション「機能」論による記号論的整理を背景に、近年取りざたされつつある交感性に関する議論を鑑みながら、交感性に重点を置く言語観の実例としてアメリカと日本からのケースを紹介する。
著者
早川 真悠
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.140, 2009

超インフレーション下のジンバブエにおいて、通貨「ジンバブエドル(以下、 ZWD)」は、日々その価値を失う、銀行から現金をおろせない、お釣りがない、「使い物にならない、役に立たないカネ」である。ZWDをめぐる交換方法や扱われ方は、通常考えられる近代貨幣交換や扱いとは異なった様相を呈する。 使い物にならないはずの貨幣の使われ方について、事例をもとにジンバブエにおける特殊な通貨のあり方について考察する。
著者
田中 雅一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

本発表では、日本人の女性セックスワーカーへのインタビュー・データをもとに、客と恋人の区別に注目することで、セックスワークという仕事の性格について考察する。2012年11月までに行ったセックスワーカー11人へのインタビューをもとに、セックスワーカーの恋人観、恋人と客とを区別するような行為や言説、客が恋人になる過程や葛藤を明らかにする。これによってこれまでのセックスワーク論批判を吟味する。