著者
久保田 健彦 戸村 淳嗣 田井 秀明 村田 雅史 百瀬 学 吉江 弘正
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.30-40, 2015-03-28 (Released:2015-05-13)
参考文献数
40
被引用文献数
1

テトラサイクリン・エピジヒドロコレステリン含有歯科用軟膏は抗菌薬に抗炎症薬が配合された歯周炎局所治療剤であり,今回,歯周炎罹患歯肉への塗布塗擦による治療の有効性を検討した。新潟大学医歯学総合病院または研究協力3歯科医院を受診し,本研究の文書同意が得られた慢性歯周炎患者32名を対象とした。Supportive Periodontal Therapy(SPT)期で同意取得時にProbing Pocket Depth(PPD):6~8 mm, Bleeding on Probing(BOP)を有する患者を実薬群またはプラセボ群に無作為に割り付け,二重盲検法で比較評価した。薬剤投与は8日間,1日3回毎食後,患者自身が塗布塗擦を行い,臨床検査,細菌学的,生化学的検査による評価を術前,塗布8日目,塗布後21日に行った。臨床および細菌学的指標は両群とも経時的改善を示し,塗布後21日のplaque indexで,実薬群はプラセボ群に比し有意な改善を示した。中等度の炎症のある患者(gingival index:GI=2)を対象とした層別解析では,塗布8日目のBOPで実薬群はプラセボ群に比し有意な改善を示した。以上より,本剤の8日間の塗布塗擦はSPT期におけるGI=2の中等度の歯肉炎症のある歯周炎患者において,歯周ポケットからの出血を減少させる効果が期待できることが示された。
著者
牛村 秀夫 松戸 裕子 田中 ゆり子 筒井 健機
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.76-83, 1995-03-28
被引用文献数
3

歯周疾患用軟膏剤の適用局所における為害作用を推測する目的で,これらの軟膏剤をヒト歯肉由来培養ケラチノサイトに作用させ,その細胞毒性をニュートラルレッド・アッセイ法で定量的に調べた。歯周ポケット注入用軟膏剤の細胞毒性は,ヒノポロン^[○!R]≫テトラ・コーチゾン軟膏^[○!R] >ペリオクリン歯科用軟膏^[○!R]≒テラ・コートリル^[○!R]軟膏であり,ヒノポロンの細胞毒性は,テトラ・コーチゾン軟膏の約1,100倍,ペリオタリン歯科用軟膏やテラ・コートリル軟膏の少なくとも1,300倍強かった。また,塗布用軟膏剤の細胞毒性は,デキサルテン軟膏(口腔用)^[○!R]>デスパコーワ^[○!R]>テトラサイクリン・プレステロン歯科用軟膏^[○!R]≒プレステロン^[○!R]「歯科用軟膏」≒口腔用ケナログ^[○!R]≒歯科用(口腔用)アフタゾロン^[○!R]であった。デキサルテン軟膏(口腔用)およびデスパコーワの細胞毒性は,他の塗布用軟膏剤より少なくとも3倍以上強かった。このように各種歯周疾患用軟膏剤のヒト歯肉由来培養ケラチノサイトに対する毒性がランク付けされ,その強弱が量的に比較できるようになった。これらの結果は,歯肉に対してより為害作用の少ない軟膏剤の選択や適用方法を考慮したり,新規製剤の毒性を評価する際,役立つものと思われる。
著者
伊藤 公一 荒井 法行 菅野 直之 戸村 真一 金子 和夫 村井 正大
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.642-651, 1990-06-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
43
被引用文献数
1 1

健全な歯根を用いルートプ. レーニングを施した象牙質片を作製し, その象牙質片に2%NaF, 2および8% SnF2を塗布したものを口腔内に7および28日間装着させ, これらの薬剤塗布が象牙質面のプラーク形成にどのような影響を与えるか, 併せてブラッシングの影響をも組織学的に観察し, 以下の結論を得た。1. 非ブラッシング試片の7日目において2および8% SnF2群はコントロール群に比べプラーク形成量は小さかった。2. ブラッシング試片では7および28日目いずれにおいても各処理群はコントロール群と比較しプラーク形成量に差は認められなかった。3. 非ブラッシングおよびブラッシング試片を比較するとブラッシング試片が, いずれの条件においてもプラーク形成量は小さかった。4. 露出歯根象牙質面のプラーク抑制にSnF2の局所塗布が有効であることが示唆された。
著者
鴨井 久一 玉澤 修 岡本 浩 渡辺 隆 湊 貞正 服部 惇 岩田 正之
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.221-226, 1978-09-28 (Released:2010-07-16)
参考文献数
4

The purpose of these experiments are to detect on the stability of dextranase that was absorbed through either oral mucosa or skin of animals.The methods and materials are described as follows.MethodOne is the radioimmunoassay with 125I (RIA). (limited detection 25ng/ml)The other is enzyme activity (EA). The absorption through skin were detected with radioimmunoassay, other enzyme activity.Only the hair of rabbits on the back are trimmed, the skin was injured and dextranase was dressed on it.The absorption through oral mucosa.Gingivae in the mandibular anterior portion are applied for this research.Only control group is covered on lower oral mucosa, test group is injured in the marginal gingivae with dental hand instruments.The result was obtained as follows.(1) In control group, dextranase absorption into the tissue was not detected in normal skin, whereas it was detected on the injured skin of rabbits.(2) Neither normal oral mucosa nor injured one as to dextranase absorption was detected.(3) Dextranase absorption by means of subcutaneous injection to rabbits was detected decreased rapidly on the half life by two hours.(4) The absorption of dextranase was not significant factor as to surface active agents.
著者
大墨 竜也 竹中 彰治 坂上 雄樹 若松 里佳 寺尾 豊 大島 勇人 興地 隆史
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.291-301, 2014-09-19 (Released:2015-02-18)
参考文献数
49

本研究では,リステリン®の刺激性や使用感の改善を意図して開発された新規アルコール非含有洗口液®ナチュラルケア;N 群)の Streptococcus mutans 人工バイオフィルムに対する浸透性と殺菌能を既存洗口液[Listerine® Zero(Z 群),リステリン®フレッシュミント(F 群)および 0.12%グルコン酸クロルヘキシジン含有洗口液(CHG 群)]との比較により評価した。人工バイオフィルムはガラスベースディッシュ上で 24 時間嫌気培養することにより作製した。洗口液の浸透性は calcein-AM で染色したバイオフィルムの底面の蛍光消失を共焦点レーザー顕微鏡で経時的に解析することにより評価した。殺菌能は 30 秒作用後の生菌数測定およびバイオフィルム底面の Live/Dead 染色像により評価した。その結果,各洗口液とも 50%蛍光消失時間はバイオフィルムの厚みと正の相関を示し,N 群の浸透速度はZおよびF群と同等かつ CHG 群より有意に高値であった。 生菌数はN,ZおよびF群は同等で共に CHG 群より有意に低値であった。また, Live/Dead 染色像はN,ZおよびF群とも 99%以上が propidium iodide (PI)陽性細菌であり陽性率は CHG 群より有意に高かった。以上の結果から,N 群の浸透性と殺菌能は,Z 群および F 群と同等かつ CHG 群より有意に優れていることが示された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(3):291-301,2014
著者
渡辺 久 石川 烈 小勝 弘明 宮下 元 鈴木 丈一郎 新井 高 中村 治郎 岡田 昭五郎
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.711-718, 1993-12-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
27

ポビドンヨード配合歯磨剤の有用性を検討するために, ポビドンヨード, 酢酸トコフェロール, 塩化ナトリウム, エピジヒドロコレステリンを配合した薬用歯磨剤「PIP」と既に有用性が認められているグルコン酸クロルヘキシジンを配合した同種の薬用歯磨剤「NP」との比較を51症例につき臨床評価を行った。その結果, 薬用歯磨剤「PIP」は使用開始2週間目および4週間目で「NP」と比較して全症状で改善点数が優り2週間目では腫脹に, 4週間目では出血に有意差がみられた。有効率については2週間目で「PIP」59%, 「NP」39%, 4週間目で「PIP」78%, 「NP」59%でともに「PIP」が有意に優り, 歯周疾患の予防, 改善に有効であることが示唆された。
著者
濱田 哲 宮田 裕之 鴨井 久一
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.534-553, 1990-06-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
41

本研究は歯周ポケットをポビドンヨード液 (PVP-I) で洗浄し, 経週的にその変化を臨床症状および細菌叢の推移を検索したものである。歯周ポケット4mm以上を有する16名を対象に, 前歯部を無作為にTest群とcontrol群とに抽出した。Test群として, PVP-I群および蒸留水群によるポケット洗浄を行ない, control群は非洗浄でプラークコントロールのみを行なった。臨床症状の改善がみられた臨床パラメータは歯肉溝滲出液 (GCF) と歯肉溝底部の出血 (GBI) である。いずれもポケットの深さ4≦PD<6mmおよびP≧6mm以上で統計的に有意差が認められた。細菌検査の結果, PVP-1群は, control群に比べてわずかな球菌の増加と運動性桿菌の減少がみられた。分離菌の部位別変動は, . B. gingiValis, B. intermedius, A. actinomycetemcomitansは, PVP-I群では減少および消失がみられた。すなわち歯周ポケットへのPVP-I群の洗浄は蒸留水群およびcontrol群に比べてポケット底部の炎症の抑制には有効であることが示唆された。
著者
鈴木 丈一郎 清水 伸宏 千 錫男 曽 振江 藤井 美弥 伊藤 嘉彦 関 規子 渡辺 孝章 新井 高 中村 治郎
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.929-938, 1992-12-28
被引用文献数
16 2

本研究は,代表的な電動歯ブラシ4種と手用歯ブラシ1種のプラーク除去効果とブラッシング圧について比較検討した。実験は,被験者に本学保存科医局員15名を用い,ブラッシングを行わせ,前後のプラークのスコアーを測定し,プラーク除去率を算出した。ブラッシング圧は渡辺のブラッシング圧測定装置を一部改良し測定した。また,術前術後のO'Learyらのプラークスコアーと為害作用などについてのアンケート調査を行い以下の結果を得た。(1)プラーク除去率は,各種歯ブラシ間に統計学的に有意差は認められなかった。(2)ブラッシング圧は,パワーハブラシ^[○!R]とINTERPLAK^[○!R],プロクトレギュラー^[○!R]とINTERPLAK^[○!R]間に,有意差が認められた(P<0.05)。(3)電動歯ブラシでも,隣接面のプラーク除去は不十分であった。(4)振動型の電動歯ブラシに比べ反転型のほうが歯肉に擦過傷を起こし易かった。
著者
伊藤 豊 加藤 熈 久保木 芳徳
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.56-66, 1994-03-28
被引用文献数
19 4

本研究は,リコンビナントヒトBMP-2(rhBMP-2)を歯周治療に応用するため,担体としてウシ真皮より抽出しテロペプチドを除去したコラーゲンより作製した強化コラーゲン線維膜(FCM3)を用いた場合の有効性を検討する目的で,12週齢成体ラットの背部皮下と口蓋部に移植実験を行い,病理組織学的に評価した。その結果,移植3週後背部皮下では骨形成はみられなかったが,口蓋部ではrhBMP-2を1.0μgと2.0μg配合した群で骨形成が観察された。またその骨形成の過程は,1週目頃担体の外側部で盛んになり,3週目には母骨と連続し担体周囲を覆い,その後は担体内部へと向かい6週後には母骨とほぼ一体化していた。炎症反応はほとんどみられなかった。以上の結果より,FCM3を担体としてrhBMP-2を歯周治療へ応用できる可能性が高いと考えられた。
著者
大森 みさき 宮崎 晶子 佐藤 治美 片野 志保 田邉 智子 将月 紀子 今出 昌一 佐野 晃
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.36-43, 2005-03-28
被引用文献数
5 5

本研究の目的は口臭治療における舌清掃の有効性を評価することである。被験者は舌苔を認める患者および本学職員と学生であった。最初に舌清掃指導して1ヵ月後に舌苔付着量と官能試験を行い,両方に改善が見られることを確認した。その後,舌苔付着を認める26人の被験者の官能試験と機械的測定により口臭の強さを評価した。また,同時に口腔清掃状態,Probing Pocket Depth(PPD),Bleeding on Probing(BOP),舌苔付着度を舌清掃前後において評価した。初回の診査の後,被験者に舌ブラシ(ジャックス)を使用して1日1回は舌苔を除去するよう歯科衛生士または歯科医師が指導した。舌苔の除去は舌の表面に舌苔が見えなくなるまで舌ブラシでこするように指導した。口臭測定はポータブルサルファイドモニターとガスクロマトグラフィを使用し,揮発性硫黄化合物(VSC)濃度の機i械的測定と官能試験を行った。被験者には測定の2時間前から歯磨き,飲食,洗口,喫煙を避けるよう指示した。舌苔付着程度は付着の厚さと範囲によって5段階に評価した。清掃後の診査は1週間から1ヵ月後に行った。舌清掃後の診査時には口臭と舌苔付着量は改善していたが,PPD,BOPやプラーク付着状態には影響がみられなかった。またVSC濃度と舌苔付着度との間には有意な相関が認められたが,BOPやプラーク付着状態との間には有意な関係はみられなかった。口臭の予防のために舌清掃を推奨していく必要性があると思われた。