著者
笠毛 甲太郎
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.12-22, 1997-03-28
参考文献数
35

アーリーコロナイザーズ (early colonizers) の1つで多くの歯周病関連細菌の定着の足がかりになっていると考えられている<I>Actinomyces viscosus</I>の菌体表層成分から, 歯周病関連細菌で成人性歯周炎の有力な原因菌とされている、<I>Porphyromonas gingivalis</I>に対する付着関連物質の1つと考えられる, SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にて200kDaを超える高分子量物質 (AvAF) を分離した。分離はSephacryl S-400HRによるろ過, HiTrap Octyl Sepharose 4FFによる疎水性クロマトグラフィー, HiTrap Qによる陰イオン交換クロマトグラフィーにより行った。得られたAvAFの蛋白質あたりの<I>P. gingivalis</I>に対する共凝集阻害活性は12倍に上昇し, 回収率は2.5%であった。AvAFには糖も検出されたことから糖蛋白であることが示唆された。その活性は加熱処理, プロテアーゼ処理に耐性であったが, 過ヨウ素酸処理に感受性があった。よって, AvAFの活性は糖に存在することが明らかとなった。またAvAFは<I>Prevotella intermedia</I>, <I>Fusobacterium nuclea-tum</I>, <I>Capnocytophaga ochracea</I>の<I>A. viscosus</I>に対する共凝集においても阻害作用を示した。
著者
前川 知樹
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.97-104, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
27

Developmental endothelial locus-1 (DEL-1) was identified as a biomolecule that regulates neutrophil migration through integrin receptors. Hajishengallis (University of Pennsylvania) and colleagues found that DEL-1 is highly expressed in periodontal tissues, and revealed that DEL-1 regulates alveolar bone resorption by suppressing excessive inflammation in periodontitis. DEL-1 is a 52-kDa protein with three epidermal growth factor (EGF) -like repeats at the N-terminus and two discoidin-like domains at the C-terminus. DEL-1 plays an important role in inflammation and the immune system by interacting with αv integrins, such as β2 integrins (e.g. αLβ2, αMβ2) and αvβ3, as well as phospholipids. We have shown that DEL-1 may not only be involved in neutrophil regulation, but also in bone regeneration, by inducing stem cell niches in hematopoietic stem cells in the bone marrow, to regulate osteoclasts and osteoblasts, promote efferocytosis, and also regulate mesenchymal stem cells. We are now exploring how DEL-1 is regulated in vivo and whether it can be applied clinically to benefit patients with periodontal disease and related disorders. Recently, studies on two distinct mucosal diseases, periodontitis and pneumonia, have revealed that DEL-1 decreases with aging and inflammation; the studies also provided insight into the molecular mechanisms underlying the effects of DEL-1 on bone metabolism-related cells and mesenchymal stem cells, as well as into factors regulating DEL-1 expression. In this article, we shall review the various functions of DEL-1 and its clinical applications from the viewpoints of immunity and bone metabolism.
著者
飯倉 拓也 松田 哲 大竹 千尋 草間 淳 飯塚 奈々 小澤 万純 河方 知裕 堀内 康志 齋藤 大嵩 長谷川 陽子
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.57-65, 2019-03-29 (Released:2019-03-28)
参考文献数
33
被引用文献数
1

概要:今回,上唇可動量の過剰によるガミースマイルに対し,口唇移動術を行い,1年の経過を追い,良好な結果が得られたので報告する。症例は過度な歯肉露出を主訴に来院した24歳の女性である。全身状態は良好,歯肉に炎症を認めなかった。笑った際に上顎前歯部で8 mmの歯肉露出を認め,口腔内検査所見およびX線写真検査所見より上唇可動量の過剰によるガミースマイルと診断した。治療方針:口唇移動術に先立ち,組織の切除を行わない可逆的試験処置を行った。1週間経過観察を行い,口唇移動術を実施することを決定した。治療経過:口唇移動術は上唇小帯を保存することにより,術後の左右非対称を防止できる改良型口唇移動術を行った。術後,口唇の運動制限を指導した。1週間後の抜糸時には,疼痛,腫脹,皮下出血を認めた。1ヶ月後には症状は消失し,笑った際の歯肉露出は上顎前歯部で8 mmから1 mmに改善し,口唇の非対称性などの合併症も認めなかった。1年間の経過観察を行い,後戻りも認められず,経過は良好で満足度は高かった。考察:過度のガミースマイルは審美的な問題となる。ガミースマイルに対する治療法は様々あり,口唇移動術は適応可能な症例や長期予後に関して議論の余地がある。可逆的試験処置を行うことにより予知性を高めることができ,的確な診断のもと行えば,補綴や外科矯正と比較して,治療期間,侵襲の点などで優れた治療法であると考察する。
著者
新井 高 鈴木 賢 旗生 隆 横田 誠 長谷川 紘司 木下 四郎
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.170-176, 1977-06-28 (Released:2010-07-16)
参考文献数
17
被引用文献数
3 2

Purpose of this study was to know the effect of natural and synthetic bristle toothbrushes on plaque removal.Two kinds of natural toothbrushes (animal bristle and pig bristle) and two kinds of synthetic toothbrushes (nylon bristle and rubber) were evaluated using Scrub brushing method. Twelve adults, 6 patients and 6 dentists, 6 males and 6 females, aged 19 to 42, volunteered for this study.Plaque score was calculated with the modified Volpe's method which Suzuki et al. reported before. Facial and lingual tooth surfaces of the six representative teeth (6/41|14/6) were scored, after disclosing the plaque with a 0.5% basic fuchsin.The average percentage of plaque removal on facial and lingual tooth surfaces were as follows.(1) 59.6±16.1% (nylon bristle) (2) 42.3±13.2% (pig bristle)(3) 39.8±14.7% (rubber) (4) 39.5±13.3% (animal bristle)There was a statistically significance at the 5 percent level of confidence between nylon bristle brush and the other three brushes.A similar trend was recognized on labial, lingual, medial and papillary tooth surfaces independently.The scores after brushing were evaluated, also.(The materials of animal bristles are of horse and badger hair.)
著者
稲田 芳樹
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.352-368, 1985-06-28 (Released:2010-07-16)
参考文献数
22

歯ブラシ線維の先端を使用して刷掃する代表的なブラッシング法である scrubbing について, 歯ブラシ線維の損耗がブラッシング時の歯みがき圧および歯垢除去効果にどのような影響を及ぼすかを, in vivo および in vitro の両面から検討した。すなわち in vivo 実験では, scrubbing 法を被検者に行わせ, 歯ブラシ線維の損耗と歯みがき圧との関連性について経週的に観察を行った。また, in vitro 実験では, metallic plate に gold coating をほどこして実験的歯垢を作成し, ブラッシングマシンで scrubbing 法と同じブラッシング動作を行い, 歯ブラシ線維の損耗が歯垢除去効果にどのような影響を及ぼすかについてより客観的に評価した。以上のことから scrubbing 法によるブラッシングにおいては, 歯垢除去の面から歯ブラシは4週間用いると新しいものと交換すべきであると結論した。
著者
中島 光一 水道 裕久 江口 徹 中村 正一 杉原 邦夫 村山 洋二
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.463-471, 1987-06-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
45
被引用文献数
8 5

歯周病の化学療法をめざし, 歯周病原性細菌に有効な抗生物質を選択する目的で, 6菌種の歯周病原性細菌に対する10種の抗菌物質の最小生育阻止濃度, および歯肉縁下プラーク細菌に対する感受性を検討した。その結果, 被験抗菌物質の中でミノサイクリン (MINO), テトラサイクリン (TC), ペニシリンG (PCG), セフメタゾール, クリンダマイシン (CLDM), メトロニダゾール (MD), が黒色色素産生性Bacteroidesに強い抗菌性を示した。さらにMINOはほかの被験菌種に対しても強い抗菌作用を示した。また, 縁下プラーク細菌に対しては, MINO, PCGが強い抑制効果を示し, 1μg/mlの濃度で95%以上の細菌を抑制した。CLDM, TCは5μg/mlで同様の抑制効果を示したが, MD, クロルヘキシジンの抑制効果は低かった。以上の結果より, 歯周病原性細菌に対して強く幅広い抗菌活性を有するMINOは歯周病治療に用いる抗生物質として優先される薬剤であると考えられた。
著者
土沢 一実 渡辺 孝章 渡辺 一郎 山本 和子 新井 高 中村 治郎
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.1120-1130, 1986-12-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
41
被引用文献数
7 2

スクラッビング法による歯ブラシについて, 第1報として毛の直径と毛の先端形態の違いがブラッシング圧とプラーク除去効果にどの様な影響を与えるかを検討した。歯ブラシの直径 (0.18mm, 0.25mm, 0.33mm) と毛の先端形態 (ラウンドカット, ストレートカット) の異なる合計6種類の歯ブラシを試作した。被験者12名にブラッシングを行わせ, 前後のプラークのスコアーを測定し, プラ本論文の要旨は, 第28回春期歯周病学会総会 (1985年6月6日) において発表した。ーク除去率を算出した。ブラッシング圧は渡辺のブラッシング圧測定装置を用い計測した。その結果, 毛の直径が太くなるほどプラーク除去率もブラッシング圧も有意に高くなった (P<0.01) 。ラウンドカットの方がストレートカットに比べ, ブラッシング圧は高い傾向を示した (P<0.01) 。プラーク除去率は, ラウンドカットの方が高くなる傾向を示した。
著者
松本 ゆみ 新井 英雄
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.16-26, 2020-03-31 (Released:2020-03-28)
参考文献数
25

糖尿病は代表的な歯周病の全身的リスクファクターである。今回36歳,女性の1型糖尿病を有する広汎型侵襲性歯周炎患者に対し,内科主治医と連携し血糖コントロールに配慮しながら,歯周基本治療,矯正治療,そして歯周組織再生治療と歯周形成手術を含めた歯周外科治療,口腔機能回復治療を含めた包括的歯周治療を行い,初診から10年経過した現在,歯周状態を良好に維持することができている症例を報告する。本症例を通して,歯列不正を伴う広汎型侵襲性歯周炎患者に対して,早期に感染源除去を図ることはもちろん,プラークコントロールしやすい歯周環境を整え,安定した咬合関係を再構成すること,全身状態と局所的なリスクを把握してSPTを継続することが重要であることが示された。
著者
倉治 竜太郎 橋本 修一 伊藤 弘 沼部 幸博
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.148-154, 2016-09-30 (Released:2016-11-03)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

歯周病学をはじめ口腔内の研究では,齧歯類を対象として実験を行うことが多い。こうした動物の口腔内に種々の処置を行う場合は,開口状態の保持や視野確保が実験手技を安定させる上で極めて重要な要素となる。しかし,マウスの開口を保持する専用器具は提案されていない。そこで我々は,既存のラット開口器を応用し,幅広い週齢のマウスに適合する規格化された開口器の作製を目的として,開発を行った。本考案は,1.5 mmステンレス線を用いた長方形の切歯係止フレームと,フレーム内側に対向して取り付けた左右口角鈎,フレーム基端部に取り付けた開口調節体から構成される開口器である。各週齢マウスへの本器の適合性を評価するため,4週齢,6週齢,10週齢BALB/cマウスを対象に,本器各部による開口保持状態を観察した。本器の開口調節体により,体重の異なる全週齢マウスの開口を安定して保持することができ,口腔内観察を良好に実施できた。また本器装着時の口腔内実験への応用例として,口蓋歯肉への薬液注射,および上顎臼歯への絹糸結紮による実験的歯周炎作成を行い,本器を用いた場合の処置時の視野確保と器具の到達性などを検討した。本器を用いた開口保持により,各種器具を挿入した口腔内実験を良好に実施できた。なお,総ステンレス製の本器は,オートクレーブ,乾熱滅菌も可能となっている。本器は実用新案登録済みである(公開番号2014-004789)。
著者
小野寺 健
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.971-983, 1990-12-28
被引用文献数
8

本研究では実験的歯周炎を誘発し,オキシタラン線維の動態を検索した。成犬ポメラニアン11頭を用い,実験群は,歯肉縁下グルーブを形成し縫合糸で結紮し,1,3,6ヵ月経過させた結紮群と,結紮6ヵ月後に縫合糸を除去し,1,3,6ヵ月経過させた除去群とした。その結果,1.病理組織学的に,実験群は辺縁性歯周炎の発症,進行,治癒過程を示した。形態計測学的に,1)上皮・結合組織成分比率は,歯頸部で,結紮群では増加,除去群では減少傾向を示した。2)血管の数・面積は,ポケット底部で,結紮群では増加傾向を,除去群では減少傾向を示した。3)骨成分比率は,歯頸部で,実験群では減少傾向を示した。2.オキシタラン線維は,病理組織学的に,歯肉と歯根膜で,異なる分布・走行を示し,結紮群では,対照群および除去群と比して,オキシタラン線維は長く,数も多かった。形態計測学的に,オキシタラン線維の長さの平均および総和は,結紮群では増加傾向を,除去群では減少傾向を示した。
著者
本田 準虎
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.620-632, 1992-09-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
68
被引用文献数
2

歯肉縁下歯石中のグリコサミノグリカン (GAG) 構成の特徴を縁上歯石と比較検討した。歯周炎患者107名より採取した歯石から, 4M塩酸グアニジンを含む50mMトリス緩衝液中, 脱灰および未脱灰条件下でGAGを抽出した。定性, 定量はセルロース・アセテート膜二次元電気泳動法で行い, さらにコンドロイチン硫酸異性体は高速液体クロマトグラフィーで分離した。縁上歯石中のGAGの主体はピアルロン酸 (17.5μg/g dry wt.) で, 他の硫酸化GAGは検出されなかった。縁下歯石中にはピアルロン酸 (26.7μg/g) に加えてコンドロイチン硫酸 (18.2μg/g) およびデルマタン硫酸 (9.3μg/g) を認めた。また, 縁下歯石中に認められたコンドロイチン硫酸の大部分は4-硫酸エステル型であった。これらの成績から, 歯肉縁下歯石中のGAGは歯肉溝滲出液由来であることが示唆された。
著者
水野 利昭
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.739-756, 1985-12-28 (Released:2010-07-16)
参考文献数
49

この研究の主目的は, 口呼吸と歯垢形成との関連を明らかにすることである。そのためにオスのカニクイザル2頭を用い, 鼻呼吸と口呼吸を反復して行わせ, それぞれの期間中の歯垢の形成量を規格写真などで比較した。その結果, 口呼吸により歯垢の形成量が有意に増加した観察部位は, 7部位のうち5部位であった。すなわち上顎中切歯の唇面と口蓋面, 上顎臼歯部の口蓋面, 下顎中切歯の唇面と下顎臼歯部の頬面である。最も特徴的な歯垢形成を示した部位は, 上顎中切歯の唇面であり, ここでの歯垢形成は鼻呼吸期間では隣接面と歯頸部から始まったが, 口呼吸期間では切縁付近から形成され始めた。口呼吸により歯垢形成が促進された原因は, (1) 舌や口唇による歯面への機械的自浄作用の低下, (2) 口呼吸による歯面の乾燥と湿潤との反復があったと思われる。