著者
中西 明美 大久保 公美 高村 美帆 野津 あきこ 廣田 直子 高橋 佳子 佐々木 敏 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.128-140, 2009 (Released:2011-05-26)
参考文献数
17
被引用文献数
3 4

This study identifies the number of servings per dish children usually eat at school and home. We also examined the implications for nutrition education that encourages children to check their own diet by counting the number of servings by using the Japanese Food Guide Spinning Top.A total of 2184 dishes were obtained from 7-day weighed food records completed by 109 school children in the 5th grade in Nagano schools and by 46 children in Tottori schools to analyze the dishes they consumed for breakfast and dinner at home. In addition, a total of 261 dishes from school lunch menus in Tokyo, Saitama, and Hiroshima during either October or November of 2006 were collected and analyzed.The number of servings of fish and meat in dishes at school, and of white rice, vegetable salad, marinated vegetables, stir-fried vegetables, fish, and meat in dishes at home were fewer than the number of servings indicated by the Japanese Food Guide Spinning Top. Although the minimum in the Japanese Food Guide Spinning Top is 1 serving, the children tended to eat dishes in a smaller serving size: 40.6% of side dishes, 37.2% of fruit, 19.7% of main dishes, and 14.9% of staple dishes consumed at home contained between 0.25 and 0.67 serving which were categorized as 0.5 serving. Similarly, 83.3% of fruit, 20.6% of side dishes, 17.1% of main dishes, and 11.6% of staple dishes contained 0.5 serving in school lunches. Servings of bread and noodles for school lunch differed among the regions investigated.Introducing 0.5 serving to the measurements is considered to have been useful to more precisely grasp the children's regular diet. Dish examples in the Japanese Food Guide Spinning Top should be shown with a serving size appropriate for children as well as for adults.
著者
小林由紀子 石井 有理 寺本 祐之
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.46-53, 2019-02-01 (Released:2019-05-17)
参考文献数
15

【目的】社員食堂における減塩食と減塩に関する情報の提供が健常者の24時間尿中Na排泄量(食塩換算量)におよぼす影響を検討する。【方法】試験は単群オープン試験とし,株式会社ファンケルの社員で20~65歳の健常な男女20名に,減塩に関する情報提供を実施し,1食当たり食塩量 2 g以下の減塩食を9週間,平日の昼食に社員食堂で摂取させた。主要評価項目を24時間尿中Na排泄量(食塩換算量)とし,塩味認知閾値および好みの食塩濃度を副次評価項目とした。【結果】24時間尿中Na排泄量(食塩換算量)は介入前 9.8 g/dayと比較して3週間後 6.8 g/day(p=0.001),9週間後 6.0 g/day(p<0.001)といずれも有意な低下であった。また,塩味認知閾値は,介入前0.136%と比較して3週間後は0.085%(p=0.008),9週間後は0.084%(p=0.012)といずれも有意に低下した。好みの食塩濃度についても,介入前0.63%と比較して3週間後0.50%(p=0.002),9週間後0.40%(p<0.001)はいずれも有意な低下であった。【結論】減塩食と減塩に関する情報の提供は,24時間尿中Na排泄量(食塩換算量)の低下と塩味に対する味覚感度の改善に有用であることが示唆された。
著者
松下 由実 横山 徹爾
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.39-45, 2019-04-01 (Released:2019-05-17)
参考文献数
28

【目的】IHD(虚血性心疾患)関連の心電図異常を見出す能力が高い,侵襲性のない新しい体格指数を作成することを目的とした。【方法】2004~2010年に人間ドックでCT検査を受けた12,628名を対象とした。IHD関連の心電図異常(心電図異常もしくは心筋梗塞現在治療中)を従属変数,身長,体重,ウエスト周囲長CT(WCCT)を独立変数にした回帰分析に基づき,新たな体格指数(BSI)を作成した。ROC曲線を描き,IHD関連の心電図異常を,BSI,内臓脂肪面積(VFA),内臓脂肪面積と皮下脂肪面積の和,WCCT,BMIで比較した。【結果】男性においてIHD関連の心電図異常を見出すためのBSIのROCの曲線下面積(AUC)は,VFA,WCCT,BMIに比べて有意に大きくなっていた(p<0.01)。女性においてAUCは,WCCTとBMIより有意に大きくなっており(p<0.05),VFAとはほぼ同等であった。IHD関連の心電図異常を感度80%で見出すことのできるBSIは,男性で-1.2,女性で-2.4であった。【考察】BSIは,IHD関連の心電図異常を見出す能力は,男性ではVFAより大きく,女性ではほぼ同等であることから,医療現場で使う指標としては有用である可能性が示唆された。今後は,IHDリスク評価について縦断的にみていく必要があると考えられる。
著者
髙泉 佳苗
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.54-64, 2019-02-01 (Released:2019-05-17)
参考文献数
20
被引用文献数
1

【目的】30歳代を対象に,現在の食生活リテラシー尺度と子どもの頃の共食状況および子どもの頃に家庭で受けた食教育との関連を検討した。【方法】社会調査会社のモニター(30~39歳)9,356人を対象に,2017年1月27日~29日の3日間でウェブ調査を実施した。分析対象は2,000人(男性1,018人,女性982人)であった。子どもの頃の共食状況と子どもの頃に家庭で受けた食教育は回想法により調査した。共食状況との関連はロジスティック回帰分析を用いた。食教育との関連は重回帰分析(強制投入法)を用いた。【結果】男性では子どもの頃に朝食(調整オッズ比:1.48(95%CI: 1.12~1.95))または夕食(調整オッズ比:1.90(95%CI: 1.29~2.81))を大人と一緒に共食している者の食生活リテラシー尺度が高かった。女性では朝食および夕食の共食と食生活リテラシー尺度に関連は認められなかった。食生活リテラシー尺度に好影響を示した子どもの頃に受けた食教育は,男性では「好き嫌いせずに食べるように言われていた(β=0.11,p=0.015)」,「食事づくりを手伝っていた(β=0.11,p=0.008)」であった。女性では,「主食,主菜,副菜のそろった食事だった(β=0.08,p=0.047)」,「食事づくりを手伝っていた(β=0.11,p=0.006)」であった。【結論】男性では子どもの頃に大人と一緒に共食すること,また男女共に,子どもの頃の家庭における特定の食教育が,成人期の食生活リテラシーを形成する要因になっている可能性が示唆された。
著者
亀崎 幸子 岩井 伸夫
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.347-358, 1998
被引用文献数
1 8

女子短大生434人を対象に, 体重調節志向と減量実施の有無を調査し, 現在の自覚症状との関連性を検討し, 次の結果を得た。<BR>1) 対象集団の82.9%の者がやせたいと望んでいた。<BR>2) 同年代女子の平均的体型を基準にして客観的に体型の判定を行った結果, 対象集団の63%(<I>n</I>=275) の者は, やせすぎまたは普通の体型であるにもかかわらず, やせたいと望んでいた。その中の46%(<I>n</I>=127) の者は, 自己の体型を普通あるいは太りすぎと過大評価していた。<BR>3) 対象者全体では, 願望するBMI, 肥満度 (平均値) は各々19.1, -7.7%であり, やせたい理由は "細身が美しいから" が最も多かった。<BR>4) やせたいと思っている者 (<I>n</I>=360) のうち, 現在減量を実施中あるいは減量を実施したことのある者は75%(<I>n</I>=269) を占めていた。そして, 減量を実施中または減量を実施したことのある者のうち68%(<I>n</I>=182) は, その結果体重が減少したと回答した。<BR>5)"太りたい", "やせたい" とする者は, 体重の現状維持を望む者に比べ, 1人当たりの自覚症状の訴え数が多く, 体重調節志向と自覚症状の訴え数との関連が認められた。
著者
吉田 明日美 髙田 和子 別所 京子 田口 素子 辰田 和佳子 戸谷 誠之 樋口 満
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.305-315, 2012 (Released:2012-12-13)
参考文献数
31
被引用文献数
1 11

【目的】女性スポーツ選手を対象に,二重標識水(DLW)法で測定した総エネルギー消費量(TEE)と,食事記録法より求めた総エネルギー摂取量(TEI)から算出したTEI評価誤差に対する種目や身体組成,食事摂取状況の関連を明らかにすることを目的とした。【方法】大学女性選手38名(陸上中長距離9名,水泳10名,新体操7名,ラクロス12名)を対象とした。体重補正済みTEE(cTEE)はDLW法で求めたTEEと調査期間中の体重変動から算出し,TEIは同期間に実施した食事記録法による食事調査から計算した。【結果】cTEEとTEIは,陸上 2,673±922 kcal/day,2,151±434 kcal/day,水泳 2,923±749 kcal/day,2,455±297 kcal/day,新体操 3,276±497 kcal/day,1,852±314 kcal/day,ラクロス 2,628±701 kcal/day,2,329±407 kcal/dayであった。TEI評価誤差は,陸上-13.6±24.1%,水泳-13.3±14.3%,新体操-42.0±15.3%,ラクロス-2.8±38.3%であり,種目間の比較では新体操が有意に過小評価していたが,身体組成や食事摂取状況には競技特性はみられず,同一種目間の個人差が大きかった。評価誤差の大小で2群に分けた高精度群(評価誤差-8.4±10.7%(値の範囲:-24.8%~+14.5%))は過小評価群(-40.9±8.8%(-56.3%~-28.7%))よりTEE,脂質エネルギー比率が有意に低値であり,菓子類摂取量,食事回数,炭水化物エネルギー比率が有意に高値であった。TEEが小さいことは高精度群への分類に独立して関連していた。【結論】女性選手の評価誤差には,TEEが独立して関連し,種目や食品群別摂取量,エネルギー比率,食事回数が関連する可能性が示された。今後は,対象種目の再検討や対象者数の増加とともに,心理的,社会的要因を含めた,評価誤差に関連する要因の検討が必要と考えた。
著者
木田 春代 武田 文 荒川 義人
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.20-28, 2016
被引用文献数
1

【目的】幼児の偏食の改善に向け,幼稚園における野菜栽培の有効性を明らかにする。<br>【方法】北海道某市内5幼稚園に通う年少児379人を対象に,野菜栽培活動を実施する3園(241人)を実施群,実施しない2園(138人)を非実施群として,10か月間の縦断調査を実施した。栽培野菜はトマトであり,栽培前,収穫後,収穫後6か月(フォローアップ)の3時点において,母親が無記名自記式質問紙に回答した。主要評価項目として偏食,副次評価項目としてトマトに対する嗜好,食に対する興味・関心を設定し,各群において経時変化を観察するとともに,収穫後およびフォローアップの各時点において,偏食を改善した者の割合の群間比較を行った。<br>【結果】実施群では,偏食しない幼児が栽培前に比べて収穫後,フォローアップにおいて有意に増加した一方,非実施群では有意な変化は見られなかった。また,フォローアップにおいて実施群は非実施群よりも偏食を改善した幼児の割合が有意に高かった。さらに,実施群ではトマトが好きな幼児,「野菜について知っていることを楽しそうに話す」幼児,「食べ物を残すことは『もったいない』という」幼児が栽培前に比べて収穫後やフォローアップにおいて有意に増加した。一方,非実施群ではいずれの項目も有意な変化はみられなかった。<br>【結論】幼稚園におけるトマトを用いた野菜栽培は,幼児の偏食に良い影響をもたらす可能性が示唆された。
著者
Arthur V. Everitt 伊東 蘆一
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.175-182, 1985 (Released:2010-04-30)
参考文献数
22

ラットの老化の速度は, 90日齢を過ぎたところで食餌摂取量を制限したり, 下垂体を切除したりすることによって遅らせることができる。これら2つの処置は, ラットの尾の腱のコラーゲン繊維の老化を遅らせ, 腎糸球体毛細血管の基底膜の肥厚を阻止する。また加齢に伴って発症する疾患, たとえば腎疾患, 後肢の麻痺, 腫瘍の発症を阻止する。下垂体切除は食餌摂取量を低下させるが, その抗老化作用は, この処置をうけたラットと摂食量を同じにした場合に, 無処置のラットにみられる食餌制限の効果よりも大きい。最長寿命は, 無処置の雄ウイスター系ラットでは1,201日であったが, 下垂体切除ラットでは1,335日に, 食餌制限ラットでは1,525日に延長した。多くの下垂体ホルモン, 甲状腺ホルモン, 副腎皮質ホルモン, 精巣ホルモンは幾つかの組織の老化の速度に影響することが示されている。コラーゲンの老化の速度は, 主に食餌のエネルギー含量によって決定されるが, 加齢に伴う腎疾患の発症はエネルギーとたん白質両者の摂取量によって影響される。まだ仮説の域を出ないが, 脳の中枢, たとえば視床下部が, 食餌摂取と下垂体ホルモンの分泌の変化を通して, 老化の速度と加齢に伴う疾病の発症をコントロールしていることが考えられる。
著者
吉﨑 貴大 横山 友里 大上 安奈 川口 英夫
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.19-28, 2019-02-01 (Released:2019-03-05)
参考文献数
48
被引用文献数
10

【目的】日常の食生活では,複数の食品の組み合わせで食事が構成されている。しかし,多様な食品の摂取とフレイルとの関連は十分に検討されていない。そこで,本研究は地域在住高齢者を対象に食品摂取の多様性とフレイルとの関連を検討することを目的とした。【方法】対象は群馬県邑楽郡で実施された官学連携の健康教室で,ベースライン調査に参加した218名(65~95歳)とした。研究デザインは横断研究とし,自記式質問票を用いた調査を実施した。参加者には基本属性,食品摂取の多様性,フレイルに関する質問を含んだ自記式質問票への回答を依頼した。食品摂取の多様性は,10項目の食品や食品群について1週間当たりの摂取頻度から評価した(以下,多様性得点(0~10点))。フレイルの判定には介護予防チェックリストを用いた。全15項目の各質問につきネガティブな回答に1点を付与し,4点以上の者をフレイルと判定した。解析にはフレイルの有無を従属変数,多様性得点を独立変数とした多変量ロジスティック回帰分析を用いた。【結果】解析対象者の平均年齢,BMIおよび多様性得点はそれぞれ75.5歳, 22.9 kg/m2,3.6点であった。フレイルの者の割合は15.6%であった。多変量ロジスティック回帰分析において,多様性得点とフレイルとの間に有意な関連が得られ,多様性得点が低値群に対する中間群,高値群のオッズ比はそれぞれ0.70(0.21~2.27),0.10(0.02~0.54)であった。【結論】多様性得点が高い者ほどフレイルのリスクが低かった。
著者
中嶋(坂口) 名菜 高野 優 福島 英生 北野 直子 森 政博
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.331-336, 2012

【目的】マゲイシロップは血糖指数(GI: glycemic index)が低い甘味料として注目されている。そこでグラニュー糖の代わりにマゲイシロップを配合した食品を摂取してもらい,マゲイシロップの食後高血糖抑制効果について検討した。<br>【方法】疾患を認めない若年成人女性7名を対象に,2006年4~9月の間に実施した。約12時間の絶飲・絶食後,早朝空腹時の血糖値を測定した。WoleverとJenkinsの方法に基づき,基準食の血糖曲線下面積(AUC: areas under the curve)を算出し,糖質量を基準食と同量に調整した8種類の試験食(ロールケーキ,アイスクリーム,ジャム,糖尿病食にグラニュー糖もしくはマゲイシロップを配合)を基準食と同じ方法で摂取させ,同一被験者による基準食,グラニュー糖配合,マゲイシロップ配合の3群比較を4食品ごとに行った。基準食のAUCを100として各試験食のAUCの割合を求めGIを算出した。<br>【結果・結論】一般的に用いられるグラニュー糖を使用した食品(対照食)に比べ,マゲイシロップを配合した食品(ロールケーキ,アイスクリーム,ジャム)においてAUC,GIの有意な低下が示された(<i>p</i><0.05)。本研究により一定量以上のグラニュー糖と置換したマゲイシロップ含有食品3種類(ロールケーキ,アイスクリーム,ジャム)において食後高血糖抑制効果が確認された。
著者
渡邊 智子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.4-12, 2019-02-01 (Released:2019-03-05)
参考文献数
39
被引用文献数
1

「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」(以下,成分表2015)を補完する成分表として,文部科学省は2016年に「成分表2015追補2016年(以下,追補2016)」,2017年に「成分表2015追補2017年(以下,追補2017)」を公表した。そこで,成分表2015,組成表(アミノ酸,脂肪酸,炭水化物),追補2016及び2017を基に検討し,追補成分表の留意点と課題を明らかにした。食品成分表は公表された時点の日本の食生活を反映したものであるため,現時点の食品成分表の収載食品数は成分表2015に追補2016及び2017の収載食品を加え,本編2,236,アミノ酸編1,627,脂肪酸編1,817,炭水化物編945となった。追補成分表の食品選択を適切に行うためには,備考欄及び資料や付表が役立つ。追補2016では,大根おろしとその汁,生姜おろしとその汁などが追加され,追補2017では成分表2015のでんぶが,でんぶしょうゆ入りに名称変更された。ナイアシン当量が追加され,日本人の食事摂取基準のナイアイシン量に対応する栄養計算が可能になった。今後の課題は,炭水化物やエネルギーに関する事項などである。 これらのことから,追補2016及び2017を成分表2015と合わせて利用すると,日本人の食生活をより正確に調査・研究でき,献立作成や栄養指導,栄養行政などを充実させ日本人の健康づくりに寄与できる。
著者
町田 大輔 長井 祐子 吉田 亨
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.13-18, 2019-02-01 (Released:2019-03-05)
参考文献数
15

【目的】子ども食堂スタッフの活動主体性と関連する要因を明らかにし,近年広がりをみせている地域活動である子ども食堂での食育を推進するための示唆を得る。【方法】2017年3~5月に自記式質問票による横断調査を行った。対象者は,全国の子ども食堂スタッフのうち本調査への同意が得られた者である。273ヵ所の子ども食堂に5部ずつの調査票を郵送した。調査項目は,基本属性(性,年齢,世帯構成,就労状況,居住年数),活動状況(家族の協力,活動期間,活動頻度),ならびに活動主体性4項目,活動満足感9項目,活動負担感14項目とした。活動主体性,活動満足感,活動負担感は,それぞれの合計得点を中央値未満と以上の2値に分けて分析に用いた。活動主体性と各調査項目との関連を二項ロジスティック回帰分析で検討した。【結果】117ヵ所,386人から回答があったうち,活動主体性,活動満足感,活動負担感のいずれかの回答が欠損していた52人と,20歳未満で保護者の同意が得られていない6人を除き,328人の回答を分析に用いた。二項ロジスティック回帰分析の結果,活動主体性と有意な関連がみられたのは,年齢(60歳以上:調整オッズ比=2.61),就労状況(自営業・農林水産業:調整オッズ比=3.32),活動満足感(中央値以上:調整オッズ比=2.79),であった。活動主体性と活動負担感との関連はみられなかった。【結論】子ども食堂スタッフの活動主体性と活動満足感との有意な正の関連が確認された。
著者
嘉山 有太 稲田 早苗 村木 悦子 江端 みどり 角田 伸代 加園 恵三
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.173-183, 2006-06-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

A questionnaire survey was performed on college athletes (n2=255) and students of the faculty of pharmaceutical sciences (n=346) to clarify the relationship between dietary supplements and eating behavior and attitudes. The athletes had better dietary behavior and attitudes than the students. The ratio of supplement users among the male athletes was significantly higher than that among the male students. The supply of nutrients and keeping fit and healthy were common frequent purposes of supplement use by both groups. Fatigue recovery and muscular development were also frequent purposes by the athletes. The most frequently used supplements were protein, iron and amino acids by the athletes, and multivitamins, vitamin B and vitamin C by the students.Among the male athletes, most supplement users did not have the habit of eating instant foods and snacks, and would eat even disliked foods for nutritional balance, in comparison with the non-users. Among the male students, although most supplement users understood about their poor nutritional intake, they preferred to take tablets instead of having more nutritious foods and thought of their diet only as a way of filling the stomach, in comparison with the supplement non-users.These results suggest a different relationship between dietary supplement use and eating behavior and attitudes between male athletes and male students.
著者
工藤 美奈子 峯木 眞知子 和田 涼子 杉山 みち子 髙田 和子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.163-171, 2018-12-01 (Released:2019-01-21)
参考文献数
21

【目的】高齢者施設で給与エネルギー目標量を設定する場合に,どのようにエネルギー必要量(以下ER)を推定しているか,推定方法の実態と推定方法や推定値の活用における課題を明らかにすることを目的とした。【方法】東京都内の介護老人福祉施設114施設,及び東京都内と神奈川県内の介護老人保健施設115施設の栄養管理者を対象に,ERの推定方法と課題について質問紙調査を行った。【結果】回収率は58.1%であった。ERの推定方法は「基礎代謝量×活動係数×ストレス係数」が64.7%と最多で,使用している基礎代謝量の推定式はHarris-Benedict式が66.1%であった。ERの推定値が対象高齢者に適切かの回答は「適切である」が21.8%,「適切ではない」が23.3%,「わからない」が49.6%であった。【結論】ERの推定値が対象高齢者に合わないと感じ,値の調整を行っている割合が44.4%であった。現在推奨されている,食事摂取基準に準じた式や数値から求めるERの推定方法は,高齢者施設の現場に適さない場合が多い可能性が示唆された。エビデンスに基づいた要介護高齢者に適したERの推定方法の確立が必要である一方で,式による推定だけでなく,個人差に対する適切な調整方法の確立も栄養ケア・マネジメントにおいては重要である。
著者
野口 聡子 駿河 康平 中井 久美子 村嶋 章宏 木村 泰裕 小林 昭雄
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.156-162, 2018-12-01 (Released:2019-01-21)
参考文献数
13
被引用文献数
2

【目的】オカラを食用微生物であるテンペ菌で発酵させた発酵オカラ(OT)にバナナを加えたオカラ発酵素材(OTB)を開発した。本研究ではヒトにおいて血糖とインスリンに対するOTB粉末の影響を探索的に検討した。【方法】研究デザイン:単群試験。健常ボランティア17名を対象とし,OTB粉末を 10 g添加したヨーグルト(OTB試験食),糖質を同等量とするためにグルコースを 6 g添加したヨーグルト(対照食)をそれぞれ別の日に摂取させ,食前,食後30分,60分,120分の血糖値と血清インスリン値を比較した。【結果】 OTB試験食と対照食のいずれにおいても血糖値と血清インスリン値の上昇は小さかった。OTB試験食と対照食の摂取後を比較すると,食後血糖値の上昇には有意な差はなかった(30分値:対照群 92.8±11.6 mg/dl vs OTB群 91.1±11.5 mg/dl)が,30分後のインスリン値がOTB試験食群で対照食と比べ有意に低かった(30分値:30.6±15.3 μU/ml vs 22.1±13.8 μU/ml,p<0.01)。【結論】 本研究で実施したOTB試験食と対照食のいずれにおいても十分な血糖と血清インスリン上昇をきたさなかったため,OTB粉末がヒトにおける糖代謝改善効果を有するかどうか明確な結果を得ることは出来なかった。食後インスリン値が低いにもかかわらず血糖値が同程度であった点について検証するために,本研究結果を踏まえてプロトコールを再検討した上で実施する必要がある。
著者
入山 八江 串田 修 村山 伸子 斎藤 トシ子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.139-155, 2018-12-01 (Released:2019-01-21)
参考文献数
34
被引用文献数
2

【目的】社員食堂を通して減塩に関する食環境と栄養教育を併用した介入を1年間実施し,勤労者の食塩摂取量の変化と,行動変容の要因に及ぼす効果を明らかにする。【方法】研究デザインは,施設単位の無作為化比較試験である。8施設を施設単位で環境教育群,環境群,対照群の3群に振分けた。社員食堂にトランスセオレティカルモデルに基づく健康情報を載せた卓上メモと滴下型醤油差しを設置し,また,調理従事者にみそ汁と麺つゆの食塩濃度を,初回の濃度を基準に1年かけて徐々に減らすよう指示した群を環境群とした。環境群の介入に加えて,栄養教育を年4~6回実施した群を環境教育群とした。解析対象者は男性216人,女性161人であった。食塩摂取量は簡易型自記式食事歴法質問票から推定した。行動変容ステージ及びその他の要因を自記式質問票で調べた。【結果】食塩摂取量は,女性の環境教育群においては1年間で平均 0.4 g/1,000 kcal有意に減少し対照群との間に群間差が認められた。食塩摂取量が減少した要因として,女性は醤油,調味食塩の減少に加えて,食態度(減塩の意識),情報・食物へのアクセスが有意に向上し,男性では,食塩摂取量の変化はみられなかったが,前後比較において環境群の行動変容ステージが有意に前進した。【結論】減塩には,食環境介入に栄養教育を加えることが女性勤労者で有効であると示唆された。