著者
高橋 佳奈 藤本 梓 藤本 淳
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.192-200, 2018

<p>広汎型重度慢性歯周炎患者を歯周基本治療にて治療した一症例について報告する。</p><p>患者は42歳女性。3ヶ月前から歯肉の発赤,腫脹が著しく出血が多くなったため前医を受診,当院を紹介され来院した。臨床所見は全顎的に歯肉の発赤,腫脹を認めた。特に上顎左側部には炎症性歯肉増殖がみられた。プロービング時の出血(BOP):31.9%,プロービングポケットデプス(PPD):4 mm以上52.1%,O'Leryのプラークコントロールレコード(PCR)50%。エックス線所見では下顎前歯部および臼歯部の一部に垂直性骨吸収を認めた。</p><p>検査結果の説明と口腔清掃指導を繰り返し行い,スケーリング・ルートプレーニングを行った。患者のモチベーション向上の一環として,長期経過や生活背景を患者とともに確認し,口腔内の状態について患者自身の理解の向上を図った。歯周基本治療が進行するとともに口腔清掃状態が向上し,歯肉の腫脹が消退した。再評価時にデンタルエックス線写真上で歯槽骨の改善を観察したため,歯周外科治療は行わず,口腔機能回復治療を行った。2015年9月サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)へ移行した。</p>
著者
稲垣 幸司 内藤 徹 石原 裕一 金子 高士 中山 洋平 山本 龍生 吉成 伸夫 森田 学 栗原 英見
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.201-219, 2018-12-28 (Released:2018-12-28)
参考文献数
50
被引用文献数
1

日本歯周病学会では2006年に定めた歯周病分類システムの中で,「喫煙は歯周病の最大の環境リスクファクターである」という認識に基づき,リスクファクターによる歯周炎の分類の1つとして喫煙関連歯周炎を提示した。喫煙が関連する歯周炎に対する歯周治療において,患者の喫煙状況の確認,喫煙者への喫煙の健康障害についての情報提供による禁煙支援は,歯周治療の反応や予後を良好に維持するため,重要である。本論文では,喫煙に関連する国情,喫煙者の動向,禁煙支援教育の現状,歯科における禁煙支援の効果に関するエビデンスおよび歯周治療における禁煙支援の手順を概説する。
著者
飯山 正夫 吉田 和史 堀内 博
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.166-172, 1999-06-28
参考文献数
17
被引用文献数
6

本研究の目的は,デジタル画像解析を用いて歯肉発赤状態認識を解明し,歯肉発赤状態の自動認識アルゴリズムの開発のための基礎データを得る事である。10年以上の臨床経験を有する歯科医師9名に対し歯肉デジタル画像4枚を順にモニター画面で提示し,健全/概ね健全,軽度の炎症,発赤状態の著しい重度炎症の3つのカテゴリーに相当する範囲を指定させた。画像は,RGBカラー画像(Red,Green,Blue 各 8 bits)で画素数は2,268×1,764 pixels,記憶容量は約11MBであった。範囲選択の際,形態にはとらわれず歯肉色だけで判断するように確認した。指定された範囲の画素数,R,G,Bそれぞれの平均グレーレベル値を測定し記録した。カテゴリー間の有意差の検定には,Student's t-testを用いた。また,発赤の顕著な歯肉デジタル画像を三原色それぞれのグレーレベルで表示する3枚の画像(R,G,B画像)に分離し,肉眼でみた発赤状態との比較を行った。その結果,R,G,B値での健全/ほぼ健全群と軽度炎症群間でのt値(P値×10つは,それぞれ3.12(2.3),4.16(0.65),3.29(1.4)であり,軽度炎症群と重度炎症群間は,4.45(0.2),9.18(-0.00001),9.45(-0.00001)であった。また,歯肉各所の発赤状態のコントラストで原画像と最もよく相関した画像は,三原色分離画像の中でG画像であり,歯肉発赤状態の視覚認識においてG値の関与が高い事が明らかになった。今後,修正を加えたG値を用いて歯肉発赤認識アルゴリズムの開発を行う予定である。
著者
角田 正健 渡辺 祐作
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.1128-1134, 1988-12-28
被引用文献数
6 1

口臭を客観的に評価する方法としてガスクロマトグラフの応用は極めて有効である。しかしながら,その設備の大きさ,価格などの点で日常臨床での応用には問題点が多い。そこで今回我々は,臨床のチェアーサイドで簡単に使用でき,口臭のレベルをメチルメルカプタンを指標として,ppm濃度で表現出来る口臭検知器を開発した。この口臭検知器は,酸化第二錫を半導体とした臭いセンサーを用い,揮発性硫黄化合物をキャッチした際に生じる電流変化を,マイクロコンピューターにて演算処理して,ppm濃度で液晶表示するものである。口臭患者の呼気をガスクロマトグラフ並びに口臭検知器で分析比較した結果,両者はほぼ同じ値を示し,測定精度の高いものであった。このような成績から,口臭検知器は簡便かつ客観的に口臭のレベルを判定することができ,日常臨床において有用なものであった。
著者
藤友 崇 森本 佳伸 大井 潤 澤井 典子 石田 幸子 松原 善 一圓 剛 皆川 直人 鴨井 久博 田中 司朗 鴨井 久一
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.70-86, 2018-06-29 (Released:2018-06-29)
参考文献数
24

歯周病のリスク評価ができる自己申告アンケートは,歯周病の早期発見や疫学研究において有効な手段となるが,これまでに統計的,臨床的な妥当性を評価された日本人向けの歯周病リスク評価アンケートが開発された事例はない。本研究では,歯周病のリスクを評価できる日本語版自己申告アンケートを開発することを目的とした。歯周病患者50名と非歯周病患者51名に,歯周病で観察される症状の有無をアンケート形式で回答させた。アンケート回答に対して,多重ロジスティック回帰分析を実施し,歯周病を予測できるアンケート項目を抽出し,アンケートの質問項目の信頼性を確認した。また,ROC曲線解析を実施し,抽出されたアンケート項目による歯周病のリスク予測の精度を検討した。結果,50人の歯周病患者および50人の非歯周病患者を解析対象とした。多重ロジスティック回帰分析と歯周病の臨床的観点から,年齢,歯肉の腫れ,歯の動揺,プラークと歯石,口臭および掻痒感の6つのアンケート項目が自己申告によって歯周病のリスクを予測できる項目であることが分かった。また,ROC曲線解析によりAUCが0.90であった。本研究より,我々は,6つの自己申告アンケートで歯周病のリスクを判定できる日本人向けの歯周病セルフチェックアンケートを開発し,その信頼性,内部整合性及び精度を,40歳から83歳の大学病院歯科を受診した人を対象に検証した。
著者
鈴木 邦治 藤川 謙次 岸田 修 高橋 健作 村井 正大 鈴木 直人 前野 正夫 大塚 吉兵衛 鈴木 貫太郎
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.101-109, 1991-03-28
被引用文献数
12

ヒトの歯槽骨に由来する骨芽細胞様細胞の特性を調べるために,歯槽骨片をコラゲナーゼ処理した後に増殖してくる細胞群(E-AB)と,無処理の骨片から増殖してくる細胞群(N-AB)とに分け,両細胞群の細胞特性を比較検討した。細胞数当りのアルカリホスファターゼ活性値は,E-ABの方がN-ABの約7倍高い値を示した。一方,両細胞群の酸性ホスファターゼ活性値は同程度の値であり,N-ABのアルカリホスファターゼ活性値の50%以下の値を示した。また,酒石酸耐性酸性ホスファターゼ活性値は,両細胞群共に酸性ホスファターゼ活性値の約25%程度であった。両細胞群が合成・分泌するタンパク質を^<14>C-proline標識して比較すると,分子量200K以上およびプロコラーゲン・コラーゲンの分子領域に取り込みの多いタンパク質を認めたが,28Kおよび34K付近のバンドはE-ABの方が明瞭であった。マトリックス層にはその他に40〜50K領域に数種のバンドを認めた。
著者
佐々木 庸子 荒木 正大 目澤 優 Zhitao Wang 金子 博寿 小方 頼昌
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.176-184, 2008 (Released:2008-11-17)
参考文献数
39

低出力レーザーに細胞や組織の修復促進効果があることが知られている。CO2レーザーは, 治療用レーザーと言うよりもむしろ外科用レーザーであるが, 低エネルギー密度で照射することにより, 何らかの生物学的効果が得られると考えられる。骨シアロタンパク質(BSP)は, アパタイト結晶形成能を有し, 石灰化結合組織特異的に発現する非コラーゲン性タンパク質である。本研究では, 低出力のCO2レーザー照射がBSPの転写に与える影響を, 骨芽細胞様細胞であるUMR106細胞を使用して検索した。UMR106細胞をCO2レーザー(3 W, 20sec)で刺激すると, 12時間後にBSP mRNA量の増加が認められた。ラットBSP遺伝子プロモーター配列を挿入したルシフェラーゼコンストラクトを使用したルシフェラーゼアッセイの結果, 同エネルギーのCO2レーザー刺激により, 12時間後にpLUC4(-425∼+60)の転写活性が増加した。CO2レーザー照射による, pLUC4ルシフェラーゼコンストラクトの転写の上昇は, FGF2応答配列とHOX配列に2塩基対の変異を導入すると抑制された。ゲルシフトアッセイの結果, CO2レーザー照射後に経時的に抽出した核内タンパク質と, 逆方向のCCAAT配列との結合に変化は認められなかったが, 3'-FREとHOX配列と核内タンパク質との結合は, 経時的に減少した。以上の結果から, CO2レーザー照射による骨芽細胞でのBSPの転写調節は, ラットBSPプロモーターに存在するFREとHOX配列を介すると考えられた。
著者
池野 直人 本間 博 石川 純
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.350-361, 1976-09-28
被引用文献数
1

It has been reported that the physical character of the diet influences on the periodontium, and soft food has a tendency to cause gingivitis more than hard food. On the other hand, sucrose has an important role for plaque formation, and so it seems logical to consider that sucrose may also have an influence to cause gingivitis, but very few study has performed to clarify the relationship betwees sucrose and gingivitis. The aim of the present study was to investigate the effect of the soft food containing sucrose on the gingiva and to establish an experimental method to cause gingivitis quickly with food control. One adult male Macaca irus monkey was used and the schedule of this experiment was as follows : 1. Preliminaly period (12 days, Hard food, Scaling and Brushing on every 2 days) 2. Control period (30 days, Soft food without sucrose) 3. Preliminaly period (12 days, Hard food, Scaling and Brushing on every 2 days) 4. Experimental period (30 days, Soft food with 20% sucrose) The result of this study indicated that the gingival inflammation during the experimental period was developed more severly and more fast than that of the control period.
著者
関野 愉 相羽 玲子 田代 俊男
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.289-294, 2001-09-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

キシリトール配合製品と溶液, クロルヘキシジンを混合したキシリトール溶液のプラーク沈着抑制効果を比較した。健康な成人10名を被験者とした。材料は蒸留水 (DW), 65%キシリトール配合ガム (XG), 100%キシリトール含有キャンディー (XC), 5%キシリトール溶液 (5%X), 20%キシリトール溶液 (20%X), 5%キシリトール溶液と0.02%クロルヘキシジンの混合液 (XCHX) を用いた。実験開始前, 14日間にわたり専門家による歯面清掃 (PTC) と口腔衛生指導を行った。実験開始時から全ての機械的歯面清掃を中止し, XGまたはXCの場合は1日2回, 2個ずつ摂取するように, 溶液の場合は10mlで1日2回1分間の洗口を行うよう指示した。実験開始時と4日後に診査した (Plaque Index)。診査後PTCと被験者自身によるブラッシングを再開し, 10日後再び歯面清掃を中止し, XGまたはXCの使用, または洗口を4日間行った。以上を6回繰り返した。DWと5%Xの間 (p<0.05), DWと20%Xの間 (p<0.05), DWとXCHXとの間 (p< 0.01) に有意差が認められた。XGとXCによるプラーク沈着抑制効果はDWよりやや優れているが, 有意差はなかった。5%Xと20%Xの使用により有意なプラーク抑制効果がみられた。キシリトール溶液にクロルヘキシジン溶液を混合することによりプラーク沈着効果が高まった。結論として, 高濃度のキシリトール溶液とクロルヘキシジンを混合することによりプラークの形成抑制効果が高まるので, このような形での使用が歯周病や齲蝕の予防に有効であると思われる。
著者
川瀬 俊夫
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.347-352, 2001-12-28
被引用文献数
3 1

歯周病治療の多くは,歯周組織再生を目指し,再生医工学を応用している。GTR膜を用いた歯周組織再生法は早い時期から臨床の現場で行われている。生体材料学的見地からGTR膜を評価し,非吸収性の膜から吸収性の膜への開発がなされてきた。その中でも,異種動物由来の成分を材料にしているものから,人工合成による材料に移行している,あるいはその気配が感じられる。一例をあげればポリ-L-乳酸に期待がもたれている。これと平行して,GTRの一つであるエナメル基質タンパク質(エムドゲイン^<[O!R]>)による再生療法が開発され,臨床的には良好な成績を収めている。術式は異なるものの,歯根膜の組織性幹細胞の動態が鍵を握っている点では共通している。すなわち,この組繊性幹細胞がどのように歯周組織の線維芽細胞,骨芽細胞そしてセメント芽細胞に分化するのかを,ニッチェの概念を導入し,その実態に迫る必要がある。エナメル基質タンパク質が作用するには,第一に,歯根膜の細胞の存在が必須である。それは歯根膜の細胞自ら,多くの組織再生因子を産生しているので,エナメル基質タンパク質はこれらの因子を介して骨髄由来の間葉系幹細胞に働き,歯根膜の組織性幹細胞を骨系の細胞に分化誘導するものと思われる。
著者
織井 弘道 森谷 良智 難波 幸一 海老原 直樹 川本 和弘 伊藤 公一 村井 正大
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.495-502, 1997-12-28
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究は,チタン製インプラントにプラークや歯石が付着した場合を想定し,日常臨床で用いられている種々の清掃法によってチタン表面を処理し,それが培養細胞の初期付着に対してどのような影響を及ぼすのかについて検討したものである。実験材料として,チタンを99.5%以上含むチタン板を実験に供試した。チタン表面にプラークや歯石が付着したことを想定し油性マジックを塗り,それを手用キュレット型スケーラー(HSc),超音波スケーラー(USc),歯面研磨装置(QJ),ラバーカップ(RC:歯面研磨剤を併用),プラスチックスケーラー(PSc)で除去した後の表面粗さ(中心線平均粗さ)を計測した。なお,未処理のチタン板をコントロール(C)とした。次に,そのチタン板を滅菌後,チタン表面にヒト歯槽骨由来骨芽細胞およびヒト歯肉線維芽細胞を播種し,通法に従い3, 6, 12および24時間培養を行い,走査電子顕微鏡により付着細胞数のカウント,細胞形態の観察を行った。その結果,チタン板の表面粗さには,HSc-QJ, HSc-RC, HSc-PSc, HSc-C, USc-QJ, USc-RC, USc-PSc,およびUSc-C間において統計学的有意差が認められた(p<0.05)。走査電子顕微鏡観察によると,HSc, UScによって処理したチタン板上の細胞はCと比較して発育が悪く,付着細胞数も減少傾向にあった。QJでは付着細胞数において減少傾向が見られたが,細胞形態自体にはさほど影響は見られなかった。RC, PScでは細胞形態,付着細胞数ともに良好な結果が得られた。よって,in vitroにおいて,培養細胞の付着様相は粗いチタン表面よりも,平滑なチタン表面のほうが良好であることから,チタン表面がプラークで汚染された場合の清掃法として,プロフィーペーストとラバーカップの併用あるいはプラスチックスケーラーによる方法は,有効であることが示唆された。
著者
難波 幸一 織井 弘道 森谷 良智 内山 寿夫 吉沼 直人 伊藤 公一 村井 正大
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.477-483, 1996-12-28
参考文献数
32
被引用文献数
2

本研究は,チタン表面に形成されたプラークを安全でかつ効果的に除去することのできる清掃法を確立することを目的とし,ラバーカップ,ポリッシングブラシに,各種ポリッシングペースト,浮石沫,水をそれぞれ組み合わせた清掃法が,チタン表面に対してどのような影響を及ぼすのかについて比較検討した基礎的実験である。実験材料として,チタン99.5%以上のチタン板を実験に供試した。チタン表面に油性マジックを塗り,各種清掃法でこれを除去した後の表面粗さを計測した。次に,チタン板を保持装置に固定し,口腔内に装着しプラークを付着させた。このプラークを各種清掃法で除去し,走査型電子顕微鏡を用いてチタン表面性状およびプラークの除去状態を観察し,プラーク付着スコアで評価した。チタンの表面粗さは,全ての清掃法とコントロールの間に統計学的に有意差は認められなかった。また,チタン表面性状およびプラークの除去状態は,48時間口腔内に装着しプラークを蓄積したコントロールと比較し,全ての組み合わせにおいて統計学的に有意差が認められた。この研究結果から各種清掃法は,全ての組み合わせにおいてチタン表面性状を変えることなく短時間でプラーク除去が可能であり,またラバーカップよりもポリッシングブラシを使用した清掃法がプラーク除去効果の高いことが示された。
著者
村岡 宏祐 田中 達朗 久保田 浩三 森本 泰宏 横田 誠
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.121-128, 2008-06-28
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

本症例は, 慢性歯周炎広汎型の患者で, 歯周基本治療により, 咬合機能が改善された際, functional MRI(fMRI)のBOLD(blood oxygeneration level dependent)信号で咬合状態の改善を示す信号変化が確認されたので報告する。患者は60歳女性で, 全顎的な歯周治療を希望して来院した。既往歴は, 高脂血症である。臨床診査およびX線診査によって, 慢性歯周炎広汎型と診断した。歯周基本治療は, Tooth Brushing Instruction, Scaling, Root planingのみとし, 咬合調整は一切行わなかった。患者の同意を得て, 初診時と再評価時に, 咬合力の診査とfMRIを撮影した。初診時のfMRIでは, 噛み締め時に, 弱いBOLD信号を片側大脳皮質一次体性感覚野のみに認めた。歯周基本治療を行うと, 歯周組織, 咬合力の改善を認めた。同時に, fMRIによる脳血流を示すBOLD信号は, 左右対称性を示すと同時に増加傾向を認めた。<BR>この結果は, 慢性歯周炎広汎型の患者に対する歯周基本治療により片側のみの弱い咬合から両側性の強い咬合状態に変化したことをfMRIによりとらえた可能性を示唆する。<BR>日本歯周病学会会誌(日誌周誌)50(2) : 121-128, 2008
著者
佐藤 勝 林 敦子 加登 基弘 新田 裕 並河 勇 白木 雅文 勝谷 芳文 岩山 幸雄 平田 健一 木村 健一
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.407-415, 1985-06-28
被引用文献数
2 2

ヒトの口腔内には鞭毛虫類としてTrichomonas tenax (T. tenax)が生息し,歯周疾患の進展と共にその検出率が高くなることが経験的に知られている。しかし本原虫は培養,純培養が困難であるため,その病原性や生物学的性状は不明である。我々はT. tenaxの培養用に新培地を開発し,この培地がT. tenaxの分離,増殖にも優れていることを確認したので今回は,ヒトの歯肉縁下歯垢中における本原虫の分布と検出率を疫学的に調査した。その結果,T. tenaxの検出率と,被検者の年齢,ポケットの深さ,歯肉炎の程度および歯垢集積量の間には密接な関連性が認められた。また歯周療法がT. tenaxの消長に及ぼす影響を検討したところ,臨床症状の改善に伴ってT. tenaxの検出頻度は低下した。
著者
中村 梢 中村 利明 上塘 正人 立石 ふみ 橋口 千琴 川俣 和弥 波多江 正紀 野口 和行
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.133-143, 2017-09-29 (Released:2017-09-28)
参考文献数
41

本研究は切迫早産 (TPL) 妊婦の歯周組織状態と糖代謝異常の関連を調べることを目的とした。被験者は15名の正常妊娠妊婦, 14名の切迫早産で糖代謝異常の妊婦 (TPL/糖代謝異常), 16名の切迫早産で糖代謝正常の妊婦 (TPL/糖代謝正常) とした。全ての妊婦にプロービングポケット深さなどの歯周組織検査を実施した。被験者から採取した唾液, 歯肉縁下プラーク, 絨毛膜組織のPorphyromonas gingivalis (P. gingivalis), Fusobacterium nucleatum (F. nucleatum), Prevotella intermedia (P. intermedia), Aggregatibacter actinomycetemcomitans, Treponema denticola, Tannerella forsythia (T. forsythia) の検出はPCR法で行った。歯周組織検査結果と口腔内の歯周病原細菌の検出率は, TPL/糖代謝異常とTPL/糖代謝正常の間に有意差はなかった。絨毛膜組織絨ではTPL/糖代謝正常はF. nucleatumとP. gingivalisが検出されたのに対し, TPL/糖代謝異常はF. nucleatum, P. intermedia, T. forsythiaが検出された。正常妊娠妊婦の絨毛膜組織はいずれの歯周病原細菌も検出されなかった。本研究は歯周病が切迫早産妊婦の糖代謝異常のリスク因子と示せなかった。しかし絨毛膜に存在するF. nucleatum, P. intermedia, T. forsythiaが糖代謝異常と関連する可能性を示唆した。
著者
庵原 英晃
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.92-103, 2000-06-28
参考文献数
37
被引用文献数
1

C.ampylobacter rectusは,一端に鞭毛を有する微好気性のグラム陰性桿菌で,ヒトの歯周病と深く関わっていると言われている。本菌には表層構造物としてS-layer,細胞毒性物質などの病原因子が存在する。本研究では,C. rectus に対するモノクローナル抗体を作製し,その検出を行うと共にprobing depth(PD),bleeding on probing(BOP),gingival index(GI)との関連性を解析した。作製したモノクローナル抗体のうち,150kDaのS-layerタンパク質を認識するものをCRT-1,CRT-2と命名した。CRT-2は C. rectus ATCC 33238Slayer保有株と反応したが S-layer 非保有株とは反応しなかった。CRT-3と命名したモノクローナル抗体は60 kDaタンパク質と反応し,Campylobacter showae ATCC 51146 および CCUG 11641 と交差反応した。CRT-2 モノクローナル抗体を用いたdot-blot法におけるC. rectus の検出限界は10^3個であった。歯周炎患者プラークサンプルからの C. rectus の検出率は,PD(p<0.001),BOP(p<0.001),GI(p<0.001)と統計学的に正の相関関係が認められ,C. rectus の感染が臨床症状と強い関わりがあることが示された。
著者
小林 重行 加藤 熙 小栗 威 石塚 正弘 石川 純
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.328-334, 1974 (Released:2010-11-29)
参考文献数
18

Mouth breathing is an important etiological factor of chronic gingivitis and marginal periodontitis as well as dental plaque and calculus. The purpose of this study is to demonstrate (a) the frequency of clinical signs of mouth breathing in school children (b) correlation between 8 individual signs (c) relationship between prevelance of gingivitis (PMA Index) and clinical signs and symptoms of mouth breathing (d) relationship between oral hygiene status (OHI) and each clinical signs. The materials were examined, 1) lipseal insufficiency 2) lipdrying 3) over jet 4) open bite 5) mouth breathing line 6) tension ridge of palatal and lingual surface 7) hypertrophy of tonsils 8) lack of uvular reflex. As the result of this investigation, the followings were concluded. 1) Lip-seal insufficiency, mouth breathing line, hypertrophy of tonsils and lack of uvular reflex were found in more than 50% of children. 2) Lip-seal insufficiency, lip drying, over jet, mouth breathing line and tension ridge were related each other respectively. 3) Excepting hypertrophy of tonsils and lack of uvular reflex, all other signs were individually related to both of OHI and PMA.