著者
吉峰 正彌 山﨑 廉平 岡崎 加奈 小木曽 令実 鴨井 久博 浅木 英理
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.58-73, 2020-06-30 (Released:2020-06-26)
参考文献数
26

TiO2の光触媒機能,太陽電池を搭載した歯ブラシが,口腔内環境の改善に有用であることが報告されているため,本研究では,それらを応用した歯ブラシであるSOLADEY N4Ⓡ(株式会社シケン)を用いて,ブラッシングによるプラークコントロールの改善効果を,臨床パラメーターから検討した。被験者は,SPTに移行した10名とし,5名ずつ第1群,第2群に封筒法にて割り付けたクロスオーバー試験とし,1クールを4週間として,TBI後に第1クール,第2クールにてSOLADEY N4Ⓡ,プラセボを各被験者に交互に使用させ,それぞれをTEST群,CONTROL群とした。診査項目は,Rustogi Modification Navy Plaque Index(RMNPI)によるデンタルプラークの付着状態,歯肉溝滲出液(以下GCF量),口腔内細菌数とした。その結果,TEST群ではCONTROL群と比較して,SOLADEY N4Ⓡの使用により,口腔内全体,平滑面,歯頚部,隣接面全ての部位で,よりプラーク付着の抑制が認められ,それに伴いGCF量の減少,口腔内細菌数の減少が認められた。SOLADEY N4ⓇをTBI後に継続的に使用することで,TiO2の光触媒抗菌作用によりプラークコントロールが良好に維持,改善され,それに付随してGCF量および口腔内細菌数の口腔内環境も改善が認められることが判明した。
著者
須藤 嵩文 井川 資英 山田 聡
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.82-95, 2020-06-30 (Released:2020-06-26)
参考文献数
37

歯周ポケット測定の際の出血(BOP)は歯肉炎症の有無を反映するものの,炎症の程度を詳細に反映するものではない。本研究は,ヒト歯肉血行動態,具体的には組織酸素飽和度(StO2)と血流量(BF)の同時測定を行い,その結果と歯肉炎との関連を明らかにすることを目的とした。測定には東北大学病院歯科部門歯周病科外来に通院される合計13名の患者(年齢29~82歳)の協力を得た。測定対象とした前歯部唇側歯間乳頭歯肉(n=33)のBOP判定を行い,近心部と遠心部の両方で出血しなかった場合をNB群(n=14),どちらか一方が出血した場合をB群(n=8),両方で出血した場合をBB群(n=11)の3群に分類した。StO2とBFの測定は対象歯肉のブラッシング前とブラッシング後の合計2回行った。測定の結果,ブラッシング前,BB群はNB群に比べStO2と酸化ヘモグロビン量(HbO2)が有意に低下していた。また,ブラッシングによって,BB群はNB群に比べStO2及びHbO2が有意に増加した。本研究では,StO2とBFの同時測定によって健全歯肉と炎症歯肉での局所血行動態の違いを明らかにした。また,ブラッシング前後のStO2の推移が健全歯肉と炎症歯肉で異なることから,歯肉血行動態の測定が歯肉の炎症の定量的評価法となる可能性を示唆した。
著者
五味 由季子 長﨑 満里子 三澤 絵理 梶山 創太郎 斉藤 まり 長野 孝俊 井上 孝二 五味 一博
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.49-56, 2014-04-11 (Released:2015-02-18)
参考文献数
27
被引用文献数
2

インプラントは広く臨床に応用され,インプラントを有する患者数も増加している。インプラントには生体安定性に優れたチタンが用いられているが、最近になりフッ素イオンの存在下ではチタンの耐食性が低下し腐食することが報告されている。特に食物やプラークによる pH の変化が生じる口腔においてフッ素が存在するとチタンの腐食が進行すると考えられる。しかし,市販の歯磨剤の多くはう蝕の予防を目的にフッ化物が添加されている。本研究ではフッ素の存在に伴うリスクを排除し長期間に渡って使用できるインプラント専用の歯磨剤の開発を目的とし,試作フッ化物未含有歯磨剤および洗口剤のチタン合金および純チタンに対する影響を共焦点レーザー顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いて市販のフッ素含有歯磨剤およびフッ素塗布剤と比較検討した。その結果,9000 ppm を超えるフッ素を含有するフッ素塗布剤では著しいチタンの腐食が認められた。1000 ppm 以下のフッ素含有歯磨剤においてもコントロールと比較して有意に表面が荒れることが示された。さらに酸性環境下でフッ素が存在すると腐食が進み表面粗さが進行すると考えられた。また,純チタンはチタン合金より腐食傾向が強かった。一方,フッ素未含有の試作歯磨剤および洗口剤ではチタン表面の腐食はほとんど認められなかった。 以上より試作歯磨剤および洗口剤はインプラントを口腔に保有する患者に対して有用であり安全性が高いと考えられた。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(1):49-56,2014
著者
奈良 文雄
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.100-108, 1977-06-28 (Released:2010-07-16)
参考文献数
37
被引用文献数
10 10

There is known the use of osmoscope and the studies have been published on the relationship between the halitosis and oral conditions by various analytical instruments. However, the most adequate method to assess the degree of a bad smell or halitosis finally perceived by us is a sensory evaluation, because the oral fetor is generally regarded as a mixture of odorous substances.In the belief that an assessment of the oral fetor would be made easier if the relationship between the periodontal patients and halitosis should be elucidated, the author conducted the present study to establish the correlation between the degree of halitosis and various oral conditions of periodontal patients. By way of study material, a random selection was made of a total sample of 152 consisting of 69 males and 83 females (13 to 72 years of age) from the patients consulted in the Department of Periodontology, Nihon University Dental Hospital. These subjects complained of no other diseases than periodontal ones and they were all judged to possess some kind of halitosis. The study subjects were classified into the 4 groups: i) S. G., ii) p1, iii) p2 and iv) P3.The intraoral examination included such items as the amount of dental plaque, dental calculi, redness of the gingiva, gingival bleeding, pus discharge, depth of sulcuses, tongue coating, mouth breathing, and presence or absence of subjective halitosis. By the use of psychro-olf actometer MD 7 model, both the oral and nasal exhalations were collected with odor collecting bags (3 liters in content).Those subjects with whom the pressence of halitosis was confirmed were grouped as “N”, and those with whom the absence of halitosis was confirmed were grouped as “O”. They were subsequently subjected to the measurement of odor concentration and various correlations were examined between the concentration and oral findings.As a result of the present study, the author arrived at the following conclusions:1) In terms of different age and sex groups, there was observed no statistical difference between the odor concentrations of N and O groups.2) As regards S. G., <P1, <P2 and P3 groups in N, there was an increasing tendency in order of S. G. <P1<P2<P3. There was not observed, however, any statistical difference among them.As for O, on the other hand, there were observed statistical differences between S. G. group P1 group, and S. G. group P3 group, but not between other groups.3) Relative to the various clinical examination items, a statistical difference (p<0.01) was found for the gingival inflammation and pus discharge in N group. A statistical difference was also detected for the gingival bleeding and depth of sulcuses (p<0.05).In O group, on the other hand, statistical differences were for OHI, gingival inflammation, bleeding, pus discharge and depth of sulcuses (p.<0.01). As for the tongue coating, there was no statistical difference between N and O groups.4) In N group 59% of the subjects under study complained of the subjective halitosis, whereas in O group 50% of the subjects were aware of the subjective halitosis.5) Those who were in the habit of mouth breathing were 37% in N group and 42% in O group respectively.
著者
関野 愉 相羽 玲子 相羽 寿史 塚原 武典 田代 俊男 岡本 浩
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.283-288, 2001-09-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
42

数種類の洗口剤を用いて, 初期のプラーク形成抑制効果に関して臨床的検討を行った。歯周疾患の徴候のない25~35歳の成人8名を被験者とした。実験開始前, 14日間にわたり専門家による歯面清掃と口腔衛生指導を行った。実験開始時から全ての機械的歯面清掃を中止し, 洗口剤10mlで1日2回1分間の洗口を4日間行った。実験開始時と4日後, 全歯面に対してPlaque Index (PII) を用い診査を行った。4日目の診査後, 専門家による歯面清掃と被験者自身によるブラッシングを再開し, 10日後に再び歯面清掃を中止し, 他の洗口剤により4日間洗口を行った。以上の方法で, 1) 蒸留水 (DW), 2) 0.12%グルコン酸クロルヘキシジン水溶液(CHX), 3) 酸化電位水 (AW), 4) 0.1%フッ化第一スズ水溶液 (SnF2), 5) 0.02%塩化セチルピリジニウム含有洗口剤 (CPC) の5種類の洗口剤を用いて検討を行った。全歯面におけるPII値はCHXで0.75, AW 1.21, SnF21.20, CPC1.55, DW1.61であった。これらを比較検討したところ, CHXと他の全ての洗口液, AWとCPCとDW, SnF2とCPCとDWの間に統計学的有意差が認められた。また, 全ての洗口剤において前歯部のPII値は小臼歯部, 大臼歯部のものよりも低く, 頬舌側面のPII値は隣接面よりも低かった。
著者
伊藤 弘 仲谷 寛 沼部 幸博 鴨井 久一 辰已 順一 栗原 徳善 渡辺 幸男 池田 克已
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.417-428, 1993-06-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
36
被引用文献数
2 1

本研究の目的は, 垂直性骨欠損においてコラーゲンより精製した吸収性膜を組織再生誘導法 (GTR法) に応用し, 臨床的な評価を検索することである。慢性辺縁性歯周炎と診断され, 歯周初期治療終了後, 外科処置の必要性がある垂直性骨欠損を有する31名の患者に対してGTR法を応用した。GTR法は通常のフラップ手術に準じて行った。すなわち, 粘膜骨膜弁にて剥離, 翻転した後, 骨欠損部にコラーゲン膜を完全に覆うように調整し, 歯肉弁を復位し縫合を行った。術後3カ月, 6カ月に各々臨床評価を行った。その結果, 術後3カ月では術前と比較して骨変化量は, 1.15mmの増加, 付着の獲得量は, 1.52±1.81mmの増加, また, ボケットの深さは2.75±1.54mmの減少を認めた。術後6カ月では術前と比較して骨変化量は, 1 . 26mmの増加, 付着の獲得量は, 1.68±1.75mmの増加, また, ポケットの深さは2.84±1.54mmの減少を認めた。以上の結果より, 歯周組織の再生を目的としたGTR法におけるコラーゲン膜の応用は有用な処置方法であることが示唆された。
著者
山本 照子
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.213-228, 2016-12-31 (Released:2017-01-25)
参考文献数
126
被引用文献数
1

近年,関節リューマチや歯周病で見られる炎症性骨破壊において,病的な状態での骨代謝に影響を及ぼす免疫系の関与が注目されている。歯周病は細菌による自然免疫応答についで獲得免疫応答が誘導されて,急性炎症から慢性炎症に至り,歯槽骨破壊がもたらされるという,免疫応答の結果として惹起される。骨代謝と免疫系は,骨髄の微小環境ならびに多くの制御因子を共有し,相互制御が行われている。矯正的歯の移動においても,免疫応答で誘導される様々な炎症性サイトカインが発現し,これらは歯の移動に必須な歯槽骨吸収に関与している。矯正的歯の移動における骨吸収には,骨表層にある破骨細胞と骨芽細胞のみならず,骨中に埋め込まれて互いに細胞性ネットワークを形成している骨細胞が,メカニカルストレスに著しく応答して細胞間コミュニケーションをはかり,破骨細胞形成における司令塔的な役割を果たすことがわかってきた。歯の移動の圧迫側歯槽骨では,骨細胞が骨免疫因子とも言えるosteopontin(Opn)や結合組織成長因子(connective tissue growth factor,CTGF/CCN2)を産生し,その結果,免疫系因子と骨系細胞による破骨細胞形成のメカニズムが働き,活発な骨吸収が生じる。本稿ではメカニカルストレスによる矯正的歯の移動の分子メカニズムについて我々の知見を紹介し,免疫細胞を支持する骨髄環境の制御における骨細胞の新たな役割について述べる。
著者
大墨 竜也 竹中 彰治 坂上 雄樹 若松 里佳 寺尾 豊 大島 勇人 興地 隆史
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.291-301, 2014

本研究では,リステリン<sup>®</sup>の刺激性や使用感の改善を意図して開発された新規アルコール非含有洗口液<sup>®</sup>ナチュラルケア;N 群)の <i>Streptococcus mutans</i> 人工バイオフィルムに対する浸透性と殺菌能を既存洗口液[Listerine<sup>® </sup>Zero(Z 群),リステリン<sup>®</sup>フレッシュミント(F 群)および 0.12%グルコン酸クロルヘキシジン含有洗口液(CHG 群)]との比較により評価した。人工バイオフィルムはガラスベースディッシュ上で 24 時間嫌気培養することにより作製した。洗口液の浸透性は calcein-AM で染色したバイオフィルムの底面の蛍光消失を共焦点レーザー顕微鏡で経時的に解析することにより評価した。殺菌能は 30 秒作用後の生菌数測定およびバイオフィルム底面の Live/Dead 染色像により評価した。その結果,各洗口液とも 50%蛍光消失時間はバイオフィルムの厚みと正の相関を示し,N 群の浸透速度はZおよびF群と同等かつ CHG 群より有意に高値であった。 生菌数はN,ZおよびF群は同等で共に CHG 群より有意に低値であった。また, Live/Dead 染色像はN,ZおよびF群とも 99%以上が propidium iodide (PI)陽性細菌であり陽性率は CHG 群より有意に高かった。以上の結果から,N 群の浸透性と殺菌能は,Z 群および F 群と同等かつ CHG 群より有意に優れていることが示された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(3):291-301,2014
著者
齋藤 淳
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.155-159, 2016-09-30 (Released:2016-11-03)
参考文献数
11

この度,香港における歯周病専門医認定試験に外部評価者として参加する機会を得たので,歯周病専門医の育成システムと認定試験の実際について報告する。
著者
小鷲 悠典 沢辺 正樹 木下 四郎
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.511-515, 1976-12-28 (Released:2010-07-16)
参考文献数
12

This investigation was carried out to determine whether two water pressure irrigating devices (Porta dent and Water pik) were effective in removing dental plaque in facial crevicular and interproximal areas in man and to compare the effects on the plaque removing ability of these two irrigating devices, rinse and toothbrushing (Roll method).Nine adults who had normal dentition, few dental restorations and clinically healthy periodontal tissue were served as the subjects of this study. They were cleansed all the tooth surfaces and made plaque score O. They were forbidden to use toothbrushes and other oral hygiene aids for 24 hours. After the plaque scores before cleansing were evaluated, they practised the given cleansing method for five minutes and the plaque scores after cleansing were evaluated.They took part in four cycles of this experimental process.The averages of the percentage of plaque removal on all the tooth surfaces were as follows:(I) facial----1) 11.7% Porta dent, 2) 10.7% Water pik, 3) 3.3% rinse and 4) 72.7% toothbrushing.(II) facial proximal----1) 9.3% Porta dent, 2) 18.1% Water pik, 3) 5.4% rinse and 4) 22.3% toothbrushing.The results of an analysis of varience showed statistically significant difference at five percent level between Porta dent and rinse in facial area, between Water pik and Porta dent in facial proximal area, and between Water pik and rinse in facial proximal area.In facial area, the plaque removal effect of toothbrushing was more striking than any other methods.
著者
川本 亜紀 岩野 義弘 本橋 碧 清水 千津子 坂井 雅子 菅野 直之 伊藤 公一
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.349-356, 2014-03-28 (Released:2014-04-10)
参考文献数
23

歯周疾患に影響を与える修飾要因の 1 つに女性ホルモンの影響が考えられる。排卵日や妊娠中の女性ホルモンの増加に伴い,特定の歯周病原菌が増殖し,また宿主の免疫応答が変化すると言われている。今回,広汎型侵襲性歯周炎患者に対し,月経周期,妊娠期,産後期を考慮して行った歯周治療の 1 症例を報告する。患者は 27 歳の女性で,前医での歯周治療後 1 週間経過しても歯肉からの出血が止まらず心配となり当歯科病院を受診した。全身的既往歴,出血傾向に問題はなかった。28 歯中 4 mm 以上の歯周ポケットの割合は 15.5% で,そのうち 27,31,32,33,37,44,47 には 6 mm 以上の歯周ポケットが認められた。初診時(排卵日)は PCR 50.0%,BOP 70.8% で,来院2回目(卵胞期)は PCR 50.0%,BOP 27.8% であった。月経周期において,女性ホルモンの分泌が少ない時期に歯周基本治療を行い,SPT 移行時(排卵日)には 4 mm 以上の歯周ポケット 0.6%,PCR 26.7%,BOP 5.4% に改善した。妊娠時および出産後の排卵日においても歯肉の状態は良好であった。本症例より,妊娠中は歯周病再発の危険性が高いためセルフケアの徹底が重要であること,また産後は患者の生活環境に合わせた口腔衛生管理が必要であることが示された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)55(4):349-356,2013
著者
横須賀 直美 田中 敏之 胡谷 佳津志 岩井 達明
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.960-969, 1989-09-28 (Released:2010-11-29)
参考文献数
30
被引用文献数
6 6

ラシ (通常歯ブラシ) を対照とした細菌学的汚染について検討した。対象10名を用い, 1, 8, 20日間, 両歯ブラシを交互に計6期間使用させ, 保管条件を一定 (20℃, 65%) とした。試験終了後, 再び保管環境下で乾燥を行い, 0~24時間で毛束を抜毛し, 上下に切断後'付着菌を計測した。その結果, 1) 抗菌コート歯ブラシと通常歯ブラシ毛東上部では, 乾燥時間の経過とともに付着菌が減少した。2) 通常歯ブラシの毛束下部では使用期間が長くなるにつれて, 乾燥時間ごとの付着菌数が明らかに増大した。3) 付着菌種は, 短期使用においてグラム陽性菌が多く、長期では陰性桿菌が検出された。4) 抗菌活性は, 毛束下部では20日間使用後も残存し, 抗菌コート歯ブラシの細菌汚染への有効性が認められた。
著者
角田 正健 佐藤 春海 大串 勉
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.490-498, 1981-09-28 (Released:2010-07-16)
参考文献数
21
被引用文献数
9 18

The purpose of this study was to clarify the effect of sodium copper chlorophyllin (Chn.) for halitosis.Volatile sulphur compounds (V. S. C) produced during the incubation of whole saliva were analyzed by gas chromatograph. The changing of leucocytes and epithelial cells in incubated whols saliva were observed using microscope. The effect of anti-bacteria against oral anaerobic bacteria was also observed.The following conclusions were obtained as the result of judging the halitosis control effect of Chn. by its experimental use of the saliva of periodontal patients having halitosis1. By adding and incubating 100mg, 50mg, 10mg and 5mg Chn. respectively into 1ml saliva, V. S. C. were not detected. However, when sampled at 1mg addition under the condition of incubate 36 and 48 hours, a small amount of V. S. C. was detected.2. The destruction speed of cellular components by incubate, in comparision with a controlled group, was not effected by addition of Chn.3. By microscopic observation, cell attachment on obsorption of Chn. were found which suggested its combination with protein.4. Almost any effect of anti-bacteria or bacteria growth prevention against oral anaerobic bacteria of Chn. was not observed.
著者
鴨井 久一 宮田 裕之 扇 正一 清水 智幸 小出 和良 中島 茂 小島 武志 西澤 聡 東堤 稔 坂本 雅子 土屋 利政 波多江 新平
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.660-666, 1990-06-28 (Released:2011-06-15)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

歯周病原菌といわれる7菌種 (Bacteroides gingivalis, Bacteroides intermedius, Bacteroides melaninogenicus, Fusobacterium nucleatum, Actinobacillus actinomycetemcomitans, Capnocytophaga ochraceae, Eikenella corrodens) 及び対照として2菌種 (Streptococcus intermedius, Pseudomonas aeruginosa) に対して, ポビドンヨード液 (10% PVP-1) を用いて, その殺菌効果をin vitroで検討した。希釈倍率は原液及び100倍, 400倍, 800倍, 1, 600倍, 3, 200倍, 6, 400倍, 12, 800倍までを設定し, PVP-I接触時間は15秒, 30秒, 60秒とした。その結果, 歯周病原菌7菌種, 対照2菌種に対するPVP-Iの殺菌効果は, 400倍希釈, 15秒 (最少接触時間) で殺菌効果が認められた。このことは, 口腔粘膜の殺菌及び歯周ポケット内へのPVP-I薬液投与の有効性を示唆するものである。
著者
尾形 美和 白井 要 古市 保志
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.47-56, 2019-03-29 (Released:2019-03-28)
参考文献数
9

歯科処置の中でも歯周治療は治療頻度が高い処置であるが,観血処置であることからも菌血症を引起す可能性がある。本症例は,人工弁置換術の全身既往がある患者に対し,感染性心内膜炎予防に配慮し非外科的に歯周治療を行いSPTに移行した一症例である。患者は67歳男性で,下顎前歯の動揺を主訴に来院した。歯科既往歴が僅少であることで,歯科恐怖症を抱え,脳梗塞の既往から右半身麻痺であった。さらに多数の全身性疾患を有しており,付随し服用薬剤も多種であったことから,内科との連携を密に歯周治療を行うこととした。患者には,心臓弁置換術の既往があると菌血症によって感染性心内膜炎を併発するリスクが高く,歯周病がその動因になり得ることを説明した。その上で患者自身の口腔環境が,実際に菌血症を引起こしやすい状態であること,またブラッシングの重要性を説明し歯周治療の必要性を訴え歯周治療参加への同意を得た。結果,主訴である下顎前歯(41歯)は抜歯処置となったものの,歯周基本治療後の再評価時にはPCR値17.2%となった。また下顎前歯部に対し,当初の治療計画では補綴処置を行う予定であったが,歯周組織状態が安定していることからMTMを行い,歯列不正を正すことでブラッシングを行いやすい歯周環境を構築することとした。延いてはPCR値20%以下を維持しSPTに移行した。SPT中もブラッシングに対し高いモチベーションを保持していたため,全身疾患も悪化することなく経過した。感染性心内膜炎の発症を予防するためにも口腔衛生管理の徹底は不可欠である。