著者
藤井 久雄
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.474-477, 1963
被引用文献数
1 5

(1) 納豆菌がグルタミン酸培地で生成する粘質物を純粋に分離精製し,グルタミン酸ポリペプチドであることを明らかにした.<br> (2) 培地中のグルタミン酸の約16%の収量でグルタミン酸ポリペプチドが得られたが,ペプチド構成グルタミン酸の約40%はD-グルタミン酸であった.<br> (3) 納豆菌がシュクロース培地で生成する多糖類はレバン様フラクタンであることを明らかにし,その生成の培養条件と分離精製法を示した.<br> (4) フラクタンも弱い粘性を示すが,糸引きの主体はグルタミン酸ポリペプチドであった.<br> (5) グルタミン酸+シュクロース培地では,グルタミン酸ポリペプチドとフラクタンとを生成するが,両者は単に混在するものであることを超遠心沈降により推定し,糸引納豆粘質物でもペプチドとフラクタンとは単に混在するものと考えた.
著者
古井 博康 稲熊 隆博 石黒 幸雄 木曽 真
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.777-782, 1997-08-01 (Released:2009-02-18)
参考文献数
16
被引用文献数
1 4

1.トマチンの簡易的定量方法の確立を目的として,吸光度を用いた測定方法を検討した.他に報告のある測定方法(HPLC法, GC法,バイオアッセイ法)による値を指標に,試料の調製法を検討した結果,あらゆるステージでのトマチン含量測定が可能になり,吸光度法の有効性が確認できた. 2.新しい吸光度法を用いて,栽培種トマト中のトマチン含量を調査した結果,果実では,緑熟期で16.5mg/100gFW,催色期で4.4mg/100gFW,完熟期で0.3mg/100gFWと,登熟過程において急激に減少することが確認された.また,果実(完熟期)においても,果肉部に比べ,表面の皮部や種子の周りのゼリー部にトマチンが多く分布する傾向が認められた. 3.トマト植物全体におけるトマチンの分布状態を調査したところ,果実,茎,根の器官に比べ,花や葉の器官に多く含まれることが確認された. 4.品種間におけるトマチン量の差について調査した結果,栽培種に比べ,病気に対する抵抗性の強い野生種であるL. pimpinellifolium, L. peruvianum, L. hirsutumのほうが,トマチン含量が多いことが認められた. 5.トマチンの分布状態が植物全体では一定でなく,器官,ステージ,品種の差によって含量に差が現われることから,トマチンがトマトの生態防御機構に関係を有していることが考えられた.本研究を行なうにあたり,終始ご指導,ご鞭撻を賜りました,東京大学名誉教授中村道徳先生,お茶の水女子大学名誉教授福場博保先生に深く感謝致します.

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著者
山田 豊一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.31-33, 1984 (Released:2008-11-21)
参考文献数
11

The specific heat of Japanese rice at different stages of milling was measured. The specific heat of rough rice was measured by an adiabatic calorimeter, husked rice by a modified ice calorimeter and fully milled rice by a twin calorimeter. Their specific heat values were slightly lower than foreign rices. The relationship between the specific heat of rough rice and moisture content is indicated by the following regression equation: C=0.0112 W+O.217, moisture content 9.8% to 23% where C is specific heat (cal/g °C) and W is moisture content (%). For husked rice and fully milled rice, measurements were made in lower ranges of moisture content. The relationship between the specific heat and moisture content was indicated by two segments with one break, and the regression equations were: For husked rice (Nihonbare), C=0.117+0.240, moisture content below 9.2%, C=0.00805 W+0.272, moisture content 9.2% to 14%, For husked rice (Koshihikari) C=0.0109 W+0.234, moisture content below 9.2%, C=0.00803 W+0.262, moisture content 9.2% to 15%, For fully milled rice (Koshihikari) C=0.0121 W+0.217, moisture content below 9.4%, C=0.00801 W+0.255, moisture content 9.4% to 15.5%.
著者
今井 正武 平野 進 饗場 美恵子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.1105-1112, 1983 (Released:2008-11-21)
参考文献数
12
被引用文献数
8 7

野菜を漬けた糠床Tと対照床Cにおいて, 120日間熟成し微生物叢と成分の変化を追跡した.成分的変化としては,糖は30日までにほとんど消費され酸に変化した.脂質は増加し,ホルモルN,揮発性塩基性NはT床において60日間で急激に増加した.菌叢の変化としては初めEnterobacterを中心とするグラム陰性菌が優勢であったが, 30日以内にLactobacillus plantarum, Pediococcus pentosaceus, Pec. halophilusが菌叢の大部分を占めた.熟成が進むにつれ, T床では酵母,乳酸菌以外のグラム陽性菌,そしてProteus mirabilis, Klebsiella pneumoniae類縁菌を中心とするグラム陰性菌が多数検出され,それらのバランスが熟成臭に重要な影響を持つと思われた. 糠床中の食塩濃度は酸の生成やグラム陰性菌等の生育に密接な関係を持ち,酸や揮発性塩基性物質等のフレーバーに影響する重要な役割を持っていると考えられる.
著者
石川 雄章 吉沢 淑
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.337-341, 1974 (Released:2008-11-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1 5

清酒醸造における原料白米の洗米から蒸きょうに至る,いわゆる原料処理工程中の脂質の動きについて検討した. 脂質は洗米によって,SSに約1.1%含まれて流去されるが,これは白米中の粗脂肪の5.5%,結合脂質の0.4%に相当し,洗米用水によっても変動するが,ここでは無視できる量と考えた. 一方,蒸きょうすることにより,白米中の粗脂肪は45~75%に減少し,脂肪酸組成では,不飽和脂肪酸の比率が減少する.粗脂肪の減少は,加水分解により遊離した脂肪酸が一部揮発することによると推察される.
著者
近藤 金助 久保 正徳 板東 和夫
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.12, no.11, pp.1077-1087, 1936

(1) 我が國の河海湖沼に饒産するイセエビ,クルマエビ,ホツカイエビ,及びマエビについて一般を知り,前二者に併せてシラサエビの生鮮なるものについて雌雄別に,又季節別に定量分析を行つた.又ホツカイエビに就ては市販の罐詰肉について定量した.其の結果を要記すれば次の通りである.<br> (a) 三種の蝦に於て可食肉量の最も多いのはクルマエビの55%,次はシラサエビの50%にして最も少なきはイセエビの40%であつた.蓋し後者の甲殻肢節が特に大であるからである.<br> (b) 可食肉量の割合は同一種の蝦にありては雌雄別,又は大小別による相違はなかつた.<br> (c) イセエビにありては初夏のものは雌雄共に水分84%に達し,蛋白量は14%にすぎずして新鮮肉100gの保有する利用性熱量は僅かに60Calsであつた 然るに秋季のものは水分減少して78%となり,蛋白は20%に増加し更に脂肪,及びグリコーゲンも亦増加した結果,新鮮肉100gが保有する利用性熱量も亦増加して83~84Cals.となつた.<br> (d) クルマエビにありては初夏のものも亦秋季のものも水分78~79%,蛋白20%であつて,薪鮮肉100gが保有する利用性熱量は82~83Cals.であつた.<br> (e) シラサエビにありては水分82%,蛋白量16%であつて,新鮮肉100gが保有する利用性熱量は約70Cals.にすぎなかつた.<br> (f) ホツカイエビ罐詰にありては一罐内の可食肉量は約110~120gであつて,蛋白が31~32g利用性熱量が約135Cals.保有されて居つた.<br> (2) 蟹及び蝦肉は共に全固形成分の85~92%が蛋白であつて,脂肪,グリコーゲン及び灰分は微量にすぎない.然しながら此の少量成分たる脂肪並びにグリコーゲンは季節によつて稍々規則正しく増減して居るが故に,其の消長は食昧に對して相當なる影響を與へるものと考へられる.<br> (3) 蝦肉蛋白の窒素の形態を定量し其の結果から新鮮肉中に存在するアルギーニン,ヒスチヂン,リジン,及びシスチンの量を算出表示した.<br> (4) 蝦肉蛋白の窒素の形態を定量した結果から知り得た事項を要記すれば次の通りである.<br> (a) 鹽基態のアミノ酸は夏季のものよりも秋季のものに於て多い.<br> (b) 就中アルギーニン,リジン,及びシスチンの含量に於て然りである.<br> (c) ヒユーミン態窒素は秋季のものに於て増加して居る.<br> (d) 夏秋を通じて雌肉蛋白は雄肉蛋白に比して,アルギーニンとリジンの含量は少ないがヒスチヂンの含量は多い.<br> (5) 蝦肉蛋白の窒素の形態が雌雄により,又季節によつて變動するのは生體蛋白の彷徨變異性の自然的表現であることを論證し,蝦肉及び蟹肉が種類別に産地別に又季節別に差別的特味を有する反面に於て又共通的食味を有することを指摘し,其の原因のうち肉蛋白が關與する限り後者の原因に關しては蛋白基成分が共通して居るが爲めであることを論述し,併せて差別的特味の原因を肉蛋白の組成のうちに見出し得ることを暗示した.<br> 本報告のうちシラサエビ,クルマエビ,及びイセエビに關する實驗の全部は久保が行ひ,ホツカイエビに關する實驗の大部は板東が行つたのである.