著者
小山 彩圭 串田 修 赤松 利恵 村山 伸子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.212-218, 2021-08-01 (Released:2021-10-02)
参考文献数
11

【目的】健康日本21(第二次)で推進している「食品中の食塩や脂肪の低減に取り組む食品企業及び飲食店の登録数の増加」では,登録の具体的な基準は問われないため,実態は明らかでない。飲食店等を対象とした食環境整備制度の実施割合と店舗の登録基準を全国の自治体単位で調査し,栄養素等の基準の組合せと量的基準を把握した。【方法】対象は全国の都道府県,保健所設置市及び特別区の計154自治体。2019年10月,各自治体のサイトから飲食店等を対象とした食環境整備制度をウェブ検索し,設定する登録基準を情報/食物へのアクセスに二分した。食物へのアクセスに関する栄養素等の基準の組合せパターンを分類し,量的基準の有無を確認した。【結果】飲食店等を対象とした食環境整備制度は対象自治体の約8割で実施が確認された。制度が確認された自治体のうち,登録基準として情報/食物へのアクセスがある自治体は各々8割以上であった。食物へのアクセスは「野菜たっぷり」9割,「食塩控えめ」8割の順に多く,「野菜たっぷり」と「食塩控えめ」の組合せは29件確認された。量的基準を必須としている割合は「野菜たっぷり」「カルシウムたっぷり」「鉄たっぷり」が過半数であった。【結論】食物へのアクセスの登録項目は「野菜たっぷり」と「食塩控えめ」が多かった。基準の組合せを設定する自治体は限られており,「食塩控えめ」の量的基準の必須割合も約3割と低かった。
著者
河嵜 唯衣 赤松 利恵 酒井 雅司 藤原 恵子 玉浦 有紀
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.175-184, 2021-08-01 (Released:2021-10-02)
参考文献数
29

【目的】高齢の入院患者等の栄養管理に関する看護・介護職員の態度尺度(The Staff Attitudes to Nutritional Nursing Geriatric Care Scale: SANN-G)の日本語版を作成し,妥当性・信頼性を評価すること。【方法】日本語に翻訳したSANN-G18項目を用いて,自記式質問紙調査を実施し,都内の病院及び介護老人保健施設に勤務する看護師・看護助手及び介護士計493名が回答した。1か月後,回答者のうち108名を対象に再調査を実施した。構成概念妥当性,基準関連妥当性,内部一貫性及び再現信頼性を検討した。【結果】490名を解析対象とした(適格率99.4%)。探索的因子分析の結果,2因子10項目が得られ,確証的因子分析の適合度指標も良好な値が得られた。10項目のクロンバックαは0.733であり,初回調査と再調査の合計得点の相関係数は,ρ=0.628(p<0.001)だった。基準関連妥当性の検討では,栄養管理の知識,栄養管理より優先される業務負荷及び入院患者等の栄養管理に関する情報共有との相関係数は,それぞれρ=-0.021(p=0.639),0.158(p<0.001),0.176(p<0.001)だった。【結論】SANN-G日本語版は,原版の因子構造とは異なっていたものの,妥当性・信頼性が確認された。
著者
川上 貴代 岸本 (重信) 妙子 平松 智子 佐藤 ゆかり 田淵 真愉美 我如古 菜月 吉本 優子 久野 一恵 沖田 千代
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.196-203, 2021-08-01 (Released:2021-10-02)
参考文献数
20

【目的】様々な文化・宗教背景をもつ対象への栄養支援活動や対応のための知識習得や態度をもつことは重要である。本研究では管理栄養士養成課程学生での国際活動への志向の把握と管理栄養士のコンピテンシーとの関連により,国際活動への志向が高い学生の特徴を検討した。【方法】関東・関西・中国・九州の5大学の管理栄養士養成課程学生489名を対象に自記式質問調査票を配布し,399名から有効回答を得た(有効回答率81.6%)。国際活動への志向は10項目4段階で測定し,下位の因子合計得点を算出して用いた。コンピテンシー得点,国際交流経験等との関連を検討した。【結果】国際活動への志向について探索的因子分析を行ったところ,7項目2因子が抽出され因子寄与率は62.3%となり,「基本的知識への志向」と「実践への志向」と命名した。同じ学習段階である3年生を対象にクラスター解析を行ったところ,国際活動への志向は4つのクラスターに類型され,2つの因子得点の高低により特徴を示した。基本的知識への志向および専門実践への志向のいずれも高い群では他の群よりコンピテンシー得点,外国語の学習意欲や外国人への態度は有意に高値だった。【結論】国際活動に関する知識および実践への志向得点の高い管理栄養士養成課程の3年生は,コンピテンシー得点も高く国際交流経験や外国人に接する態度も肯定的であった。
著者
小島 美世 山﨑 理 堀井 淳一 井上 陽子 鈴木 一恵 田邊 直仁 村山 伸子 小川 佳子 中川 圭子 草野 亮子 関 芳美 波田野 智穂 磯部 澄枝 栃倉 恵理 石田 絵美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.232-242, 2020

<p>【目的】新潟県では,1965年代から脳血管疾患対策として様々な減塩運動を展開してきた。しかし,脳血管疾患年齢調整死亡率は全国平均より高く,食塩摂取量も全国平均を上回る結果だった。そこで2009年度から新たな減塩運動「にいがた減塩ルネサンス運動」に10年間取り組んだ。その取組をとおし栄養・食生活分野におけるPDCAサイクルに基づく成果の見える栄養施策の展開を試みた。</p><p>【方法】実態把握から優先順位の高い健康課題の抽出と,その背景となる栄養・食生活の要因を分析し,その要因が改善されるよう施策を整理し目標達成を目指した。また,各々の施策の事業効果が目標達成にどう影響を及ぼしているかが見える化できるよう評価枠組を整理した。評価枠組は各施策の事業効果が質的,量的にどう影響を及ぼすかが明確になるよう結果評価,影響評価,経過評価に分け,目標達成に影響を及ぼす施策とその成果が分かるよう施策を展開した。</p><p>【結果】経過評価に位置付けた,市町村や関係機関での取組が増加した。影響評価に位置づけた,県民の高食塩摂取量に関連する食行動が有意に改善した。結果評価に位置づけた食塩摂取量や収縮期血圧値や脳血管疾患死亡数及び虚血性心疾患死亡数が減少した。</p><p>【結論】PDCAサイクルに基づく展開と,目標達成につながる評価枠組を整理し枠組順に客観的に評価したことで,施策が目標達成にどのように影響を及ぼしたのかその関連性を見える化することができた。</p>
著者
曽根 博仁 吉村 幸雄 田中 明 山田 信博 JDCSグループ
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.269-279, 2007-12-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
44

Type 2 diabetes is one of the most challenging health problems throughout the world and is increasing at an alarming rate. Most clinical evidence involved in therapeutic guidelines for diabetes is derived from European or American cohort studies, and the characteristics of diabetes in Asians, including Japanese, have been only poorly investigated to date, despite Asians constituting approximately half of the world diabetes population. The Japan Diabetes Complications Study (JDCS) is a nationwide multi-center prospective study of type 2 diabetic patients. In 1996, 2, 205 patients aged 40-70 years with previously diagnosed type 2 diabetes were recruited from 59 Japanese institutes that specialize in diabetes care. Parameters related to their diet, exercise, glycemic control, diabetic complication events, dyslipidemia, hypertension, obesity and quality of life have been measured and collected every year until now. It was clarified from the interim results of JDCS that the characteristics and pathophysiological backgrounds of diabetes in East Asians were quite different from those in Caucasian subjects. Compared with Caucasian diabetic patients, the JDCS patients had a much lower body mass index (BMI). Moreover, whereas the mean BMI of Caucasian diabetic patients was higher than that reported for non-diabetics of the same ethnic origin, the mean BMI of Japanese diabetic patients was normal in comparison with the Japanese non-diabetic population. Other differences between Japanese and Caucasian patients with type 2 diabetes could be found in the incidence rate and risk factors of complications, the effects of moderate alcohol drinking on cardiovascular disease, and the clinical significance of the diagnosis of metabolic syndrome. These profound differences demonstrate the necessity for obtaining clinical evidence based on a large-scale study of East Asian patients in order to establish and provide management and care specific to this particular population.
著者
鈴木 道子 片山 一男
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.262-273, 2012 (Released:2012-09-11)
参考文献数
27
被引用文献数
1

【目的】諸外国の栄養専門職養成システム及びその関連事項の概要を明らかにし,日本のシステムとの比較を行う。【方法】国際栄養士連盟(ICDA)のホームページ及びICDA加盟栄養士会の英文ホームページの掲載内容から,栄養専門職の資格,その養成システムの概要とともに,関連事項(情報提供者である栄養士会のプロフィール等)を抽出する。【結果】(1)ICDA加盟42カ国のうち,職業上の肩書及びその認定機関を記載しているのは約半数であり,その認定機関は栄養士会を含め多様である。(2)資格認定のための学士等の取得条件については26カ国で記載され,その多くが学士以上の条件をつけているが,一部はそれ以外としている。(3)実習プログラムについては,24カ国で記載があり,500時間以上とされるICDAの国際基準を満たした実習プログラムが含まれていないとしている国は,台湾,日本,フランスの3カ国である。(4)養成数は記載がある国の中では,アメリカ合衆国の年間3,000人が最多である。(5)教育内容は,学術と実践の両面からなり,その内容は基礎的科学から応用分野まで幅広い国が多い。【結論】諸外国の栄養専門職養成システムは多様であるが,日本における実習要件の国際基準不充足は特記すべきである。諸外国の養成システムに関する研究を進めながら,日本におけるより良い栄養専門職養成システムを構築していく必要がある。
著者
高橋 智子 園田 明日佳 古宇田 恵美子 中村 彩子 大越 ひろ
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.231-240, 2008-10-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

The physical properties of gel samples of varied hardness were examined and the intake quantity per mouthful investigated in healthy subjects for its effect on the swallowing characteristics, mastication method, and swallowing frequency. The samples were prepared from gelatin and an agar-derived gelling agent of varied molecular weight. The subjects, regardless of the quantity per mouthful of the sample, recognized the difference in such oral senses as stickiness and ease of swallowing. Gel samples, taken in small portions, that were soft, highly adhesive, and with a high tan δ value (viscosity element divided by elasticity element) were squashed between the tongue and palate by most of the subjects before swallowing, rather than masticated with the teeth. It was also found that the greater the adhesiveness, elasticity element G′ in the linear region, torque and viscosity element G″ in the non-linear region, the higher was the frequency of swallowing until the gel sample had been completely swallowed. The overall results demonstrate that humans alter the mastication method and frequency of swallowing until the food has been completely swallowed according to the physical properties of the food.
著者
伊藤 至乃 天野 幸子 殿塚 婦美子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.39-52, 1993
被引用文献数
3

母子を組 (429) にして児童及び母親の食事に対する意識や態度を調査した結果, 次のことが明らかになった。<br>1) 児童の家の食事と給食の満足, 不満足の主な要因は, 食事の内容と食卓を囲む人間関係や食事をつくる人とのコミュニケーションの問題であることが明らかにされた。家族や友だちと一緒に食べることや食事づくりの手伝いは, 満足度を高める要因である。ただし給食当番は, 家庭での手伝いほど満足度に影響を与えていなかった。<br>2) 食事に満足している母親は, 家族と密なコミュニケーションがあり, 食事づくりにかける時間が長い。<br>3) 子どもの意識や態度を通しての母親の意識や態度の観察では, 次の3点に違いがみられた。<br>(1) 家の食事に満足している子どもの母親は, 献立に子どもの嫌いな物を考える時に工夫をし, 食事づくりに時間をかけていた。<br>(2) 手伝いをよくする子どもの母親は, 手伝いの期待が高かった。<br>(3) 食べ物の好き嫌いが少ない子どもの母親は, 献立に子どもの嫌いな物を考える時に, 好き嫌いは考えないと工夫しているとに分かれた。好き嫌いを考えない母親は, 家族とのコミュニケーションが親密であり, 互いの期待に応えようとする態度がうかがわれた。<br>(4) 母親の意識・態度を通しての子どもの意識・態度の観察では, 子どもの嫌いな物に対する態度にのみ違いがみられた。子どもが嫌いな物を食べ残した時に何もいわない母親の子どもは, 家の食事に不満足で好き嫌いがあり, 食事も残す。このような母親の子どもに対する消極的な態度とコミュニケーション不足が, 子どもの食事に対する意識や態度に反映されていた。
著者
井上 清 向山 美雄 辻 啓介 田辺 伸和 樽井 庄一 阿部 士朗 高橋 誠
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.263-271, 1995
被引用文献数
9

麹菌に <i>Monascus pilosus</i> (IFO4520) を用いて調製した紅麹は, SHRに対して血圧降下作用を示している。そこで, 高血圧症者に対する効果を調べるために, 軽症ないし境界域本態性高血圧症者に対し, 紅麹入りドリンクを摂取させる3種の試験を行った。<br>(1) 入院高血圧患者12人に対し, シングルブラインド法で1日当たり紅麹0g, 9g, 18g, 27g相当のエキスが入ったドリンクを2週間摂取させた用量依存性試験, (2) 通院高血圧患者12人に (1) と同様に紅麹ドリンクを1か月間摂取させた用量依存性試験, (3) 高血圧の通院患者7人に対し9g/日の紅麹相当のエキスを6か月摂取させた長期摂取試験。<br>入院患者の2週間摂取試験では, 紅麹ドリンク3本/日 (紅麹27g相当) を摂取した場合に, 157±11/91±10mmHgから141±10/81±6mmHgへと, 収縮期圧, 拡張期圧ともに明らかな降下が観察された (<i>p</i><0.05)。また, 通院患者への1か月間の紅麹ドリンク摂取試験においては, 紅麹ドリンク3本/日の摂取で154±9/92±6mmHgから147±10/81±5mmHgと明らかな血圧降下作用が観察された。<br>7人の高血圧症を有する通院患者に対し, 6か月間紅麹ドリンクを摂取した試験では, 紅麹ドリンク1本/日 (紅麹9g相当) の摂取で164±9/99±6mmHgから154±14/88±5mmHgへとともに血圧の降下が観察された。更に, 228±42mg/dlから184±27mg/dlと血清総コレステロール値の低下も認められたが, 紅麹ドリンクを与えないで6か月観察した5人では, これらの効果はみられなかった。<br>以上の結果から, 紅麹エキスの摂取により, 高血圧症者で血圧と血清コレステロールの改善作用が判明した。
著者
立石 絵美 韓 立坤 奥田 拓道
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.323-327, 2004
被引用文献数
4

The inhibitory effects were examined of a hot-water extract of coffee beans on Kud: Wistar rats by an <i>in vivo</i> oral saccharinity tolerance test (OST), and the <i>in vitro</i> suppression of alpha-amylase and alpha-glucosidase activity. The hot-water extract of coffee beans strongly inhibited the activities of alpha-amylase and alpha-glucosidase, and reduced the postprandial blood glucose concentration by OST. Chlorogenic acid and acarbose strongly inhibited the activity of alpha-glucosidase, and reduced the postprandial blood glucose concentration by OST. However, caffeine, which is a major component of coffee beans, had no such effect. These results suggest that the inhibitory effect of the hot-water extract of coffee beans on postprandial hyperglycemia may have been due in part to the inhibition of alpha-glucosidase by chlorogenic acid which is a major component of coffee beans.
著者
内藤 初枝
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.321-326, 1995 (Released:2010-04-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1

ごぼうの褐変防止方法としての食酢の活用意義を明確にするとともに, より効果的な褐変防止方法を検討し, 以下のような結果を得た。1) 水または3%食酢水浸漬を実施したごぼう中のポリフェノールオキシダーゼ (PPO) は, 生と比較して減少した。また, 酵素活性に適したpHは5.5~6.7であり, この酵素は酸性側で非可逆的に不活性となった。2) 水または3%食酢水浸漬により, 浸漬処理後のごぼう中のポリフェノール (PP) 類含量は, いずれも13%程度減少した。3) 見かけ上, 水浸漬溶液は褐変が濃く, 3%食酢水浸漬溶液ではPP類含量が高かった。4) 各浸漬溶液のpHを6.7に補正し, 新たにPPO (チロシナーゼ) を添加したところ, 3%食酢水浸漬溶液では溶液の褐変が増加し, PP類の測定値が低下し, 水浸漬溶液の結果と同様の傾向を示した。5) ごぼうの表面色は, 浸漬溶液から取り出した後も徐々に着色していった。特に, 3%食酢水浸漬のごぼうでは, 褐変酵素が非可逆的に失活しているにもかかわらず, 更に褐色系着色が進行した。以上の結果から, ごぼうの褐変防止方法としては, 食酢水浸漬より水浸漬のほうが褐変防止効果は大きいという結論を得た。
著者
松岡 良子 米川 五郎
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.217-225, 1991
被引用文献数
1

カルシウム (Ca) 摂取推進のための教育内容及び教育・指導のあり方を検討する目的で, 昭和63年6~9月に, 愛知県下の小学生~社会人総計487人を対象に, Ca全般に関する知識・理解度をみる調査を, また, 愛知県下の別の高校生~社会人総計115人を対象に, 食品におけるCa含有量の量的な把握の正確度をみる調査を行い, 次の結果を得た。<br>1) Ca含有食品として一般的に割合知られている牛乳や小ざかな類に対しては, 認識度は高かった。また,"牛乳"や, 小ざかな類の中の"しらす干し"に対しては, そのCa含有量を過大視する傾向があった。逆に, Ca含有食品としてはあまり知られていない"凍り豆腐","こまつな"に対しては, Ca含有量を過小視する傾向がみられた。<br>2) Caの消化・吸収促進補助物質として挙げられるビタミンDを回答している割合は, 半数以下であった。<br>3) Caの生理的機能と欠乏症については, 骨や歯に関する項目 ("骨や歯の組織を固くする","骨や歯の形成障害を起こす") に対しては正答率は高かった。その他の機能 ("筋肉の収縮を助ける","血液を凝固させる","血液の酸・アルカリのバランスをよくする") に対しては, 対象者の85%以上が知らなかった。また, 欠乏症である"骨粗鬆症"については, 年齢層が高いほど正答率が高いという傾向がみられた。
著者
宮井 潔
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.195-206, 1993 (Released:2010-04-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1
著者
三田村 敏男 桑野 和民 酒巻 千波 吉田 勉
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.157-164, 1991

水産練り製品中の縮合リン酸塩の使用量を知る目的で, 白身魚肉を使用したかまぼこ類やかに肉に似せた蒸し物水産練り製品 (いわゆるコピー食品), 並びに赤身魚肉を使用した練り製品 (くろぼこ類と略称) について, 総リン (TP), オルソリン酸態リン及び縮合リン酸態リン (CP) を分別定量した。比較のために, 畜産加工品のソーセージ類, チーズ類及びハンバーグ・ミートボール類についても, 同様にリンを定量し, 次の結果が得られた。<br>1) 水産練り製品及び畜産加工品とも製品によってTP並びにCPのいずれの含量もばらつきが大きかった。<br>2) 新鮮物100g中のTP量及びTPに占めるCPの比率は, それぞれ平均で次のとおりであった。<br>(a) 水産練り製品では, かまぼこ類は97mg及び37%, コピー食品は85mg及び38%, くろぼこ類は127mg及び22%であった。<br>(b) 畜産加工品では, ソーセージ類は169mg及び21%, ナチュラルチーズ類は287mg及び25%, プロセスチーズは700mg及び52%であった。また, ハンバーグ類, ミートボール類では, それぞれ102mg及び7.3%, 85mg及び8.1%であり, これらには縮合リン酸塩類が添加されている可能性が認められた。
著者
近藤 秋穂 山口 愛友 中下 千尋 細田 耕平 坂本 達昭
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.142-150, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
21

【目的】調理に対する自信とセルフエスティーム(以下,SEとする)を高めることをねらいとした非対面式による調理プログラムの効果を明らかにすること。【方法】対象は小学4~6年生(29名)とした。前後比較デザインにより全5回のプログラムを実施した。内容は,参加者が自宅で調理動画を視聴し,調理することである。希望者には食材を無料提供した。プロセス評価は,各回終了時に参加者に動画のわかりやすさ,難易度等をたずねた。第5回終了後には,保護者にも調査を実施した。プログラムの効果は,プログラム参加前後の調理に対する自信とSEの変化から評価した。SEの評価は,先行研究により信頼性と妥当性が確認された尺度(得点範囲8~32点)を用いた。【結果】プロセス評価において,参加者と保護者の評価は良好であった。プログラム参加前より参加後は,自分で料理をうまく作る自信があると回答した者が多く(p=0.003),「ガスコンロや包丁を使わずに,自分一人でいろいろなおかずを作る」ことの自信度も高かった(p<0.001)。SEの平均値(標準偏差)は,プログラム参加前22.9(5.2)よりも参加後25.0(4.4)が高値であった(p=0.002)。【考察】今後,対照群を設けて検討する必要があるものの,本プログラムは調理に対する自信とSEを高める可能性が示唆された。
著者
髙泉 佳苗
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.113-125, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
29
被引用文献数
1

【目的】食生活リテラシー尺度と食環境の認知および主食・主菜・副菜がそろう食事の頻度との関連を検討し,食生活リテラシーが主食・主菜・副菜がそろう食事に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】社会調査会社のモニターである30~39歳の9,356人を対象にウェブ調査を実施した。解析対象は2,000人(男性1,018人,女性982人)であった。食生活リテラシー尺度と主食・主菜・副菜がそろう食事の関連は,外食・持ち帰り弁当・惣菜の利用頻度と食環境(食物へのアクセス,情報へのアクセス)の認知を調整したロジスティック回帰分析を行い,その結果から食生活リテラシー尺度,食環境の認知,主食・主菜・副菜がそろう食事の因果モデルを作成し,パス解析を行った。【結果】男性は,食生活リテラシー尺度から「食物へのアクセス」と「情報へのアクセス」の認知に有意なパスが確認された。さらに,「食物へのアクセス」の認知から,主食・主菜・副菜がそろう食事の頻度に影響していた(GFI=0.999,AGFI=0.997,CFI=1.000,RMSEA=0.000,χ2 値=1.2)。女性は,食生活リテラシー尺度から「食物へのアクセス」と「情報へのアクセス」の認知に有意なパスが認められ,その認知から主食・主菜・副菜がそろう食事の頻度に影響していた(GFI=0.999,AGFI=0.986,CFI=0.998,RMSEA=0.041,χ2 値=2.7)。【結論】食生活リテラシーは食環境の認知を通じて,主食・主菜・副菜がそろう食事の頻度に影響を及ぼしている可能性が示された。
著者
小林 道
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.126-133, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
21
被引用文献数
1

【目的】地域住民を対象として,中食の利用頻度と食品群別摂取量及び栄養素等摂取量の関連を明らかにすることを目的とした。【方法】2018年7月~8月に,北海道江別市に在住する20~74歳の成人を対象として,自記式質問紙調査を行った。食品群別摂取量及び栄養素等摂取量は,簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)により評価した。最終的な解析対象者は1,469名(男性:625名,女性:844名)であった。中食の利用頻度と食品群別摂取量及び栄養素等摂取量との関連は,共分散分析を用いて検討した。【結果】男性では,中食の利用頻度が週1回未満の群と比較して,週2回以上の群で,緑黄色野菜類,その他の野菜類,食物繊維,カリウム,カルシウム,マグネシウム,葉酸,ビタミンCの摂取量が有意に低く,女性では,これらの食品群と栄養素等に加えて,豆類,卵類,動物性たんぱく質,動物性脂質,鉄,亜鉛,銅,ビタミンA,ビタミンB1,ビタミンB2,ナイアシン,ビタミンB6 の摂取量が有意に低かった。男女ともに中食の利用頻度が週2回以上の群では,ナトリウム・カリウム比(Na/K比)が有意に高かった。【結論】中食の利用頻度が週2回以上の群では,野菜類摂取量が低く,それに伴って食物繊維及び複数のビタミンなどの摂取量が低値を示し,Na/K比が高まる可能性を認めた。中食の利用頻度が高い場合には,Na/K比を低くするために野菜類摂取量の増加に留意する必要性が考えられた。
著者
小山 彰子 横山 弥枝
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.151-161, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
54

【目的】特別養護老人ホームにて経腸栄養製品を摂取している高齢者における自然排便の促しを検索した。【方法】胃瘻から経腸栄養製品を摂取している高齢者12名(男性1名,女性11名,平均年齢84.3歳)を対象に,シンバイオティクスによる排便状況や医療処置等の調査を行った。調査前の排便回数によって,低群(<3回),中群(≥3~<8回),高群(≥8回)に分類し,一般線形モデルの分散分析を用いて,排便回数,排便日数,便性状,排便量,医療処置回数の経時変化の分析を行った。また,対象者特性の便秘への影響度を数量化Ⅱ類により算出した。【結果】低群の排便回数は2.22回から4.08回(p=0.041 for trend),排便日数は1.98日から3.62日(p=0.015 for trend),医療処置回数は8.50回から0.50回(p=0.007 for trend),高群の排便回数は9.04回から6.88回(p=0.032 for trend),排便日数は6.24日から4.67日(p=0.009 for trend)となった。高群では排便回数は9.04回から6.88回(p=0.032 for trend),排便日数は6.24日から4.67日(p=0.009 for trend)となった。便性状と排便量に変化はなかった。対象者特性である胃瘻期間および食物繊維摂取量と便秘との関連は認められなかった。【結論】胃瘻から経腸栄養製品を摂取している高齢者の自然排便におけるシンバイオティクスの作用傾向は確認されたが,本調査は実践活動報告であることから,今後は無作為化比較試験等での検証が求められる。
著者
鈴木 志保子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.275-282, 2012 (Released:2012-12-13)
参考文献数
10
被引用文献数
1

スポーツや健康の維持・増進の現場における栄養管理は,栄養ケア・マネジメントと比較し,マネジメントの目的,期間,対象者,行動計画の有無,評価項目が異なることから,栄養ケア・マネジメントの流れのとおりに実施することができない。そこで,スポーツ栄養マネジメントを構築した。スポーツ栄養マネジメントは,目的と期間を定め,スクリーニングにより対象者を抽出し,対象者への個人サポート(個人マネジメント)を実施し,対象者全員の個人サポートの成果とともにマネジメントの評価を行うという流れである。個人サポートは,アセスメント,個人目標の設定,サポート計画立案,サポート計画の実施,モニタリング,個人評価の流れとなる。スポーツ栄養マネジメントは,2008年に北京で開催されたオリンピックにおいてソフトボール日本女子代表チームが金メダルに輝いたことから,質の高い効果的な栄養管理の実施が可能であることが評価され,スポーツや健康の維持・増進の現場における栄養管理システムとして導入されるようになった。
著者
赤堀 摩弥 藤浪 正子 川田 典子 佐藤 圭子 小嶋 由美 中村 美詠子 尾島 俊之
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.34-43, 2018

【目的】静岡県は他自治体と比較して脳血管疾患死亡率が高く,食塩摂取量も多い。そこで,脳血管疾患対策の1つとして,5年で5%の減塩を目指す「減塩55プログラム」に取り組むこととし,県民の食塩摂取状況の把握ができるチェック票を開発,減塩推進活動に活用することを目指した。<br>【方法】静岡県保健所栄養士のヒアリングによる質的データ,静岡県民102人を対象とした24時間蓄尿データより推定した食塩排泄量及び食物摂取頻度調査票(短縮版)データ等に基づいて,チェック票を開発,さらに,特に減塩をすすめたい働き盛り世代を対象としたリーフレット「ふじのくに お塩のとりかたチェック」を作成した。<br>【結果】チェック票合計点と推定食塩排泄量の間には,有意な正の相関(Pearson相関係数0.402)がみられた。チェック票より3段階にランク付けした場合,各群の平均推定食塩排泄量はおのおの 6.8 g,8.7 g,12.2 gであった。リーフレットは70,000部以上が希望のあった県内の健康保険組合,事業所,医療機関,県栄養士会,薬局,教育機関,保育所等に配布され,県内全ての市町,健康福祉センターで活用されている。<br>【結論】本チェック票は食塩摂取の簡易なスクリーニング・ツールとして使いやすいものとなったため,現在静岡県内の健康教室,イベント等さまざまな場面で活用されている。今後も本チェック票を活用し,静岡県における減塩対策を進めていく予定である。