著者
島倉 大輔 田中 健次
出版者
一般社団法人 日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.104-112, 2003-07-15 (Released:2018-06-15)
参考文献数
7

医療業界では,組織事故と考えられる医療事故が多く発生している。組織事故を防止するために,医療現場では医師や看護士など人間による防護の多重化が行われている。しかし,事故原因を取り除くために実施された防護が,新たな事故を誘発したり,防護作業を行う作業者が多重化に安心して抜きを行う恐れがあり,多重化はかえって事故を招く危険性がある。本研究では,医療現場など人間による防護の多重化の有効性に着目する。人間による防護の多重化は,複数の人間が同質の防護作業を行う同種防護の多重化と,複数の人間が異なる作業を行う異種防護の多重化に分類される。本研究では,同種防護と異種防護の多重化に相当する模擬実験により,人間による防護の多重化の有効性の検証を試みた。結果として、同種防護を多重化する場合,防護の二層への絞込みがもっとも事故防止に有効であること,通常事故防止に有効であると考えられている三層以上の多重化は逆効果であり,むしろミスの発生率が下がる可能性があることが明らかとなった。一方,異種防護を多重化する場合は,防護を多重化するほど,事故防止に有効であることも明らかになった。
著者
田中 健夫
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.119-134, 2021-03-30

It is an important practical issue to understand and intervene in the minds of perpetrators in clinical psychological support for those who have committed harmful acts. It is important to distinguish between the perpetrator’s own past experiences of victimization, such as being abused, and their sense of victimhood. One of the origins of victimhood is identification with the aggressor’s guilt that was internalized through the experience of being abused. This paper discusses the importance of the client’s development of guilt, intervening to understand the client’s train of thought, and sharing the psychological circumstances that compel the client to become dissociative.臨床心理学的な支援において、加害行為に至った者の心の中にある被害体験と被害者意識をいかに理解し取り扱っていくのかは重要な実践的課題である。加害者が実際に経験をした過去の被虐待などの被害体験と、被害者意識とを識別することがまずは重要である。被害者意識は、被虐待経験を通して内面化された攻撃者の罪悪感への同一化にひとつの起源がある。罪悪感を発達させること、クライエントの思考の筋道を把握するための介入、解離的にならざるをえない心的状況を共有していくことの大切さについて考察した。
著者
大塚 浩仁 田中 健作 斉藤 晃一 森田 泰弘 加藤 洋一 佐伯 孝尚 山本 高行 後藤 日当美 山本 一二三
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.148-154, 2015-05-05 (Released:2017-06-12)
被引用文献数
1

イプシロンロケットは2013年9月14日に惑星分光観測衛星「ひさき」の打上げに成功し,目標とした軌道投入精度を達成し,新規に開発した誘導制御系の性能を遺憾なく発揮した.イプシロン開発では,惑星探査機「はやぶさ」を投入したM-Vロケットの誘導制御系の性能を継承しつつ新たな技術革新にチャレンジし,M-Vの機能,性能をさらに向上させた誘導制御系を実現した.最終段には信頼性の高い低コストなスラスタを用いた液体推進系の小型ポストブースタ(PBS)を開発し,新たに導入した誘導則とともに軌道投入精度を飛躍的に向上させた.フライトソフトにはM-Vで蓄積した各種シーケンスや姿勢マヌーバ機能をユーティリティ化して搭載し,科学衛星ユーザ等の多様な要望に容易に対応できる機能を実現し運用性を高めた.
著者
相川 充 藤田 正美 田中 健吾
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.95-103, 2007

The present study investigated the validity for Japanese students of a vulnerability model of social skills deficits proposed by Segrin (1996). According to the model, it was assumed that social skills deficits were not causes or consequences of depression, loneliness, and social anxiety. Rather, they constituted vulnerability factors, and it was the interaction of social skills deficits and negative life events that predicted the development of depression, loneliness, and social anxiety. Two hundred and fifty-three students recorded scales of social skills, depression, loneliness, and social anxiety three times at intervals of three months. Results indicated that the interaction of social skills deficits and negative life events predicted the development of depression, loneliness, and social anxiety significantly in some cases, but social skills deficits alone were also significant in their prediction. It was considered that the method of using a multiple regression analysis following Segrin (1996, 1999) would not be appropriate for proving the model. The validity of lumping depression, loneliness, and social anxiety together and applying them to the same model was discussed.
著者
葛西 豊高 川辺 晃一 村松 誠司 宮原 庸介 福田 裕昭 江藤 宏幸 中原 守康 今井 崇紀 田中 健丈 新井 基展
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.1554-1560, 2019 (Released:2019-08-20)
参考文献数
16

64歳,男性.食欲不振・下痢により,9カ月間で23kgの体重減少を認めた.高血圧症に対して,オルメサルタン内服歴が10年間あった.上下部内視鏡検査では原因となる疾患を認めず,小腸カプセル内視鏡検査で,十二指腸・小腸の絨毛萎縮を認めた.十二指腸粘膜生検ではアミロイド沈着,異型リンパ球は認めず,便培養・便虫卵検査が陰性であることから,セリアック病を疑った.オルメサルタン内服中であることから,セリアック病と同様の臨床像を呈するオルメサルタン関連スプルー様腸疾患を疑い,オルメサルタンを中止とした.その後,食欲不振・下痢・体重減少は改善し,4カ月後の小腸カプセル内視鏡検査で,十二指腸・小腸の絨毛萎縮の改善を認めた.慢性下痢の原因として,オルメサルタン内服中の場合には,オルメサルタン関連スプルー様腸疾患を念頭におくべきである.小腸カプセル内視鏡検査は小腸絨毛の萎縮評価に有用であった.
著者
島倉 大輔 田中 健次
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.104-112, 2003-07-15
被引用文献数
4

医療業界では,組織事故と考えられる医療事故が多く発生している。組織事故を防止するために,医療現場では医師や看護士など人間による防護の多重化が行われている。しかし,事故原因を取り除くために実施された防護が,新たな事故を誘発したり,防護作業を行う作業者が多重化に安心して抜きを行う恐れがあり,多重化はかえって事故を招く危険性がある。本研究では,医療現場など人間による防護の多重化の有効性に着目する。人間による防護の多重化は,複数の人間が同質の防護作業を行う同種防護の多重化と,複数の人間が異なる作業を行う異種防護の多重化に分類される。本研究では,同種防護と異種防護の多重化に相当する模擬実験により,人間による防護の多重化の有効性の検証を試みた。結果として、同種防護を多重化する場合,防護の二層への絞込みがもっとも事故防止に有効であること,通常事故防止に有効であると考えられている三層以上の多重化は逆効果であり,むしろミスの発生率が下がる可能性があることが明らかとなった。一方,異種防護を多重化する場合は,防護を多重化するほど,事故防止に有効であることも明らかになった。
著者
田中 健作 井上 学
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.91-103, 2017 (Released:2017-08-12)
参考文献数
17

本稿では,バス路線運営における自治体間関係の特質を見出すために,中心集落規模の異なる中部地方の名張市周辺ならびに栄村周辺の2地域を事例に,山村の県際バス路線の運営枠組みを検討した。両地域ともに,周辺山村側の自治体や集落では,経済的機能や地形条件といった地理的な制約の下で受益を最大化させるために,生活圏や行政域に対応した領域横断的な交通サービスの設定を目指した。その際には県際バス路線に対する広域的な視点よりも,地域の中心周辺関係と行政域によって形成された利害関係が影響しているため,周辺性が高く財政力の弱い自治体ほど財政負担を増大させていた。自治体間のバス路線の運営枠組みは,地理的条件に基づく利害関係の差異によって,周辺性の高い山村側の負担や制約が大きくなる構造にあるといえる。
著者
田中 健二
出版者
The Japanese Association for the Study of Popular Music
雑誌
ポピュラー音楽研究 (ISSN:13439251)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.80-95, 2006 (Released:2009-10-29)
参考文献数
30

アメリカの伝統的カントリーミュージックの歌詞の中には、暴力と死を歌ったものがある。男が女を理由も言わずに惨殺する歌詞がよく見られる。なぜなのか。カントリーミュージックの成立・発展過程を考えれば、アメリカの南部性も考察しなければならないことが分かる。その南部の人達の内面的精神を、いくつかの歌詞を例にとり、本論文では論じていく。そして南部のゴシック性をともなった歌詞は現代カントリーにまで受け継がれているのだろうか。現代アメリカのカントリー歌詞が南部の人達の気質を継承しつつ、時には荒々しい男の描写を好んで歌う実態を検証する。カントリーミュージック歌詞の残忍性と多様性を、その継続性の観点から検証する。
著者
梅本 貴豊 田中 健史朗
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.138-151, 2012-11-30 (Released:2013-02-11)
参考文献数
30
被引用文献数
11 7

本研究では大学生における動機づけ調整方略尺度を作成し,その尺度の構成概念妥当性と,動機づけ調整方略が学習の持続性と学習の取り組みに与える影響について検討した。まず大学生156名に自由記述の質問紙調査を実施し,動機づけ調整方略尺度を作成した。次に大学生272名に動機づけ調整方略尺度,CAMI (Control, Agency, and Means-Ends Interview),持続性の欠如,学習の取り組みからなる質問紙調査を実施した。探索的因子分析の結果,7つの動機づけ調整方略が明らかにされ,またCAMIとの関連を通してその尺度の一定の構成概念妥当性が確認された。そして重回帰分析を用いて,自律的調整方略,協同方略,成績重視方略が学習の持続性と学習の取り組みに与える影響について検討したところ,自律的調整方略が促進的な影響を,協同方略と成績重視方略が抑制的な影響を示した。これらの結果から,大学生における動機づけ調整方略について議論を行った。
著者
石塚 恭子 田中 健二郎 竹内 俊充 長澤 恒保 戸苅 彰史
出版者
日本歯科薬物療法学会
雑誌
歯科薬物療法 (ISSN:02881012)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.81-88, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
75

Fracture risk increases substantially with age due to decreased bone density and muscle mass, and also problems with vision and balance. In the elderly, medication used to treat non-skeletal disorders is one of the causes of bone fracture accompanying decreased QOL. Increased fracture risk by medication is based on either adverse drug reactions on bone metabolism or adverse drug events such as falls. The use of fall risk-increasing drugs (FRIDs), such as opioids, dopaminergic agents, anxiolytics, antidepressants and hypnotics/sedatives, have been demonstrated to increase risk of fracture. Furthermore, in addition to FRIDs, many drugs have been found to affect bone mass and fracture risk as a result of the side effects on bone metabolism. The present article reviews the current understanding of several drugs influencing fracture risk. In particular, drugs affecting fracture risk through sympathetic neuronal activity are also discussed.
著者
田中 健史朗
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.18-25, 2013 (Released:2016-03-12)
参考文献数
23
被引用文献数
2

カウンセラーの自己開示が心理臨床場面において有用な効果をもつか否かについては,賛否両論がある。本研究ではカウンセラーの自己開示を,Self-involvingと,Self-disclosingの2種類に分け,対象者のカウンセラーに対する印象評価に与える効果に違いがあるか否かを検討した。その方法として,大学生,大学院生208名を対象とし,対象者をSelf-involving群,Self-disclosing群,統制群の3群にふり分け,カウンセリング場面の逐語を読んでもらい,その逐語のカウンセラーに対する印象の評価を質問紙で尋ねた。各群の効果の違いをみるため分散分析を行った結果,Self-involvingは,カウンセラーに対する好意感と専門性を高く評価させる効果があることが見いだされた。一方,Self-disclosingは,カウンセラーに対する好意感を高める効果と,信頼感を抑制する効果があることが見いだされた。本研究の結果から,Self-involvingは被開示者にカウンセラーの専門性を印象づけることを促進させる有用な効果をもつことが示唆された。一方,Self-disclosingは被開示者にカウンセラーへの好意感を促進させる有用な効果をもつことが示唆された。しかし,Self-disclosingはカウンセラーへの信頼を抑制することも示唆された。
著者
田中 健夫
出版者
山梨英和大学
雑誌
山梨英和大学紀要 (ISSN:1348575X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.8-17, 2012

本稿の目的は,いじめの加害をめぐる一連の体験が,加害生徒の自己概念にどのような影響を及ぼすかについて,中学校養護教諭に対する半構造化面接を通して検討することである。養護教諭が関与した計7事例をKJ法により整理した。その結果,指導を受けとめた反応の一方で,加害生徒が納得できずに自分の感情を表現しないまま,被害者との心身の状態悪化の共振が起こったり,自己について無価値感を抱く過程が考察された。そこでは,加害にまつわる気持ちを他者との関係性のなかで表し,閉じた関係から離れて立ち直るような場がみいだされてやっと変化が可能となっていた。そして,外から押しつけられたと感じられている罪悪感を,自ら引き受けるものへと転換させる支援について検討をおこなった。
著者
田中 健一
出版者
名古屋大学高等教育研究センター
巻号頁・発行日
2012

2011年度名古屋大学学生論文コンテスト優秀賞(附属図書館長賞)受賞
著者
久保 倫子 駒木 伸比古 田中 健作
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.76-90, 2020-03-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
80
被引用文献数
1

本研究は,高齢化と居住環境の悪化が進展する郊外住宅地の居住実態について,高齢者の身体・住宅,居住地域,さらに広域のスケールに着目し,高齢者の生活実態や生活上認識する不安,居住環境を総合的に分析することにより,高齢期に住み続けられる居住環境の実現に向けた課題を明らかにすることを目標とした.その一過程として,岐阜市郊外のK地区をとりあげた.特に本研究では,食生活,住宅の維持管理,居住地域の物質的・社会的環境, 広域的な活動および交通手段の考察に重点を置いた.その結果,事例地区の高齢者の多くは地域への愛着と自立した生活継続への希望を有しているが,身体,住宅,居住地域,より広域なスケールで不安や困難に直面しており,それらの克服に向けた調整を通じて住み続けられる条件を蓄えていることが明らかとなった.高齢化と都市縮退に対応した都市インフラ整備,サービス環境の充実,さらに高齢者の変化と多様性を踏まえた,総合的な議論が求められる.
著者
岩室 雅也 神崎 洋光 田中 健大 川野 誠司 河原 祥朗 岡田 裕之
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.1216-1222, 2016-07-05 (Released:2016-07-05)
参考文献数
18
被引用文献数
2

77歳男性.慢性腎不全にて血液透析中であり,炭酸ランタンを3年間服用中.早期胃癌内視鏡治療後の定期検査として実施した上部消化管内視鏡検査にて,角部大弯および前壁に発赤域を認め,部分的に微細顆粒状の白色変化をともなっていた.生検では粘膜固有層に好酸性物質の沈着を認め,エネルギー分散型X線による元素マッピングおよびスペクトル解析にてランタンおよびリンが検出され,胃粘膜内のリン酸ランタン沈着症と診断した.
著者
大井 逸輝 河﨑 亮一 田中 健太郎 御影 雅幸
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.305-312, 2012 (Released:2013-02-14)
参考文献数
8

漢方生薬「附子」は強毒性のブシジエステルアルカロイド(BDA)を含むが,生薬原料には BDA 含量の高いものがよいと考えられてきた。一方,第十六改正日本薬局方では減毒処理方法および BDA 含量の上限値が規定された。本研究では,古文献の附子の良品に関する記載内容を検討し,附子の形状と BDA 含量の関係について調査した。その結果,大型で角(細根基部肥大部)がある附子が尊ばれていたこと,また使用時は,原材料(子根)から細根基部肥大部(節・角)および根頭部(臍)を切り取る修治が行われていたことが明らかとなった。大型の附子は BDA 含量が低値に安定し,根頭部(臍)および細根基部肥大部(角)は子根本体に比べて BDA 含量が高いことが明らかになったことから,選品においても修治法においても BDA 含量を低くする目的があった可能性が示唆された。したがって,古来の良質品附子は毒性が低くかつ安定したものであったと考証した。
著者
山田 泰之 田中 健太郎
出版者
Japan Society of Coordination Chemistry
雑誌
Bulletin of Japan Society of Coordination Chemistry (ISSN:18826954)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.12-22, 2013-11-30 (Released:2014-03-20)
参考文献数
62
被引用文献数
1

In this review, we focus on the integrated assemblies of metal complexes and their functional emergence generated by the synergy effects of π-π stacking interaction and metal complexation. Programmable construction of integrated molecular assemblies is the best measure for bringing out the emergent functions which can be evolved from the intermolecular communications of functional molecular components. Combination of π-π stacking interaction and metal complexation allows not only to reinforce the mutual interactions but also to generate the emergent intermolecular communications. This review introduces the recent studies including the synergy effects on electrical, magnetic, catalytic and molecular recognition functions in soft, crystalline and single molecular materials.