著者
梶田 将司 小林 大祐 武田 一哉 板倉 文忠
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.337-345, 1997-05-01
被引用文献数
31

人間が音声として知覚する音がその他の音とどのように異なるのかを探求するため, 本研究では, ヒューマンスピーチライク(HSL)雑音を導入し, HSL雑音に含まれる音声的特徴を分析する。HSL雑音は, 複数の音声を加算的に重畳して作られるバブル雑音の一種で, その重畳回数に応じて音声的な信号から音声の長時間スペクトルを反映した定常雑音へと聴感は変化する。まず, この聴感上の変化を主観評価実験により定量化する。そして, HSL雑音に含まれる音声的特徴を振幅分布のガウス性, スペクトル微細構造の時間的変動性, スペクトル包絡の時間的変動性の三つの観点で分析した。その結果, HSL雑音の差分信号のガウス性及び, HSL雑音のスペクトル包絡の時間的変動が音声的特徴に大きく寄与していることが分かった。
著者
朝倉 昭
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.438-443, 1972-08-01
著者
岩瀬 昭雄 伊積 康彦
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.411-419, 1996-06-01
被引用文献数
20

音響管を用いた多孔質材料の伝搬定数計測では, 試料を剛壁に密着状態と背後に1/4波長の空気層を設けた状態での2回のインピーダンス測定を行う方法が代表するように, 試料背後の空気層確保が必須条件で, 柔らかな材料の形態を変えないで上記2条件を実現する困難な課題に大きな努力が注がれてきた。本研究ではこの方向とは考えを異にした背後空気層を全く不要とする, 試料前後の伝達関数分析のみによる極めて単純な計測法を考案し, 有効性を検証した。その検証過程で, 多孔質試料には音響管壁で支持される共振振動が生じて大きな計測誤差を生むことが初めて明らかにされ, その回避が音響管を用いた計測法に共通する新たな問題として提起された。
著者
藤沢 望 尾畑 文野 高田 正幸 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.774-783, 2006-11-01
被引用文献数
1

音を表す言葉である擬音語は,その表現が音の特徴と密接に関連している。本論文では,文字表記された2モーラの擬音語からイメージされる音の印象と擬音語表現の関係を明らかにし,擬音語から印象を予測する手法を示した。SD法による印象評価実験の結果と林の数量化理論第I類分析により,擬音語の子音や母音,濁音といった音韻的特徴が印象に与える影響をカテゴリ数量として求めた。2モーラの擬音語に対する印象は,各カテゴリ数量の和で予測でき,"キン"のようにカ行の子音及び母音/i/を含む擬音語からは「かたい」印象の音がイメージされ,"ブー"のように濁音を含む擬音語からは「きたない」印象の音がイメージされる。
著者
大久保 朝直 藤原 恭司
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.957-966, 1996-12-01
被引用文献数
14

ソフトな表面を持つ円筒をエッジ部分に取り付けた防音壁の遮音性能について検討を行った。まず, 断面が水車のような形状の円筒を用いて, ソフトな表面を持つ円筒の実現を試みた。検討の結果, 水車型円筒は近似的にソフトな表面を実現することが確認された。次に, この水車型円筒を半無限障壁に取り付け, 円筒の有無による障壁の遮音性能の差を測定した。結果によると, 遮音性能が低下してしまう帯域もあるものの, 水車型円筒表面付近の音圧が極小になる帯域では遮音性能が非常に大きく向上することが確認された。
著者
河原 達也 李 晃伸 小林 哲則 武田 一哉 峯松 信明 伊藤 克亘 伊藤 彰則 山本 幹雄 山田 篤 宇津呂 武仁 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.175-180, 1999-03-01
被引用文献数
39

「日本語ディクテーション基本ソフトウェア」は, 大語彙連続音声認識(LVCSR)研究・開発の共通プラットフォームとして設計・作成された。このプラットフォームは, 標準的な認識エンジン・日本語音響モデル・日本語言語モデルから構成される。音響モデルは, 日本音響学会の音声データベースを用いて学習し, monophoneから数千状態のtriphoneまで用意した。語彙と単語N-gram(2-gramと3-gram)は, 毎日新聞記事データベースを用いて構築した。認識エンジンJULIUSは, 音響モデル・言語モデルとのインタフェースを考慮して開発された。これらのモジュールを統合して, 5,000語彙の日本語ディクテーションシステムを作成し, 種々の要素技術の評価を行った。本ツールキットは, 無償で一般に公開されている。
著者
永井 明人 北 研二 花沢 利行 川端 豪 鹿野 清宏 森元 逞 嵯峨山 茂樹 榑松 明 鈴木 忠 岩崎 知宏 中島 邦男
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.723-729, 1994-09-01
被引用文献数
1

本稿は、大語彙の連続音声認識を実時間で処理するための、HMM-LR連続音声認識装置の設計、処理性能について述べる。HMM-LR法は、一般化LR構文解析により入力音声データ中の音素を予測し、予測された音素の存在確率をHMM音素照合により調べることで、音声認識と言語処理を同時進行させる方式であり、高精度で効率的な処理系を構成することができる。処理量が極めて大きな継続時間制御付きトレリス計算を伴うHMM-LR連続音声認識を実時間で実行するために、本装置は種々の高速化手法を33個のDSPを用いて実現した。その結果、連続文節発声の入力音声に対し、入力文の長さに依らずに、発声終了後から2〜3秒ですべての認識処理を終了する処理速度を達成した。
著者
平井 啓之 竹本 浩典 本多 清志 党 建武
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.216-228, 2008-04-01
被引用文献数
1

3次元MRI動画と音声を用いて高品質な合成音声の生成を可能にする声道断面積モデルのパラメータ推定手法の提案を行う。始めに,複数話者のMR画像より計測された声道断面積関数を用いて,複数の話者,複数の音素の声道断面積関数を表現できる声道断面積モデルを構築する。次に,単語発声時の3次元MRI動画の声道形状から作成した声道断面積モデルを初期値として,モデルから計算された伝達関数が同じ単語を発声した時の音声のスペクトル包絡と一致するようにシミュレーテッドアニーリングを用いてパラメータの補正を行う。複数の単語に対してパラメータの推定実験を行い,合成音声と実音声とを比較することにより本方式の有効性を確認した。
著者
河合 剛 石田 朗 広瀬 啓吉
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.569-580, 2001-09-01
被引用文献数
18

教師が学習者に正しい発音の概要を指導した後, コンピュータが発音の反復練習を促し, 発音の良否を音ごとにスペクトル面から判断し, 発音誤りを特定し, 直し方を分かり易く指導する手法を提案する。2言語の音響モデルを用いた音声認識により話者性を取り除く。母語話者向けの音声認識システム用として学習された音響モデルを使えるので教育システムを容易に開発できる。音の挿入誤りの検出, 音の置換・挿入・脱落誤りの検出, 発音練習の難易度調整の三つの実装例, 並びに日本語話者による英語学習と英語話者による日本語学習の実験を通じて, 発音学習の自動化の有効性や要素技術の言語独立性と可搬性を明らかにする。
著者
古賀 秀昭 牧野 正三 城戸 健一
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.795-801, 1990-10-01
被引用文献数
8

聴覚に関する生理学的及び心理学的知見から、ローカルピークが母音認識の手掛かりとして重要であると考えて、著者らは単語中の母音の認識をローカルピークを用いて行っている。しかし、これまで認識実験と聴取実験との比較検討は行われていない。今回、単語中の母音について聴取実験を行うと共に、同じ音声資料を用いてローカルピークと通常行われているLPCケプストラム係数による認識実験も行い、それらを比較検討した。認識実験は聴取実験で10人中の8人以上が正答したもので標準パタンを作成したもので行った。特徴量と識別規則を含めた検討の結果、部分的には差が見られないものもあるが、全体的にはローカルピークによる認識結果の方が聴取実験結果に近いという結果になった。