- 著者
-
西野 隆典
梶田 将司
武田 一哉
板倉 文忠
- 出版者
- 一般社団法人日本音響学会
- 雑誌
- 日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.2, pp.91-99, 1999-02-01
- 被引用文献数
-
47
ヘッドホン受聴では, 頭部伝達関数(Head Related Transfer Function ; HRTF)を用いることにより, 立体音場を忠実に再生することができる。しかし, HRTFは方向に依存した関数であるため, HRTFを用いた聴覚バーチャルリアリティシステムでは, 測定した音源方向については忠実な立体音場が再生できるが, その他の音源方向については, 再生に必要なHRTFを新たに測定するか, すでに測定されたHRTFから推定して求める必要がある。しかし, HRTFの補間が可能であれば, 少数の測定HRTFから全方位のHRTFが作れるため, データ削減の有効な手段となるだけでなく, 滑らかな移動感を得ることができる。本論文では, (1)線形2点補間, (2)主成分分析を用いた補間の2手法を用いて, 水平面上のHRTFのインパルス応答と周波数振幅応答の補間可能性を, 客観基準と主観基準(移動感並びに方向定位感)により評価した。その結果, (1)水平面上のHRTFは45゜もしくはそれ以下の角度間隔で測定を行い, 未知のHRTFはそれらから補間可能であること, (2)線形2点補間は主成分分析による補間手法と比べて, より良い補間が可能なこと, (3)補間対象のインパルス応答と周波数振幅応答の間では, 補間精度の有意な差はなく, 位相は最小位相であっても良いことが明らかになった。