著者
岡田 浩樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.19, 2008

1990年代後半より、韓国仏教において「増殖するブッダ」とも言える興味深い現象が見いだせるようになった。韓国仏教における中心的な礼拝対象である聖なる仏陀(プッチョニム)が、カリカチュライズされ、様々なキャラクターグッズとして複製化される。本発表ではこの現象を「増殖するブッダ」としてとらえ、今日の複製化時代における<わたし(信者)>と<イコン(外部)>の関係性を検討する。
著者
田村 和彦
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本発表は、漢族社会の親族研究の蓄積にたち、東南アジアの宗教・社会組織に関する議論において洗練された「親密性」と「公共性」(黄・日下:2014)を補助線として、「広場舞」と呼ばれる、近年の中国において急速に普及した集団ダンスという、従来、人類学的研究がほぼなされてこなかった、流動的で非組織的な対象について、その中核的な人物を中心とする関係性構築のあり方について考察を試みるものである。
著者
櫻田 涼子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.163, 2011

本発表は、漢民族社会において婚姻儀礼の実施に先立ち準備される「婚房(hunfang)」を介して女性は娘から嫁という新しい属性を獲得するという点に着目し、婚姻儀礼とは、住宅という空間をめぐり女性の身体が生家から切り離され、そして新しい空間へと接合されることにより新しい社会関係が創出される出来事であることを示し、空間と身体の関係性について考察することを目的とする。
著者
山崎 幸治
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.20, 2012

本発表では、アイヌ文化に関する二つの展示実践を事例として、アイヌ研究にとどまらない文化人類学研究へのフィードバックが見込まれるトピックについて検討を加える。とりあげるトッピックは、【物質文化資料と情報】、【語りの「調整」】、【現代の展示】、【ノイズとしての「展示する側」】である。そこでは海外をフィールドとする文化人類学研究では見えにくい問題や、研究者に求められている「実践」についても論じる。
著者
近藤 祉秋
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.69, 2010

現在、文化人類学と関係領域に属する一部の研究者の間で、自然と社会という二元論が批判され始めるようになって久しい。しかし、動物と人間の関係を考える際に、このような二元論に基づかない研究をいかに進めるかについては、コンセンサスがとれていないのが現状である。本発表では、「存在論」概念を利用した先行研究をもとに、いかにして自然と社会の二元論に基づかないような動物-人間関係の研究が可能であるか、検討したい。
著者
師田 史子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

本発表は、フィリピン・ミンダナオ島の賭博者による賭けの予想行為と、結果の受容の実践を通じて、賭けに勝つために「当てにできる」信念が生成され強化される過程を考察する。違法数字宝くじや闘鶏などに興じる賭博者が信じているジンクスや知識、賭けの技法は、「参照・解釈・共有」という契機からなる弁証法的な循環プロセスを経て強化し、真理化されてゆくとともに、同じ結果の反復を契機として新しい信念として確立してゆく。
著者
内山田 康
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.38, 2009

意識が無意識や狂気をコントロールできないのと同じように、ダルマ(法)がコントロールできない部分が思いがけない飛躍を起こすのではないか。これを起こしている主体は何か?それはどのような性格のものなのか?非倫理的な生命力は、人びとが思い描くのとは質的に異なるアッサンブラージュを作っているのではないか?予測不可能で脱人間中心主義的な生成の性格を民族誌的に記述することを試みる。
著者
内山田 康
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.37, 2009

「もの、動き、アッサンブラージュ」というテーマの中心に、動きがあり、その前にはものが、その後にはアッサンブラージュが配置されている。ひとは、ものの中に、動きの中に、アッサンブラージュの中に分配されている。計画や意図ではなく、動き、スピード、強度、無意識が、感覚が重要な仕事をするだろう。民族誌的なケースを通して、人間中心主義的な接近方法では捉えきれない存在の生命的な過程を記述する人類学を試みる。
著者
吉田 佳世
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

本発表は、沖縄本島北部X区の年忌行事(スーコー)を事例として、とくに姉妹(ウナイ)と嫁(ユミ)という二つ社会的役割の関係に着目しながら、祖先祭祀における女性の地位と役割を考察しようとするものである。その上で、これまで学問分野によって見解が分かれてきた民俗宗教領域における沖縄女性の地位が、祭祀に参与する女性の社会的役割によっても異なることを明らかにしていきたい。
著者
百瀬 響
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

北海道教育大学では北海道出身者が多数を占め、学生は学校教育において副読本等からアイヌ文化・歴史を既習している。学生のアイヌイメージは、自然共生型の太古の文化、近世・近代における日本人による差別等に大分されるが、近年では縄文文化に比定される「孤立文化」「日本人による虐殺」が増加傾向にある。本発表ではこれらのイメージ形成の要因を分析し、アイヌ文化・歴史理解に必須と考えられる学習項目等について論じる。
著者
陳 珏勲
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.22-22, 2009

日本の都市祭礼には、様々な儀式、風流、見物を伴った「見せる/見られる」という特徴がある。「近世以前からの日本の伝統」を守りつづけていると言われる浅草の三社祭はその代表である。本発表の主な目的は、東京都台東区浅草地域の宗教と社会を中心にして浅草の人々の関係について考察を試みることにある。浅草寺と浅草神社に関係する宗教行事は数多いが、その代表は3月の浅草寺本尊示現会と5月の三社祭である。本発表は主として浅草寺本尊示現会と三社祭の関係を取り上げ、祭礼を担う団体の現状(特に平成18年から平成20年の3年間に起きた変化)を事例とし、分析を加える。
著者
比嘉 理麻
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

いわゆる「工場畜産」と呼ばれる環境下で、飼育される家畜たちは、エージェンシーなき客体、あるいは肉を生み出す単なる機械なのだろうか。この問いを出発点に、本発表では、産業化の進んだ沖縄の養豚場の事例から、人とブタの個別具体的なかかわりを明らかにすることで、産業家畜と人間の関係について別の見方を提示することを目指す。
著者
唐木 健仁
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.75, 2008

沖縄出身者に対する社会的環境は急速に変化しているなかで、「再発見者」が強調する文化的特性は、文化的他者のみならず、世代を超えてエスニック・グループ成員に大きな影響を与える。それらの集団によって共有される歴史的経験の中からなにを選択し、どのように表現するのかが、エスニシティの地域性を規定する要因となる。沖縄の伝統芸能であるエイサーに注目し、「再発見者」の影響を考慮し、愛知と大阪の地域性を比較する。
著者
永吉 守
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.105-105, 2012

三池炭鉱が存在した大牟田・荒尾には、明治末期の集団移住を起点とするユンヌンチュ(与論島住民)が「大牟田・荒尾地区与論会」を組織して奥都城(集団納骨堂)の運営や三線教室の開催をしている。近年、大牟田夏祭りの「一万人の総踊り」にて、彼らは独自の法被をまとい、子どもたちにエイサー太鼓を持たせて炭坑節などを踊っている。本発表ではこうした動きをとらえながら、日本の中のエスニシティや文化的多様性を改めて考えたい。
著者
桑原 牧子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.82, 2009

タヒチ社会では西欧人接触以前から現在に至るまで、生物学的には男性として生まれたが、家事や子育てなど、女性としての役割を担うマフ(mahu)と呼ばれる性を生きる人々がいる。近年になり、このマフに加えて、女装や化粧をする人々に対してラエラエ(raerae)という呼び名も使われるようになった。本発表では、そのようなマフとラエラエの名称の呼び名の使われ方をタヒチ島とボラボラ島の事例を比較して分析する。
著者
國弘 暁子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.13, 2009

ペニスと睾丸を切除する去勢儀礼を通過したヒジュラは、女神の衣装であるサリーを身に纏い、現世放棄者のような立場にあるが、しかし、その性的な欲動を放棄することはない。密室の空間において、男性と共に、あるいは師弟間において、セクシャルな関係を結んでいる。「ホモセクシュアル」としては決して括ることのできないヒジュラの情交のあり方について発表する。
著者
木村 葉子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.134, 2009

1948 年、カリブ海地域から492 人をのせたエンパイア・ウインドラッシュ号の来航は、イギリスが多民族国家へと変貌していく分岐点となる事件であった。現在、イギリスにおける移民や難民、その子孫を含めたエスニック・マイノリティの割合は現在総人口の約8%を占めている。本発表は、文化的アイデンティティを形成してきたノッティングヒル・カーニバルを通してアフリカ系カリビアンの歴史を考察する。
著者
飛内 悠子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

南スーダン、ウガンダ国境地帯に位置するカジョケジ郡では、従来先祖崇敬やウィッチクラフトが存在したが、聖公会リバイバル運動の流入によってこれが否定されるようになっている。一方、人々は「神」の力でとり憑く悪魔を払おうとする。このキリスト教徒たちの「呪術」的実践とそれをめぐる言説を見ていくことによって、キリスト教における「呪術」のありようを提示し、キリスト教の人類学と呪術の人類学を架橋することを目指す。
著者
原尻 英樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.107, 2010

合気柔術及び古流空手ともども丹田を中心としたところで、球体あるいは螺旋形の動きをおこし、その波動を自らの末端まで伝え、それを相手に伝えることで技にしていることがわかる。研究方法の第一前提は、操作的に近代的身体と前近代的身体を分けることである。次に、研究者自らが技の修得をする必要がある。また、これまでの代表的な身体論研究における研究方法についての問題点とその克服方法についても考察する。
著者
板垣 明美
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.240, 2008

ラテンアメリカンおよびボールルーム・ダンスの歩行とコネクションの特色を、重心と体重に着目して解析する。KJ法およびNACイメージテクノロジーの技術的協力を得て3次元動作解析を実施した。その結果日本の指導者が「中心」、ロンドンの指導者が「center gravity」と表現する「重心」は骨盤の内部で安定していることがわかった。安定した重心を超えて体重がゆれることがスィング感が生み出れ、連続的なコネクションが得られる。