著者
藤原 啓子 松岡 瑛
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.361-368, 1995 (Released:2010-04-30)
参考文献数
15
被引用文献数
3 10

馬鈴薯でんぷん由来の低粘性水溶性食物繊維である難消化性デキストリン (PF-L: 食物繊維含有率55%, PF-C: 同92%) の耐糖能改善効果をラット, 健常成人並びにインスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) 患者において評価した。1) Sprague-Dawley 系雄ラットのショ糖1.5g/kg体重経口投与後の血糖値上昇は, PF-L (340μl/kg体重) 並びにPF-C (0.15g/kg体重) 存在下では非存在下に比べ有意に低下した。2) 健常成人8例を対象とした経口糖負荷試験において, PF-L 40ml (食物繊維量16g) はトレーランG75負荷により血糖値上昇並びにインスリン分泌を有意に低下させた。3) 30kcal/kg体重の食事制限を3か月以上施行し, 状態の安定しているNIDDM患者5例を対象にPF-Cを3か月間投与 (30g/日) し, 試験食 (459kcal) 負荷試験により耐糖能の変化を観察した。その結果, 3か月目では5例中4例で開始前に比べ耐糖能の改善が認められた。残り1例についても2か月目までは改善がみられた。
著者
中嶋 洋子 真田 宏夫 宇津木 良夫 鈴江 緑衣郎
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.107-115, 1979-05-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
24

Tyrosine hydroxylase activity in the brain homogenate increased and nicotinic acid content in the brain and liver decreased in rats fed a tryptophan-imbalanced diet. In order to clarify the function of nicotinic acid, we studied the causes of increase in tyrosine hydroxylase activity in the tryptophan-imbalanced rats.1) Tyrosine hydroxylase activity in the brain and nicotinic acid content in the liver and brain were not changed by the administration of nicotinic acid to rats fed on a 7% casein diet. However, tyrosine hydroxylase activity increased and nicotinic acid content decreased in rats fed on a 7% casein diet supplemented with methionine (0.3g/100g diet) and threonine (0.36g/100g diet), but normal activity and content were recovered by the administration of nicotinic acid or tryptophan.2) In tryptophan-deficient rats, tyrosine hydroxylase activity and nicotinic acid content were not changed by the administration of nicotinic acid.3) In protein-deficient rats, tyrosine hydroxylase activity and nicotinic acid content were not changed by the administration of nicotinic acid.4) Tyrosine hydroxylase activity was increased and nicotinic acid content was decreased by the administration of tryptophan to tryptophan or protein-deficient rats.5) A positive correlation was observed between the tryptophan content in the diet and the total nicotinic acid content in the brain. A negative correlation was noted between the total nicotinic acid content in the brain and the level of tyrosine hydroxylase activity. It was therefore, considered that the level of tyrosine hydroxylase activity in the brain was directly influenced by the nicotinic acid content in it, and that the level of nicotinic acid was maintained by tryptophan.
著者
山下 恵理 熊谷 修 青木 清
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.2-7, 2015 (Released:2015-03-29)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

【目的】青年期において,食生活と精神的健康度の関係を示した疫学データは十分でない。本研究では,大学生の食品摂取パタンを抽出し,精神的健康度との関係を明らかにする。【方法】大学生男女計269人(男性80人,女性189人)を対象に食品群別摂取頻度調査,精神的健康度,生活習慣で構成した自記式質問紙による調査を実施した。食品摂取パタンは,食品群別摂取頻度調査を基に,因子分析を試行した。また,食品摂取パタンと精神的健康度との関係を明らかにするために重回帰分析を行った。【結果】因子分析の結果,食品摂取パタンとして「副食に植物性食品を高頻度に摂取するパタン」,「肉類,卵,油脂類,いも類を高頻度に摂取するパタン」,「主食の摂取パタン」が抽出された。重回帰分析の結果,「肉類,卵,油脂類,いも類を高頻度に摂取するパタン」とGHQの総合得点及びうつ傾向との間に有意な負の関係が認められた。【結論】大学生において,肉類,卵,油脂類,いも類を高頻度に摂取する食品摂取パタンを有する者は,うつ傾向が低いことが示された。
著者
唐沢 久仁子 武藤 静子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.315-321, 1977-11-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
2

妊娠第16週までの妊娠初期妊婦62名を対象に, 非妊時および妊娠後の酸味, 甘味, 塩味に対する嗜好を面接により聞き取り調査した。その中の22名については出産まで, 継続調査した。妊娠初期においては酸味, 塩味が非妊時より好まれる傾向にあり, 甘味は嫌われる傾向が強かった。また, 初産婦は経産婦より妊娠後, 酸味に対する嗜好度の高まる傾向を生じた。甘味, 塩味に対しては, 初産婦, 経産婦の間に差はみられなかった。この時期では嗜好食物として挙げられた延件数の約60%が, 果物, 寿司, 酢の物, トマト, 梅干などの酸味食品に集中していた。また, 忌避食物として, 全対象者の約30%が, 油っぽいものを, また約20%が, 肉, 魚を挙げていた。しかし, 嗜好あるいは忌避食物は広範囲におよび一方で嗜好されるものが, 他方で忌避されているものも少なくなかった。妊娠の経過に伴なって, 嗜好に変化がみられた。妊娠初期に約半数にみられた酸味に対する嗜好は中期, 末期には1/3~1/6に減じ, 他方, 初期に嫌悪例の多かった日味に対しては, 中期, 末期には嫌うものが全くなくなり, 好むものが, 初期の数倍に増加した。塩味に対しては, 大きな変化はなかった。同一個体における, 酸味, 甘味, 塩味に対する嗜好変化の型を組み合わせてみると, 個体差が大きく, 同じ型を示したのは2例にすぎなかった。
著者
小林 道 上田 積 千田 奈々
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.141-147, 2016 (Released:2016-11-16)
参考文献数
29

【目的】日本食パターンは,抑うつ症状に予防的であることが報告されている。しかし,知見は十分でなく,若年層を対象とした研究はほとんどない。本研究では大学生を対象として,日本食パターンと抑うつ症状の関連を明らかにすることを目的とした。【方法】研究対象者は北海道にあるA大学管理栄養士課程の学生とした。調査内容は,年齢等の基本属性及び生活習慣に関する項目,食品摂取量の評価は,簡易式食事歴質問票(BDHQ)を用いた。抑うつ症状はCES-Dを用いて,16点以上を「抑うつ症状あり」とした。日本食パターンは,11種類の食品摂取量を残差法でエネルギー調整後,得点化を行い,その合計点を日本食得点とした。日本食得点と抑うつ症状の関連は,多変量ロジスティック回帰分析を用いて検討した。【結果】質問紙は,女性142名のうち135名から回収した(回収率:95.5%)。そのうち,抑うつ症状が認められた者は,68名(50.3%)であった。多変量ロジスティック回帰分析の結果,日本食得点の低群を1とした場合のオッズ比(95%信頼区間)は,中群でOR:0.30(95%CI:0.11~0.80),高群でOR:0.22(0.08~0.60)であった。【結論】日本食パターンと抑うつ症状の間に負の関連があることが明らかとなった。若年層においては,日本食パターンを意識した食事が,抑うつ症状の予防に役立つ可能性がある。
著者
竹内 政保 川村 三郎 菅原 正義 鈴木 陽子 蔀 花雄 尾形 ひろ美 太田 冨貴雄 綾野 雄幸
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.165-171, 1987-08-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

トウモロコシ外皮から調製したDF素材 (RCB) をラットに投与し, 食物残渣の腸内通過時間に及ぼす影響, ならびにRCBを添加したビスケットを女子大生 (221人) に摂食させ, 排便状況をアンケート調査により調べた。1) 飼料中に, RCBをNDF含量5%レベルで添加して成熟ラットに投与し, 食物残渣の腸内通過時間を測定した。糞が出終わるまでの時間は, DF無添加群50.8±1.2時間に比して, RCB群32.5±1.2時間と有意に短縮された。また, 糞の水分含量もDF無添加群40.6±1.6%に比べて, RCB群46.0±0.3%と有意に高い値を示した。RCBは比較として用いたWBとほとんど同じ結果を示した。2) 女子大生 (18~19歳) を被験者とし, 1日当たり5.5gのDFを強化したRCB添加ビスケットを2週間継続して摂食させ, 排便状況について調べた。その結果, 毎日排便のある人が37.6%から60.2%に増加した。被験者のうち, 便秘症とみなされる人は25.8%含まれていたが, 1週間のビスケットの摂取により, その59.6%の人に便秘改善効果が認められた。
著者
松平 敏子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.114-120, 1974

1970年7月~10月に, 大阪府下の4病院において, 入院および外来の糖尿病患者男32例 (40歳以上23例), 女39例 (40歳以上34例) に対し面接, 実態調査用紙に記入させ, 次の結果を得た。<br>(1) 学歴は現在の義務教育以上を終えた者が男59%, 女38%で, 女の48%は旧制の義務教育である小学校卒であった。<br>(2) 労作強度はふつうの労作以下が男91%, 女92%であった。<br>(3) 既往最大体重が標準体重より20%以上の肥満者は男44%, 女56%であった。<br>(4) 遺伝関係を持つ者は男31%, 女44%であった。<br>(5) 標準体重より11%以上の肥満者のうち, 遺伝関係のある者は35%であるが, 肥満でない者のうちには55%に遺伝が認められた。<br>(6) 受診の動機となった糖尿病症状は, 煩渇, 易疲労性, 多飲, 倦怠, 体重減少であった。また, 1人平均4~5種の自覚症状を持っていた。<br>(7) 合併症は男50%, 女44%が持ち, 硬化性血管障害が20%で最も多く, 次が肝疾患であった。<br>(8) 病名判明以前の食生活は穀類を1日4209以上摂取している者が男75%, 女67%であった。肉類・牛乳・緑黄野菜の摂取回数も一般に少なく, 栄養的にバランス不良の傾向がみられた。<br>(9) 食事療法についての質問10題に対し, 入院患者の全問正解率は39%であったが, 外来患者は17%で劣っていた。また男より女が劣っていた。義務教育以上の教育を受けた者の正解率44%に比し, 義務教育までの者は16%で劣っていた。<br>以上の調査結果により, 病名判明前の患者の個々の栄養摂取状態のアンパランスを知り, それと同時に糖尿病の早期症状を一般に理解させ早期治療させたいこと, および糖尿病教室の栄養指導法の改善すなわち対象者にもよるが平易に具体的に反復指導しなければならないことを痛感した。
著者
八杉 悦子 中西 和子 梶本 雅俊 大島 美恵子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.361-368, 1996

神奈川県横浜市在住中国人の男性41人 (平均年齢58.2±19.1歳), 女性48人 (50.4±15.9歳) の血清中の脂質 (総コレステロール, HDL-コレステロール, トリグリセリド), リポプロテイン (a), 脂肪酸を測定した。<BR>横浜市在住中国人の実測値と, 北京, 台北, シンガポール在住中国人の血清脂質量 (文献値) を比較すると, 居住地により差がみられた。横浜市在住中国人の総コレステロール量は, 北京在住中国人 (男女) や台北 (女性) より高く, シンガポール (男女) より低かった。横浜市在住中国人のリポプロテイン (a) 濃度分布は, 文献値による北京, 台北, シンガポール在住中国人と類似しており, 居住地による違いはなかった。横浜市在住中国人の血清脂肪酸組成については, <I>n</I>-6系多価不飽和脂肪酸であるリノール酸が最も多く含まれ, 次いでパルミチン酸, オレイン酸であった。特にリノール酸が34.7±4.3%(男女の平均値) と日本人と比較して非常に多いのが特徴であった。また, S/M/P比は1/0.73/1.6, <I>n</I>-6/<I>n</I>-3比は6.7±2.3で, <I>n</I>-3系の多価不飽和脂肪酸を多く含む日本人の血清とは異なっていた。
著者
伊東 奈那 赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.150-158, 2015 (Released:2015-12-26)
参考文献数
16

【目的】栄養教育における教材選択の資料とするため,食生活の指針を参考にしている者とそうでない者の属性や食習慣を検討すること。【方法】2009年11月~12月,内閣府が全国満20歳以上の者5,000人を対象に行った「食育の現状と意識に関する調査」のデータを使用した。「食生活の指針を参考にしているか」という質問に対して,「食事バランスガイド」「食生活指針」「日本人の食事摂取基準」「6つの基礎食品」「3色分類」の5つの食生活の指針のうちいずれか1つでも参考にしている者を参考群,参考にしていない者を非参考群とし,属性,食習慣を比較した。また,参考群の中で参考にしている食生活の指針と食習慣の関連も検討した。解析にはχ2 検定と単変量ロジスティック回帰分析を用いた。【結果】本調査の回答者2,936人のうち,解析対象者は2,699人(91.9%),参考群1,338人(49.6%),非参考群1,361人(50.4%)であった。最も参考とされていたのは「食事バランスガイド」であった[158人(11.8%)]。非参考群と比較し,参考群には女性が多く(p<0.001),60歳代の者が多かった(p=0.001)。また,参考群は朝食欠食がない者が多く[オッズ比(95%信頼区間)=1.35(1.04~1.77)],バランスの良い食事の頻度が高かった[1.48(1.22~1.80)]。【結論】食生活の指針を参考にしている者としていない者では属性に違いがみられ,参考にしている者では,欠食が少なく,バランスの良い食事の頻度と副菜の頻度が高かった。
著者
岸田 典子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.17-25, 1980-01-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
29

こんにゃくに対するイメージを10尺度, 5段階評価によるS. D法で, 連想を自由連想法で, 世代及び居住地域の異なる女性を対象として調査し, つぎのような結果が得られた。1) こんにゃくは, 日本的・質素・家庭的・エネルギーがない・身体によい・嗜好的な食品であるというイメージがもたれていた。つまり, こんにゃくは, 日本的であるという社会的価値観が非常に強く, いわゆる伝統的な食品であるというイメージがもたれ, また家庭的であるというように, 親近感の強い食品であった。2) こんにゃくに対するイメージは, 世代などの生理的要因の影響が大きく, どの尺度においても, 世代間で有意差がみられた。概して, 高齢者ほど日本的・家庭的・身体によい食品であるというイメージをもっていた。3) 環境要因としての居住地域の違いは, こんにゃくに対するイメージに大きな影響を及ぼさなかった。4) こんにゃくに対する連想として, 世代・地区・地域の相違に関係なく, 第1位は調理・献立上の用途, 第2位は栄養・保健・衛生に関するものであったが, 中学・高校生のみ, 第2位は食品の属性・分類・部位に関するものであった。
著者
小暮 真奈 遠又 靖丈 周 婉婷 佐々木 公子 佐藤 佳子 青栁 友美 辻 一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.84-90, 2014 (Released:2014-05-30)
参考文献数
7

【目的】東日本大震災後における非常食対応マニュアルの実行状況と給食提供の早期再開との関連を明らかにすることを目的とした。【方法】仙台市内の全認可保育所123施設を対象として,質問票を配布し,全施設から回答を得た。非常食対応マニュアルの実行状況について,概ね実行できたと回答した施設をマニュアルが「実行あり」と定義し,それ以外を「作成・実行なし」と定義した。アウトカム指標は震災発生(金曜日)後の翌平日である3月14日(震災発生後3日)までに給食提供を再開した施設を「給食早期再開」と定義し,マニュアルが実行ありの施設の給食早期再開のオッズ比を推定した。【結果】マニュアルが実行ありの施設は29施設(23.6%)であった。マニュアルが作成・実行なしの施設に比べ,実行ありの施設の給食早期再開の多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は6.99(1.28~38.29)であり,マニュアルが実行ありの施設は震災後3日以内に給食提供をした施設の割合が多かった。なお,3日以内に保育所を再開した施設に限定しても結果は同様であった。【結論】非常食対応マニュアルが実行ありの施設では,震災後に給食提供を早期に再開した施設が多かった。以上より非常食対応マニュアルの給食早期再開に対する有用性が示唆された。
著者
宮崎 由子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.65-77, 2010 (Released:2010-09-10)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

摂食行動障害者の早期発見を行うために,393人の女子高校生および382人の女子大学生を対象に,健康状態,心理的特性および食習慣状況について調査した。その結果,(1)高校生より大学生の方が,摂食行動障害傾向者が多かった。(2)大学生より高校生の方がやせている者(BMI<18.5)および月経異常者が多かった。(3)心理的特性と食習慣状況では同じ傾向を示した。食習慣状況では,20%の学生は朝食を欠食し,そのうちの60%の学生は朝食を摂らずに間食で補っていることが判明した。また,女子学生の多くは計画的な食生活をしていないので,食教育を受ける必要性がある。次に,思春期女性を食事行動様式に従って,4グループ(健常者を含む)に分類した。大学生の摂食行動障害傾向者の割合は,44.5%(過食傾向者37.9%,拒食傾向者0.3%,両方の傾向者6.3%)で,高校生の摂食行動障害傾向者の割合は27.0%(21.9%,0.1%,5.0%)であった。拒食傾向者を除く3グループのBMI値は同じ傾向を示した(BMI=19~20)ので,外観や体型からでは健常者グループと摂食行動障害傾向者グループを判別することは出来ないことが分かった。また,幼児期の食物アレルギーが拒食傾向者に関与していることも分かった。4グループにおける心理的特性について因子分析した結果を,次のようにまとめた。(1)拒食傾向タイプ;やせ願望・体型不満・良い子意識,(2)過食傾向タイプ;やせ願望・自己否定・過食,(3)拒過食傾向タイプ;やせ願望・自己否定,体型不満,過食。摂食行動障害傾向者では,自尊心とうつ状態に強い正の相関関係を示した(r=0.7)。過食傾向者と拒過食両傾向者の約60%の者が月経異常者であった。反対に拒食傾向者は無月経症状を示した。さらに,自己否定者数と月経正常者数に負の相関関係を示した(r=-0.8)。(オンラインのみ掲載)
著者
原田 まつ子 加藤 栄子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.41-47, 1995

糖, Ca, Pの含有量の多いと思われる食品の摂取頻度と身体的・精神的健康状態の関連を明らかにするため, 中学生264人を対象に調査研究をし, 次の結果を得た。<br>1) チョコレート及びチョコレート菓子やコーヒー・紅茶などの摂取頻度から糖の摂取傾向が高いことが, 特に女子において認められた。牛乳, チーズなどのCa含有量の多い食品の摂取頻度は全体では低く, 女子は男子よりも低い。インスタントラーメン類は女子よりも男子の摂取頻度が高い。<br>2) 全体的傾向として, 身体的自覚症状は, 眠い, 授業中あくびがでる, 頭がおもいなど疲労感を中心にした訴えが多く, また, 精神的自覚症状は, 感情的になりやすい, いらいらするなどの訴えが多い。<br>3) 睡眠を8時間以上とっている女子は, コーヒー・紅茶 (33.3%) の摂取頻度が高く,"全身がだるい"(66.7%),"足がだるい"(55.6%),"かぜをひくと寝込む"(77.8%) 訴えが多い。朝食の欠食者は, 男子でインスタントラーメン類の摂取頻度が高く (42.1%),"気が散る"(73.7%) 訴えが多い。<br>4) 摂取頻度が高い食品と自覚症状との関係をみると,"ジュース"と"物事に熱心になれない"(男子),"清涼飲料"と"気が散る"(男子),"コーヒー・紅茶を飲む時の砂糖を入れる量"(男子) あるいは"チョコレートまたはチョコレート菓子"(女子) と"冬になるとよくかぜをひく","ハンバーガー"と"かぜをひくとせきが続いて治りにくい"(男子),"インスタントラーメン類"と"物事に熱心になれない"(男子),"ちくわ・かまぼこ・はんぺん類"と"頭がおもい"(女子) または"頭がぼんやりする"(男子) などの訴えがみられ, 一方,"小魚・ひじき・わかめ"の摂取頻度の高い生徒は"息苦しい"(男子) などの訴えが少ない。
著者
小川 久恵 松本 仲子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.183-189, 1982

ポテトサラダ料理などのためのゆで, 蒸し調理における馬鈴薯の水さらしの効果をみるために, さらし時間を0, 10, 30, 60, 150分に設定し, 馬鈴薯の品種, 調理法をかえて試験した。さらし水中のK, Naの測定, 加熱後の馬鈴薯のテクスチュロメーターによるテクスチャーの測定および官能検査を行って相異を分散分析により検討し次の結果を得た。<br>1) さらし水中の馬鈴薯から溶出するK, Na量は, さらし時間の経過に伴い増加する傾向を示すが, さらし時間の長短による有意な差は認められなかった。<br>2) テクスチュロメーターによる硬さ, 凝集性, もろさの測定結果は, さらし時間の長短による有意な差は認められなかった。<br>3) 官能検査における外観, 香り, あくっぽい味, ごりごり, ほくほく, べたつきといったテクスチャーおよび総合評価のいずれの項目についても水さらし時間の長短による有意な差は認められなかった。以上のことから, ポテトサラダ料理などのためのゆで, 蒸し調理においては, 馬鈴薯を水さらしする必要はないということができる。
著者
岡崎 光子 柳沼 裕子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.61-69, 2001
被引用文献数
3

食物の噛みごたえ量や食べ方, 保護者の食事づくりに対する態度などが, 幼児の咀嚼能力や歯の擦り減りとどのように関連しているかについて検討した。<br>1) 歯の擦り減りが観察された幼児は22.8%であり, むし歯や不正咬合が観察された幼児の割合より多かった。<br>2) 歯の擦り減りは4歳児より5歳児, そして1~2歳の頃にタオルしゃぶり癖のあった幼児に多かった。<br>3) 擦り減りは, 口腔機能の発達を考慮して離乳食を与えられたり, 現在, 手づくりの食事を心がけられている幼児に多かった。<br>4) 擦り減りは, 外食の多い幼児に少なかった。<br>5) 歯の擦り減りあり群の幼児の咬合力は, 擦り減りなし群に比較し, 大きかった。<br>6) 外食の少ない幼児, 市販食品の使用頻度の少ない幼児の咬合力は, そのような状況にない幼児に比較し大きかった。<br>7) 咬合力に影響を及ぼす食品として, いか (煮), 豚ヒレ肉, 油揚げ, ほうれん草が選出された。<br>8) 咬合力は, 食物繊維摂取量と有意な相関関係がみられた。<br>9) 母親の離乳食の与え方や食事づくり, 食事の食べさせ方に関する態度と食物繊維摂取量に関連がみられた。
著者
竹内 弘幸 岩﨑 あゆ実 大森 聡
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.76-83, 2014 (Released:2014-05-30)
参考文献数
29
被引用文献数
2

【目的】トランス脂肪酸(トランス酸)の摂取は,血清LDL-コレステロール濃度を増加させ,動脈硬化性疾患のリスクを高める。日本人を対象にしたトランス酸の摂取量調査および目標量(上限)に関する研究は,限られている。本研究では日本人成人女性におけるトランス酸摂取量の調査を行い,血清コレステロール濃度との関連について検討した。【方法】30~60歳代の日本人女性54名を対象に,3日間の食事調査を実施した。空腹時に採血を行い,血清脂質濃度を測定した。【結果】対象者のトランス酸摂取量の中央値は0.36%エネルギー(%E)であり,平均値は 0.40%Eであった。トランス酸摂取量の最大値は1.47%Eであり,1%Eを超えた被験者は1名だけであった。脂質摂取量とトランス酸摂取量との間に,有意な正の相関が認められた。血清LDL-およびHDL-コレステロール濃度とトランス酸摂取量との間には,有意な相関はなかった。【結論】本研究では,本研究対象者の日本人成人女性が摂取しているトランス酸量は1%E以下であり,この低レベル(%E)のトランス酸摂取では,健常人において血清コレステロール濃度に対して大きな影響を及ぼさない可能性のあることが示唆された。
著者
橋本 洋子 佐藤 陽子 中西 朋子 横谷 馨倫 梅垣 敬三
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.39-47, 2011 (Released:2011-03-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1

【目的】健康食品やサプリメントの利用が普及する中,その利用は幼児にまで広がっている。幼児のサプリメント利用の判断は主に母親に委ねられている。そこで,本研究は,幼児を持つ母親の食や栄養,サプリメントに関する知識の実態とその情報源を把握することとした。【方法】2008年10月11日-2009年1月26日に6都県(青森,山形,茨城,埼玉,東京,千葉)の幼稚園および保育所に通う幼児の親1,844名を対象とし,自記式質問紙法によるアンケート調査を行った。回答者のうち母親1,050名を解析対象者とした(有効回収率55.7%)。【結果】幼児にサプリメント(錠剤やカプセル状)を利用させたことのある母親は9.5%であった。幼児を持つ母親は,5大栄養素の基礎的知識はよく理解していたが,特定成分の摂取量と生体影響の関係を踏まえた有効性や安全性に誤解が見られた。また,国が実施している健康食品に関する制度や栄養調査結果に関する知識が乏しかった。さらに,母親が栄養や食に関する判断を行う際,最も参考にしている情報源は,テレビ・インターネットであり,政府機関の発行物はほとんど参考にされていなかった。【結論】幼児を持つ母親は,栄養や食に関する基礎的な知識は持っていたが,公的な情報が充分に伝わっていない現状が明らかとなった。公的もしくは専門機関からの正しい情報の積極的な提供が必要と考えられた。
著者
新保 みさ 赤松 利恵 山本 久美子 玉浦 有紀 武見 ゆかり
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.244-252, 2012
被引用文献数
2

【目的】成人を対象とした体重管理の誘惑場面における対策について,ゲームを通して学習できるカード教材「ベストアドバイザーFORダイエット」を開発した。本稿では,カード教材の解説を行うとともに,保健医療従事者によるカード教材の評価を報告する。<br>【方法】2011年7月~10月に開催された市町村の保健医療従事者向けの研修会に参加した66名を対象にカード教材のゲーム式の使い方を実施した。ゲーム終了後に,質問紙を用いてゲームの感想や遊び方,体重管理の教材としての評価,属性をたずねた。また,質問紙の最後に意見や感想を自由記述で記載する欄を設けた。<br>【結果】解析対象者は62名(女性:57名,91.9%)だった。「ゲームは楽しかったですか」,「体重管理の教材として役立つと思いますか」という問いに対してそれぞれ57名(91.9%),49名(79.0%)が「とてもそう思う/そう思う」と回答した。自由記述では,指導者向け</TS><TS NAME="抄録">の教材として利用したいという意見があがった。一方で,教材や遊び方について,ルールや内容が難しいなどの改善すべき点もあがった。<br>【結論】体重管理の誘惑場面における対策に関する学習教材として,肯定的な意見が得られた。あげられた改善点をもとに,教材の見直しを行い,今後は一般成人を対象に実行可能性および教育効果について,検討をする必要がある。