著者
君羅 満 赤羽 正之 岸田 典子 沖増 哲
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.295-312, 1983

我々と生活環境を著しく異にする海外移住者の食生活を調査することによって, 食生活の変容プロセスを明らかにしようとする目的で, ブラジルに居住する日系人についての調査を計画し, 第1回目を1978年に南部の Rio Grande de Soul 州で実施した。<br>今回は, 1981年 São Paulo 州ジャカレイ地域の日系移住地である, サクラタカモリ, イタペチ, パラティ・ド・メイオに居住する167世帯を対象として実施した。<br>生活環境, 身体状況および食生活状況調査のうち, 使用食品数および, 入手方法などに視点をあて, 主として世代別・地区別の立場から分析, 検討し, その実態について考察した結果を要約すると次のとおりである。<br>1) 各世帯における1日の使用食品数は, 30~39が最も高い比率を示した。<br>2) 世代間による使用食品数の有意差はみられなかった。<br>3) 各地区間の朝・昼・夕食相互の使用食品数には有意差は認められなかった。<br>4) 昼・夕食の食品数は朝食に比べて, 著しく多く, 食事のウェートが昼・夕食におかれていることを示した。<br>5) 朝食で使用率の高い食品は, 砂糖・コーヒー・パンで, これはブラジルでの朝食の特徴を示す。<br>6) 昼・夕食で使用率の高い食品, また, 低い食品には, ほぼ類似の食品が出現している。このことは, 各世帯間に共通の食パターンの存在しているものと思われた。<br>7) 地区別・朝昼夕食別の食品使用率からみた出現順位間には, いずれも高い正相関関係が認められた。<br>8)"毎日消費する"食品で, I世では主として日本的食品に, II世ではブラジル的食品において有意に高かった。<br>9) 食品の入手状況については, 農業地域でありながら, 一般に購入食品が多く, しかも, 一部の食品を除いて購入率の高い傾向がみられた。これは, 各移住地がジャカレイ市に隣接し, 大市場をもつサンパウロ市の衛星都市圏内に位置していること, 換金作物を中心とした経営, そして, 農業経営がある程度安定し, 経済的にゆとりのある世帯が多いためと思われた。<br>10) 日本の農業地域に比べて, パン・砂糖・油脂・その他の野菜・肉類において摂取量が高く, 味噌・豆類・魚介類において低かった。
著者
韓 立坤 浅見 悦子 齋藤 雅人
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.77-81, 2008-04-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
13

We investigated the effect of an aqueous extract of onion skin on pancreatic lipase activity in vitro. The aqueous extract from onion skin significantly inhibited the pancreatic lipase activity in vitro. Based on this result, we examined the effect of the aqueous extract from onion skin on the blood triacylglycerol level after the oral administration of a lipid emulsion to rats. The aqueous extract from onion skin at a dose of 125, 500mg/kg inhibited the elevation of blood triacylglycerol level compared with the control. In a longer-term experiment (25 days), we examined the effect of the aqueous extract from onion skin on the fat storage induced in mice by feeding a high-fat diet for 25 days. Intake of the aqueous extract from onion skin (125mg/ml) reduced the blood triacylglycerol level compared with the control. To identify the active substance in the aqueous extract from onion skin, we examined the effects of protocatechuic acid and quercetin on the pancreatic lipase activity in vitro. Protocatechuic acid inhibited the pancreatic lipase activity in vitro, but quercetin did not. Based on these results, we examined the effect of protocatechuic acid on the blood triacylglycerol elevation in rats orally administered with an oral lipid emulsion. Protocatechuic acid at a dose of 25, 250mg/kg inhibited the elevation of blood triacylglycerol compared with the control. These findings suggest that the intake of an aqueous extract of onion skin would be helpful to prevent postprandial triacylglycerol elevation.
著者
鈴木 洋子 星野 純子 堀 容子 長澤 伸江 前川 厚子 近藤 高明 榊原 久孝 岡本 和士
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.168-177, 2009 (Released:2011-05-26)
参考文献数
22

We investigated the relationship between the caregiver's meal and their fatigue by an analysis with a semi-quantitative food frequency questionnaire completed by the main caregiver. The 90 caregivers were 25 men and 65 women aged 20–80 years. They took care of patients at home who required more than level 3 care or who suffered from cognitive dysfunction. Adjusted for sex and age, neither the intake of grain nor of fish and meat, which were the main food groups in respective grain meals and fish and meat meals, was significantly correlated with the caregiver's perception of fatigue. On the other hand, the correlation between caregiver's fatigue and the intake of bean and seaweed food groups was significant (p < 0.05) or non-significant (p < 0.1). Elucidation of the most appropriate type of food for the principal meal will be necessary to minimize the perception of fatigue by the caregiver.
著者
鈴木 亜紀子 吹越 悠子 赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.282-289, 2013 (Released:2013-11-08)
参考文献数
28
被引用文献数
1 3

【目的】非肥満者の生活習慣病予防のために,長期的な体重増加があると回答した非肥満者の食習慣を検討する。【方法】2009年度,特定健康診査を実施し,自記式の標準的な質問票に回答したA健康保険組合員の被保険者または被扶養者3,342人(男性1,614人,女性1,728人)の横断的データを用いた。性別,年齢の他,標準的な質問票に含まれている食習慣(6項目),長期的な体重増加(1項目)を用いた。Body mass index(BMI)25 kg/m2 を基準に肥満群と非肥満群の2群に分け,肥満群と非肥満群のそれぞれで,体重増加の有無を従属変数とした単変量と多変量解析によるロジスティック回帰分析を行い,食習慣との関連を検討した。【結果】全体の肥満群は694人(20.8%),非肥満群は2,648人(79.2%)であり,20歳時からの体重増加がある者は,2,228人(66.7%),ない者は1,114人(33.3%)であった。体重増加がある者の48.9%が非肥満であった。体重増加に関連する食習慣は,非肥満群の男性では,夜食(オッズ比(OR)=2.18,95%信頼区間(95%CI)=1.37~3.46)であり,女性では遅い夕食(OR=1.69,95%CI=1.12~2.58)であった。肥満群は男女とも,遅い夕食(男性:OR=2.24,95%CI=1.24~4.08;女性:OR=3.26,95%CI=1.51~7.05)であった。【結論】現在,非肥満者であっても,長期的な体重増加があると回答した者は,現在の食習慣が望ましくない者であった。具体的には,非肥満者の男性では夜食,女性では遅い夕食が,長期的な体重増加に関連していた。
著者
小柳津 周
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.307-315, 1986 (Released:2010-04-30)
参考文献数
17
被引用文献数
2932 4930

グルコサミン塩酸塩を遊離形にし, 37℃インキュベーターで0日から30日間放置褐変した褐変グルコサミン (BGA) の抗酸化性, 還元力, 褐変度, アミノ糖の残存量, pH, 水分量, 全窒素量を, 放置0日から5日間は毎日, 以後5日間の間隔で30日間測定した。一方, 0, 15, 30日間放置褐変したBGAをセファデックスG-15で分画し, 抗酸化性, 還元力, 褐変度, pHについて測定して, 次のような結果を得た。1) 遊離グルコサミンは, 3日間放置後より白色粉末状から褐色ペースト状に急激な変化を示した。2) 最も強い抗酸化性は, 25日間と30日間放置褐変したBGAで認められた。3) BGAのリノール酸に対する抗酸化性は, 褐変度と深い関係を示した。4) 長く放置褐変したBGAは, 分子量が比較的高い領域の褐変生成物質と, 比較的低い領域の褐変生成物質に分画された。5) 長く放置褐変したBGAでは, 高分子の褐変生成物質のフラクションと, 低分子の褐変生成物質のフラクションの中間フラクションに抗酸化性を認めた。
著者
新宅 賀洋 千須和 直美 小橋 麻衣 田中 都子 木村 美佳 春木 敏
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.145-154, 2013 (Released:2013-07-09)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2

【目的】A府B市C校区では,2010年度より開始された国土交通省の「高齢者等居住安定化推進事業」の支援を受け,運営されている地域レストランがある。レストラン調製弁当の喫食ならびに食と運動の健康講座参加と会食を通じて,食生活状況および高齢者の精神的・身体的健康の状況を把握し,地域レストランと連携した高齢者の食生活支援プログラムにおける介護予防の有用性を検討した。【方法】事前に研究趣旨を説明し同意の得られた男性19名・女性30名の高齢者(65歳~92歳)49名が,会食群22名(3食喫食/週,講座への参加と会食),配食群14名(弁当の配食,3食/週),対照群13名に分かれて10週間のプログラムに参加した。各群とも参加前・参加後・終了1ヵ月後に,老研式活動能力指標,主観的幸福感などの自記式による質問紙調査を行い,食事バランス管理・運動の自己管理にはTAKE10!を用いた。【結果】会食群ではプログラム参加後,主観的幸福感が有意に高くなり,食品の多様性を心がけている者は,主観的幸福感が高いことおよび食生活満足度に正の相関がみられた。【結論】高齢者に対する10週間の地域レストランを活用した食と運動の健康講座は,他者との交流や会食によって主観的幸福感が高くなるという精神的健康の改善を促し,高齢者の介護予防の一助となることが示唆された。
著者
坂本 達昭 春木 敏 吉本 優子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.67-75, 2013 (Released:2013-05-23)
参考文献数
22

【目的】教科学習における食に関する指導の進め方について解説したWeb教材「先生のための食育教室」を開発し,その利用可能性を検討した。【方法】大阪府下の小学校でチームティーチング形式により実施された教科学習における食に関する指導について解説したWeb教材を開発し,教諭・栄養教諭および栄養教諭免許取得をめざす学生の視聴により評価を試みた。評価アンケートは,①画面レイアウト,操作性等の技術面,②学習意欲を高めるためのARCSモデルによる注意,関連性,自信,満足感の4項目,③教材としての有用性の側面についてたずねた。併せて自由記述による意見を求めた。【結果】教諭19人,栄養教諭12人,学生84人がアンケートに回答した。技術面およびARCSモデルの4項目に関する問いに,教諭・栄養教諭および学生は,それぞれ80%以上が肯定的に回答した。教材の有用性に関して「教科学習における食に関する指導を実施するために役立つ」という問いに教諭・栄養教諭の77.4%が「そう思う」と回答した。「教科学習における食に関する指導の進め方について知ることができた」という問いに学生の96.4%が肯定的に評価した。他方,自由記述による意見からスライド送りやナレーションの速さ等の改善点が挙げられた。【結論】評価結果から当教材は,教諭・栄養教諭ならびに栄養教諭をめざす学生向けの教材として利用可能であることが示唆された。
著者
小島 唯 阿部 彩音 安部 景奈 赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.86-93, 2013 (Released:2013-05-23)
参考文献数
13
被引用文献数
8 4

【目的】学校給食の食べ残しと児童の栄養摂取状況との関連を検討すること。【方法】2009年5~6月,東京都公立小学校に通う5・6年生の児童112名を対象に,給食の食べ残しに関する自記式質問紙調査と残菜調査を実施した。残菜調査は,対象者一人につき2回ずつ行い,延べ人数のデータを用いた。残菜調査の結果から,食べ残しの有無により,残菜率0%の児童を完食群,それ以外の児童を残菜群とした。この2群の栄養摂取量の中央値の差について,一般化推定方程式(generalized estimating equation: GEE)を用いて検討した。解析対象の栄養素等は,エネルギー,たんぱく質,脂質,炭水化物,ミネラル5種,ビタミン4種,食物繊維とした。【結果】延べ人数で,218名分の残菜データを得た。そのうち,男子104名(47.7%),女子114名(52.3%)であった。全体で,残菜群が80名(36.7%),完食群が138名(63.3%)であった。残菜率は0.2%~84.3%の間に分布していた。残菜群と完食群のエネルギーの中央値(25,75パーセンタイル値)は,各々 562(435,658)kcal,715(699,715)kcalであった(p<0.001)。また,ビタミンCの中央値(25,75パーセンタイル値)は,残菜群で 26(16,35)mg,完食群で 41(41,47)mgであった。同様に,その他すべての栄養素等で差がみられた(すべてp<0.001)。【結論】残菜群のビタミンCを除く栄養摂取量は,完食群に比べて2~3割少なかった。残菜群のビタミンC摂取量は,完食群に対して4割程度少なかった。
著者
坂本 達昭 八竹 美輝 春木 敏
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.76-85, 2013 (Released:2013-05-23)
参考文献数
26
被引用文献数
2 2

【目的】担任教諭を主体とした4学年社会科および総合的な学習の時間における食に関する指導を実施し,その実施可能性と学習成果を検討した。【方法】2012年6月から7月に,大阪府下の公立小学校4学年児童106名を対象として,社会科「くらしとごみ」および総合的な学習の時間「環境について考えよう」における食に関する指導を実施した。社会科および総合的な学習の時間のねらいに加え,食べ物を大切にする態度を形成し,残さず食べる自己効力感を高め,給食を残さず食べる行動形成をねらいとした。前後比較デザインにて実施し,授業時の児童のワークシート記述内容および学習前(5月),学習直後(7月),学習終了2ヵ月後(9月)に実施したアンケート,残さず食べる行動形成の指標とした給食の月間残食率から学習成果を検討した。【結果】ワークシート記述には,残さず食べようとする意欲や,給食を残さず食べる行動形成に至った記述が多くみられた。アンケート結果より,嫌いな食べ物がある時でも残さず食べる自己効力感は,学習直後,学習終了2ヵ月後に有意に向上した。学習前の残食率に比べ,学習期間(6・7月),学習終了2ヵ月後(9月)の残食率は低値を示した。【結論】栄養教諭配置校において本研究の授業は実施可能であり,学習により児童は残さず食べる自己効力感を高め,残さず食べる行動形成を経て,学習後も給食を残さず食べる行動を維持した。
著者
佐藤 真実 谷 洋子 清水 瑠美子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.110-116, 2010 (Released:2010-09-10)
参考文献数
17
被引用文献数
3 2 2

現在,嚥下障害をもった施設高齢者の食事は基準化されたものがない。そこで,私たちは福井県内の高齢者施設における嚥下食の食事の種類とその内容について調査を実施し,嚥下食を「噛む力」と「飲み込む力」の組合せによって分類を行なった。本研究では,嚥下障害をもつ高齢者の食事の基準化について検討し,統一化にむけた基礎資料を作成することを目的とした。嚥下食の食種は41種類があげられた。中でも多くの施設が使用する嚥下食の呼称は,「キザミ食」であり34施設が使用していた。1施設しか使用しない食種は,27種類もあった。嚥下食の種類とその内容は,施設によって異なり,明確に区分されていなかった。しかし,「噛む力」と「飲み込む力」の組合せで分類すると高齢者施設における嚥下食は,概ね最低3種類に分類された。その3種類としては,食事の対象者が噛む力がある場合にはキザミ食,噛む力および飲み込む力がやや低下している場合にはゾル状調製食,噛む力および飲み込む力が低下している場合にはゲル状調製食である。これらの3種類の食事を基準化すれば各施設で対応できるのではないかと提案したい。(オンラインのみ掲載)