著者
鈴木 亮一 島田 昌和 森本 匡洋 神野 信夫 鈴木 周二 余戸 拓也 原田 恭治 道下 正貴 原 康
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia and Surgery
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.45-52, 2023 (Released:2023-10-17)
参考文献数
30

3歳4ヶ月齢の避妊雌のドーベルマン・ピンシャーが、右後肢の跛行が進行していたため紹介来院した。整形外科的検査では股関節の可動域が減少し、右大臀筋および大腿部骨格筋の萎縮が明らかに認められた。コンピュータ断層撮影では右坐骨腹側から右大腿骨転子窩尾側に伸びる骨塊が認められた。Von Willebrand病1型遺伝子のDNA検査では遺伝子変異は認められなかった。骨塊は外科的手術により切除され、組織学的に化骨性筋炎と診断された。運動機能は顕著に改善し、術後363日目においても再発は認められなかった。
著者
古賀 靖啓 十川 英 齋藤 靖生 三浦 直樹 野口 亜季 藏元 智英 藤木 誠
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia and Surgery
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.53-58, 2023 (Released:2023-10-17)
参考文献数
16

体壁の悪性腫瘍は肋骨を含めた広範囲な切除が必要な場合がある。肋骨切除による主な合併症はフレイルチェストの発生であり、6本以上の肋骨切除は推奨されていない。犬の胸壁に発生した脂肪肉腫に対して6本の肋骨を含めた切除を行った後、チタンプレートで頭側2本の肋骨再建を実施した。術後フレイルチェストの発生はなく、呼吸状態も安定していた。プレートによる肋骨再建により機能的な胸壁再建を可能にすると考えられた。
著者
田村 純 大山 紀彦 三木 伸悟 中村 健介 木之下 怜平 奥村 正裕
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia and Surgery
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.15-22, 2023 (Released:2023-04-25)
参考文献数
22

中等度大動脈弁逆流(AR)、軽度僧帽弁逆流および動的左室流出路閉塞を併発する雑種犬に肛門嚢腫瘍摘出術を全身麻酔下で実施した。麻酔中は観血的動脈血圧(IABP)測定を実施し、平均および拡張期血圧低値を特徴とする低血圧からARの関与を疑い、アトロピン投与による積極的な心拍数上昇およびドパミン投与で対応した。ARを伴う犬の麻酔中循環管理で、IABPによる評価と人医学の知見に基づいたAR関連性低血圧の治療法は有用と考えられた。
著者
高橋 文孝 本阿彌 彩佳 赤木 浩之 菊地 勇輝 伊藤 大輔 畠山 祥明 土岐 美苗 藤田 幸弘 原 康 山口 伸也
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia and Surgery
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.7-14, 2023 (Released:2023-04-25)
参考文献数
20

第7頸椎頭側成長板骨折を受傷した幼猫2頭に対して、頸部腹側正中アプローチを行い、骨折整復およびチタンスクリューとポリメチルメタクリレートを使用した椎体固定術を実施した。2症例ともに術後徐々に、第5頸椎腹側部に骨棘形成の進行を認め、1症例では、胸郭および胸椎頭側部の変形所見が認められた。骨折の発症要因は不詳であるが、術後、インプラントの折損や緩みは認められず、臨床症状は改善し、歩行可能となったことから、本研究で用いられた手法は有効な治療選択肢の一つになりうる可能性が示唆された。
著者
柑本 敦子 伊東 輝夫 内田 和幸 チェンバーズ ジェームズ 小島 一優 椎 宏樹
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia and Surgery
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.30-35, 2022 (Released:2022-12-21)
参考文献数
25

去勢雄の雑種猫が、喉頭尾側の気管腫瘤により急性の呼吸困難を示した。気管切開術による減量によって呼吸状態は速やかに改善し、患猫はその日に帰宅した。摘出した腫瘤は病理組織検査、免疫染色、遺伝子検査からび漫性大細胞B細胞性リンパ腫と診断された。細胞診に基づき手術当日からCOP療法を16回(5サイクル)、続いてドキソルビシン治療を4回実施して治療を終了した。術後958日を過ぎた現在も再発することなく生存中である。
著者
坂口 裕亮 西田 英高 田中 利幸 田中 美有 金田 昌啓 淡路 俊喜 秋吉 秀保
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.21-24, 2021 (Released:2021-07-06)
参考文献数
7

12歳齢、去勢雄のワイマラナーが急性発症した四肢不全麻痺を主訴に来院した。病変は第5-6頸椎間左側に寄ったⅠ型椎間板ヘルニアだと診断し、片側椎弓切除術を実施した。術中、脱出した椎間板物質を覆う膜状構造物を剥離すると多量の出血が生じた。椎間板物質摘出後に術野の確認を行ったところ、膜状構造物は内椎骨静脈叢であった。本症例では、側方に脱出した椎間板物質によって、内椎骨静脈叢が背外側に圧排されることにより血流が遮断されていたため、内椎骨静脈叢の確認が困難であった。
著者
鈴木 敏之 奥田 綾子 中川 恭子 中野 康弘 楢崎 陽香
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.14-20, 2021 (Released:2021-07-06)
参考文献数
17

上部気道炎とホルネル症候群の徴候を示す18ヶ月齢の猫が来院した。内科的治療に効果を示さなかったので、CT検査を実施した結果、右鼓室胞と鼻咽頭部に軟部組織塊を確認した。全身麻酔下で軟口蓋切開によりアプローチして、耳管咽頭口から鼻咽頭部に出ているポリープを除去したところ、呼吸障害は改善したが神経徴候は持続した。その1ヶ月後、MRI検査所見に基づいて、腹側鼓室胞切除術により右鼓室胞内に充満する炎症組織を除去したところ、術後に臨床症状の悪化も認められず、神経徴候はほぼ改善した。2回の手術で摘出した組織は、組織学的に炎症性ポリープと診断された。本症例の経過から、猫では鼓室胞と鼻咽頭の炎症性ポリープによって上部気道障害とホルネル症候群が生じることあり、その治療として両部位の病巣切除が必要になりうることが示唆された。手術から16ヶ月後に鼻咽頭部から採取した検体のPCR検査ではMycoplasma felisが陽性であったが、この感染が鼻咽頭ポリープの原因であるとの結論には至らなかった。
著者
村上 善彦 中野 康弘 加藤 太司 中川 恭子 南 毅生
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3+4, pp.36-40, 2020 (Released:2021-02-16)
参考文献数
9
被引用文献数
1

前縦隔に異所性甲状腺癌が発生した犬に外科手術を行った3例を経験した。3症例はCT検査を行い、他臓器への浸潤、転移、胸水を認めなかったため、細胞診、病理組織検査後、外科手術を行った。術後、症例1、3はそれぞれ1,050、1,420日経過しているが、再発転移なく良好に経過している。また、症例2は術後2,925日に腫瘍とは関連なく死亡した。症例の集積による検討が必要ではあるが、前縦隔に発生した異所性甲状腺癌は、他臓器に浸潤や転移がない場合、外科手術を行うことで良好な予後が得られる可能性が考えられた。
著者
井上 寛也 砂原 央 谷 健二 井芹 俊恵 堀切園 裕 板本 和仁 伊藤 晴倫 中市 統三
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3+4, pp.41-45, 2020 (Released:2021-02-16)
参考文献数
11

12歳齢、雄のミニチュアダックスフンドが急に発症した嘔吐と食欲不振を主訴として、山口大学動物医療センターに来院した。血液検査では肝酵素と炎症マーカーの上昇が見られた。また、腹部の超音波検査ならびにX線CT検査では、胆嚢内にガスの貯留と結石が認められた。また、胆嚢内のガスの一部は腹腔内にも存在している可能性が示唆され、胆嚢破裂が疑われた。試験開腹では、肉眼的に重度な炎症を伴い、肝葉と癒着した胆嚢が認められた。胆嚢は肝葉との癒着の剥離の後に切除され、切除された胆嚢は肉眼的に内外の2層に解離しており、病理組織学的検査では重度の壊死を伴う化膿性炎症が認められた。また、その内容物から腸球菌が分離された。以上のことから、本症例は腸球菌の胆嚢内への感染による胆嚢壁の損傷を伴った気腫性胆嚢炎と診断された。動物の手術後の回復は良好であった。
著者
松本 淳 奥田 綾子 内田 佳美 小儀 直子 小儀 悦子
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3+4, pp.52-57, 2020 (Released:2021-02-16)
参考文献数
12

5歳、日本猫、避妊済みの雌猫が食欲不振と開口障害を主訴に来院した。一般身体検査で、左側頭部に硬性の腫瘤性病変を認め、FeLV検査は陰性であった。その腫瘤性病変に対し、診断と減容積を目的とする切除生検を行い、骨軟骨腫と病理組織診断された。その後、2回の外科的切除を実施したが、完全切除には至らず、開口障害の改善にとどまった。切除生検後53ヶ月目から腫瘍病変の増大速度の低下とレントゲン透過性の亢進像が認められ、最後の59ヶ月間では1.3 mmの増大にとどまった。16歳時に骨軟骨腫とは別の要因により死亡した。約10年間の長期的経過観察中、腫瘍は存在したものの、転移はなく、開口障害もなく、通常の摂食行動が可能であった。
著者
柑本 敦子 伊東 輝夫 内田 和幸 チェンバーズ ジェームズ 椎 宏樹
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.9-13, 2017

8 歳、避妊雌のジャック・ラッセル・テリアに急性細菌性腹膜炎が認められた。開腹手術で空腸に2つの穿孔部位が見つかり、それぞれを切除し、病理組織検査と免疫染色から組織球性肉腫と診断された。術後は順調に回復し、カルボプラチンの投与を7回行い、術後185日目の慢性下痢による死亡時まで穿孔性腹膜炎や腫瘤の再発はみられなかった。本症例は犬の小腸原発組織球性肉腫の最初の報告例であるが、本腫瘍では小病巣でも自然穿孔が生じる可能性があり、それに対しては手術切除が有効であることが示唆された。
著者
井芹 俊恵
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-7, 2020 (Released:2020-08-26)
参考文献数
46

オピオイドはその強力な鎮痛効果により周術期疼痛管理に重要であることは確かだが、煩雑な麻薬管理が必要であり、大量に投与した場合の術後の疼痛過敏や術後早期の食事開始を妨げる消化管運動の抑制、あるいは人医療では医療用オピオイドの乱用などからマルチモーダル鎮痛などの鎮痛方法を組み合わせることでオピオイドの使用量を減らす試みがされている。そのため最近、局所麻酔薬を用いた局所麻酔が注目されている。強い鎮痛効果による外科的ストレスの抑制、呼吸抑制がなく、術後の消化管運動を抑制しない点などに加え、抗炎症効果による周術期の過剰な免疫応答を抑制し、また、腫瘍免疫を含む免疫機能を抑制しないことから、麻酔方法の選択が患者予後に影響する可能性が考えられる。腫瘍疾患症例動物への予後に関する臨床研究としては今後大規模な前向き研究の結果が待たれる。
著者
堀切園 裕 石垣 久美子 西村 麻紀 飯塚 恵悟 南雲 隆弘 関 真美子 枝村 一弥 賀川 由美子 浅野 和之
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3+4, pp.20-25, 2018 (Released:2019-06-27)
参考文献数
20

前胸部腫瘤を主訴に、12歳齢、去勢雄のチワワが来院した。初診時に患者は無症状であったが、約5ヶ月間で腫瘤が増大するとともに発咳を呈するようになった。第184病日に胸骨正中切開による前胸部腫瘤摘出術を実施した。腫瘤は前大静脈や気管を圧迫し、周囲組織と癒着していた。摘出した腫瘤の内部は広範囲で壊死が起こっていた。病理組織学的診断は甲状舌管遺残腺腫であり、腫瘤摘出後に患者の臨床症状は改善し、良好な経過が得られた。本疾患は犬の前縦隔腫瘍の鑑別診断として考慮する必要があると考えられた。
著者
前田 憲孝 神田 鉄平 岩本 咲 尾高 里美 貝原 美由 金安 真央 斉藤 有衣 深町 沙紀
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3+4, pp.26-32, 2018 (Released:2019-06-27)
参考文献数
16

手術時手洗い時に使用する手洗い方法・製剤による消毒効果・手指の皮膚に与える影響の違いを検討した。その結果、擦式手指消毒剤の種類、手洗い方法にかかわらず、手洗い直後、4時間後共に明らかな消毒効果が認められた。手洗い方法による皮膚の保湿性の違いは認められなかったが、フォーム状製剤の方が、ジェル状製剤に比べ手洗い2時間後の時点での保湿性に優れていた。利便性、費用、皮膚への影響等を総合的に判断すると、フォーム状製剤を用いたウォーターレス法は手術時手洗いとして非常に有効な方法であると考えられた。
著者
原口 友也 中島 敦 木村 志穂 伊藤 晴倫 小坂 周平 松木 秀多 西川 晋平 板本 和仁
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1+2, pp.8-13, 2018 (Released:2018-12-08)
参考文献数
16

腹腔鏡・内視鏡合同手術(Laparoscopy and endoscopy cooperative surgery:LECS)は、ヒト早期胃粘膜下腫瘍に対する胃局所切除術のための新しい術式として考案され有用性が認められているが、獣医療においては一般的な手術法ではない。本検討では、健常ビーグル犬を用いLECS予防的胃固定術の有用性を評価した。LECS予防的胃固定術は他の胃固定術と比較して、よりシンプルで容易な術式であり、周術期合併症も認められなかった。そのためLECSは、安全性が高く侵襲度が低く、予防的胃固定術の術式として有用性が高いと考えられた。しかし、本検討は実験動物を用いて行っているため、今後は症例において有用性を評価する必要があると考えられた。
著者
三浦 京夏 原口 友也 小田 康喬 西川 晋平 谷 健二 下川 孝子 下山 由美子 板本 和仁
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1+2, pp.14-19, 2018 (Released:2018-12-08)
参考文献数
12

被嚢性腹膜硬化症(Encapsulating peritoneal sclerosis:EPS)とは、腹腔内臓器周囲の線維性硬化と癒着を特徴とする稀な疾患である。今回、我々はEPSを疑うイヌ3症例において画像診断を実施したところ、ヒトと同様に臓器を被覆する肥厚した被膜や、消化管の集束などの特徴的な所見が得られた。また、各症例に外科的/内科的な治療を実施した結果、その予後はヒトと同様、外科的整復の成績に左右される可能性が示唆された。
著者
座間 ともね 別府 雅彦 難波 裕之 難波 信一 枝村 一弥
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.53-58, 2016 (Released:2017-05-17)
参考文献数
24
被引用文献数
1

ミニチュア・ダックスフント、12歳、去勢済み雄が間欠的な歩様異常を主訴に来院した。画像診断ならびに病理組織学検査より第12胸椎の孤立性骨形質細胞腫 (SOP) と診断された。ゾレドロン酸、メルファランならびにプレドニゾロンに極めてよく反応したが、2年後にゾレドロン酸の副作用と思われる下顎骨の骨壊死が発現した。本症例は、SOPが発生した犬に対するゾレドロン酸の副作用についての初報である。
著者
灰井 康佑 牧野 仁 鹿野 恭平 互 梨奈 金山 智子 諸角 元二
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.21-26, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
12
被引用文献数
2

2006年4月から2015年4月にかけて、多発性頸部椎間板ヘルニアを起こした体重10 kg以下の小型犬種19例に対し、連続した背側椎弓切除を行ったところ、術後に一過性の症状の悪化は認められたものの、全例にて歩行は改善し(平均8.5±4.72日)、合併症は認められなかった。2例のみ術後約3ヶ月経過したところで頸部痛を呈したが、保存療法にて改善した。以上のことから、小型犬種の頸部多発性椎間板ヘルニアに対する連続背側椎弓切除は有効な手術手技であると思われた。
著者
鈴木 陽彦 菅野 信之 赤澤 明彦 早川 陽子 手塚 あさみ 森 啓太 松浦 功泰 奥中 麗衣 白石 陽造
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.33-37, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
8

15歳3ヶ月齢の未去勢雄のミニチュア・ピンシャーが摂食困難を主訴に来院した。口腔内検査にて舌小体付着部正中にSCCを認め、腫瘍の完全切除を目的に舌全摘出術を実施した。術後は胃瘻チューブによる補助的な飲水管理を必要としたが自力採食は可能であり、術後18ヶ月生存した。悪性度が極めて高い舌SCCに対しても舌全摘出術を行うことで局所再発を防ぎ、飼主が満足できるQOLを維持することが可能であった。
著者
大久保 雄作 三品 美夏 茅沼 秀樹 渡邊 俊文
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.31-35, 2015 (Released:2015-11-24)
参考文献数
8

排尿困難を主訴として、8歳、去勢雄のゴールデン・レトリバーが来院した。肉眼的に症例の会陰部は腫脹しており、逆行性尿路造影検査では会陰部尿道内にテニスボール大の腫瘤性病変が確認された。排尿困難の改善を目的として、会陰部正中から外科的にアプローチし、腫瘤周辺の尿道の一部分とともに腫瘤を摘出し、同時に外尿道口の再建を行った。摘出した腫瘤は病理組織学的に平滑筋腫と診断され、摘出後は良好な臨床経過が得られた。